表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/369

サバイバルイベント 閑話

ご評価、ご感想ありがとうございます!




‐サバイバルイベント中の『ソル・ネーソス』各地の様子‐







「ソロキャン最高かよ!」



1人の少女は森の中で叫んだ。

連休中、キャンプをする予定をたてていたが、天気が悪すぎて諦めていたところ、イベントで島でサバイバルを行うときた。


「ゲームはどこにでも行けていいなぁ。ちょっとした旅行気分にもなるし」


お金もない学生の身である少女に、フルダイブでどこにでも行けるゲームは、己の世界が広がってとても楽しいものだった。


「とりあえず肉!野菜!魚!」



少女はとても楽しそうに、島を駆け回る。

果たして彼女のソロキャンは、上手く行くのか………


「あ、コッコ!肉と卵くださぁぁぁいどりゃーっ!」



………順調に進みそうである。










「……………………」

「……………………」

「………釣れねえなぁ」

「………釣れないね…」



男女2人組のプレイヤーは、桟橋から海に向けて釣り糸を垂らしていた。


別にジョブが釣師と言う訳ではない。

これは2人の趣味である。

まだ見ぬ海鮮のために、このイベントに参加したのだ。



「ッ!」

「来た!」


突如男性の釣竿が大きくしなる。

これは大物!と2人は気を引き締めて釣竿を握り、リールを巻く。


数十分の攻防の末、食いついた獲物は海中から水面へと顔を出した。



「………えっ」

「………ビーバー?」




アーヴァンク Lv.23

アクティブ

【爪撃】【捕食】【水魔法】

【怪力】【奇声】




侮るなかれ。その獣、鋭い爪と歯を持ち、人間さえも食い尽くす。










『止まりなさい、人間』

『ここより先はソル様の穀倉地帯』

『許可なく立ち入ることは許しません』

『穀物が欲しいのであれば』

『等価交換です』



月桂冠を頭につけた少年少女たちが、穀倉地帯でせっせと働いている。



女プレイヤーが、跪いて話しかける。



「質問をしても良いかな?」

『我らは仕事中です。手短に』

「ソル様とは、どなたかしら?」

『………ここは太陽に祝福された島。太陽が休む島です。この島には太陽がいらっしゃいます。その御方の名が太陽(ソル)様です』

「……この島には、太陽神がいるのね」

『お会いしたいのなら山の頂上にある神殿に向かえばいい。供物を供えて、運が良ければお会い出来るでしょう』



女プレイヤーのパーティーは、揃って山の頂上を見上げる。

これは特殊イベントに違いない。

運が良ければ、太陽神に出会えるかもしれない。

きっと良いものが貰えるだろう。

供物とやらは、行く先々で何か見繕えばいい。


各々そう考え、山の頂上に向かうことにした。



「仕事の邪魔してごめんなさいね。教えてくれてありがとう」



受け答えをした少年は、女プレイヤーをみて作業に戻る。



「さ、行きましょう。私達なら行けるはずよ」


自信満々にそう言って、山へと向う人間達を、少年少女は冷たい目で見送った。


『まぁ、最高級の供物でないと見向きもされませんけどね』

『ふふ、教えてあげなくて良かったの?』

『あんな欲望にまみれた人間に教えることでもないでしょう』

『そうね。そもそも彼女達だと登頂できるかも怪しいわ』


クスクス…


少年少女は太陽(ソル)の眷属。

主を煩わせる存在には、主に確実に会うための方法を教えることはないのだ。










「この島の野菜めっちゃ栄養豊富に育ってるっす!」

「野菜も果物も、一回りおおきいよね!」

「これを師匠の農場で育てられないかな……」



2人の女性プレイヤーが農場で農作業を手伝っている。

彼女達のサブジョブはファーマー。

作物に適した土作り、種植えや田植え、肥料の撒布や雑草の除去などの日々の手入れ、そして収穫、出荷までの一連の作業をゲーム内で行っている。



イベントで島に移動してから、ひたすらモンスターとの戦闘を避けて農作物探索をしていたところ、農場を発見し、管理している眷属たちと出会ったのだ。



『………労働の対価に、種をあげてもいい』

「え、本当っすか!」

『この島の環境でこう育つから、そっちの農場で同じように育つかはわからないけれど』

「嬉しい!必ず育てます!」

『十分に陽光の当たるところで育てるといいわ』

「眷属さんありがとうっす!」



2人は眷属と共に農作業を再開した。

眷属と、良い関係を築けているようだ。














レベル50〜のモンスターが出現する島の北東部。

そこには大規模な朽ちた遺跡があった。

様々なギミックが存在しており、多くのパーティーがユニオンを組んで攻略に当たっていた。

そして遺跡のからくりを解いて、宝物庫と思わしき扉が開くと思われたが、出現したのは門番のような巨人だった。



「オイオイ……」

「まじかよ」

「……遺跡のからくりを解いたら……」

「……巨人が出現するとか」




