サバイバルイベント 4日目 ③
話のキリがいいのでここまで更新させて頂きます!
た、食べ物!とりあえずすぐ食べられる林檎を差し出します。
「ありがとうございますめっちゃみずみずしくて美味しいです」
「もっとたくさんお食べになりますか?」
「もぐもぐもぐ………いえ、大丈夫です。大分回復しました」
ミカゲさんは復活したのか、地面に姿勢を正して眼鏡をなおして座り込みます。
「あれ、よく見たらそこな男性、レン氏では?」
「………………」
「お知り合いですか?」
「知らねえ」
「あ、ボクが一方的に知ってるだけですわ。……貴方のお名前をお聞きしても?」
「あ、ミツキと言います」
「ミツキ氏!ありがとうございます命の恩人です!」
み、ミツキ氏???
目の前でミカゲさんがバッと土下座しました。
「あわ、頭を上げて下さい!」
「このままここから出られないかも!と思っていたところなので、めっちゃ助かりました」
なにやらお話をよく聞くと、ミカゲさんはイベント2日目にフィールド探索中、同じように何かを押して穴に落ちて、それ以降このダンジョンから出られなくて困っていたようです。
「ここレベリングには良いんですけど、1人だと中々キツくて。この先に色々怪しいのあるんですけど、全然わからなくて困ってたんですよ」
「そうだったんですか……」
「でもまさかここでプレイヤーに出会えるとは!なので、どうかここから出るために一緒に戦って下さい!」
………わたしは全然構わないのですが、レンさんはどうでしょう。
ここから出るのに、お1人だと大変そうですしね。
「……わたしは全然構いませんが、レンさんにもご確認を」
「レン氏!」
ミカゲさんはレンさんに近寄ってレンさんに縋り付きます。
「お願いします助けて下さいお願いしますう」
「うるせえ離れろ」
「ボクこれでも女の子なんですよ!?もう少しやさしくしてほしいんですけど!助けて下さい!お願いします!」
「………チッ……好きにしろ」
「よし!ミツキ氏、よろしくお願いします!」
な、泣いて縋っていたと思ったらけろりとこちらに戻られました。
……中々個性的な方ですね。
「…………ミツキ」
「はい、レンさん」
「少しリアルで呼ばれた。10分程度ログアウトする」
「はい、わかりました。お待ちしてますね」
レンさんはログアウトされました。
戻られるまでお待ちしましょう。
「………ミツキ氏、少しお話ししませんか?」
「はい、大丈夫ですよ」
ミカゲさんが、1人分空けて隣に体育座りします。
「………レン氏とプレイしていて、大丈夫です?」
?どういう意味でしょう。
「ミツキ氏、あまりSNSとかみない方です?」
「あ、全然です」
「んー、あーそうですよね。………あんまり、レン氏の評判が良くないのは、ご存じです?」
「………いえ、知りませんね」
「レン氏、良くも悪くもヘイトを集めてて」
ぽつりぽつりとミカゲさんがお話しするのを、そのまま静かに聞きます。
「その荒々しいプレイスタイルと言動で近寄りがたいのに、前回のイベントでちょっと横取りみたいなラスアタもしてて、レン氏結構色々言われてるみたいで。まぁ一部の人は事故みたいなもんだからって言っているけど、あまりプレイヤーからよく思われていないんですわ」
「…………」
「だからイベント前にミツキ氏がレン氏と一緒にいたことで、ミツキ氏もちょっと注目を集めてるんですよ」
「えっ」
「なので実はミツキ氏の事少しだけ知っていました。いいように使われてるんじゃないのかとか、脅されてるんじゃないのかとか言われてたみたいですけど」
「いえ、そんなこと一切無いですけど……」
むしろ危ないところを助けて頂いたわたしにとっての命の恩人ですね。
面倒みのいいお兄さん、って思っていました。
「だからレン氏と一緒にいると、今後も絡まれる事あるかもしれないですけど、ミツキ氏的にはその辺り大丈夫なんです?」
「…………わたしは、」
「ミツキ氏結構話した感じ普通の女の子って感じですし、ゲームも初心者って感じがします」
「確かにゲームは初心者ですね……」
まあでもわたしは、
「レンさんがわたしに害をなさないなら、構いませんね」
なるべく人に迷惑かけないようにプレイしようとは思いますけど。
わたしを利用する得があるかわかりませんし。
「それにわたし、わかったことがあるんです」
「?」
「他のプレイヤーとプレイするの、ちょっと苦手かもしれないです」
今回のイベントでちょっと実感しました。
知らない人に自分のプレイ見られるの、ちょっと嫌です。
「なので普段はソロでプレイしてます。レンさんもソロだからか、適度な距離感で細かく踏み込んでこないので有り難いなって思っていました」
「ふむふむ」
「なのでこれからもレンさんとの関係は変わりませんね。頼って貰えたら嬉しいですし、助けてもらえたら嬉しいです」
わたしの話を聞いたミカゲさんは、目を丸くしたあとフッと笑います。
「なるほどなるほど。ミツキ氏、中々図太い感じですな」
「………わたしそんなにチョロそうに見えます?」
「かなり見えますよ」
「なんですと………」
「………そう言う所、レン氏も気に入ったんですなぁ」
ミカゲさんがぽつりと呟いた最後の言葉はよく聞こえませんでした。
首をかしげると、ミカゲさんはニヤリと笑いました。
「ボクもミツキ氏のこと気になりました。なのでボクもミツキ氏にちょっとアピールさせて貰いますね」
「へ?」
「改めまして、ボクはミカゲ。メインは暗殺者、サブは錬金術師です。どうぞボクとも仲良くして頂きたいですわ。ポーション類の瓶もご用意しますぞー?」
な、なんと。
ミカゲさんは錬金術師なのですか!
