イベントに向けて②
ご覧いただきありがとうございます!
活動報告も更新しております!2巻についてのお知らせをさせていただきました。よろしければご覧ください。
あ、ソウくんからメッセージが返ってきました。
今ちょうどログインしたタイミングで、ホームにいるようです。
早めに渡しておきたいので、ホームへと移動します。
「おはよう、ソウくん」
「おはようございます」
ホームの前に立っていたソウくんに、アイテムボックスから取り出したアクセサリーを手渡します。
ソウくんが、アクセサリーを手に乗せたまま首を傾げました。
「……えっと、これは?」
「お師匠様特製のアクセサリーだね。お師匠様が、クランメンバーにって作ってくれたんだ。性能がすごいんだ……わたしの場合はコレ」
わたしは片手のリングを指差します。
お師匠様がソウくんへとくれたのはピアスでしたね。
……ソウくんが片耳につけているその耳飾り、もしやイヤリングではなくピアスでしたか。お師匠様よく見てらっしゃる。
ちなみにリングの性能はこんな感じです。
何回見ても、二度見するくらいにはすごいリングです。
プレアデス・リング
エトワールによって作られたアクセサリー。
【MP消費半減】【MP+30%】【魔法速度上昇(中)】
魔法速度は文字通り魔法がモンスターに向かう速度が上昇しています。そしてMP消費が半減すると共にMPを増やしてくれる優れものです。とんでもないですよ……
「こ、れは……すごいですね」
「遠距離近距離に合わせて作ってくれているんだけど、ソウくん両方扱うじゃない?大丈夫かな?」
「MPの恩恵の時点でとても助かります。攻撃速度が上がるようです。銃弾の発射速度が上がるのであればこれ以上ないですね」
ウィンドウを操作したソウくんの片耳にピアスが煌めきました。タンザナイトが太陽光を反射して、美しく煌めいています。
お師匠様はどのようなスキルを使って宝石を加工しているのか気になりますね。
いつぞやか見たトンデモダイヤモンド然り、このような小さな宝石に素晴らしいパッシブスキルが追加されているのです。
さすが金紅の異名を持つ方です。
「……お礼の品は何が良いでしょうか」
「うーん……お師匠様、欲しいものは望めば自身で手に入れられそうだから、思いのこもったものであればどんなものでも喜んでくださるんじゃないかな」
以前渡した花も喜んでいただけました。
今度は何を差し入れに持っていきましょうかね。
わたしの言葉にソウくんは難しい顔をして頭を抱えました。
「あっ、引き止めちゃってごめんね」
「いえ、ありがとうございました。考えてみます」
眉間にシワを寄せながら歩いていく後ろ姿を見送ります。贈り物って難しいですもんね……!わかります。
ソウくんとの会話の合間にメッセージがきていたので確認すると、アデラさんからの返信でした。
おや、添付が……マップですね。印がついています。
ほほう?
場所的には帝都レガリアの近くにあるオアシスの場所ですね。向かってみましょう。
寄ったことがないので、レガリアに移動します!
帝都レガリアに移動して、レガリアの門から出ました。乾いた風と、ジリジリとした日差しにフードを深く被ります。
うおお暑いですね……ダメージを受けそうです。
特にモンスターと戦わずに砂漠を進んで、オアシスへとたどり着きました。
そこには多くのプレイヤーと、建設途中の建物やテントが並んでいました。
ふむ、拠点でしょうか……?
