レダン帝国防衛戦①
ご覧いただきありがとうございます!
食事のバフについては、特殊なバフ(蘇生、反射、ダメージ無効など)を除いたものについては制限時間があります。
特殊なバフは発動しなければ、24時間で消失するようになっています。
軽く食事をして、ログインしました。
ちょうど太陽が雲に沈んでいくのが見えました。雲の上に浮かぶ浮島なので、この光景が見られました。
「綺麗ですなぁ」
「美しいわね」
「心が洗われるっす」
沈む太陽を見つめていると、背後から声が聞こえました。
ログインしてきたみんなが、同じように雲間に沈む太陽を見つめます。
みんな揃っているようなので、そろそろ向かいましょう。
そうしてみんなと拠点へと移動すると、慌ただしくプレイヤーたちが目の前を行き交いました。
離れた場所ではバルムンクのメンバーがプレイヤーをまとめて移動するのが見えました。
「あっ、ステラアークの皆さん!」
「ギンさん」
「ども。帝国軍はもう軍を展開しているから、それに合わせて俺たちも移動を開始した。アヴァロンのアーサーたちが向こうにいるから、声かけてきてくれ」
「ありがとうございます」
そう声をかけてくれたギンさんは、テイマーと思わしいプレイヤーを連れて来た道を駆けていきました。
わたしも何かしなければ……!急いで移動すると、アデラさん、ジークさん、カメリアさんが完全装備で地図を前に会話をしていました。そしてわたしたちに気づくと、ウインドウを閉じました。
「ちょうど良いタイミングだ。連絡しようとしていたところだよ」
「いろいろとしてくださったようで、ありがとうございます!」
「これが我々の仕事ですから」
「そろそろ我らも移動するかと話し合っていた所です」
「そうですね。あ、カメリアさんこちらを」
カメリアさんに星のポーションセットを渡すと、薄紅の瞳を瞬かせました。
そして受け取ったポーションを眺めて、首を傾げます。
「これは?」
「わたし特製ポーションですね。もしお使いの時はぜひ感想をお聞かせください」
「……ふふ、承知したよ」
カメリアさんは少し思案するような表情を浮かべましたが、アイテムボックスにしまいました。
よし、アーサーさんには渡してありますので、アデラさんにも預けて移動することにしましょう。
「……え、俺に?」
「アデラさんの魔眼の力、頼りにしていますからね」
「責任重大だな……ありがたく」
「みんなは保管庫から好きに持っていってもらって」
「わーい!ボクの爆発薬も保管庫に入れてありますからね!」
クランメンバーを振り返ると、みんな頷きました。
ミカゲさんのアイテムは強力ですからね、いただくとしましょう。
「今日を楽しみにしていましたよ」
「アーサーさんが言うと少し怖いですね……」
「おや、悲しい」
「今の笑顔に戦闘狂が滲み出ていましたぞー」
「……少々高揚しているようです。皆さんの戦いが楽しみなことはもちろん、加減なく戦えるのは気分がいいですから」
アーサーさんのレベル、80まで上がっていますね。
カメリアさんも80まで上げていますし、レンさんも80なんですよね……どれだけ戦闘をしたのでしょうか。
ステラアークの面々も75まで上げてますし、追いつかれてしまいます。
「移動の前にマダラメさんたち料理人クランが作った軽食を受け取ってください。攻撃や魔攻などのステータスへのバフがつく料理を作っていました」
「わ、すごいですね。行ってみます」
「私たちアヴァロンはアデラと共に移動しますので、我らを目印に移動をお願いしますね」
アーサーさんたちと別れて、世界を旅する料理人、マダラメさんの元へ向かいます。
わ、いい匂いがしますね!マダラメさんのところのクランメンバーと思われるプレイヤーたちが忙しなく動き、軽食を受け取るプレイヤーで溢れています。
「マダラメさん、どうもです」
「ん、ステラアークのみなさんか。どれでも好きに持っていってください」
「好きに!?」
「食材は参加プレイヤーが依頼で集めてきたもので、それらを使って料理するとポイントも稼げるようです。なのでこれは無償で提供しています」
「無償」
「料理を作るのが好きなメンバーの集まりですから。作れるだけで満足していますし、食材を使い切りたいので……」
そ、そうなのですか……マダラメさんがそう言うのであれば、いただこうと思います。目の前のミニサンドイッチを手に取ります。
世界サンドイッチ
マダラメ作。説明文はメンバーによって作成された。
ネーミングセンスを疑いましたが味は文句なしです。
マダラメ特製オーロラソースと野菜の相性が抜群で、じっくりと蒸し上げたチキンはほんのりとレモンの風味がするサンドイッチ。
魔攻+30 敏捷+20 継続時間:60分
「料理人すっごいですね!?」
「うわすげ」
「あら、美味しいわ」
「素晴らしいね」
そもそも説明文も手を加えられるの初めて知りました。料理人ジョブが作る料理はすごいですね……
このオーロラソース、フルーティーな感じがします。美味しい……!
