レダンの《枝》 / お迎え準備
ご覧いただきありがとうございます!
再び世界樹の元へやってきました。
プレアデス以外の世界樹を初めてみた面々が、感嘆の声を上げました。
「ラクリマ、皆への翻訳をお願いできる?」
『大丈夫!まかせて!』
ログアウトの際に還していたラクリマを再度喚び出します。
ラクリマは元気よく頷いて、世界樹の方へと飛んでいきました。
その間に、お師匠様へ鏡を繋ぎます。
「エトワール様」
『おや、何かあったのかい。調査は終わったのか』
「はい。世界樹への報告もあって、お師匠にも報告せねばと」
『ほう?』
地下水脈での出来事、マレフィックさんとの対話。
それらをお師匠様に伝えると、鏡の中のお師匠は難しい顔をしました。
そしてどこからか何か本を引っ張り出して、すごい勢いでページを捲ります。
「……世界樹、色々とあって呪いを出してた箱は破壊できましたが、汚染は大丈夫そうですか」
レガリアの《枝》
世界樹から帝都レガリアに伸びる枝。
呪いの浄化中。
《枝》:ありがとう!水脈に流れる呪いの量が減ったから、あとはゆっくりと全ての水脈を浄化するだけだよ
ほ、呪いは減ったようです。
でもその呪いを吸い上げていた世界樹が心配なので、スピカさんを喚び出して世界樹の状態を見てもらいます。
「質問よろしいです?」
『いいよって言ってるよ』
ミカゲさんが挙手しました。
世界樹が葉を揺らして、ラクリマが翻訳して伝えてくれます。
「呪いの元はあの箱ひとつだけで問題なかったです?」
『大元の気配は一つだけ。その一つを破壊したから程なく地下水脈は浄化できる』
「それを聞いて一安心でしたわ」
『レダンの王よ、感謝する』
「いえ、こちらこそ浄化に感謝を。その献身に、我らはどう返せば良いか……」
レガリアの《枝》
世界樹から帝都レガリアに伸びる枝。
呪いの浄化中。
《枝》:浄化はぼくらの役目だから。君たちは君たちにできる事をやればいいよ。
あ、依頼はクリアだから、報酬をあげるね。
-地下水脈の異変の調査 をクリアしました-
報酬として、世界樹の葉(符)を入手しました
「……世界樹の葉(符)?」
『使うと空間とか、泉とか、色々と浄化できるアイテムだって』
「あ、ありがとうございます!」
世界樹の葉(符)
浄化の力が込められた世界樹の葉。
符として加工されており、使えば空間、武器、呪い、様々なものを浄化する。
浄化アイテム!今後役に立つ時があるでしょう。
世界樹から降ってきた葉をしまいます。
「世界樹は問題ないわね。呪い自体も世界樹に直接害があるものじゃないから、ほどなく消えるわ」
「ありがとうございます、スピカさん」
「いいえ。私は剪定をしているわね」
スピカさんが世界樹に触れながら、世界樹の枝を剪定します。触れたところで枝が落ちるのですが、その能力は一体……鋏要らず……
「俺からも、依頼は完遂したと考える。ギルドカードを翳してくれ」
スピカさんを眺めていたら、帝王様が水晶玉を片手に近付いてきました。
わたしが受けたので、わたしのギルドカードを翳します。
-《ステラアーク》への指名依頼 〈世界樹の異変、地下水脈の解決〉 を クリアしました-
報酬として、1000万リルが振り込まれました。
「いっ!?」
「ム、少なかったか?」
「いえ、多すぎでは!?」
「相場がわからなくてな……」
「いっせんまんは多すぎでは……」
『妥当だろうよ。奴からの情報料、それに世界樹の世話の報酬だろう?』
「エトワール様が言うなら違いない。通行証も急ぎ作らせたから、受け取ってくれ」
帝王様は備え付けられた転送箱を開けて、カードのようなものを取り出してわたしに差し出します。
レダン王宮通行証と表示されました。
……保管庫に入れておけば、皆使えますね。
おそらく使いたいときにはメッセージくれるでしょう。
「クリスティアでは他に報酬があったか?」
「えっと、剪定の際に出た世界樹の枝や葉を少しだけ貰いました」
「なるほど……じゃあ、持って行くといい」
「えっあっ」
帝王様がスピカさんから渡された枝葉を、そのままわたしの元へと持って帰ってきました。
そしてそのまま握らせてきました。
あの時は島に世界樹を植えていませんでしたのでいただきましたが、今は世界樹が立派に育っています。
