サバイバルイベント 5日目 ④
ご覧いただきありがとうございます!
作中の季節の移り変わりはフィーリングでお楽しみ下さい!
「〈おとめ座〉」
魔法陣から女性のシルエットが浮かびます。
天使のような羽が生えた、美しい女性です。
亜麻色の髪を、編み込んでいます。
確か、シニヨンと言ったでしょうか。
(やっと喚んでくれたわね!)
「わっ」
元気なお声が伝わってきたかと思ったら、抱きしめられました。
……いい香りがしますね。
はっ変態みたいな発言してしまいました。
「す、スピカさん!」
(はぁい)
渋々と離れて下さいました。
何やらテンション高めのようです。
個体差でしょうか。
(やっと喚んでくれたんだもの!嬉しくなるわ!)
「応じて頂いてありがとうございます。会えて嬉しいです!」
(ふふ、いい子ね。それで、どんなご用かしら?)
わたしは眷属さんの紹介をして、経緯について話しました。
スピカさんは、目の前のソル・プラムを眺めます。
(ふぅん。確かに、実をつける時期に実をつけないのはおかしいわね)
「スピカさん、何かお分かりになりますか?」
(ちょっと待ってて、聞いてみるわ)
聞いてみる?????
不思議に思っていると、スピカさんはソル・プラムの木に両手と額をつけて目を閉じます。
その様子を、眷属さんと一緒に眺めます。
(ふむ、なるほどね)
「!何かわかりましたか」
(育て方は間違ってないわ。問題は水よ)
「問題は、水……」
(この木には特別な場所の水を使っているのでしょう?案内してもらえるかしら?)
『……ミツキ?』
あっわたしにしか聞こえないのでした。
スピカさんの言葉を眷属さんへお伝えします。
『水、ですか………泉の水を使ってますので、ご案内しますね』
眷属さんの後をついていくと、小さな泉がありました。
花に囲まれて、陽光がさして、とても綺麗です。
水も透き通っています。
どこも怪しそうな感じは、しませんけども………
(ミツキ、目では見えないものはたくさんあるわ。惑わされないで、よく視てみなさい)
「は、はい」
よく視る……
陽光の泉
陽光により浄化された純度の高い水源。
特殊状態:呪いにより無色透明の毒が混じっている
びゃっっっっっ
の、のろい????
おまじない????
………のろいの方でしょうか!?
毒ですもんね!!
「……無色透明の、毒が混ざってます……」
(ええ、そうね。この泉には何かが仕掛けられているみたい)
『………毒、ですか……』
「みると、呪いにより無色透明の毒が混じっている、と……」
『なんてこと………』
眷属さんはその場でペタリと座り込みました。
あわててその背を支えます。
『一体、どこから……』
「わたしも、泉の周りをちょっと見てみます」
シリウスたちと共に泉の周りをじっくりみます。
花も丁寧にそっとかき分けましたが、特段怪しいものは見当たりませんでした。
そもそも陽光により浄化〜と書かれているのに、毒は浄化されないのは何故でしょう。
「………周りには何も無さそうですね。あとは……」
怪しいのは、泉の中です。
でも、どうやって探しましょう。
さすがに毒が混じっている泉に入るのは、少し抵抗があります。
(闇雲に探すよりかはここ!って分かった方がいいわよね。ミツキ、ピクシスを喚んでみてくれるかしら?)
「ピクシス?らしんばん座ですか?」
(ええ!)
ふむ、らしんばん座はただの方位磁石じゃ無さそうですね?
スピカさんが言うなら、きっと今役に立つ能力なのでしょう。
わたしもらしんばん座の能力、気になります!
「〈らしんばん座〉」
魔法陣から羅針盤が出て来ました。
羅針盤に描かれている方位、星みたいでかっこいいですよね。
(ピクシスは方位の確認と失せ物探しができるわ)
「……とても羨ましい能力ですね……」
特に失せ物探しです。
現実で欲しいですよね………
(と言ってもわたくし達は何を探せばいいのかわからないわ。だからひとまず泉の中の魔力を探させるのが良いと思うわ)
「泉の中の魔力ですか……」
毒、呪いを放つものは、発動に魔力が必要なのでしょうか?
ずっとあるとしたら、そこまで長持ちするのかも気になりますけどね。
ゲームってそんなものなんですかね?
「では、ピクシス。泉の中で魔力を放つものはありますか」
わたしの手の中で、一定方向を向きます。
!
魔力を放つものが、あるんですね!!
ピクシスを持ちながら、泉の周りをぐるぐる回ります。
………やはり泉の真ん中を向いているような気がします。
「……真ん中に何かありそうですね」
(………ふむ)
(………確かに何か、あるかもしれんな)
シリウスは水面に鼻を近付けます。
あ、危ないですよシリウス!
(………よしペルセウス!手を突っ込め!)
(…………は?)
(ミツキにさせるよかマシであろう。逝ってこいペルセウス)
(はぁ………)
「いやいや何言ってるんですかシリウスとレグルス」
そんな人身御供みたいな………ってペルセウスさん腕回して準備万端ですか!?!?!
(触れて何かあるか調べるだけだぞ。ペルセウスが)
(ミツキにさせるよりは我らが確かめた方が良いであろう)
(…………ハァ)
ペルセウスさんが大きくため息をついて、躊躇いなく泉に手を入れました。
「ペルセウスさん!?」
手を入れたまま少し待って、ペルセウスさんは泉から手を出しました。
(………人体に害は無いようだな)
「し、心臓に悪かったですよペルセウスさん」
(ふむ、では真ん中に手を突っ込んでも大丈夫そうだな)
シリウスがちらりとわたしを見ます。
……これでわたしに何かあったらシリウスは今日ご飯抜きですからね。
ペルセウスさんが体を張ってくださったので、わたしも覚悟を決めます。
念の為にキュアポーションを片手にスタンバイして、わたしは泉へと足を踏み入れました。
『……だ、大丈夫ですか、ミツキ。何ともないですか』
「……一応、大丈夫そうですね」
着の身着のまま入りましたが、特に装備が水を吸って重くなるとかそういう事は無さそうです。
良かったです。
わたし、泳げないので!
ピクシスが示す方向に足を進めます。
透き通った泉の中に、そんな怪しいものは見当たりませんけどね…………
ガツン
「えっ」
真ん中辺りに来たときに、何か蹴り飛ばしました。
……………何もありませんが!?!!
…………ええいままよ!!!
わたしはピクシスを持たない方の手を水の中に沈めます。
そして足元で手を動かすと、何かに触りました。
…………なんか硬くて、箱のようなフォルムです。
見えませんけどね。
それを掴んでゆっくりと持ち上げます。
………今更ですがこれ持ち上げて大丈夫ですかね?
「な、何か!何か掴みました!見えませんけど!」
(んーわたくしにも見えないわね)
(全然わからねえな)
「水面に持ち上げて良いですかね!?!」
(腕を伸ばして距離を取って水面へと出すと良いぞ)
レグルスの助言を受けて、精一杯腕を伸ばして水面へと何かを持ち上げます。
水面から現れたのは………
「………銀の、箱?」
鏡のように景色を反射する銀色の箱でした。
ゆっくり進行中です。
ミツキの冒険を楽しんで頂けると嬉しいです。