「イベントじゃなくても食べにきてくださいね」
「お店とか出してらっしゃいますか??」
「普段は王都ミゼリアで経営してますよ。たまにダンジョン付近でも出店していますが」
「その時は食べにいきますね……」
「お待ちしておりますよ」
料理を作りに下がったマダラメさんにお礼を伝えて、店前から離れます。料理人ってすごいですね……!
「一つのことを極めるプレイヤーは尊敬するわ」
「唯一無二よね」
兄と母の言葉に頷きます。プロの料理を味わったので、そろそろ戦場へ移動しましょう。
……辺りを見回した際にマモン商会のアーロさんと目が合いましたが、会釈をして目を逸らしました。
「えっ、今の挨拶してこっち来てくれる流れでしたよね?」
「アーロ氏は胡散臭いが服着たような人ですからな……買うものありませんし」
「そうね……買うものはないわね」
「せめて挨拶はさせてください……もう少ししたら我らも戦場へ向かいますけどね」
肩を落としたアーロさんがトボトボと歩いてきました。なんか身構えてしまうんですよね……
「今日はよろしくお願いしますよ。楽しみにしています」
「わたしも皆さんがどのように戦うのか楽しみにしています」
「他の人らのような派手さはありませんが、足を引っ張らない程度には戦いますよ。稼げそうですからね……経験値も」
経験値以外にも稼いでそうです……なるべく離れたところで戦いたいですね。
お互いに笑みを浮かべたところ、店先に立つプレイヤーがアーロさんを呼びました。
「……では、後ほど戦場で」
「はい、また」
「……その背後の怖い人たちがいない時に会いたいですねぇ」
アーロさんは苦笑して店へと戻りました。
はて……振り返ると、いつもの表情を浮かべたみんなが立っているだけでした。
目が合ったジアちゃんはにこりと笑みを浮かべ、ソウくんが首を横に振りました。その反応はどんな……
「と、とりあえず戦場へ移動しましょうか」
わたしの言葉に頷いたみんなと共に、フレンド欄からアーサーさんを選択してフレンドの付近へ転移するを選びました。
地面を踏み締めた感覚に目を開けると、どこかピリついたような雰囲気を感じ取りました。
帝都を背に、一段高い高台から見える夕焼けに染まる砂漠と乾いた風、眼前に陣を敷く帝国軍、左右には様々な装備を身に纏うプレイヤーの群れ。
「……壮観でしょう」
「はい」
隣に立ったアーサーさんからの言葉に、素直に頷きます。太陽が地平線に向かうのがよく見えます。
「帝都の周辺は高低差がありますから。ミューニション・スラッガーを始めとした遠距離プレイヤーたちがあちらの高台にいます。彼らが矢の雨や銃弾の雨を降らせてくれます」
「怖いけど頼もしいですね」
「星を降らせるミツキさんには敵いませんよ」
「えっ……」
「フフ、冗談です」
アーサーさんは小さく笑いました。
むむ……まあ星を降らせるのはその通りですが。
視線を眼下に戻すと、きっちりと隊列を組んで太陽の方向を見つめる帝国軍の先頭に、数人離れた場所に立っている人影が見えます。おそらく、帝王様だと思います。
この緊張感の中で水は差せませんし、話しかける勇気もありません。カフェでお話できましたし、様子を窺いつつ戦闘に臨むとしましょう。
「左翼には彼岸花、右翼にはバルムンクがプレイヤーを率いています。プレイヤーへの鼓舞は彼らに任せました。聖女のクランは二手に分かれ、ヒーラーを率いてもらいました。アヴァロンは円卓メンバーが数人連れて遊撃ですね」
「およ、アーサー氏は?」
「私はアデラを連れて戦場を駆け巡りますよ。悪魔や敵性モンスターの情報は有用ですからね」
「流石に俺だけでは戦力が心許ないからな。アーサーの近くで視ることにした。弱ったモンスターならば見やすいのもあるが」