貰おうと思えば、貰えますが……あえて言うことではありませんね。
報酬としてくれるそうなので、そのまま受け取ります。
「あ、ありがとうございます」
「素材としては最上級だ。使う時が来るだろう」
その言葉に微笑んで頷いて、保管庫側のボックスへとしまいました。
「通信に割り込んですまないが、エトワール様と話しても良いか」
「どうぞ」
『はいはい。話し合いだろう。誰か連れて行くかい』
「そちらはまた後ほど、エトワール様には……」
帝王様に鏡を渡して、世界樹の元へと向かいます。
サダルスウドを召喚して、水をかけます。
「これくらい水をかければ、問題なさそうですか?」
レガリアの《枝》
世界樹から帝都レガリアに伸びる枝。
呪いの浄化中。
《枝》:ばっちり潤ったよ!ありがとう!豊穣の乙女、あなたにも感謝を。
元気そうに枝葉を揺らしました。
よかった、世界樹が元気なら安心です。
スピカさんが枝葉をまとめて、アルブさんへと渡しました。アルブさんが震えながら、受け取りました。
「……感謝する、ミツキ」
「いえ、とんでもないです。色々と力になれたのであれば、よかったです」
「……苦労をかけたな。またエトワール殿を通して其方たちに話が行くだろう。その時は、助力を願う」
「はい!」
「頼りにしている」
帝王様が差し出した手を、緊張しながら握り返しました。う、うおお……
-称号 レダン帝国の同志 を入手しました-
響いたアナウンスに驚きつつ、手を離します。
その後帝王様は執務室へ戻られました。心なしか背中が、疲れているように見えましたね……
「ミツキさん、お返ししますね」
「はいっ!」
『やれやれ、老骨を働かせる……』
「はは。ご冗談を……エトワール殿はまだまだお元気でしょう」
『フン、言うねえ。……ミツキ、後でヴァイスも呼んで話をしよう』
「わかりました!」
『今日はゆっくり休むといい』
ベイリーさんから鏡を受け取り、お師匠様と話します。アストラルウィザード会議ですね!
鏡からお師匠様が消えたことを確認して、アイテムボックスへしまいます。
ベイリーさんに一礼して、アルブさんの元へと向かいます。
「ミツキ様、今度世界樹について語り合いましょうね」
「はい!本日はお世話になりました……!」
アルブさんとも握手をして、アルブさんが門まで案内してくれるそうなのでその言葉に甘えます。
スピカさんとラクリマを一旦還します。島で喚び出して、労いたいところ……!
「あ、裏門とかから出たいのですが可能ですか?」
「確かに、門の前にはプレイヤーがいそうね」
「承知いたしました。使用人用の入口がありますので、そちらから出ましょうか」
クリスティア城でお師匠様と共に門から出たことを思い出します。
プレイヤーからの目線がビシビシ刺さりました。
アルブさんの案内でたどり着いた使用人用の入口からそっと外を覗くと、人気がありませんでした。
「アルブさん、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
アルブさんに手を振って入口から出ると、どこからか紙の鳥が飛んできました。
あ、これは……!
「紙の鳥ね」
「わぁ、紙の鳥も飛ぶんだ……」
ふむふむ、エレノアさんとクロイツのおじさまから!
ソファと絨毯の準備がバッチリできたようです!
「話し合いする前に、ルーナ様用のソファと絨毯を受け取りに行ってもいいでしょうか?お兄ちゃんとソウくんも、お金に余裕があればエレノアさんの家具屋でベッドとか揃えても」
「まじ?ベッド欲しい」
「……僕の部屋、あるんですか?」
「あるよ!?増築するよ!?一人一部屋用意してるよ!?」
「……じゃあ、僕もベッドとか、欲しいです」
「お、じゃあボクはルーナ様のお供え探してからホーム戻りますわ!」
「ミカゲさん、私も一緒にいいかしら。リーフも行く?」
「行こうかな……俺もルーナ様の供物探したい」
「レンくんはどうする?体動かすかい?」
「……そうですね。動かしてから、戻ります」
「あら、じゃあ私もいいかしら?レンくんの体術、勉強になるのよね」
「ソラが行くなら僕もついていこうかな。ルーナ様用の供物はこの間買ったからね」
おや、予定がサクッと決まりましたね。
話し合いも大切ですが、ルーナ様を放ってしまうのも恐ろしいのです。
準備せねば……!
