星々の集い / 地下水脈への道
ご覧いただきありがとうございます!
星々はクランメンバーの事ですね!
「は、」
ホーム前に移動すると、ソウくんが、思わずこぼしたと思われる声が聞こえました。
まあ驚きますよね。ホームに移動したのに、外にいるのですから。
「案内はゆっくりするね!こっち!」
「は、はい」
ラクリマがふわりと世界樹の方向へと飛びました。
わたしも小走りで、ソウくんを連れて森を駆け抜けます。
世界樹の近くには、皆揃っていました。
「集合が、はやすぎでは!?」
「おかえりですわー!あんなの見たら戻りますよう」
「ソウくんよろしくな。多分今日は忙しいよ」
「ちゃんと勧誘してきたのねミツキ」
「ジアちゃん部活は?」
「今日と明日は弓道場に業者が入るからって休みになったわ。あの顧問、連絡が遅いのよ……」
「俺も体育館の空調の整備で、休みっす」
そうでしたか……!
何はともあれ、皆揃って良かったです。
「では改めまして、こちらが兄と勧誘してきたソウくんです」
「……ソウです。お世話になります、よろしくお願いします」
ソウくんが頭を下げると、皆それぞれ自己紹介を始めました。
「……レン。武器はガントレット」
「めっちゃしっかりしてらっしゃる……錬金術師兼暗殺者のミカゲですわ!錬金アイテムならお任せください!」
「ハイドレンジアよ。弓を使うわ。銃剣楽しみにしてるわね」
「リーフっす。斧メインに使います」
「私はソラ。ミツキとリューの母よ。武器は……拳ね」
「僕はサクヤ。ミツキとリューの父だよ。主に剣を使うよ」
ソウくんは一人一人名前を復唱して、顔と名前を一致させたようです。
兄がソウくんに近寄ります。
「……ソウくん大丈夫そ?」
「……一瞬早まったかと思いました。今も、混乱はしています」
「だよな……今日は無理せず、慣れるところから始めような……」
「でも初っ端から謎の依頼がありますぞー……」
ラクリマが世界樹に状況を説明しているようなので、わたしもみんなに説明します。
お師匠様にも伝えなければ。鏡を起動します。
「エトワール様、今よろしいですか?」
『……なんだい、もう何か起こったのかい』
「すでに何か起こすと思われていました……?」
「思うだろ。ミツキだぞ」
「うぐぬ、説明します……」
お師匠様とリゼットさんの所に寄ったあと、依頼の為にレダンの王宮に向かったこと。
そこで、世界樹の元へ向かう通路を歩いていたところ、最近設置された悪魔関連を見破る魔法陣に捕まったこと。
そして牢獄へ移動して、レダン帝国所属の大神官と話していたら帝王様も居たこと。
牢獄から出してもらったあと、レダンの世界樹の《枝》から、地下水脈が呪われているため、どうにかできないかと依頼を受けたこと。
わたしの言葉を聞いていた皆は、やれやれ……って顔をしました。
その反応はどのような反応でしょうかね!?
