アルヒラル遺跡 ⑮ 第二十六〜第二十七階層
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◆アルヒラル遺跡 第二十六階層
下りた先はなにやら神殿のような、海外でよく見る遺跡のような……
こう、人の手が加えられて作られた白色系の石造りの建物が広がっていました。
これはまた……再現技術が凄いですね……
広いですし、松明で明るく照らされています。
「こりゃまた、遺跡感が強いな」
「少し高低差がありそうですし、仕掛けも多そうです」
「仕掛け……アストラエアさん、罠はよろしくお願いします……」
「本職ってワケじゃないから正確じゃないが、注意するさね」
『ラクリマも視るね!』
もうこの先はレベルが高いモンスターが出ることが確定していますし、星座を喚び出しても良いと思います。
その為には、ソウくんと契約をして簡単にアストラルウィザードについて知ってもらうのが良いかもです。
このまま最後の階層まで向かう予定ですし、ソウくんにとってわからないことだらけでしょうし。
「……ソウくん、わたしの扱うアーツ等についてお話ししたいので、魔法契約を結んでいただいても……?」
「急に下手になった」
「あ、不都合はないはず!わたしのアーツについて契約外のプレイヤーに話せなくなるだけ!」
「……そもそも、そんな契約があるんですね……」
魔法契約もあまり知られていない代物……!
契約書を取り出して、頭を抱えました。
「ミツキ以外のプレイヤーに話すことないし、あんまり契約が履行されているかの実感はないな」
「……教えていただけるのであれば、是非。対価に僕の銃剣についても知っていただければ」
「……ありがとう、ソウくん。この先のモンスターの事を考えると、手札は簡単にでも知ってもらったほうが……」
魔法契約を結び終わった瞬間に、通路の先にモンスターの気配を感じました。
とりあえず手数が欲しいので、ふたご座の二人を喚び出します。
「「おや、初めて見る子だね」」
「……!」
「僕はカストール」「僕はポルクス」
「「武器で見分けを付けると良いよ」」
「……そ、ソウです……」
「「よろしくね。じゃあ、先手必勝ってね!」」
ソウくんより少し高めの身長をしている二人が、自己紹介をした瞬間、飛び出して行きました。
はっやい……
通路の先、曲がり角から顔を出したスケルトンは、ポルクスさんの拳によって武器を持つ腕の骨が砕かれました。
スケルトン・グレート・ソルジャー Lv.67
アクティブ
【剣術】【弓術】【槍術】
【光魔法脆弱】【鼓舞】
【絶対命令】【統率】
わらわらと通路の先から、スケルトン・ソルジャー達が出現し、通路を埋めていきます。
防具を身に纏った、しっかりした兵士……!あのスケルトン・グレート・ソルジャーだけ、すごいしっかりした装備を身に着けてます!
「キングよりも防具しっかりつけてんのどうなってんだ!!」
「あの隊長?みたいなスケルトン、ソルジャー達に指示を出してる!」
スケルトン・グレート・ソルジャーが剣を掲げると、スケルトン・ソルジャー達が声にならない雄叫びで、空気を震わせました。
「【ブースト】【ハイブースト】【流星雨】!」
「【ブースト】【ハイブースト】!オラァ!」
「【装填】【衝撃弾】!」
流星雨は容赦なく通路に降り注ぎます。
天井が低い場所で使うと、矢のように降り注ぎます。
それらがスケルトン・ソルジャーのHPを減らしていくのを確認しつつ、指示を出しているスケルトン・グレート・ソルジャーの姿を視界に捉えます。
「フレイムピラー!【宇宙線】!」
スケルトン・グレート・ソルジャーの周囲を固めるソルジャー達を燃やし、注意を逸してスケルトン・グレート・ソルジャーへ宇宙線が突き刺さりました。
やはり瞬時にモンスターへと直撃する宇宙線、使い勝手が良いです。ランダムなデバフも与えますからね。
今、スケルトン・グレート・ソルジャー……いや長いですね……グレート・ソルジャーは、徐々にHPが減少しています。
確認すると、宇宙線侵食状態と書かれています。
ぶ、物騒な……?どんな状態なのかわかりませんが……
「【宇宙線】!」
!宇宙線の与えるダメージが、少し多くなってます!