「じゃあ、またホームで!お兄ちゃんとソウくんはポンチョを掴んで」
「おー」
「はい」
わたしは兄とソウくんをつれてエレノアさんの店へ向かいました。
「エレノアさん、こんにちは」
「あいよ!よく来たね!……おや、新顔だね?」
「はい!仲間なのです。彼らの部屋の家具を揃えたいのですが……」
「客は大歓迎さ!ほら、この箱を使いな!使い方はミツキさんが教えてあげな。買い物が終わったらミツキさんの用事を済ませよう」
「ありがとうございます!」
箱を受け取って、エレノアさんは笑いながらバックヤードへと姿を消しました。
その間、二人は一つも話しませんでしたね。
「……おとなしいね?」
「いや連れて来られた先がホテルの入口だと思ったら地下に巨大な家具オンリーの空間があるとは思わないじゃんよ」
「右に同じくです」
「お師匠様の紹介だから……」
「察した」
「ちょっと待ってね。むむむ……」
箱を、ホームの部屋になるよう念じます。
よし、作れました!
「この箱を持ちながら家具に触れると、部屋のコーディネートができるんだよ。実際に部屋に置くとこれくらいってのが再現されるから、便利だよ」
「まじかよ」
「すごいですね」
二人に箱を渡して、試しに近くのテーブルに触れてもらいます。
箱の中に出現したテーブルに驚き、それを動かせることにも驚き、二人のテンションが目に見えて高くなりました。
「お会計は最後だから、部屋のコーディネートしてきたら?さすがに時間かけ過ぎるとアレだけど」
「おう!行ってくる!ソウくんまずベッド見に行こうぜ!」
「は、はい!」
テンションの上がった兄がソウくんを連れて早歩きでベッド売り場の方向へと向かいました。
わたしもホームの共有ルーム用の家具でも見ましょうかねぇ……ソファもう一つ増やせば、ぎゅうぎゅうで座らなくても良くなります。
一人用ソファと、大きなソファと……よし、買いです!
家具を眺めていると、兄とソウくんが戻ってきました。あれ、はやいですね?
「テンション上がりすぎて秒で決められた」
「はい。なんだか、ひと目見て気に入りました」
おおう、瞳がキラキラしてますね……
二人の手に持つ箱の中には、ベッドやテーブル、ソファなどが置かれています。
気に入ったものがあったのなら、良いですね!
「予算内?」
「モチ」
「中々良心的でした」
「じゃあそちらの店員さんの所で精算してて」
わたしは他の店員さんへエレノアさんを呼んでもらい、ソファを受け取ります。
月のような乳白色の、綺麗なソファです!
「本当に、ありがとうございます!他のお会計と合わせていいですか?」
「……ほい!オッケーさ!」
「ありがとうございますー!」
フェリシテ・ソファ500万リルと、普通のソファ100万リルと一人用ソファ50万リルとおさらばして、二人の元へと戻ります。
「わたしはこのあと絨毯を受け取りに行くけど、絨毯敷く?」
「あー、欲しい」
「欲しいですね」
「わかった。じゃあクロイツに向かおう。エレノアさん、ありがとうございました!」
「またのご来店を!」
ユニ・インテリアを後にして、クロイツへと移動しました。二人はクロイツの存在を知っていましたが、買い物をした事は無いそうです。
「おじさま、こんにちは」
「おや、いらっしゃいお嬢さん。頼まれた物は出来ているよ」
「わあ!」
モノクルをかけたおじさまが持ってきた絨毯に目を奪われました。淡い黄色は、まさに満月!乳白色のソファと黄色の絨毯は相性バッチリでは!
支払いをして、そっとアイテムボックスへとしまいました。
「……理由も何も無いんだが、ベッドの下には何か敷きたくなるんだよなぁ」
「なんとなくわかります」
兄とソウくんが色々な絨毯に触れつつ、ポツリと呟きました。そういうもの、なんですかね?わたしも敷いてますし。
床には敷きたくなります。靴を脱ぐ文化だからでしょうかね。
兄とソウくんの買い物を眺め、おじさまに挨拶をしてホームへと戻ってきました。
世界樹の元に皆がいるのを確認して、ひとまずそちらへ向かうと、世界樹の手前でみんなが上を見上げていました。
「あ、戻ってきたっす」
「?」
「どうかしたか?」
「……アレ、見てほしいっす」
わたし達の元へ駆けてきたリーフくんが指し示す方向を見上げると、世界樹の枝の先に……
枝が足に巻き付いて、枝から実のようにぶら下がっているのは、見覚えのあるタキシードを着た黒ウサギでした。
「……タスケテ」
見なかったことには……なりませんか……そうですか……
月を放置していられないので、月は挟みます!
そして勘の良い皆さまは察してらっしゃると思いますが、ミツキはリアルでテストが迫ってます!皆さまはちゃんとテスト勉強していましたか?作者は暗記は得意でしたが、数式は右から左でしたね。
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




