概念という存在
ご覧いただきありがとうございます!
『……其方達、よく頑張ったの〜!我感動したのじゃ!よし、供物の礼じゃ!其方達に、祝福をやろう!』
コスモス様の言葉に、わたしとお師匠様、ヴァイスさん、母以外の体が淡く光りました。
『其方達には、加護を』
-称号 宇宙の加護 を手に入れました-
「かっ」
『星詠みである其方達と、我の使徒である其方は特別ゆえ、加護じゃ』
「……良いのかい。加護は、」
『良いのじゃ!ぜぇぇったいに降りたら加護を授けると決めておったのじゃ!絶好のタイミングであった!祭壇であるしな!』
ふはははは!と笑うコスモス様を呆れた目で見るお師匠様が、小さくため息をつきました。
ヴァイスさんも頭を抱えています。
『そらもう加護は特殊じゃからそうそうやれるもんではないが、愛し子である星詠みは別じゃ。使徒もな。我ら概念が送る、守護の証。少しでも其方達を手助け出来るよう理に抗っておるだけじゃ。世界に直接の干渉は出来ぬからな』
「あ、ありがとうございます……!」
『これからも其方達の物語を、我は楽しみにしておるのじゃよ。この祭壇は、我らにとっても特等席なのじゃ。我らは、ハーセプティアの民や其方達渡り人との関わりを、とても大切に思っておる』
そう言って立ち上がったコスモス様を見上げます。
とても優しい瞳で、わたし達を見つめていました。
『……此度は良い時を過ごせた。感謝しておる。其方達の物語に、宇宙のような広がりがあらんことを』
コスモス様は笑みを浮かべて、姿を消しました。
コスモス様の言葉、受け止めました。
概念的存在という枠組みでこの世界を見守っているコスモス様達。
きっと、今まで色々と思う所もあったのでしょう。
『超ハイテンションで笑う』
『ほっほ。指折り数えて待っておったからのう』
『まあ、いいけど。レン、次は翼竜の鱗を持ってきて』
『ミカゲよ。次は骸骨王の頭蓋骨を持ってくるのじゃ』
突如聞こえてきた声に肩が跳ねます。
恐る恐る振り返ると、ヴァスタトル様とタナトス様がソファに座っていました。
レンさんとミカゲさんがげんなりとした表情を浮かべます。
「……チッ」
「えええええ………まあ、わかりました」
『ミツキ、俺にもトマトの料理頂戴?』
「ひょっ!わ、わかりました!」
勿論供物として一皿ずつ用意しましたので、フォークを添えてヴァスタトル様のテーブルへとカプレーゼを置きます。
『……うん、美味しい』
「ありがとうございます」
『ワシにも貰えるかのう』
「はい!」
タナトス様のテーブルにも同じように置いて、お二方の様子を覗います。
……コスモス様がいる間にいらっしゃらなかったのは何か理由がありましたかね?
『流石に遠慮するよ。宇宙はずっと待っていたみたいだし』
「はわ、顔に出ていましたか」
『ミツキは分かりやすいよ。……宇宙は俺達よりも星詠みとの関わりが強い奴だからさ。でも今までは眺めているだけで十分だったけどこんなに素晴らしい祭壇を用意してくれたから』
『子供のようにはしゃいでおったな』
『見てて少し恥ずかしいよね』
カプレーゼを口に運びながら、ヴァスタトル様は呟きます。そこにタナトス様も、同じようにカプレーゼを口に運びながら相槌を打ちます。
『……宇宙は別に民からの信仰が無くても消えはしない。必要もない。認識の外側の存在だからね』
「認識の、外側……はっ!ヴァスタトル様の信仰は大丈夫ですか??」
『君たちが信仰してくれているから、問題ないよ。うん、美味しかった、ありがとう。お礼に……種だけじゃ芸がないし、たまにはこういうのもどう?』
ヴァスタトル様の手のひらで光が収束し、小さな玉になりました。
飴玉ほどの大きさです。
『使い切りのアイテムだよ。何かにぶつければ、破壊できる。範囲は小さめだけど……通路を塞いでいる岩とか、モンスターからの大きな攻撃とかは破壊できるんじゃない?』
「はかいできる」
『ほっほ!そりゃいいアイテムじゃ。ワシも似たようなアイテムをやろう。ボスモンスターでなければ当たったモンスターを即死させる、でどうじゃ』
タナトス様が手を叩くと、同じように黒い光が手のひらの上で収束し、黒い飴玉ほどの玉となりました。
えっすごい物騒なアイテムでは……?
