アルヒラル遺跡 ⑱ 第三十階層 VSダンジョンボス①
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◆アルヒラル遺跡 第三十階層
各々準備を済ませて、三十階層のセーフティエリアに下りました。
「ボスを倒すと、ドラゴンスレイヤーの称号が貰えるそうです」
「ははーん、一度憧れるやつじゃん」
「そのドラゴンスレイヤーの中で、ボスモンスターとの戦いをほぼ単騎で挑み勝利した事で一躍有名となったのがバルムンクのジークさんですね」
「へ、単騎!?」
「単騎か……ガチな人だな」
「色々と策や、バフやら盛ったようです。時間もそれなりにかかったらしいですが……実力がないとできませんよね」
単騎……!それはすごいです!
……わたしはヘラクレスさんとオリオンさんを喚べば……いや単騎じゃなくなりますね。そもそもの問題でした。
世の中にはすごいプレイヤーがいるもんですねぇ……
それにしても、ドラゴンですか。
初めて天体魔法を教わったときに、お師匠様が的にしていた時以来……かもです。
天空竜さんは敵対したわけではないのでノーカウントですね!
あの時は恐怖で動けませんでしたが、わたしも成長しました。
今回は頼れる仲間もいますし、持てる力を尽くして挑むのみです。
「ラクリマ、アストラエアさんも大丈夫です?」
「あたしはいつでも構わないよ。ミツキの護衛だからね」
『ラクリマも、マナで魔力回復できたから大丈夫』
「よし、頑張ろうね」
準備完了です。
兄とソウくんと頷き合って、扉に触れます。
一歩踏み入れた瞬間、空気が変わりました。
遠くに、神殿のような建物が見えますが……
その前は荒野です。
広すぎますね……今までで一番、フィールドが広いかもです。
真ん中で、一体のモンスターが地面に伏せています。
「〈へびつかい座〉〈オリオン座〉〈ふたご座〉〈りゅう座〉」
わたしが召喚している間に、自身を強化した兄が飛び出していきました。今回は手数で攻めます!
続いてふたご座の二人とドラコーンも走り……ドラコーンは浮いて、飛んでいきました。
「……?オリオンさん?」
オリオンさんだけは、その場で頭を抱えてしゃがみました。あれ……いつもと様子が違いますね……?
「……ミツキ」
「はい」
「すまん、相性が悪ぃや!喚ぶならサジタリウスで頼む!」
「え」
オリオンさんが瞬きの間に消えました。
えっ……そんなことあるんですね……えっ……?
「……火力が欲しいならヘラクレスだが、弓が欲しいならサジタリウスを喚べ」
「…………はい。〈いて座〉」
オフィウクスさんがため息をつきました。
ヘラクレスさんの枠はギリギリ足りますが……遠距離攻撃が欲しいのでサジタリウスさんを喚び出します。
サジタリウスさんが、苦笑しながら出現しました。
「……訳は後程、説明しますね」
「お願いします……?」
何がなんだかわかりませんが!?
もう向こうで皆が戦っているので、参戦せねば!
「【ブースト】【ハイブースト】」
走りながら強化します。
そしてモンスターをじっと見つめます。
ドラゴン Lv.70
アクティブ
【???】【???】【???】
【???】【???】【???】
うん、見えませんね!
そして攻撃を与えてもわかり易いほどにHPは減らないようです。
……映画で見るようなドラゴンですね。このドラゴンは鱗が黒いです。そして赤い瞳をしていま……あっ片方は金の瞳ですね。オッドアイ!
立派な翼と爪と牙と……うーん、強そうです。
(【流星】!【宇宙線】!)
流星より速く宇宙線がドラゴンを貫きました。
しかし次の瞬間、空より落ちる流星を察知したドラゴンは、長い尾を振り上げました。
「っ!」
「グルウウアアッ!」
流星を、尾で弾きました!流星は爆発しましたが、ダメージは……ほんの少しだけ、ですね。
ドラゴンから四属性の魔法が次々と放たれます。
(【ブラックホール】!)
離れた場所にいるので、戦闘の様子がよく見えます。
あっドラゴンの腕の振り払いが兄に直撃して吹っ飛びました。
吹っ飛ばされた兄の体が淡く光り、半分に減っていたHPが回復されました。
オフィウクスさんの回復が素晴らしいですが、恐るべきは振り払いだけで兄のHPを半分も削れるドラゴンの攻撃力……
(【流星群】!)
「ガアアアアアッ!」
空中に魔法陣が展開された瞬間に、顔を上げたドラゴンが魔法陣に向かってブレスを放ちました。
うえええ……反応速いですね……!?
