悪魔問答
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「驚きすぎて無になったぜ」
「地下水脈といい、悪魔の彼の言葉といい、僕も驚いたよ」
「中々強そうだったわ」
簡単に作り上げた母特製炒飯を食べます。
母の感想が別ベクトルですね……戦おうとしてます。
「この間たくさん手合わせで転がされたから、わたしよりは強いよ」
「今度手合わせしてもらおうかしら。悪魔の強さを試すのに良いわよね」
「うおう……確かにそうだけども」
「まあ、それは追々だね。この後はレダンの世界樹に報告に行くんだろう?僕達も一緒に行っても良いのかな」
「……大丈夫なのかな?わたしだけとは言われなかったし、皆に応接室貸してくれたし」
ひとまず皆で行くとしましょう。
世界樹から何か情報とか、貰えるかもしれませんしね。
「……ごちそうさまでした!」
「はーい。お粗末さまね」
「わたし洗うよ」
ささっと皿を洗って、少し食休みをして再びログインしました。
すでにログインしていたメンバーは、各々ウィンドウを見つめて食事をしていました。
「うーん、やっぱり噂になってしまいましたな」
「噂ですか?」
「クラメン全員で王宮の敷地に足を踏み入れたので、スレッドがざわついてますね」
ミカゲさんは掲示板を見ていたようです。
隣にお邪魔して覗かせてもらうと、わたし達について推測で色々と書かれていました。
「後でアヴァロンに情報を流しておきますわ。掲示板にも依頼でって簡単に書き込みます」
「ミカゲさん、いつもありがとうございます」
「ボクこういうの好きなので!」
「ジンジャークッキーをどうぞ!」
「わ、ありがとうございますー!」
ミカゲさんにジンジャークッキーを渡していると、ジアちゃんとリーフくん、ソウくんがログインしました。
「待たせてしまったかしら」
「時間はまだまだ余裕あるよ」
「ソウさん、聞きたいことあるんすけど」
「いいよ、何?」
「リュー、そういえばあのダンジョンで……」
「父さん行ったん?あそこはさ……」
皆で話していた時、控えめなノックの音が響きました。
わ、そろそろ時間ですね。準備を整えて応接室から出ると、アルブさんが立っていました。
「ありがとうございます、アルブさん」
「いえ、世界樹の事であれば私の業務でもありますから」
世界樹の研究者ですものね。
皆で再び執務室へと向かいました。
アルブさんと共に帝王様の執務室へと入ると、様々な資料を挟んで帝王様とベイリーさん、その他数人が話し合いをしていました。
休憩できてるんでしょうかそれ……?
「……来たか」
「皆さま、休めましたでしょうか?」
「わたし達は問題ないですが……帝王様達は、お忙しそうですね」
「少しな。……ミツキ、また悪魔は喚べるだろうか。少々聞きたいことがあるのだが」
マレフィックさん……神秘の効果時間は、確かにまだあります。休憩を挟んでも、効果時間が長いのでまだ効果継続中ですね。
ふむ、喚べば来てくれるのでしょうか。
「……マレフィックさん」
ひとまず声に出してマレフィックさんの名前を呼びます。……反応が無いので駄目かなと思い、もう一回呼ぼうと息を吸った瞬間、金属音と背後に気配を感じ振り返りました。
『……おー、こわ。良い反応だね』
そこにはクランの皆から武器を突き付けられたマレフィックさんが、空中に浮いていました。
「なんっ!何がありまして!?」
「空中から急にミツキ氏に向かって手が伸びたんですよう!びっくりしましたわ!」
「レンくんが一番反応速かったね。敵かと思って、僕も剣を向けたけど」
「ミツキの後ろにいたから気付いたけどな。あー、武器下ろしていいのかね?」
「……殺気は感じませんが、悪意は感じました」
「そうね。悪戯心を感じたわ」
「うっす。びっくりしたっす」
「マレフィックさん、揶揄うのはよして?」
『ごめんごめん。でも皆良い反応だったよ』
マレフィックさんがクスクス笑いながら、こちらを見ました。……ぐぬ、でも来てくれたので。
「あの悪魔は……」
『アイツは俺の代わりに牢獄にいるよ』
「そうですか……あの、聞きたいことがありまして」
『へえ?ミツキ?それとも他人?』
「……俺だ」
『悪魔が契約者以外に興味を向けると思う?その質問に俺が答える義理もないよね』
マレフィックさんは、不思議そうに首を傾げました。
……確かに契約外で、対価もなく質問に答える義理は、ありません。