『……フフッ……クッ……すまん。伝えるのを忘れていたよ』
「ミツキ氏とわかれたあとのこの一時間ちょいで、そこまで濃密な時間を過ごすとは……流石ですわ!」
「さすがミツキ!そこに痺れる憧れねえ!」
「お兄ちゃんはソウくんに言った事も含めて後で話があります」
「というかミツキ、牢獄に入ったのね。どうだった?」
「不可抗力だからね!?暗くてジメジメしてました!あとお師匠様はそろそろ笑いは止まりませんか!?」
『……奴のせいで、フッ……捕まった……そういえば、最近魔法陣を設置したと確かに言っていたよ。すまないね』
「いえ……マレフィックさんには、後で働いてもらいます」
どうにかお師匠様の笑いをおさめて、話に戻ります。
以上の話から、調査を手伝ってくれるか聞いたところ全員が頷きました。
「準備は大丈夫ですか?」
「全てアイテムボックスに入ってますからなー」
「冒険者ってのはいつでも戦えるのが理想だよな」
「僕も、問題ないです」
「いつでも行けるわ」
「俺も行けるっす」
「日が高いけれど……地下水脈なら問題ないわね」
「日傘は持って行こうね」
皆問題なさそうです。
レンさんが小さく頷いて、ラクリマが戻ってきました。
『葉、いっぱい貰った!』
「じゃあ、行ってくるね」
プレアデスの《枝》
世界樹から浮島プレアデスへと伸びる枝
《枝》:レダンの《枝》をよろしくね。君たちに祝福を
枝が頭上を通り、祝福を授けてくれました。
よし、準備完了です。わたしが目印になるために、先にレダン王宮前に移動します。
みんなが移動して来たのを確認して、先程と同じように門の兵士に話しかけます。
するとすんなり通されました。
「アルブ様より伺っております。どうぞ、お通りください」
「ありがとうございます」
門をくぐり抜けると、門の近くの建物の影にアルブさんが立っていました。
こちらの姿をみて、目を丸くしました。
「彼らはわたしの仲間です」
「み、皆さん強そうですね。では、執務室へとご案内します」
アルブさんの後を、皆で歩きます。
先程とは違う道ですね。
「……魔法陣は、ありませんよね?」
「先程牢獄でミツキさんの魔力をですね、ちょいっといただきまして。登録させていただいたので、大丈夫なはずです!」
「ちょいっと」
アルブさんはにっこにこの笑顔を浮かべました。……ま、まあ捕まらないのであれば、オッケーです!
契約者なのは変わらないので!
景色を楽しみながら歩くこと数分、アルブさんが扉をノックしました。
すると、虎の男性が扉を開けました。先程、オーラム大佐と呼ばれていたような……?
「失礼いたします。帝王様、仲間を連れてきました」
「ふむ。……よく鍛えられているようだな」
「わたしより強い人たちばかりです」
「…………そうか」
(なお、ミツキの背後では(何言ってんだミツキはお前も十分強いだろ……)という表情を浮かべたクランメンバーが立っている)
白い軍服を着て黒いマントを羽織る帝王様が水晶玉を取り出しました。
「……俺はクロイツェルト=アルトゥス=レダン。レダンの王だ。……依頼は作った。その水晶にギルドカードを翳してくれ」
「クランへの依頼でしょうか?」
「エトワール殿にクランを組んでいると聞いたからな」
-《ステラアーク》への指名依頼 〈世界樹の異変、地下水脈の解決〉 を 受注しました-
よし、バッチリ受注できました。
帝王様が頷いて、立ち上がりました。
そして壁に立て掛けられた剣を手に取り、わたし達の横を通り過ぎて部屋の入り口でこちらを振り向きました。
「付いて来い。地下水脈へと繋がる道は、レガリアの地下にもあるからな」
数人の兵士とベイリーさんを連れた帝王様の後を、ステラアークの面々が付いていきます。
王宮から出て、帝都とは反対側の山側へと進みます。
「レダン帝国は国土の大半が砂漠と岩山で覆われている。国境付近の雨林や、各地の生活は地下水脈から水を引き上げる事で担っている」
「地下水脈はクリスティアとレダンの国境にある霊峰からの雪解け水や、雨水、雨林から浸透した水が流れています。それらを濾過して使っています」
「地下水脈はレダン帝国の生命線だ。各地にある入り口は、厳重に封鎖している」
歩きながら、帝王様とベイリーさんの言葉に耳を傾けます。砂漠は雨が少ないイメージで、オアシスが拠り所のイメージもあります。
