おいでませ宇宙
ご覧いただきありがとうございます!
おはようございます!
月曜日は憂鬱ですが……学校に行かねばなりませんからね。
制服に着替えつつ、ユアストの通知を開きます。
Your Story -ミツキ-
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アルヒラル遺跡へ挑戦しました。
各階層で、貴女は精一杯冒険を繰り広げました。
階層のボスモンスター、ツイン・ワイバーン、ガーディアン・ゴーレム、そしてアルヒラル遺跡のボスモンスター、ドラゴンを討伐しました。
太陽の助力を得たことによる一撃は、強大なものでした。
隠された石版の欠片を入手し、アルヒラル神殿へ足を踏み入れました。
そこで月と、月の眷属と遭遇しました。
月の試練を乗り越え、月の祝福を賜りました。
月は、あなたの旅の夜を照らしてくれるでしょう。
お疲れ様でした。
ユアスト始めてから、こんなに戦ったのは初めてかもしれませんね。
うぐぐぐ……なんとなく筋肉痛のような……
ストレッチを入念にして、学校へ向かいましょう。
早めにゲームへログインしたいですね!
「満月、おはよう」
「おはよう花ちゃん」
駅で花ちゃんと会ったので、一緒に向かいます。
日差しが……熱いですね。今度は日傘を持ってきましょう。
「今日はコスモス様の日でしょう?部活が終わったらすぐに帰るわ」
「無理はしないでね。お師匠様の所に行ったり、準備とかもあるから」
「夜九時には間に合わせるわ。それに……私、コスモス様と会うのは初めてだわ」
「えっ……あー、そうだね?」
「ちゃんと挨拶をしないと」
基本わたしか母だけがコスモス様と話をしていますもんね。
コスモス様が顕現した時に……花ちゃんと二葉くんはいませんでした。
コスモス様がハーセプティアへ降り立ったのはラクリマの時と、母に憑依?した霊峰の時でしたからね。
「お待たせしてしまったから、盛大に……」
「そうね……お迎えしなければならないわね」
花ちゃんと頷き合いながら、教室へと向かいました。
「じゃあ花ちゃん、また後で!」
「ええ。また夜に」
花ちゃんと別れ、簡単に買い物をして帰宅しました。
!玄関まで香るコンソメの香り!
「ただいま!コンソメスープ!?」
「おかえり。野菜のコンソメ炒めなんだわ」
「美味しそう……」
「レシピ検索したら出てきたんよ。だから作ってみた。おら早く食べて風呂入れ」
「はーい」
兄が作った夕食を食べて、言葉に甘えてお風呂を爆速で済ませます。
今日はお師匠様の元へ向かわなければ……!
そしてログインしました。
さっと身なりを整えてアルフレッドさんとウィローさん、アストラエアさんを喚び出します。
コスモス様へ挨拶したいですからね!
ひとまず島で待機してもらい、お師匠様の島へと移動します。
「お師匠様、こんばんは!」
「ミツキ、よく来たね」
ソファで読書していたお師匠様が顔を上げました。
遺跡で起こった事は簡単に説明して、コスモス様の御神体についても伝えます。
「……月、か」
「まさか神殿があるとは思いませんでした……」
「ワタシも神殿があるのは把握していたが、月の神殿だとは思わなかったね。あのお転婆女神……それに……コスモスを迎えるのか。ヴァイスに声をかけて、そちらに邪魔をするよ」
「ありがとうございます!準備をして、夜九時頃にお迎えする予定です」
「わかった。この間祭壇に招いてもらった後に、供物は用意しておいたのさ」
さ、さすがですお師匠様。
わたしは、今後コスモス様に似合いそうなものを探します。もしくはコスモス様ご所望のものを!
コスモス様に関連あるのはお師匠様とヴァイスさんだけですし、お招きするのは二人で良いでしょう。
では、ホームへ戻ってお迎えの準備をしましょう!
あ、星座の配置も変えましょう。今いる小動物達を還して、大きい星座を配置しておきましょう。
きりん座と……うみへび座、いっかくじゅう座、くじら座を配置しておきます。
ラクリマの様子も見てみましょう。
「……ラクリマ、おはよう」
『……おはよ、ミツキ』
「どこか調子悪い所とかはない?」
『大丈夫!』
ラクリマは元気にふわりと舞い上がりました。
よかった、悪いところは無さそうです。
では、準備開始です!
ウィローさんと一緒に祭壇周りの花の手入れをして、アルフレッドさんと共に祭壇を磨き上げます。
ふぃー!ピッカピカです!
アストラエアさんがソファを持ち上げてくださるので、隅々まで綺麗にできました!力持ちですね!