料理人達の姿も見えますし、物資を運ぶプレイヤーで賑わっています。
その中で大きなテントの下に、アデラさん達の姿を見つけました。
「おはようございます、アデラさん、レギオスさん」
「おはようございます」
「お、ミツキさんいらっしゃい」
ウィンドウを開きながら会話をしていた二人に声をかけると、ウィンドウを開いたまま振り返りました。
「ここは、忙しそうですね?」
「クエスト用の拠点を作っています。帝国とギルドに許可を取り、建築プレイヤー達に声をかけてやっと作り始めたので、この土日で形にはなるはずです」
「拠点……!」
「あちらではマモン商会によるイベント限定ショップ、そちらでは世界を旅する料理人が食事を振る舞うスペースを建築中ですね」
「十分なスペースが必要だし、さすがに町中やモンスターが出現するフィールドでは難しいですからねぇ」
アデラさんとレギオスさんの言葉を受けてオアシスを見回します。なるほど、全員プレイヤーです。
建築系プレイヤーもいるんですね……建築途中の建物の骨組みが見えます。
確かにイベントスペースのようなものはありませんでしたし、必要ですよね。
さすがアデラさん……仕事がはやいですね。
「……さすがに自分だけの力じゃありませんよ。アヴァロンやバルムンクの伝手も使っていますから」
「アデラも顔は広いけど、大手の声掛けの力は大きいよなー」
「まあそれは置いておくとして、今日はどうしました」
「あっ、参加プレイヤーの状況とか、気になりまして」
わたしの言葉を聞いたアデラさんがウィンドウを開きます。
「……クランを含めなければ、一般参加プレイヤーの数は300程度でしょうか。クランを含めると600」
「まだこれから増えていく予定っすね。噂を聞きつけて来たけどレベルが足りなくてレベル上げてから来るってプレイヤーもそこそこいましたから」
「……わたしには多いのか少ないのかわかりませんね」
「少ないでしょうね。ミツキさんから聞いた話では悪魔の軍勢は約一万なのでしょう。他のモンスターも出ないとは限りませんからね」
た、確かに。悪魔だけとも限りませんもんね。
ヴァイスさんから先程いただいたレポートを取り出します。えっと……
「『過去の悪魔侵攻によるレポート』……?」
「!」
「えっなんすかそれ」
「先程兄弟子……NPCからいただいたレポートですね。まだ読んでいませんでしたが、一緒にご覧になりますか」
「……是非」
三人で手元のレポートを覗き込みます。
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『過去の悪魔侵攻によるレポート』
過去の悪魔侵攻による被害、出現傾向等を元に纏めたデータを記す。
悪魔による侵攻は、過去おおよそ100年の周期で行われている。
彼らは彼らが存在する亜空間に在る悪魔の国より空間を繋いで扉を開きハーセプティアへと侵攻する。
彼らには階級があり、階級が高いほど優れた知能を有する。
悪魔王を筆頭とし、君主、公爵、侯爵、伯爵、総裁級に分類され、角と翼、装飾や言動で判断可能。
彼らは必ず名乗りを上げる。
過去の侵攻ではレッサーデーモン、デーモン、インキュバス、サキュバス等が出現しており、一定数倒されると総裁級の悪魔が出現、総裁級の悪魔を討伐すると上級の悪魔が出現していた。
伯爵級より上級の悪魔を顕現するにはモンスター、多くの魂や肉体の贄が必要とされるため、ハーセプティアに公爵以上の悪魔が顕現される事は稀である。
贄にされた魂は輪廻を巡ることができないことに留意。
クリスティア王国 南東部での悪魔侵攻における損害
モンスター出現数:約1万体
出現悪魔:総裁級悪魔5体、伯爵級悪魔3体
死者数:786名
行方不明者数:156名
備考:戦場となった平原近くの村が戦闘によって廃村となる
銀華帝国 北西部での悪魔侵攻における損害
モンスター出現数:約8000体
出現悪魔:総裁級悪魔5体、伯爵級悪魔2体、公爵級悪魔1体
死者数:1135名
行方不明者数:356名
備考:総裁級、伯爵級悪魔、兵士等を贄として公爵級悪魔が出現。第23代銀華帝国帝王、朱臙と相討ちとなる
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手が震えました。
具体的に書かれる被害の多さに、息を呑みました。