わたしに近寄ろうとしているソルジャー達はアストラエアさんとポルクスさんが牽制したり、骨を折り砕いているので、わたしはほぼ安全圏から魔法を撃つ固定砲台となっていますので、バンバン狙いましょう。
カストールさんは縦横無尽に剣を振るい、兄もハンマーで骨を折り砕いています。
ソウくんは、命中すると爆発する弾丸のようなものを撃っていますね。
グレート・ソルジャーが何か指示したのか、ソルジャー達が周囲を固めて盾を構えました。
む、トップであれば、守られるのではなく率いて突撃するものだと思ってましたが……
まあ、わたしには関係ありませんけどね!
「フレイムピラー!」
『光よ!弾けろ!』
「【宇宙線】!」
ラクリマの光魔法、アンデッドに対して効果抜群です。光魔法と炎で、周囲を固めていたソルジャー達は消えました。
そして宇宙線によって、グレート・ソルジャーのHPが消えました。
−スケルトン・アーミーを討伐しました−
種族レベルが上がりました。
任意の場所へステータスを割り振って下さい。
SPを2獲得しました。
メインジョブレベルが上がりました。
契約召喚:宇宙蝶のレベルが上がりました。
スケルトン・ソルジャーの呪骨、朽ちた剣を入手しました。
スケルトン・グレート・ソルジャーの勲章を入手しました。
おや、レベルが上がりました。
ガーディアン・ゴーレムで貰った経験値は、レベルアップまであと少しだったようですね。
ミツキ Lv.68
ヒューマン
メインジョブ:アストラルアークウィザード Lv.10/サブ:薬師 Lv.17
ステータス
攻撃 66
防御 98 +1 (+68)
魔攻 201 +2 (+40)
魔防 95 (+68)
敏捷 63 +1 (+15)
幸運 98 +1
ついに魔攻の値が200を超えました!
達成感がありますね!
それに、アストラルアークウィザードのレベルが10になったので、お師匠様から新しい天体魔法を教えてもらえます。
そして、勲章を入手しました。
スケルトン・グレート・ソルジャーの勲章……?
スケルトン・グレート・ソルジャーの勲章
スケルトン・グレート・ソルジャーが身に着けている勲章
スケルトンを合成する際に使用すれば、スケルトン・グレート・ソルジャーとなる
……スケルトンを、合成?
スケルトンを、作れるんですか!?それはまた、凄いですね……
「いやあやっぱりスケルトンにハンマーは楽しいわ」
「スケルトンに銃は、あまり効果がないですね。魔弾であればダメージは与えられますが」
「ガーディアン・ゴーレムみたいに魔法無効のモンスターが出てきたら、わたしは何もできないな……」
ソウくんに簡単にわたしの扱う魔法について説明をしつつ、道中宝箱を開けながら進みます。
襲い来るコウモリ型のモンスターを倒して進むと、階段が見えました。
『……あ、スイッチ』
階段がある部屋、セーフティエリア手前の壁をラクリマが押すと、宝箱が転がり出てきました。
中には石版の欠片と、一枚の紙が入っていました。
『最下層の主を倒し、石版の欠片を繋ぎ合わせ、祭壇へ捧げよ』
「……祭壇」
「ふむ、主とやらは三十階層のボスのことでいいんかね」
「第三十階層が、最下層のはずですからね」
祭壇……石版を捧げたら、何が起こるのか……
祭壇がある時点で、この遺跡が何かを祀っている可能性が出てきました。
「いや、祀られているのか、もしくは封印されているのかも……?」
「妹が物騒な事言い出したよソウくん」
「この遺跡は、ダンジョンというだけではない……?」
……手持ちの石版の欠片は9個です。あと何個あるのか……
と、とりあえずセーフティエリアに入ります。そこには変わらず壁画がありました。
ふむ、あまり壁画に変化は無さそうです。
そのまま進みましょう。
◆アルヒラル遺跡 第二十七階層
ダンジョンの様子は変わりないですね。
ただ……目の前には、壁があります。
えっ
「スポーツクライミング的な……?」
「……んー、このパズルを解くか、お急ぎの方は壁を登れって書いてあるな」
「なんて面倒な……」
壁には取手もついてます。
えぇ……急に体力を使いそうなギミックです。
パズルは……ピースがそこそこあります。
し、しかも……!白いです!
