星詠みの魔女
ちょっと読みづらいかもしれません。
ご評価、ブクマ登録ありがとうございます!
ログインしました。
暖かな日差しが降り注いでいます。
良い天気そうで良かったです。
顔を洗ってストレッチをして、塩クロワッサンを食べます。
程よい塩味です。とてもふわふわです。
ちょっとしたおかずにステーキも1切れつまみました。
………おかずにステーキって贅沢ですね。
よし、では図書館へ向かいましょう。
「おはようございますティナさん、お世話になりました」
「おはようミツキさん。この宿が気に入ったらまた泊まりに来てね」
「はい、その時はぜひ!」
「よし!じゃあ気を付けていってらっしゃいね!」
「はい、いってきます!」
なんだかんだで2週間ほどお世話になりましたからね。
ティナさんにお礼を告げて宿の外へ出ます。
これからはキャンプセットを有効活用して行きたい所ですね。
宿の外はまだ人影はまばらですね。プレイヤーは少なめです。
ゆっくりと足を進めて図書館に着きました。
時刻は8時半くらいなのですが、図書館は開いてるでしょうか。
扉を押すと開きました。
開いてましたね。
カウンターにはミーアさんがいらっしゃいます。
近寄って控えめな声で話しかけます。
「おはようございますミーアさん」
「おはようにゃあ。ミツキさんは図書館利用するにゃ?」
「あ、いえ今回はヴァイスさんに御用がありまして」
ヴァイスさんの名前を告げるとミーアさんはピタリと動きを止めました。
お、おや?
「ミーアさん?」
「ハッびっくりしただけにゃ。気にしないで欲しいにゃ」
「は、はぁ……」
「まさかミツキさんがヴァイス司書長の名前知ってるとは思わなかったにゃ」
「司書長さんだったのですか……」
「あの人は滅多に名乗らないにゃ。だから少なくとも名前を知る人は顔見知りということにゃ。渡り人にもほぼほぼ知られてないからにゃあ」
「そうだったのですか……」
「それじゃあ呼ぶからそこのソファにかけて待っててくださいにゃあ」
ミーアさんはそう言ってカウンターにあった紫のベルをゆらします。
…………何も鳴りませんね?
「これは特殊なベルにゃ。図書館内で人を呼ぶときに使うやつにゃ」
目を瞬いてベルをじっと見つめていたら、ミーアさんが苦笑しながら教えてくださいました。
「………君か」
ソファに座ってお待ちしていると、ヴァイスさんが本棚の奥から歩いてきました。
「おはようございます、ヴァイスさん」
「……おはよう」
「お時間頂けましたら、レベル10になりましたのでお話をお伺いしたいのですが………」
「……いいだろう。ミーア、相談室にいるから何かあったら声をかけてくれ」
「はいですにゃあ」
「ついてくるといい」
そう言って踵を返したヴァイスさんに、ミーアさんに軽く頭を下げて慌てて追いかけます。
後をついていく間は無言です。中々に気まずいです…
「入るといい」
そして相談室というプレートがかけられて部屋の前に着くと、ドアを開けて中に入るように促されました。
「し、失礼します」
恐る恐るお邪魔すると、そこは至ってシンプルなソファと机が置かれた部屋でした。
そこでヴァイスさんは備え付けの簡易キッチンで紅茶を淹れてくださいました。
「ありがとうございます…」
「……君に声を掛けたのは、転職先にも出たと思うが特殊ジョブに関係する」
「わたしにはまだは読めませんでしたが、特殊なウィザードへの道がある、と言うことですよね」
「そうだ。先に謝っておくが、図書館で君をみたときに君のステータスも視てしまった。すまない」
「あ、いえお気になさらず」
律儀な方ですね。
他人のステータスを覗き見ることは、あまり良くないとSNSで他のプレイヤーさんが書き込んでたのは見たことがあります。