帝王様とマレフィックさんの間の空気が、ピリつきました。
『悪魔に聞きたいことがあるなら悪魔召喚でもしなよ。答えてくれるかわからないけど』
「……」
『オレは例外だからね。……ねぇそこの老獣さ、今ミツキを利用しようと考えたりした?』
「ッ!」
「部下が失礼した。下がれ」
帝王様と共にいた獣人が帝王様に言われて下がりました。
帝王様の聞きたいことは、きっとレダンのために必要なことでしょう。
「……マレフィックさん、わたしからのお願いです」
『……』
「マレフィックさんの考えも、未熟な身ではありますが、少しだけ理解できます。対価も、用意します。なので、どうかわたしのエゴのためにも、力を貸してください」
『……ミツキの?』
「ここまで関わったら、わたしは無かったことにはできません。手の届く範囲でやれることは、全てやりたい。力があるなら、使いたい。なので、わたしのために……力を貸してください」
どれも本心です。
ここまで関わって、悪魔の侵攻が今後起こるレダンで、何か対抗策が練れるのであれば、十分に準備をしたいです。
……レダンで誰かが亡くなってしまったら、わたしは。
『……強欲だ。ミツキの力で何かが変わる?』
「ほんの少しだけでも、悪魔と対抗できれば。わたしも戦います。被害を減らすために」
『……あーもう、しょうがないなあ。そういう強欲さは悪魔の好み。……お前らミツキに感謝しなよね。聞きたいことって?』
小さくため息をついたマレフィックさんは帝王様へ視線を向けました。
「……感謝する。これまでの推測で、レダンに開く扉の場所を記した地図だ。扉が開く場所は、この辺りだろうか」
『基本人が多い所に扉を繋げて開くから、帝国に近いココとかじゃない。君達が対策取ってんのは悪魔も理解してるから、兵士も民も視界に入れる空中と地上に扉は開く。悪魔は飛ぶよ』
マレフィックさんの指が地図を指し示します。
……悪魔は、飛ぶ。空を飛ぶ悪魔への、対策が必要です。
「まじかー、空中への攻撃手段が必要ですな」
「この世界に砲撃とかあるんかね」
「銃もバズーカ砲もありますので、大砲もあるかと。城壁に設置されているのは、前に見かけました」
「ソウくんまじ?」
「……ああ、以前武闘祭で戦ったトリガーハッピーの彼らも、バズーカ砲持っていたね」
「例の父さんが目と反射神経使ったアレか……」
武闘祭でトリガーハッピーのプレイヤーからバズーカ砲で放たれた弾を両断した父の背を思い出しました。
人間業じゃないんですよね……
『悪魔の住む空間とこの世界の空間を繋げる扉を開くのは容易じゃない。それは悪魔王サマが担うだろうから、基本戦闘には出てこない。扉を壊せば勝ちじゃない』
「……軍勢の規模はわかるか」
『今の悪魔の数がオレにはわからない。まあ、大体いつも一万以上使ってる気がするけど』
「一万か……扉が開くまで、後どれくらいかわかるか」
『……新月に近い日じゃない。あと13か14太陽が沈む頃?』
マレフィックさんの言葉に帝王様が顔を顰めて頭を抑えた時、聞き慣れた通知音とアナウンスが響きました。
-このアナウンスは、一部のプレイヤーにのみ行われます-
-レダン帝国での悪魔侵攻に対する情報収集率が一定の基準に達しました-
-特殊クエスト〈レダン帝国防衛戦〉の発生条件を満たしました-
-本日より14回太陽が沈んだ日没後、レダン帝国へ悪魔の侵攻が始まります-
-この戦闘には特殊クエスト 〈レダン帝国防衛戦〉を受注したプレイヤーのみ参加できます-
-最初に特殊クエストを受注したプレイヤーは、参加者を選定してください-
-特殊クエスト〈レダン帝国防衛戦〉を受注しました-
「は」
イエスノーの選択肢もありませんでした。
わたしは急いで、クエスト確認欄を開きます。
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〈レダン帝国防衛戦〉
参加可能クラン:15
参加可能プレイヤー数:100〜
レベル制限:無
アイテム制限:無
敗北条件:レダン帝国軍の全滅
所属クランを参加させますか
はい
いいえ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「な、え……なに!?」
「ミツキ氏!?」
「どうかしたのかしら」
「えっと、アナウンスが」
「アナウンス?」
もしや他の皆には、聞こえていなかった!?