「フレイムピラー!」
炎の柱が直撃しても、ドラゴンの体に焦げ跡一つ残りません。
うーん、一番ダメージを与えられるのは宇宙線ですね。
「ミツキさん」
「ソウくん。何かあった?」
ドラゴンの魔法を避けながら、ソウくんが滑り込んで来ました。
「魔法耐性も物理耐性も高そうなので、出来る攻撃は何でもやれとリューさんが」
「うええ……わかった。ありがとね」
「では」
ソウくんが離れていくのを横目に、ドラゴンの行動を見つめます。
ドラコーンのブレスをブレスで相殺し、爪や牙でカストールさんとポルクスさん、兄へ攻撃しています。
その耐性とやらが高いので、基本防御姿勢は取っていませんね。
これまでの攻撃でやっとHPの一割を削れました。
レベル70のモンスター、今までのモンスターよりも全体的に性能が違いませんか!?ステータスわたしの倍以上ありません?
こういう時のボスモンスターのHP、何故わたし達の10倍くらいあるんでしょうね?
兄に聞いたときに、「……それはどうにもならん。仕様。理不尽だけどそれがボスなんだよな」って遠い目で言われました。
「【金星】!」
「【銀星】!」
ポルクスさんとカストールさんがそれぞれ淡い金と銀のオーラを纏ってドラゴンに攻撃します。
「【チャージ】【ライトニング・シュート】ォ!」
「【アマルティア・D】、【アマルティア・A】」
(【宇宙線】!)
そうしてドラゴンに杖を向けた瞬間、目が合いました。
あっ嫌な予感がします。モンスターと目が合うと、碌なことありません。
「ガアアアアアッ!」
「わあああああ!!!」
両手両脚を使って地面を移動しながら、火球を放ってきます。
ブラックホールが火球を吸い込むので、わたしは全力で走ります。アストラエアさんが並走しながらドラゴンを振り返ります。
「チッ速いもんだ!」
「んにゃああああ!!【超新星爆発】!!」
すぐに吸収限界に達したブラックホールだった黒球を、振り返ってドラゴンへと杖を差し向けます。
そして爆発に煽られ宙を舞い、地面を転がりました。
は、鼻が……!
「ふぎぃっ!」
「すぐ立つ!」
「あい!」
アストラエアさんの言葉に返事して、すぐに立ち上がります。爆風に耐えられませんでした!
ドラゴンは……!
HPを七割まで減らしました!やはり超新星爆発……!星の終わりに、その輝きは最大級になるんですよ!!(謎の熱弁)
「【魔弾装填】【実体のない銃弾】」
「【紫雷】!【ライトニング・ドライブ】!」
「【暴発弾】!」
兄とソウくんの一撃を受けたドラゴンは目を細め、纏めて薙ぎ払うためか尾を振り回しましたが、ドラコーンもそれに合わせて勢い良く尾を衝突させました。
それによって生じた衝撃波に、踏ん張ります。
刹那、ドラゴンの片目から血が吹き出しました。
……サジタリウスさん!サジタリウスでしょうか!?片目を狙えるのはサジタリウスさんかソウくんですが、ソウくん尾の方にいますし!
その直後にラクリマの重力操作によって、ドラゴンが一瞬地面へと押し付けられました。
「ガァッ!?」
『大人しく、するが良いっ!』
「ギ、ィッ!」
「カストール!」
「ポルクス!」
ドラコーンが長い胴体でドラゴンに巻き付くと、カストールさんとポルクスさんが恒星の名前を叫びながら攻撃を加えます。
「「【我らは共に不滅なり】!」」
カストールさんとポルクスさんの一撃によって、ドラゴンのHPが五割まで減ると、バチバチと赤い閃光が弾け、ドラコーンが吹き飛ばされました。
ドラゴンは雄叫びを上げると、風を纏い空中へと舞い上がると、フィールドに竜巻が出現しました。
縦横無尽に竜巻がフィールドを荒らし、アストラエアさんとともに跳ね飛ばされました。
「うぐっ!」
そしてフィールドに降り注ぐ火球と岩、噴き出す水の柱……!
(【真空空間】!)
なんという地獄絵図なのか!
こんなフィールドに全体に作用する技!近寄れないですし、避けるのに必死です!
真空空間でも相殺しきれません!
カストールさんとポルクスさん、サジタリウスさんは器用に、アクロバティックに避けています。
ドラコーンは……岩を尾で打ち返してます。
兄とソウくんは……
「うおおおおおおっ匿ってくれ!」
「げほっげほっ」
ソウくんを引っ張って、兄がスライディングしてきました。
真空空間でも防ぎきれていませんが!