プレイヤーからみたら、【鑑定】するとわたしの頭の上には名前とレベルが表示されています。任意でジョブも表示するか選べますが、わたしは表示させないようにしています。
ですが【看破】というスキルをお持ちだと、隠しているジョブやステータスまで覗けるようになってしまうそうなのです。
対抗策として【隠蔽】というスキルがあります。
頂いたポンチョについてましたね。
部屋の中以外は付けておくことにしましょう。少し前に調べてそういうのあるんだなって思っていたところなのです。
「これから君に伝えることは、機密事項でもある。話を聞くなら他言無用で魔法契約もするが……ここまで聞いて、聞く気はあるか?」
き、機密事項………
話が壮大になってきました。
ですがここまで来て聞かないのは勿体無いです。
聞いてもよいのなら、ぜひ聞かせていただきたいです。
「……はい、お聞かせ頂ければ」
「わかった。契約を結ぼう。そして話の前にこれを読んでくれ」
契約書を読んでサインをすると、その契約書はわたしとヴァイスさんの身体に光となって吸い込まれました。
契約書の内容は要約すると、他言無用のため話そうとすると話せなくなるように縛る、というものでしたね。
そしてヴァイスさんは何もない空間に手を入れて1冊の本を取り出しました。
「ただの禁書だ。気にするな」
気にしますよ!禁書ってなんですか!
わたしは恐る恐る本を受け取ります。
表紙には『星詠みの一族に関する手記』、と書かれていますね。
指先が震えそうですが、丁寧にページをめくることにします。
『星詠みの一族』
かつて、神々の座に近いと言われる霊峰マグナ・パラディススと呼ばれる場所に、星詠みの一族と呼ばれる集団が住んでいた。
彼らは獅子や牡牛などの動物たち、無限に湧き出る水瓶などを呼び出す力を持ち、星を詠むことで未来を占い、生活をしていた。
一族の中でも高い魔力を持つ乙女は〈星詠みの巫女〉として一族を統率し、星を詠み得た事象を神へと捧げ、災害などを事前に防ぐことを生業としていた。
一族は霊峰を降りることはなく、一生を霊峰で終えるため自分たち以外に国があり人が住むことを知ることはない。
そんな中、霊峰に1人の人間が足を踏み入れた。
人間は当時栄えていた帝国の将であったが、病の家族の病気平癒を神に願うために霊峰へと足を踏み入れた。
霊峰は神の山。人間の立ち入りを許さず、凶悪なモンスターも出現することから、いつしか立ち入りは禁じられるようになった。帝国の将であった人間は霊峰の入り口で三日三晩どうか家族のために祈らせてくれと願い奉った。神の気まぐれで立ち入りは許され、頂上までたどり着けば願いを叶えてやろうという言葉に人間は覚悟を決めて足を踏み入れた。
その人間は迷い、疲弊し、幾度も傷を負った。それでも諦めることなく山の頂上を目指していたところ、山菜取りに出ていた星詠みの一族の者と出会った。
一族の者は傷だらけの人間を見て、一族が住まう場所へと連れ帰った。
自分達以外の人間を初めてみた一族の者は警戒したが、今にも死にそうな人間を放ってはおけず、人間を癒やした。
人間はお礼にと、自分が知る機密以外の、当たり前の生活内容や流行りのものを一族に伝えた。
元々好奇心旺盛な星詠みの一族は、人間の話を興味津々にきいていたが、人間が病の家族が待っているから神々に祈りたい。このお礼は必ずする、と言って来た道を戻ろうとするので、巫女が作った霊薬を持たせた。
人間は何度も地面に頭を打ち付けるほど礼を伝え、絶対に他言しないと契約を結び、一族が呼び出した空飛ぶ牡羊に乗って山の麓へ送り返された。
人間が持ってきた霊薬によって家族の病は治り、人間は泣いて喜んだ。