ポーション類の瓶………て、定期的に対価を支払えばご用意して頂けるんですか???
なんて魅力的なお誘い!
「……いやチョロすぎですわミツキ氏。ボクが悪い人だったらどうするんです?」
「………わたしのこと心配して下さった時点でその辺りは気にしてませんでしたね」
「………さいですか」
「と言うことで、どうぞよろしくお願いします!」
わたしはミカゲさんにフレンド申請をします。
ミカゲさんはニヤリと笑うと、
「こちらこそよろしくお願いしますぞー」
そう言って承認して下さいました。
「瓶のことはイベントが終わったらご相談させて頂きますね」
「了解ですわ。……ミツキ氏はログアウトとか大丈夫です?」
「お昼にはちょっとログアウトしますけど、今は大丈夫です」
「ならボクも少しだけログアウトして良いです?」
「あ、私に構わずログアウトして下さい」
「ありがとうですわ」
ミカゲさんはそう言ってログアウトされました。
わたしはわたしの隣に寝そべっていたシリウスを撫でます。
………SNSって怖いですねぇ。
わたしはわたしの物語を紡いでいくだけですからね。
もしもわたしを利用しようとするのであれば……あれば………泣く泣く距離を置くことにしましょう。
お師匠様の所で引きこもりになれば、誰にも見つからないはずです。
シリウスに林檎を分けながらお二人が戻るのを待ちます。
「悪い、戻った」
「レンさん、おかえりなさい」
「……アイツ、いねえのか」
「少しだけログアウトするって言ってましたよ」
「そうか」
そう言ってレンさんは壁際に背を預けて、片膝立てて座りました。
………なんだかお疲れそうですね。
でもプライベートにまで踏み込むのは違いますからね。
レンさんもそう言う所は聞いてほしくないでしょうから。
「……レンさんは」
「……おう」
「何か食べたい料理とかありますか?」
「………………」
レンさんは目線を逸らして考え込む素振りをします。
…………大分考え込んでますね。
「………悪い、思いつかねえわ。その辺詳しくねえから」
「そうでしたか。……思いついたら、遠慮なく言ってくださいね。簡単なものなら頑張りますから」
「………サンキュ」
「あ、ポーション類は大丈夫ですか?わたし作りますよ」
「まだ余裕があるからいい」
「……そうでしたか」
「おっと戻りました。遅くなりましたな」
「ミカゲさん、おかえりなさい」
「ただいまですー」
ミカゲさんも戻られたので、作戦会議です。
「この先に大きな広間みたいなのがあるんですけど、真ん中に祭壇みたいなのがあるんですよ。そして左右にも道がありましてなー。右の道には入ってみたんですけど、モンスターがわんさかいたんで引き返しました」
「モンスターを倒してなにか供えるんですかね?」
「確証は無いですけどそれが一番怪しいですな」
「ふむむ……レンさんもとりあえず行ってみるで良いですか?」
「ああ」
「じゃあどうしましょう。パーティーはいりますか?」
「お、入れて下さるので?」
「とりあえずダンジョンから出るまでご一緒します?」
「お邪魔しますわー」
‐プレイヤー名 ミカゲ から参加申請が届きました‐
承認っと。
‐プレイヤー名 ミカゲ がパーティーに参加しました‐
「よろしくお願いしますなー」
「はい!よろしくお願いします」
ミカゲさんがパーティーに加わりました!
ひとまず広間とやらを覗いてみることにしましょう!
レンについて色んなお声がありましたので、ちょっと挟ませて頂きました。
これからもこの作品をよろしくお願いします。