「完全に防ぎきれていませんけど!?」
「それでも、呼吸を整えるくらいなら問題、ないだろ!」
「…………」
じわじわと回復するHP……それに比例して減るMPです。MPの消費速度のほうが速いですね……
フルMPポーションで回復します。
オフィウクスさんがどこかで回復してくれているはずです。
……ラクリマと共にいますね!ラクリマとどうにか攻撃を避けています。
「HP残り五割で発動するには厄介すぎる」
「……地面に、落としたいですね」
「これいつになったら、止まるのか!オラァ!」
飛んで来た岩をハンマーで砕いた兄が、ドラゴンを睨み付けます。
ドラゴンは空中で魔法陣を展開しているので、降りてきません。
「……魔法を止めるか、引きずり降ろさないともしかして止まらないのかなこれ?」
「一撃のダメージが大きいアーツを使うか?」
「その手のアーツはリスキーですよね。僕はデメリットが大きいので、今使うのはやめておきたいです」
「俺も弱体化すっからなぁ……せめて二割まで減らしたいが」
ふむ、ではわたしがガンマ線バーストを使うか……でも強化無効が……
ドラゴンはいま強化状態のような気もするので、解除して無効に出来るのは強いです。
ただわたし達の強化効果も解除され、一定時間強化効果無効になるので……与えるダメージが少なくなる分、攻撃が多くなります。ジリ貧になるのは困りますね。
「うわっ!」
竜巻が真空空間に衝突しました。
相殺し切れなかったので、少しだけダメージを受けました。
星座たちも、攻めあぐねている雰囲気です。
ならば…………ソル様、本日は何かあればお喚びしてもいいと、仰っていただけました。
ソル様をお喚びした時には、特殊な魔法が使えるはずです。ラクリマの時にはMPが足りなくて、使えない魔法もありました。今なら、使えるかもしれません。
「……わたしに一つ、手がある」
「お、まさか……また爆発か!?」
「わからないけど!巻き込んだらごめんね!」
「何か手があるなら、よろしくお願いします」
「…………よし、じゃあミツキへの攻撃は弾いとくわ。ソウくんちょっと後ろ乗って」
「え、は、はい」
トニトルスを召喚した兄が、何故かソウくんを乗せて駆けていきました。
……わたしへの攻撃を弾いてくれるそうなので、ありがたくソル様を喚ぼうと思います。
「【19:太陽】」
太陽が描かれたカードが手のひらで弾けました。
そして、背後から柔らかな光と、暖かさを感じます。
ドラゴンを見据えながら、背後のソル様へと言葉を伝えます。
「……ソル様。そのお力、お借りします」
『……許す。扱ってみせよ』
「はい!ありがとうございます、ソル様!【ブースト】【ハイブースト】【変光星】」
自身を再び強化して、片手でウィンドウを操作します。MPポーションでMPを全回復します。
「ではソル様。本日は太陽を爆発させたいのですが……あれ、この質問不敬すぎません??」
『……太陽が爆発する訳では無いからな。構わん、疑似太陽を創る。イメージしろ』
右肩に温かさを感じます。以前のように、ソル様が力を送ってくれているのでしょう……ドキドキします。
イメージ……漆黒の空間で赤く燃え上がる太陽。
その太陽の表面で起こる爆発現象、描き出せ、わたし!動画で見たあの大規模な、爆発を!
「【太陽面爆発】!!」
◆◆◆
「ソウくんしっかり捕まっててくれよな!」
「は、はい!」
「トニトルス、マジで頼んだからな!岩は弾くから竜巻と水の柱はきっちり避けろよ!」
『……仕方が無い』
トニトルスに跨がって、フィールドを駆け回る。
あの空中を陣取るドラゴンを地に落とすために、妹がどうにかするってんならその邪魔をさせないのが兄の仕事ってな。
ソウくんを乗せている理由は、ミツキの攻撃に巻き込まれないように逃げるため、だな。
フレンドリーファイアは無いが、衝撃波に乗って飛んでくる岩のダメージとかはあるからな……
落ちてくる岩をハンマーで弾き返す。
……ホームランだろ、と見送ったドラゴンの真下に、赤く燃える球体が見えた。
あの特徴的な炎の揺らぎと、表面を流動的に流れる炎のような……?
「……【観測】」
−主な構成物質は水素とヘリウム、表面温度はG2Vです−
なんっでスペクトル型やねん!急に言われるとわからんやろがい!
なんてエセ突っ込みしたけど、Gなら……えっと……約6000度だったか……?そんで水素とヘリウムだろ……
「……やだー、ガチもんの太陽じゃん」
「リューさん?」
「あー、ソウくん一応アレ直視しないで」
ミツキの後ろで空中で優雅に足を組んで浮いている太陽が眩しいったら……メタ的に考えても恐ろしすぎる。
うちの妹、太陽で攻撃しようとしてるんですけど……!?
「【太陽面爆発】!!」
「ゲッ!?退避退避ー!」
『無茶を言う!』
「せめてミツキの後ろに!」
太陽フレアとか、もしかしたらデバフあるかもしれんだろうが!通信障害とか、体調不良とかになるんだぞ!
……これ、さすがにドラゴン死なねえかな?
展開的に、長くなるので分けます!!
いや本当、太陽を直視しちゃ駄目ですからね本当に。
太陽を直視すると焼かれるので(意訳)、太陽神殿に所属する神官達も、ソルの姿を見ることはできません。
基本的に、神殿に概念的存在である彼らが降りる事は無いです。声だけだったり、デフォルトの分身体だったりですね!
渡り人はお目溢しですね。ハーセプティアの民では無いので。
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