「……これは」
「被害がデカいな……」
「……募集するプレイヤー数を増やさなければならないな。これは、最低でも1000は欲しい」
「帝国軍と冒険者、そしてプレイヤー達が、その数のモンスターと戦うわけですね……」
「こりゃ敗北条件が帝国軍の全滅ってなるワケだ。クエストに対する認識を改める必要があるぞ、アデラ」
「ただのレイドクエストでは終わらない、か」
クエスト名が、レダン帝国防衛戦であることを一気に理解しました。
……できるだけ死者数を減らすためにも、モンスターや悪魔を倒せる人を集めなければなりません。
「……ミツキさん、時間はありますか?」
「この後の予定はポーションのために素材集めでもしようかと思っていたので、大丈夫ですよ」
「素材であればマモン商会から提供を受ければ問題ないかと。そのレポート、掲示板に書き込みたいので今だけお借りできますか」
「……むしろお願いします」
レポートをアデラさんに渡すと、レギオスさんにレポートを持たせたアデラさんがすごい勢いでウィンドウへ打ち込みます。タイピングが速いですね……
むむむ、回復薬はたくさん持っておいた方が良さそうです。聖女さんたちや神官プレイヤー達による回復のサポートもありますが、個人での回復薬は持っておかないといけませんからね。
これは出し惜しみなんてしてられません。
マレフィックさんにはモンスターも悪魔もバンバン倒していただかなければ。
そしてやはり帝王様に星の霊薬を渡しましょう。
少しでも役立てて貰わなければなりません。
「ソロプレイヤー達にも声かけないとなぁ」
「お知り合いで、当てがありますか?」
「名前は知ってるくらいですねえ。ただ彼らはなんというか、本物の化物というか……プレイヤースキル高すぎるというか」
レギオスさんが遠い目をしました。
そんなプレイヤーがいるんですね……!?
「変な人が多いんですよ。現代日本人でそんなに戦えるのどないなってんねや……と思います」
「そんなに……」
「秘められていた強さが開花してしまったみたいなすごい人がいるんすよ。あまり人が多いところ好きじゃないんですけど、声かけてみます」
強いプレイヤーが参加してくださるのは、助かりますからね。参加して貰えると良いのですが……
「わたしも、レベル上げないといけませんね」
「レベルが上がるとステータス的にも強くなりますからね。俺も頑張らないと」
「うう……テストがかぶってなければ……」
テストとの二足のわらじが大変です。
わたしのうめき声を聞いたレギオスさんに苦笑されました。
「テストがある学生は大変っすね」
「レギオスさんは……あ、なんでもないです」
「うおう……一応これでも社会人ですぜ」
「先輩ということですね……!」
「先輩、いい響きだ」
そんな事を話しつつアデラさんが打ち終わるのを待っていると、離れた場所からマモン商会のアーロさんが歩いてきました。
「どうもミツキさん」
「おはようございます、アーロさん」
「もし素材とかご入用でしたら、お渡しできますよ」
「……ありがたいですが、レベル上げのためにもこの後を集めに行こうと思うのです。ファーマシー・サーペストの皆さんへお願いします」
「おや、かしこまりました」
ありがたいですが、あのレポートをみた後ではもっと強くならなければという思いがですね!
打ち終えたアデラさんからレポートを預かり、アイテムボックスへとしまいます。
「これは共有させてもらいますね」
「共有した方が良いですよね。わたしも帝王様達の様子とか聞けたら聞いてきますね。帝国軍がどれくらいとか」
「助かります」
「……おや、厄介事でしょうか?」
「見ればわかるっすよ」
「では、わたしは行きますね。ありがとうございました」
「お気を付けて」
アデラさん達に別れを告げて、オアシスから移動します。レポートの内容が頭から離れませんね……
とりあえず帝都に寄りつつ、ギルドで依頼も受けて素材集め、レベル上げをしましょうか。
あと一週間なので、この土日にやれることはやっておきたいです。
わたしはマップを開いて、帝都へと移動しました。
悪魔に関するレポートはさらっと見ていただければ!
ちゃんと本気でクエストに挑まなければなりませんからね!
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




