サバイバルイベント 6日目 ②
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？？？？
何か重大なアナウンスが聞こえた気がします。
ひとまずヒイラギの木陰へ向かって足を進めます。
立ち止まると、眷属さんが心配してしまいますからね。
…………！？
これもイベントだったんですか！？
開始のアナウンスとかありませんでしたが！？
それに、【19：太陽】の能力の、完全解放……
そ、ソル様の信頼度がMaxになったのは嬉しいですが、すごい重大な発表です。
も、もう何がなんだかわかりません………
頭の中がぐるぐるしてます。
そんなわたしの様子をみて、どうにかヒイラギの木陰までペルセウスさんが引っ張ってくれたみたいです。
気が付いたらヒイラギの木陰にいました。
人間、びっくりすると何も考えられなくなりますね。
驚きを通り越して無になってました。
………どう説明しましょう。
「………ミツキ氏？」
座り込んで頭を抱えて唸っていたら、心配そうなミカゲさんの声が聞こえました。
振り返ると、ミカゲさんが心配そうにしゃがんでこちらを見ていました。
その後ろにはこちらを見つめるレンさんもいます。
「体調悪いですか？体調悪いならログアウトした方が……」
「う、うえええミカゲさんんん、レンさんんん」
「な、なにーーどうしました！？！」
わたしは、今日起きたことをゆっくり話しました。
2人は、神妙な面持ちで、会話を挟むことなく聞いてくれました。
「こ、これが例の果実です。いつも、ありがとうございます……」
「………ワァ……」
「…………」
太陽のプラムを手渡すと、2人して無言になりました。
「……少し目を離すとやらかすなァお前は」
「………不可抗力です……」
「ミツキ氏がゲーム実況してたらスパチャしてますぞ」
…………する予定は無いですね。スパチャってなんです？
「ミツキ氏の物語は予測不可能で面白いですなぁ」
「あぁ。退屈しねェ」
「これからも是非とも、何かやらかしたら教えてほしいですなー」
「………やらかす予定は無いんですが……」
2人から慰め？の言葉を貰い、改めて状況整理をします。
ソル様から幻の果実、太陽のプラム(たくさん)をいただきました。
そして【19：太陽】の能力を完全に解放することができます。
【19：太陽】については、発動しないと能力がわからないので今後検証です。
能力わからないうちに完全解放されてしまいました。
………一通り【神秘】を使って能力確認した方がいいですね。
「……アーツのことも、後で検証しますね」
「………聞いた感じだと、このゲームは熟練度でアーツが成長するシステムですが、ミツキ氏みたいに特殊イベントもしくは条件のようなものを達成すると熟練度を無視してアーツを完全解放できるかもしれないという、仮説が立てられますね」
「……あるだろうな」
「……ミツキ氏は特殊ですが、ユアストも特殊なルートが溢れているんで、無いとは言えませんねぇ」
…………確かにそうですね。
他にもイベントがありそうです。
「他にもジョブ限定特殊イベントとかありそうですな……ちょっと探り入れてみますわ」
「あ、ありがとうございます」
ユアスト、中々隠されてるものが多そうです。
それも魅力的ですけれど、下手したら見つからないまま終わってしまうんじゃ………？
「にしても、この果実やべーブツですな」
「………HP全損からの完全回復。そんなアイテム見た事ねェな」
「まだその手のアイテムはプレイヤーには作れませんし、蘇生薬はありますけど使用してもHPは2割しか回復しませんからね」
あ、蘇生薬とかあるんですね。
………リゼットさんの所にもあったのでしょうか。
全然見てませんでしたね………
「しかもヤバい所はプレイヤーじゃなくてNPCにも効果がある所だと思うんですよ」
「………ヤバいですか」
「ヤバいですね。これを巡ってミツキ氏を利用しようとする輩が湧き出るかもしれないっすわ」
わ、湧き出る！？！！
……それはプレイヤーもNPCもってことですよね。