「物騒!物騒ですよ師匠!」
「な、なんて恐ろしいアイテムを簡単に……」
『一人一つ持っていくが良いぞ』
『直接的な力の付与は使徒や執行者にしか渡せないからね。それ以外にはアイテムのが都合が良いし』
「た、大切に使います!」
『危機的状況でちゃんと使いなよ。……そろそろ月の視線も煩わしいしかえろっかな。彼女の場所は太陽から離れたその端でいいよ。近いとうるさいし』
『ほっほっほ。ワシも仕事をしに戻るかの……ミカゲ、精進せい』
「ぐぬ、いつかあっと言わせて見せますからね!」
いただいたアイテムをアイテムボックスにしまう前に、鑑定だけしてしまいましょう。
破壊玉
破壊の力が込められた玉。
破壊可能なオブジェクト、攻撃等を破壊できる。
一度使うと壊れる。伝説級アイテム。
死玉
死の力が込められた玉。
生命ある存在を終わらせる事ができる。
一度使うと壊れる。伝説級アイテム。
絶句しました。
書いてあることが壮大で物騒です。
こ、これは危機的状況で……使うしかないですね……
『エトワールとヴァイスも元気でやりなよね』
『いつでも喚ぶが良いぞ〜』
「……気遣いに感謝します」
『じゃあね』
お師匠様とヴァイスさんに声を掛けた二人は、瞬きの間に消えました。
お師匠様が小さくため息をつきます。
「本当に、自由で困る」
「まさか神職でもないのに加護を授かるとは……」
「あ、あのお師匠様、ヴァイスさん。その、加護を授かるのは珍しい事なんですか?」
ヴァイスさんの反応を見ると珍しそうです。
祝福も、もしや珍しい事でしょうか。
わたしと同じように、皆もお師匠様達の言葉を待ちます。
「そうさね……昔、知り合いの大神官に聞いた話だが。祝福は目印であると言うこと、そして加護は、守護であること」
「祝福は目印、加護は守護……」
「祝福を授けるのに彼らはそこまで力を消費しない。そして何処にいても存在を感知する目印であるんだと」
め、目印。
だから何処にいても、概念的存在である彼らはわたし達の元へ現れることが出来ますし、コスモス様のように見ることが出来るのでしょうか。
「そして加護だが……加護は、神殿に属する者の中でも、神殿長や大神官しか賜われないもの、だったか。加護を与えられた者は、危機において加護を与えた神による助けがある……とか何とか言ってたな」
「……神がその力を加護として分け与え、苦難に遭遇するとその身を守るために神の力が使われる……とも言われている」
『概ね間違っていないな。その解釈で問題ないだろう』
突如響いてきた声に、その場にいた全員が振り返ります。
そこにはトマトにフォークを刺すマレ様がいました。
フットワーク……!
『まあさすがに俺達も無闇矢鱈に加護は与えん。渡り人への祝福も、定められた段階を踏んだ者へと授けるように決まっているからな』
「ご、ご機嫌麗しく、マレ様」
『おう。このトマト、美味だな』
「ありがとうございます……あの、その、マレ様達からみてどのような者が、祝福を授けようと思われますか?」
『ふむ……まあ、好みだな』
トマトを口に運びながら、軽くマレ様は言いました。
こ、好みですか……
『義務感だけで敬われてもそれは俺達の力にはならん。純粋な、我らへの敬意が信仰心として俺達の力になる。ここの民とは違い、渡り人は俺達への信仰心など持ち合わせていないだろ』
「初めまして、ですからね」
『だから段階がある。イル・マーレの奴らは供物を捧げ毎日拝礼を行い、海という存在を認識している。渡り人は毎日こちらの世界へ渡ることは困難だと聞いているからな』
「めっちゃ配慮してくださってますな……」
『そりゃ信仰心を集めるのに必死な奴もいるからな。渡り人からの信仰心も、力の源として頭数に入れている訳だ。まあヒントをやるなら……』
ヒント!ヒントをくださるようです!