レダン帝国の生命線……その地下水脈が、何やら呪いで汚染されているとのこと。
人体に害は無くても植物に害はあります。
ただでさえ乾燥や日照りで野菜や植物の生育に四苦八苦しているらしいので、どうにか解決したい所です。
「……封鎖している筈なんだがな。何者かが侵入して呪いを地下水脈へ流したのか、外から呪っているのか」
「外からであれば大規模な魔法陣が必要でしょう。地下水脈上に設置しなければならないため、発見されるリスクも高いです」
「だがその報告はない。ならば、直接地下水脈へ何かしていると考えた方が早いだろうな」
「……質問とかしてもよろしいです?」
「機密に関わるものでなければ答えよう」
ミカゲさんからの問いかけに、帝王様は足を止めることなく答えました。
おお、質問アリですね。ふむ……
「出入り口の数は……」
「五つだな。場所は言えんが」
「それは言われても困りますわ……入れる者も限られています?」
「基本的に士官以上、鍵を持つ者のみですね」
ふむふむ……士官以上。
詳細はわたしは知りませんが、偉くて強い方ってことですもんね。
「……嫌な予感しかしませんなー」
「メタい発想しかできないけど、その士官が乗っ取られとか考えちゃうよな」
「……悪魔なら、憑かれてとか、契約しちゃったとか、あるんすもんね」
「何かあったら、ミツキと契約している悪魔に聞いてもいいんじゃないかしら?」
「……ぅぉぉん……」
母の言葉にミカゲさんが何とも言えない声を出しました。
……ご飯があれば、ちゃんと働いてくれますから!おそらく!
しばらく進むと、地下道への入り口が見えました。
帝王様の姿をみた兵士達にざわめきが広がりました。
「ご苦労。最近、誰か通したか」
「ハッ!最近ですと数日前に翡翠殿の研究の際に一度開けました。お一人でした」
「翡翠は確か、通行申請をしていたな」
「はい。魔力草の研究用に地下水脈の水を使用したいと。承認しましたね」
「……戻ったら翡翠の研究所に行くか。鍵を開けてくれ」
「ハッ!」
扉の両隣に立っている兵士が、各々異なる動作をして扉の仕掛けを外していきます。
あ、これは一人だと開けられないやつですね。扉に触れて魔力を通したり、数種類ある鍵を使ったり……厳重ですね。なんにもわかりません。
扉が開くと、ひんやりとした風が流れてきました。
この広大な土地に広がる地下水脈……どんな様子なのでしょう。
帝王様とわたしたちは、地下道へと足を踏み入れました。
『……ふむ、水の気配がするけど、やっぱり良くない気配も感じるよ』
「ラクリマが言うなら間違いないね。方向はわかる?」
『んー、奥かな』
「……優秀な召喚獣だな」
「頼れる相棒なのです」
『皆の役に立ちたいし、ミツキのためだもん』
思わず天を仰ぎます。地下道なので何も見えませんが。うちのラクリマがこんなにもかわいい……
「……転ぶぞ」
「うちのラクリマ……かわいい……です」
「ミツキ氏の語彙力」
「レンくんの言う通り転ばんようにな」
「頼りになるわね、ラクリマ」
「さすがっす」
『じゃんじゃん頼ってね!』
ふわりと舞うラクリマ。頼りになりすぎる大切な相棒です。
「さ、集中しましょ」
「何があるか分からないからね」
両親の言葉に空気が締まります。
敵がいないと思いたいですが、謎の呪いもあります。
気配を探りながら、歩きます。
すると、水の音が聞こえてきました。
地下道を下り終えると、天井は低いですが……水が勢い良く流れています!
こんな地下で、川のようになっているなんて!
「結構、水流は豊富ね」
「レダンの生活を賄っているのであれば、納得もいく」
「十分、透明度は高く澄んでいるように見えますね」
目に見える範囲で、変な色になっているとかはありません。
ミカゲさんが帝王様から許可を取って、柄杓ですくった水をビーカーに入れてアイテムボックスにしまいました。
それを見ていたソウくんに、ミカゲさんが絡みに行きました。ミカゲさんはフレンドリーなので安心です。
「うーん、わたしは何も感じないな……」
『こう、薄い感じだから感じづらいね。呪いの元っぽい気配は、流れの方かなぁ』
「上流か。……この先は、行き止まりだが広い空間があったはずだ」
「先行します」
兵士が二人走っていきました。
その後を追います。
数分走ると、開けた空間に出ました。
岩盤の隙間から水が流れ、窪んで池みたいになってます。神秘的ですね!