「よう」
「レンさん、こんばんは」
「手土産」
レンさんの声かけに振り返ると、何か渡されました。
えっと……
スキュラ・クイーンの首飾り
スキュラ・クイーンの首を彩っていた首飾り。
身に付けると一度だけ【船舶喰らい】が発動し、任意の船舶を破壊する。
一度使うと首飾りは砕ける。
「なん、ですかこれは!?」
「ドロップした。俺は使わねェから」
「いえあの……あ、ありがとうございます?」
「ン」
なんだか物騒な首飾りをいただきました……!
一度使うと砕けるらしいので、使うときまで保管庫に入れておきます……!
料理をテーブルに並べていると、クランメンバーが集まりました。
両親も、少し急いだ様子でこちらに駆けてきます。
「ログインしてすぐに結晶の合わせ方をコスモス様に聞いたわ」
「えっ」
「私の手の上に、皆印がある手を重ねてくれるかしら?」
母の差し出した手の上に、言われた通りに手を重ねます。レンさんが一番上に手を乗せました。
確かに、皆それぞれがコスモス様の結晶を集めていたのでどう御神体にするのか気になってはいましたが……
星のマークが淡く光ったあと、その印が手の甲から消えました。
そして、空中で光が弾けると、一つの水晶玉が出現しました。
それは星空を反射しているような……いや、水晶玉の中に宇宙が広がっています。
宇宙の水晶玉
宇宙の力を閉じ込めた水晶玉。
水晶の中に宇宙が広がっている。その広がりはとどまることを知らない。
水晶玉をキャッチして眺めると、止まることなく銀河系が動いていることがわかります。
ご、極小宇宙……!
「綺麗ね」
「神秘的ですなー」
「マジで宇宙だな」
とても美しく、神秘的です。
宇宙が手元に……!そっとクッションに乗せます。
『星詠みが到着した』
「ありがとうございます、ケートス」
ケートスがお師匠様とヴァイスさんを連れてきました。ケートスにお礼を告げて、二人を迎えます。
「こんばんは、お二人とも」
「弟子をちゃんと連れてきたさね」
「……明らかに拉致でしたが、コスモスを迎えるのであれば仕方ない」
ヴァイスさんが小さくため息をつきました。
ら、拉致……?
ラクリマがふわふわと二人に近付いたので、横目にみんなを呼び寄せます。
みんな集まったので、そろそろコスモス様に呼びかけてみようと思います。
……コスモス様。
大変お待たせいたしました。
こちらの祭壇をコスモス様の祭壇として捧げます。
どうか、これからも力をお貸しください。
今後ともよろしくお願いいたします!
-宇宙 の承認を得ました-
『…………ふはははは!我が、宇宙の概念を持ち宇宙が人の形を成した存在、そしてリソースの権化!宇宙である!……って、このソファ柔らかいのじゃ!我の神殿にもこれ欲しいんじゃが!?』
アナウンスの後に、強大な力が渦巻く気配と、陽気な声音の言葉が聞こえてきました。
恐る恐る見上げると、以前子供の姿で現れたコスモス様が、そのまま大人の姿に成長された……コスモス様が、ソファの感触に感動されていました。
腰までたなびく、闇の中でも煌めく黒髪……その内側には宇宙が描かれています。
美しいプロポーションの、褐色の肌を包むキトンのような……黒のロングドレスを身に纏い、品の良いゴールドのアクセサリーを身に着けています。
わたしの視線を受けて足を組んで妖艶な笑みを浮かべたコスモス様の姿に、息を呑みます。
『愛し子よ〜!会いたかったぞ〜!』
「わひゃあ!」
『ずーーーっと待っておったぞ!』
次の瞬間に勢い良く抱きしめられました。
わ、い、いい香りが……!