「幻の、と名前がつくのは大体価値が高いものです。そして滅多に世に出回らないものであれば尚更です。あまり人目に付くところでは出さない方がいいです」
「……そうですね」
「………番犬はレンさんがいるから良いとして」
「誰が犬だ」
「………今回のイベントもあって、密かに2人とも呼ばれてる名前があるんですよ。知らないです？」
「えっ」
「はァ？」
「〈猛獣使いの魔女ちゃんと狂犬〉って」
「「は？」」
レンさんとハモりました。
いや、初耳ですが？
「ミツキ氏は、装備と戦い方が相まって魔女ちゃんと」
「？？？」
「そしてレン氏を手懐けてるので猛獣使いと」
「？？？」
「レン氏は恐らく拳と書いて狂拳と、ミツキ氏に近付く変な輩を牽制してたから番犬繋がりで狂犬って呼ばれてるみたいっすわ」
「……………」
「プレイヤー、そういう名前付けるの大好きですからなぁ。あだ名とか」
？？？
ちょっとよくわかりませんね？？？
「カメリア氏とかご存知です？彼女は〈首切り椿〉って異名が勝手に付けられてますぞ」
「カメリアさんが………」
「カメリア氏は確実に首を狙って斬り込んでいきますからな」
他にもSNSで調べるとたくさん出てきますぞー
他にも金髪縦ロールでお嬢様ロールプレイしてるキャロライン氏の〈真・お嬢様〉とかー………
なんて言うミカゲさんの言葉は右から左へ流れていきます。
わたしは息を吸うように自然な流れでレンさんに土下座します。
「わたしのせいでレンさんに変なネーミングが……」
「………別に気にしねェよ。周りから何て言われようと」
「………それよりもお前だろ」
「へ？」
「……目立ちたくないんだろ」
思わず見上げると、レンさんは真剣な顔をしていました。
ぶっきらぼうな優しさを感じます。
「……あまり他のプレイヤーと関わりませんし、何かあったらすぐ逃げます」
「……隙を見せず常に警戒しろ」
「わかりました！」
「ちょっと心配ですな……何か言われたらボクに教えてくださいね？処理しますから」
ニコリと笑う笑顔に影がある気がします。
処理……響きが怖いですよミカゲさん……
…まぁ恐らくNPCから故意に危害を加えられる事は無いと思うんですよね。
襟に着けているブローチの意味がわかるNPCなら、ですけど。
月桂冠と盃が刻まれている翠玉のブローチ
ダイヤモンドの図形に五芒星が刻まれている金紅のブローチ
これはリゼットさんとお師匠様の弟子という証ですからね。
………怖いのはプレイヤーですね。
プレイヤーに気を付けましょう。
「何かあったら【瞬間移動】で逃げます！」
「そうしてくだされ」
わたしは拳を握ってそう訴えました。
大丈夫です！すぐ逃げますから！
「にしても、考えるとこの島はミツキ氏の力と相性が良いですね」
「……そうですね……」
相性、そう言われると相性良いですね。
自然溢れるところと相性良いかもしれません。
サバイバルも順調に出来ています。
迫りくるモンスターを倒し続ける、と言うよりは自分のペースで戦闘、生産が出来るこういうイベントのが性に合ってる気がします。
「お話聞いてくださってありがとうございました」
「いえいえー。ミツキ氏といると驚きが尽きなくて楽しいですわ。ね、レン氏」
「……あぁ、見てて飽きねェわ」
「不可抗力！ですからね！」
ほんとうに！イベントホイホイしてる訳じゃ無いんですからね！
「こほんっ………この後のご予定は？」
「モンスターブッ倒す」
「ボクはアイテム作りですな」
「わたしはあの洞窟、ちょっと覗いてみます」
イベントも明後日のお昼までですし、気になるところは行っておきましょう。
「………洞窟あったのか」
「気付きませんでしたなー」
「中が気になりますからね！」
「……気を付けるんですぞー。何か面白い事あったらメッセくれればボクも行きますんで」
「俺にも連絡しろよ」
「はい！連絡しますね」
頂いた果物を切り分けて食べて休憩したあと、各々やる事のために別れました。
わたしはあの洞窟へ向かいます。
何があるのか、楽しみですね！
これからも無自覚にやらかす(？)主人公をよろしくお願いします！