しかしそれを皇帝が目を付けて、病を治すほどの薬をどこで手に入れたのかを尋問した。
人間は契約もあるが、病を治してもらったという絶大な恩があるため何をされても口を割らなかった。
家族を人質にされ、人間は苦渋の決断を迫られる。
しかし家族は、恩を仇で返すのはいけないと、人間の目の前で自害した。
人間は怒り狂い、その場で首を落とされた。
人間が霊峰へと踏み入るのをみたという将の声で、皇帝は霊峰へと挙兵した。
武力と数を用いて歩みを進めた帝国兵たちは、星詠みの一族が住まう場所へと到達する。
巫女が何用か問うと、皇帝は病を治す薬について何か知らないかと問い返す。
巫女は知っていると答える。そしてこの間霊峰に足を踏み入れた人間はどうしたと問う。
皇帝は薬の入手場所を知らないというから殺したと言う。
家族諸共死んだと。
皇帝は巫女の発言で薬の在り処はここだと確信を得た。
死にたくなかったら薬を寄越せ、そして永劫帝国に仕えろと宣う皇帝に、星詠みの一族は怒りを顕にした。
天が割れ、炎を纏った巨石が降り注ぐ。
動物たちは帝国兵に襲いかかり、各地で爆発が起きる。
見たこともない黒い穴に魔法や人が吸い込まれるのをみた帝国兵は、化物共と叫び武力を用いて時間をかけて制圧した。
星詠みの一族が襲われていることに気付いた神々は、慌てて霊峰から帝国兵を追い出し、帝国を半壊させた。
神々はそう頻繁に地上に関われない。故に星詠みの一族の力を借りて世界の均衡を保っていたからだ。
神々は星詠みの巫女に声をかけるが、巫女は事切れる寸前だった。
巫女は星詠みの一族と他の人間たちに、そちらが手を出さなければこちらから手を出すことはないと周知してほしいと祈り、その命を終えた。
神々は星詠みの巫女の意図を酌み、各国へ神託を授けた。
必ず子々孫々へと語り継ぐように、と。
生き残った星詠みの一族たちは、各地へ散らばったそうだ。
今となっては星詠みの一族がいるのかどうかは定かではない。
我々は忘れてはならない。
先祖が犯した罪を。
ーーーー帝国 第32代皇帝 アレクサンダー=フェティリシア2世
「これは………」
「かつて、この世界で起きたことだ。数百年前にかの国は滅びたが」
「大きな力を持つものは、利用しようとするか、虐げられるか………」
この手のテーマは史実やゲームなどでたくさん取り上げられてきましたね。
その力を利用しようとする組織、利用されないようにひっそりと隠れ住んだりとあまり自由ではない気がします。
「………星詠みの一族の末裔はいる」
「!」
「星詠みの一族が扱うのは〈天体魔法〉と呼ばれるものだ。その力は汎用性が高く大きな力を持つ。故に相互不可侵の契約を結び、戦争には手を貸さないが、大いなる共通の敵とは共に戦っている」
「大いなる、共通の敵………」
天体魔法………
わたしの考えが間違いでなければ、そしてあの手記を読めば、それは強大な魔法であることはわかります。
「星詠みの一族は各国に所属しない特殊な立ち位置だ。だが依頼という形で各国は星詠みの末裔である魔女とやり取りをしている」
「……や、厄介者扱いとかされてないですよね?」
「むしろ各国から見れば喉から手が出るほど欲しい存在だろうな。彼女は天体魔法の使い手だが、凄腕の宝石職人でもあるからな」
ここまで話を聞けば、さすがにわたしでもわかります。
おそらく?????ウィザードと書かれた転職先は、この天体魔法の使い手になれるのでしょう。
何故なのかはわかりませんが、ヴァイスさんはこの手記を読ませることで、色々な人達から利用されるかもしれないっていう注意喚起をしてくれたのでしょう。
「ここまで言えば察しはついているだろうが、天体魔法を扱うウィザードになる気はあるか」
「……………」