‐ レイドクエスト VSアンタイオス ‐

推奨レベル50〜

推奨人数:100

開始まで:49分






「うおっ」

「もっと色々な奴らに知らせろ!」

「ログアウトしてSNSにも流してくる!」

「フレにチャット送ります!」

「チッこういう時に掲示板があればなァ」

「次の大型アップデートで実装予定よ。SNSで拡散するしかないわ」

「今の内に準備しろ!」



彼らはアンタイオスの目の前でバタバタと慌ただしく準備をはじめた。

それを、好戦的な巨人が見下ろしていた。






「カメリア、レイドクエスト発生だと」

「この島で、レイドクエスト?」

「おう。今フレから連絡があった」


東部でモンスター狩りをしていたカメリア達パーティー。

その中の1人、ハイシールダーのグランがカメリアへ伝えた。


「推奨レベル50〜だってよ」

「50か……」


カメリアのパーティーメンバーのレベルは50〜53。


「………行くか。そろそろ刺激が欲しかったんだ」

「はいはい」

「また戦闘かぁ」

「カメリア、弟くんに負けないくらい好戦的だよねー」

「じゃあ準備しながら向かうとしようか」


ソードマスターのカメリア

ハイシールダーのグラン

エレメンタル・フランマのチェリー

ハイプリーストのおこめ

付与術師のカイト



カメリアをリーダーとして各地の攻略を進める、周りから攻略組と喚ばれるパーティーの1つ、『エクリクシ』

ギリシャ語で爆発と呼ばれる単語だ。



「ふふ、どんな敵なのか楽しみだ」


カメリアはそのかんばせに、好戦的な笑みを浮かべた。








「……ばあさんや」

「……なぁに。じいさん」

「初めてばあさんと行った海を思い出すなぁ」

「……そうねぇ」



砂浜では、孫と参加した老夫婦が丸太に座って海を眺めていた。

離れた所で、恐らく孫だと思われるプレイヤーが、モンスターを掃討している。



ユアストは、年齢層が幅広い。

足腰が弱り、遠出が億劫になった祖父母などに、ゲームをプレゼントする家族が増えたのだ。

ユアストでキャラメイク時に変更できるのは身長や髪、胸といった特徴ある部位のみである。性転換はできない。


大体の人は自分そのまま、カラーリングのみ変更だ。

老夫婦はリアルそのままのようだ。

格好は剣士の初心者装備とウィザードの初心者装備だが。


ゲームの中では、衰えてしまった身体も楽に動かせる。

プレイ時間は短めに設定されている、シニア向けのヘッドセットが販売されているのだ。


孫はそれを、アルバイトでお金を稼いで祖父母にプレゼントした。


「うおおおお!じーちゃんとばーちゃんの邪魔はさせねえぜえええ!!!」



孫は戦う。祖父母のデートを見守るために。








千歳カンパニー


第一モニタールームにて



「よし、今回のイベントは順調そうだな」

「ええ。島の探索は個人のペースで進められますし、各地に散らばる眷属たちとも良好な関係を築けているみたいです」

「お、北東部のパーティーが遺跡のギミック全部解いて、アンタイオスを起こしましたよ」

「ぎゃーーーーっまた隠していた隠れ家への入り口が作動した!」


複数人の男女がモニターの前で騒いでいた。



「あんなにスイッチをわかりづらく隠しておいたのに!」

「あー隠れ家に入ったの、唯一アストラルウィザードになったプレイヤーか」

「一緒に狂戦士くんもいるのよね………」

「………普通にクリアしそうだな」

「この女の子、NPCからの好感度すごく高いのよね。すごくマトモなプレイヤーだわ」

「そりゃすごいな」



「あーーーアーヴァンク釣り上げた2人組が喰われた!」

「ハッリア充爆発しろ!」

「木でボート造って海の上漂流しようとした奴が沈んだぞ!」

「それは自業自得だな……」



イベント期間中の運営チームやプログラマー達はいつも深夜テンションだ。

バグが出れば対処、NPCが変な挙動すれば対処、プレイヤーが変な事したら対処………を繰り返している。




「誰も山登らないですね……神殿、用意したのに」

「あ、今1つのパーティーが登り始めたぞ」

「お、登頂できるかなぁ」

「あの山にもヤバい連中いるからな」




各々がモニターと向かい合う中、主任の名札を着ける男は胃のあたりをさすっていた。



「とりあえず頼むから本当に何事もなく終わってくれ……」




色々なプレイヤーがおります( ˘ω˘)

主任の胃に穴が開かないことを祈ります……


これからもこの作品をよろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 奇声持ちビーバー(?)強ぇww 元ネタ(?)のマーモット(ビーバーに非ず)の鳴き声、可愛い見た目通り「ピーッ」って感じのちょっと甲高い声なんですよね確か。
[良い点] おじいちゃんおばあちゃんのプレイヤーも居るのいいですね〜素敵です
[一言] そのビーバー、めっちゃ叫ぶ奴では? (笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