概念的存在のことが知られれば、彼らの力が増してなおかつ渡り人も強くなれる、チャンスやもしれません!
『まず神殿への拝礼を一定回数行い俺達に認識される事だな。太陽はこの間催し物で存在が認知されたからな……まあそこからは俺達の匙加減だ。星詠みの娘、其方は別枠だった訳だが』
「ひょっ!お、お師匠様達のおかげですね!」
「そんな事はないよ」
『其方達の力は俺達との信頼関係で成り立っているからな。これからも楽しませて貰うぞ』
ではな!礼はまた今度!とマレ様は笑みを浮かべて消えました。
ま、また重要な情報をいただいてしまいました……!
「……やれやれ、どっと疲れが出たね」
「そろそろ遅い時間となる。我々はこの辺りで失礼する」
「はい、お師匠様、ヴァイスさん。ありがとうございました」
「何かあれば声を掛けるといい」
「また今度冒険話を聞かせてほしいね」
みんなに挨拶して、お師匠様とヴァイスさんは戻られました。
な、なんだかわたし達も疲れが……!
「……いつお話ししても、緊張感があるわね」
「本当に、彼らは普通のNPCではなさそうだ」
「びっくりしましたわー……考えを纏めたい所ですね。あのマレ様の話のあたりとか」
「渡り人が祝福を得るのに、ヒントをくれたものね」
「ぐぬ……纏めたら、アヴァロンに落としましょうかね……ひとまず纏めたら、皆に相談しますな」
色々と情報をいただいて頭が沸騰しそうなので、本日は解散とします。
わたしも、頭が回らないですね……
コスモス様のお迎えはできましたし、次はルーナ様の祭壇です。
ソファ等の準備ができたら、お迎えの準備をします。
明日は……ソウくんに連絡を入れましょう。
アイテム周りの相談です。
わたしも手持ちのアイテムの確認をしないと……!
部屋まで戻ってきた所で、コスモス様にいただいた加護とやらの確認をします。
聞いた話だと、とんでもないもののようでしたからね。
宇宙の加護
宇宙侵食の力により、受ける全ての状態異常を侵食し阻害する。
戦闘において昼夜を問わず、宇宙の視線を受けることで、ジョブ専用アーツの威力が上昇する。
……??
!?
……お師匠様達と、クランメンバーにも、聞きましょう。祝福との違いなど……!
とんでもないってことしかわかりません!
んぐぐ……駄目ですね……頭が回らないのでログアウトします。
ログアウトしました。
雨が降っていたので、なんとなくスマホで宇宙について検索します。
……哲学や、物理学などたくさん出てきました。
頭が痛くなってきたので、今日は休もうと思います。
今わかるのは、コスモス様がアストラルウィザードと、使徒に並々ならぬ感情を向けてくださっている事、ですね。
わたし達の助けになる、という思いは、伝わってきました。
その思いを胸に、期待を裏切らないように、わたしの冒険を続けていこうと改めて思います。
そしてやはりNPCとの絆、縁を結ぶのが重要なんだと再認識しましたね。
これからも縁を大切にしたいです。勿論プレイヤーであり、仲間であるクランメンバーとも、です!
よし、また明日、頭を整理しつつ!コツコツと進めましょう!
おやすみなさい。
宇宙奮発の巻でした。
加護については例としてあげると
太陽であれば祝福の回復に加えて、昼夜を問わず炎アーツの威力の上昇
海であれば祝福の海上歩行に加えて、海で死ぬことが無くなる
って感じですかね?
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