「魔眼検証班には円卓メンバーをつけます。得た情報はアサシネイトのメンバーがメッセンジャーとして動いてくれるそうです。ズーロジカル・ガーデンの皆さんも召喚獣という足があるからとサポートに回るそうです」
「……わたし何もできませんでしたね」
「むしろ我々にやらせてもらいたいことですね。受注者であるミツキさんに何かある方が恐ろしいですから。とりあえず死なないように気をつけてください」
「頑張ります……」
軽く頬を叩いて気合いを入れます。
そして近くに立っていたステラアークのメンバーを振り返ります。
「わたし達は遊撃です。レンさんは前線ですよね」
「あァ」
「……たくさん壊してきてくださいね」
自分でもこの激励の言葉はどうかと思いますが、わたしの言葉を聞いたレンさんは微かに笑みを浮かべました。レンさんは破壊の力をお持ちなので……!
レンさんは背を向けると、崖下へ飛び降りました。
戦場へ向かうにはワイルドな降り方です。
「ミカゲさんも前線に?」
「ボクのアイテムは範囲が広いですからねぇ……大鎌的にも広い場所で戦いたいので少し離れた場所にいると思いますわ」
「わかりました」
「ミツキ氏の戦闘を近くで見たいのは山々なんですけどね!そうも言ってられませんし」
あの威力ですからね……ミカゲさんもフィールド壊せそうですから。近くのプレイヤーには避けてもらわなければ。
わたしもミカゲさんの戦闘は気になりますけども、周囲をみる余裕はないかもです。
「ジアちゃんとソウくんは離れたところから?」
「リーフを連れて突っ込むわ」
「えっ俺も?」
「僕は遠距離近距離どちらもできるので、適当なところで戦います。皆さん強いので、援護は必要なさそうですから」
「みんな強いからね……」
わたしより戦闘に慣れていると思います。きっと心配いらないでしょう。
むしろ自分の心配をしなければ……マレフィックさんについていけるか問題があります。
「お兄ちゃんはトニトルスがいるから、移動も問題ないね。お母さんはお父さんがいるし、むしろ相手するモンスターが大変だ」
「別に俺一人でも問題ないけどな??まぁ喚ぶけど」
「コスモス様の使徒として働くわ〜」
「プレイヤーを巻き込まないように気をつけるよ」
「本当に……鉄球怖いからね……」
わたしはラクリマとアストラエアさん、マレフィックさんを召喚するとして、サポートとしてオフィウクスさん、アリアを喚ぼうかなと思います。不意の一撃を防げるあの技が助かりますからね。
かんむり座のバフも欲しいですし……
「そろそろプレイヤーの群れに混ざりに行くかぁ。レンくんはもう行ったし」
「そうですなー。ミツキ氏、頑張りましょ!」
「ミツキの魔法、楽しみにしているわ」
「っす。俺も頑張ります」
「では、また」
兄の言葉にミカゲさんが続き、ジアちゃんがリーフくんを連れて降りて行きました。ソウくんも銃剣を手に別の方向へと歩いて行きました。太陽は赤く染まり、地平線を照らしています。
「じゃあ私たちも行くわね」
「もし近くにいたら援護するよ」
「その時はわたしも援護するからね」
両親が崖下へ向かうのを見送ります。
わたしはとりあえずはこの戦場が見渡せる高台にいようと思います。ラクリマ、アストラエアさん、オフィウクスさん、アリアを喚び出して、太陽を見つめます。ふむ……そろそろマレフィックさんを喚んでも良さそうです。
「【15:悪魔】」
手のひらの上で悪魔が描かれたカードが淡い光を放って消えました。そして背後から翼を開いた音が聞こえます。
『約束の時だね』
「頼りにさせてもらいます。ということでひとまず腹ごしらえにこちらはどうですか?」