わたしは聞こえてきたアナウンスと、クエスト確認欄をみんなに見せます。
すると皆目を見開きました。
「絶対大規模レイドだと思ってましたが個人受注はやばいですわ」
「運営何考えてんだ」
「これは、ミツキが参加者を集めないといけないのね?」
「敗北条件まであるんすか……」
「クランの参加制限はあるんですね……」
「あと二週間で、参加者を集めなければならないですわこれ」
「……」
「ミツキ、気を確かに」
頭が真っ白になりました。
わ、わたしが選定を!?あと二週間で!?
わたしがパニックになっていると、マレフィックさんが側に寄ってきました。
『なになに、どうしたの』
「いえ、あの、どう伝えれば良いか……」
『何かに巻き込まれた?』
「巻き込まれ、ましたが。帝王様、あの、レダン帝国の悪魔との戦闘に、渡り人が参加しても……よろしいでしょうか」
「渡り人が……?」
「冒険者として、戦闘力は、あります!」
「爆発薬ならあります!」
「狼喚べます!」
「えっ……えっと、狙撃ができます」
「矢の雨、降らせられるわ」
「両断できるっす」
『こわ』
わたしの言葉にミカゲさん、兄、ソウくん、ジアちゃん、リーフくんが続きました。
マレフィックさんが爆笑してます。
「……帝国としては、戦力が増えるのは助かる」
「王よ。しかし彼らはまだ子供では」
「冒険者に子供も何もあるか。帝国を守るために力を貸してくれるのであれば、俺はその力が欲しい。ミツキ、そしてその仲間たちよ。助力を願いたい」
帝王様の言葉に、わたし達は頷きました。
これはこのあと、作戦会議とします。
「事前に連絡を貰えれば俺に取り次げるようにしておく。何かあれば執務室へ来てくれ。通行証を作っておく」
「わ、わかりました」
「……恩に着る。そちらの悪魔にも、感謝を」
『オレはミツキのためにやっただけ。その戦いにはオレも参加する。いいでしょ、ミツキ』
「……はい。よろしくお願いします。フルコースも作りますね」
『やった、やる気出た。オレ頑張っちゃう。奈落で鍛えておくよ。じゃあ、リールガレトが発狂する前に戻るから。……約束だよ?』
マレフィックさんはそう言い残して、瞬きの間に消えました。
……発狂って、なんでしょうね。
悪魔の生態、謎が多いです。
「……では、世界樹の元へ向かおう」
「やる事が増えましたね。王よ、本日は寝られませんよ」
「はは、許せ」
帝王様は苦笑して外套を羽織り、執務室から出ました。
わたし達も後を追います。
「……依頼が終わったら、作戦会議ですね。そろそろルーナ様用のソファが出来上がりそうなので、ソウくんの歓迎会も合わせて準備をしたかったのですが」
「これはボクらだけでは抱えてられないので、アヴァロンにも一報入れた方が良いですわ。ミツキ氏、アーサー氏に明日以降で大事な話がありますって一報よろしくです」
「わかりました」
本日は情報をまとめないといけませんからね。
まだこのあと世界樹への報告もありますし。
「そうねぇ……でもルーナ様の事も後回しにはできないわよね」
「話に聞いていた限りだと、女神らしい方なんだろう?」
「ツンデレチョロインみたいな女神様だったぞ」
「……蔑ろにすると、お怒りになりそうな気はしますね」
うおおおやる事が……!やる事が増えました!
世界樹の所に行ったら、お師匠様にも通信を繋ぎましょう。
まずは、世界樹へ報告しましょう。
ユアスト運営の少しアレな所:貴方だけの物語を謳っているため、クエストに他者を誘うのも貴方次第。イベントを起こすのも貴方次第。と貴方に選択を委ねる傾向にある。運営が突発的に起こすものは別。
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