そこには先行した兵士二名と、兵士と商人の姿をした男性が水を汲んでいました。顔を上げて、帝王様の姿をみて水瓶を池に落としました。
「……てっ!帝王様!?」
「調査しているだけだ。貴殿は」
「え、エルガレスト商会に所属しております。アルルゥと申します」
皆の隙間からそっと見た男性は、慌てて水瓶を池から取り出しました。
-【凶星の瞳】が発動します-
その男性を見つめた瞬間、アナウンスが響き左の瞳が熱くなりました。
慌てて瞳を抑えると、わたしの様子に気付いた隣にいたレンさんが顔を覗き込んできました。
「……ミツキ、どうした」
小さな声で問いかけられ、他の人に気付かれないよう壁になってくれています。
手を避けると、左側だけ視界に広がる色が、褪せました。違和感があって右目を隠し、目の前の光景を見つめます。
隙間から見えた商人の男性の姿が、ブレています。
商人の男性に、異なる見た目の男性が重なっています。あの特徴的な、角は……!
『フフ、約束だよ。その約束の対価に、オレの瞳を貸してあげる』
『人に紛れる悪魔を見分けられるよ。きっと役に立つ』
『なんか同族の気配するんだよね、この国』
……マレフィックさんの、瞳が発動した。
と言うことは、あの人は悪魔、もしくは悪魔憑き……?
わたしは左目を抑えて、レンさんに冥鎖を渡します。
「その紅い瞳、」
「……レンさん、あの商人の男性、これで捕まえられますか。重力で、押さえつけるので」
「……わかった」
レンさんの言葉を遮ってしまいましたが、レンさんは何も聞かずに頷いてくれました。レンさんが一番パワーと速さがあるので。
レンさんは冥鎖を受け取るとフードを被って、気配を抑えて集団から離れました。
商人の男性は兵士と話しています。
『……ラクリマもやろうか?』
「……うん、あの男性にだけ、重力操作できる?」
『任せて』
そうラクリマと話して、男性を見つめた瞬間、振り返った男性と目が合いました。
男性の目が、驚愕で見開かれました。
「【重力操作】っ!」
『【重力操作】!』
「ガッ!?」
「「「!?」」」
地面へと片膝突いた男性の元へ、レンさんが飛び出し男性まであと一歩の所で男性から赤黒いオーラが弾けました。
「【万物因果絶対破壊】ッ!」
失速せずそのまま男性へと右腕を振りぬいたレンさん。次の瞬間、何か割れるような音が響くと赤黒いオーラが崩れました。
目を見開く男性の背後に回り体を抑えつけ、うつ伏せにさせて冥鎖で腕ごと縛り上げました。
おお、瞬殺……レンさんすごいです。
ただ突然男性を縛り上げたレンさんに向かって、兵士が剣を向けました。
「びっっっくりした」
「何が、始まったかと」
「いやそれよか説明」
「もしかして、人間じゃないのかしら?」
「……それなりの理由があるんだろう?」
驚いて武器を構えたステラアークと帝王様たち。
わたしは左目を抑えていた手を下ろして、レンさんが縛り上げた男性を見つめます。
……やはり、マレフィックさんより小さく短い角ですが、白目が黒く褐色の肌をしている男性が重なります。重なっているので……
「……やはり、悪魔ですね。憑依でしょうか」
わたしの言葉に周囲がざわめき、目の前の男性が一瞬こちらを睨み付けたあと、ニヤリと、笑みを浮かべました。
ラクリマは宇宙と世界樹のパゥワーを持っていますので万能です。
よし、尋問……会話をしましょうね!
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