アイテムボックスからクロックムッシュを乗せた皿を取り出して見せると、マレフィックさんは皿とわたしを交互に見て笑いました。
『いつも通りで面白いね』
「褒めてます……?」
『褒めてる褒めてる。じゃあ貰おうかな』
「この戦いが終わったら、前回とは別メニューでわたしなりのフルコースを作りますね」
ラクリマとアストラエアさんにもクロックムッシュを差し出し、オフィウクスさんに視線を向けたら首を横に振られました。
空になった皿をしまって、太陽のプラムのタルトを乗せた皿を取り出しマレフィックさんに向けて差し出します。
一瞬動きを止めて、タルトをジッと見つめてからタルトを口に運ぶとマレフィックさんの瞳が輝きました。
『……美味い』
「美味しいですよね」
『ヤバいものほど美味いんだよなぁ……』
眉間にシワを寄せながら口を動かすマレフィックさんの様子をみて、思わず笑みがこぼれます。
マレフィックさんが食べ終えたのを見計らい、視線を太陽の方向へと戻します。
……この時間帯にはいい思い出がありませんからね。
「マレフィックさん、以前遭遇したあの異形のモンスターたちは出現すると思いますか」
『……んー、しないと思うよ』
「なら、良いのですが……」
『帝都には《星》の気配があって、この場所にも国境にもヤバい人間いるし。大人しくしてると思うよ』
それならば、安心です。
この戦闘中に出現されたらパニックになりそうです。
「あ、マレフィックさん。このチョーカー、どうでしょう?」
ジアちゃん特製チョーカーをマレフィックさんに見せると、マレフィックさんはジッとチョーカーを見つめます。
『首輪にしたんだ』
「チョーカーですね!?」
『冗談だよ……いいよ、着けさせてあげる』
空中で浮いていたマレフィックさんが、わたしと同じ目線までおりてきました。
そして上着の襟元を引っ張って、首元を晒します。
おっかなびっくりと、若干震えながらマレフィックさんの首元にチョーカーを着けます。
ふぅ!やりとげました!褐色の肌にシルバーチェーンとアスタリスクが映えますね!
軽く頷いて視線を上げると、血のように紅い瞳と視線がぶつかりました。
「ぴっ」
『……このオレが首元晒したのに普段通りでムカつくね』
「あいたっ!?」
唐突にデコピンされました。地味に痛いですが!?
額を抑えてアストラエアさんの背に隠れます。
『ミツキには伝わらないと思うよ……』
『別にいいけど』
『すごい気にしてるね』
『してないよ』
ラクリマとマレフィックさんがヒソヒソと話し始めました。なんなんでしょう……何故デコピンされたのか……
額をさすっていると、アストラエアさんが顔をのぞき込んできました。
「ホラ、見せてみな。……なんともないね」
「一応手加減されたのだと……」
「奴の考えることもわからなくはないけどねぇ。永く生きた悪魔だそうだが、まだまだ子供っぽい所もあるね」
「こども」
「はは、まあ誰だって急所を晒すのは勇気がいる。親しい間柄でもね」
アストラエアさんは笑ってわたしの髪を少し乱暴に撫で回しました。それを直しつつ、アストラエアさんの言葉の意味を考えます。
……急所を晒してくれるくらいには、胃袋を掴めたということでしょうか。
「……そろそろだぞ。切り替えろ」
体に巻き付いてきたアリアを撫でつつ、考え込んでいると、オフィウクスさんに声をかけられ顔を前に向けます。
真っ赤に燃える太陽がゆっくりと地平線に沈み、その光を遮るかのように黒いモヤが流れ集まり、やがて重厚な黒い大きな扉を形作りました。
離れた場所に立って同じように軍とプレイヤーの動きを見下ろしていたアーサーさんが白い剣を片手にこちらへと顔を向けました。
それに頷き返して、わたしも杖を取り出して握り締めます。
眼下のプレイヤーたちも、各々武器を握り締めて静かになりました。皆が、その時を待ちます。