「天体魔法を扱うウィザードになれば、余程の愚か者か馬鹿でなければ君を狙うものはいないだろう。だがその力を借りたいと、あの手この手で君に近付くものは現れるだろう。………それでも君はこの転職先を選ぶか?」
それでもわたしは、星に関係あるものならば、選びたいと思います。
それでたとえこの先冒険が大変になるのだとしても、星に関係あることならば乗り越えてみせる。星に関してだけは諦めたくないから。
「はい、選びます」
「………そうか。〈星の視線〉を持っているから、まあ断らないとは思っていたが」
「〈星の視線〉の事、ご存知なのですか?」
「詳しくは知らない。が、星に普通以上に知識と興味を持つ者が獲得する称号だとは聞いている」
ヴァイスさんは先程の手記をまた黒い穴にしまいながら、紅茶を口に含みます。
わたしも喉がいつの間にかカラカラだったので、紅茶を頂きます。
「…………君、キャンプや料理は得意か」
「へ、………人並みにはやれますね」
「そうか………天体に関する知識はあるか」
「母がその手の仕事をしていますし、わたしも勉強してきたので、人並み以上にはあると思います」
「ふむ……」
なんか急に面接みたいな質問が始まりました。
とりあえず素直に答えましたが。
「動物も苦手ではないな」
「はい」
「戦いは得意か」
「得意かと言われたら、わからないですね……避けるのはちょっとだけ得意ですが」
「………まぁいいだろう。今日は時間に余裕はあるか」
「はい。あ、でもお昼には一度自分の世界に戻ります」
「わかった」
ヴァイスさんはまた黒い穴に手を入れて、今度は1通の手紙を取り出しました。
「これを」
「お手紙、ですよね?」
「星詠みの魔女への紹介状だ。準備が出来ているなら、魔女が住む森まで送る」
「へっ!?」
「天体魔法の使い手になるには、星詠みの魔女の試練を受けなければならないからな」
試練!
試練を突破しなければ転職出来ない奴ですよね………
お昼まであと3時間くらいありますし、とりあえずその魔女さんが住む森へと向かいましょう。
「えと、ヴァイスさん」
「なんだ」
「ヴァイスさんは、星詠みの一族とご関係があるんですよね?」
「…………まぁ、そうだな」
「渡り人であるわたしがその魔法を覚えるのは、よろしいのでしょうか」
「構わないだろう。彼女も弟子を欲しがっていた。……それにリゼット女史の弟子でもある君なら、彼女も無下には出来ないだろうからな。多数の人間が覚えるのは推奨しないが、君は天体魔法を悪用する人物には見えない」
「し、しません!絶対に!」
必死に訴えるわたしに、ヴァイスさんは微かに笑いました。
冷たそうですが、ほんのり優しさがある方ですね。
「では彼女の住む森に送ろう。図書館の外で待っていてくれ」
「はい、お時間頂きありがとうございました」
ミツキは深くお辞儀をして、相談室を後にした。
その背をヴァイスは見つめていた。
礼儀正しく素直な少女だ。
だが、あの話を読み聞いた上で、天体魔法使いになることを選ぶと言ったときの彼女の目は、強い決意に満ちていた。
彼女なら大丈夫だろう。
真面目そうで、名持ちの住人とも縁を繋いでいる。
翠玉薬師の弟子でもあるし、無茶なことはさせないだろう。
いい加減師匠からのお使いのような依頼から解放されたいんだこちらは。
師匠の弟子になるのであれば手を貸すとしよう。
生贄に差し出すようで悪いがね。
「報せだけ飛ばしておこう」
ヴァイスは魔法で鳥を生み出し、鳥に言葉を吹き込んで魔女の元へ飛ばす。
そしてミツキを送るために外へ足を運ぶのであった。
次回こそ転職します( ˘ω˘)
これからもこの作品をよろしくお願いします!
次回は4/11に投稿いたします。