『破壊はドヤ顔して降りるし太陽は我の事無視するし!我の方が愛し子のことずっと応援しておるし!我の方が愛し子のこと愛しておるし!』
「こ、コスモス様!」
『エトワール!ヴァイス!其方達も近う寄れ!早う!』
「……妹弟子を離していただけますか」
「抱きしめられるのは遠慮したいね」
『……つれないのう』
渋々とコスモス様が離れて、ソファへと腰掛けました。
そしてわたし達を眺めて満足そうに頷きます。
『其方達も元気そうで何よりじゃ。まあいつも見ておるがの。それに愛し子に力を貸してくれている其方達も、楽しんでおるようじゃな』
「コスモス様、ご機嫌麗しく」
「妻がお世話になっております」
『我が使徒とその夫である其方も見ておるぞ!この間のあの戦闘、実に見事であった!それに愛し子の兄、其方面白い奴と契約したのう』
「ありがとうございます」
「どうも、ミツキがお世話になってます。……トニトルスとも知り合いで?」
『少しな。そして破壊と死の執行者。奴らの無理難題を熟しておるようじゃの……うむ、頑張れ』
「ありがとうございます。……コスモス様、そのお姿が本来のお姿です?」
『そうじゃ。さて、そちらの二人も名乗るが良い』
「お初にお目にかかります。ハイドレンジアと申します」
「リーフと、申します」
『ほほう!聖樹が目を掛けているエルフの娘と、黒曜の教えを受けている獣人……中々ユニークな事になっておる。我は宇宙、星詠みを見守る存在じゃ』
一人一人の顔を眺めて、声を掛けてゆくコスモス様。
本当によく見てらっしゃる……
「ほら、今日はいいワインを用意したよ」
「……グラスは私が」
『!!』
「お料理も皆で用意したので、ぜひお召し上がりください」
『い、いただくぞ!』
コスモス様の表情が、目に見えて明るくなりました。
ヴァイスさんから受け取ったグラスに、お師匠様がワインを注ぎます。
コスモス様、ワインが似合いますね。
『……!美味である!グラスも美しい!』
「百年モノだからね」
「お気に召していただけたようで」
『料理も美味しい!奴らこんなに美味しいものを……!めっちゃ美味しいのじゃ!』
ワインを傾けながら、次々と料理に手を伸ばすコスモス様。とても楽しそうです。
「……めっちゃ嬉しそうですな」
「はい、喜んでいただけましたね」
ミカゲさんの言葉に頷き返すと、コスモス様がこちらを見ました。
『ささ、冒険話を聞かせておくれ!見てはいるが、その時に其方達が何を思ったのかを、我は知りたい』
柔らかく笑みを浮かべるコスモス様。
その眼差しは、とても優しげです。
あの時は、この時はと話題を出してくれるコスモス様に相槌をうちながら、今までの冒険を振り返ってコスモス様と、皆と話をしました。
「あ、コスモス様。ラクリマの使う技について、聞きたいことがありまして」
『ああ、【宇宙創生】じゃな。アレなんでラクリマに引き継がれたのかはわからんのだが……まあ我のリソースを注ぎ込んだからじゃな。ラクリマよ、こちらへ』
呼ばれたラクリマがふわりと近寄ってきて、わたしの肩に留まりました。
『なあに?』
『【宇宙創生】の事じゃ。言葉の通りフィールドに宇宙を創生するんじゃが、発動者が宇宙となるため身動きが取れなくなる。移動不可って奴じゃな。そしてフィールドを宇宙空間に塗り替えて、あらゆる天体操作を可能とするものじゃ。アストラルウィザードへのステータスバフもある』
「身動きできず、フィールドを宇宙空間に……」
『宇宙空間での重力操作は相手を重力で浮遊させて体動困難にさせる。今回使用者が契約獣であるラクリマだった故、主な使用権利は契約者に与えられる。惑星操作権付与による【惑星招来】はランダムな惑星を召喚する大規模魔法じゃ。ただ宇宙空間を展開するのにマナを大量に消費する故、特殊な魔法を一度使えばラクリマは召喚石に戻るじゃろう』
『なるほど、眠くなったのはそのせい』
『そうじゃ。他にも特殊な魔法がある故、それは試して確認するが良いぞ』
他にも、その【惑星招来】のような特殊な魔法がある!?
お、恐ろしい……ポテンシャルが恐ろしいです。
コスモス様からの、派生ということでしょう。
コスモス様のお力も、とんでもなさそうですね……!
『もう少し成長すれば他にも使えるようになるだろう』
『はーい!頑張る!』
『ラクリマいい子じゃの〜!正式に眷属にならんか?』
『んー、考えとくね』
『……それ遠回しなお断りかの?』
とほほ……と肩を落としてコスモス様がカプレーゼを口に運びました。
その瞬間瞳が煌めき、ワインと一緒にカプレーゼを味わい始めました。
「コスモス様、彼らがわたしが新たに契約した三人です」
『おお、愛し子のことをよろしく頼むぞ。ようく手助けをしてやってくれ』
コスモス様の言葉を受けて、三人が拝礼しました。
その様子をみて、コスモス様が満足げに頷きました。
『あ、そういえば愛し子の兄よ。其方この間……』
「えっコスモス様見てたん?恥ずかしいな……」
その後は、皆の冒険の思い出話に花を咲かせました。
少し長くなるので分けます!!
宇宙:so happy……(ガッツポーズ)
これからもミツキの物語をよろしくお願いいたします!