すると、剣を掲げた帝王様が、一歩前へと進みました。
「今こそ己の武勇を示せ!躊躇いは大切な者へ牙を剥く!恐れず進め!レダン帝国のために!」
「「「レダン帝国のために!」」」
「我らには天を翔ける翼の加護がある!……俺が道を切り開くッ!俺に続けッ!」
「「「うおおおおおおッ!」」」
帝王様が声を上げると、帝国軍から雄叫びが上がりました。同時に扉が開き、扉の向こう側には赤い空と黒い大地が広がるのが見えました。次の瞬間には、なだれ込むように多くのモンスターが飛び出してきました。
「俺達も行くぞォ!」
「殲滅ってヤツだ!」
左翼と右翼から、バルムンクのジークさんと彼岸花の朱蓮さんの声が響くと、プレイヤーたちも声を上げてモンスターの群れへ向かって飛び出して行きました。
「アデラ」
「さすがに遠すぎて見えん」
「近付くしかないか……」
確かに、扉は遠く離れた場所にあります。でもその大きさがよくわかります。とにかく大きいです。
ふむ……あっ!
「〈レチクル座〉」
目の前に照準器の形をしたレティクルが出現します。
サジタリウスさんが拡大できると言っていましたからね、少し覗いてみます。
「……!アデラさん!飛び降りる前にアデラさんも覗いてみてください!」
レティクルを拡大するように指を動かしてみると、トンデモ倍率で拡大できました。扉の様子がよく見えます。
駆け寄ってきたアデラさんにも見えるようレティクルを移動させると、アデラさんの瞳が淡く光りました。
「……ふむ、扉近くに立つ悪魔のようなモンスターは門番だろうか。レベルが88と高めだ。そして何やら名前がついている」
「そこまで見えるんですね!?」
「……彼のような角と翼があるからな」
アデラさんの視線が、空中で笑みを浮かべるマレフィックさんへと移動しました。
わたしはさすがに名前もレベルも見えませんけどね!
「とりあえず試しに、扉の周囲に魔法を放ってみますか。扉に攻撃できるか確認したいですよね」
「「えっ」」
「【ブースト】【ハイブースト】【流星雨】!」
扉が壊せたらモンスターの流出も止まりますもんね。
レティクルを扉周辺に照準を合わせて、杖を向けます。
扉の上空に一瞬魔法陣が出現し、流星が雨のように扉とその周辺へと流れ落ちました。
『まず最初に扉への攻撃するの面白すぎるんだけど。戦いを終わらせる気?』
「そう簡単に壊せなさそうな気配がしますが……壊せるんですか?」
『まあ、ミツキじゃまだ壊せないかな。一応アレは悪魔王サマが繋げた扉だからね』
「……ふむ、壊せませんでしたね」
マレフィックさんの言う通り、扉は健在でした。
駄目でした。とアデラさんとアーサーさんを振り返ると、二人とも何とも言えない表情を浮かべていました。
「……なるほど、規格外ですね」
「ミツキさん、ヤバいですね」
「えっ」
「褒めてますよ」
「ミツキさんの使う技について根掘り葉掘り聞きたいくらいです」
「……まあ、そろそろ近付くとしましょう。ではまた」
「うおおお!?」
アーサーさんがアデラさんを担いで崖下へ飛び降りました。ダイナミックな飛び降り方ですね……
と、見送った瞬間、わたしの体が褐色の腕に持ち上げられました。
「へ」
『よし、こっちも飛ぶよ』
「うえええええええっ!?」
『もー!皆はラクリマがつれてくからー!』
呆れたようなラクリマの言葉を背に、わたしは襲いくる重力に体を小さく丸めるように縮こまりました。
一声!一声かけてくださいよ!
戦闘で話数を使うのも、と思い文字を詰め込んでおります。今後の戦闘は話数を抑えて文字数詰め込んでいるので、読みづらかったら申し訳ございません!
ミツキの物語をよろしくお願いします!