「ミルクパズル……白無地のパズル!?」
「さすがにこれは運営が鬼畜すぎる。宇宙飛行士目指してんの??」
「一般人だと時間かかるよ……!」
有名な、白無地のパズルですかねこれ!?
宇宙飛行士になるための選抜試験で、忍耐力や集中力を見るのに使われるパズルですね!
さすがに100ピース程とは言え、白無地ですからね……
神経使いそうです。
「飛ぶのはアリかなぁ……ラクリマ、上の様子を見て来られる?」
『少しだけ待ってて』
ふわりと飛んで行ったラクリマ。
でも階段は下りるものなので……恐らく、登ったら下りるのでは?
少し待つと、ラクリマが戻ってきました。
『上には宝箱があったよ。でも、また下りないといけないみたい』
「やっぱり……」
「よし、登るか。ミツキは飛べるだろ?」
「僕も飛びたいですね……」
「俺も飛びたいけどよ」
『ラクリマ、糸で引っ張る?飛ぶ?』
「モンスターの気配はないねえ」
結論、ラクリマの糸を掴みながら登ることになりました。白無地のパズルに挑戦するのは、思っている以上に時間がかかるかもなので……
登る、という動作が必要かもしれないので、二人は登るとのこと。
わたしは体力が無いので、二人のサポートをしつつ重力操作で浮いていきます。
アストラエアさんは壁はすいすい登られるので、ラクリマの近くで待っています。
そうして兄とソウくんが糸を掴みながら壁を登り、少し進んだ瞬間に左右から何かが起動した音が聞こえました。
「っ、【真空空間】!」
咄嗟に発動した真空空間に衝突した何かが、凍り付きました。
「ミツキ、水や炎の矢が左右から一定の間隔で放たれる仕組みのようだよ」
「さすがに上からは無さそうだよ」
「登っている人を狙うとは小癪な……!」
「いやまあ本来はパズルを解けばいい話だからな……」
「そうですね……」
ふたご座の二人の言葉に、左右を見ます。
確かに、何か不自然に四角い穴があります!
一定間隔登ると、放たれるようです。
これ、プレイヤーはどのように対処するんでしょうか……!?
「掲示板が二十五階層から罵倒ばかりだった理由がわかったぜ……」
「攻略サイトでこのダンジョンの評価が下の階層に行けば行くほど、やる気と強さを身に着けたプレイヤー向けって書かれていた理由を、理解しました」
そんな事が書いてあったんですか!?
飛んでくる火の矢を防ぎつつ、上へと向かいます。
「……ゲーム内で、クライミングするとはな」
「クライミング系の、パッシブスキルも取っておくべきでしょうか」
「水泳系とか、登攀系か……」
登りきった所で、兄とソウくんが座り込みました。
お、お疲れ様でした……!下りる時は、わたしと重力に従いながら行きましょう!
「ミツキー、宝箱あけてくれー」
「はーい」
そのまま二人は休んでいて貰って、宝箱を開けます。
登攀ロープ
絶対に切れない登攀ロープ
目視で頂上、または地面が確認出来る場所で使用可能
※これはクライミングしたプレイヤーへのアイテムとなります
……ご丁寧に、二つの登攀ロープが入っています。
登り切ってから渡すのは少しタイミングに悪意を感じますが……
クライミングには使えますね。
「二人に、登攀ロープが入ってたよ」
二人に渡すと、鑑定したのか項垂れてため息をついて、アイテムボックスへとしまいました。
登ってきた側と反対側を覗き込むと、セーフティエリアへの入り口と思われる通路が見えました。
「……重力操作で飛び降りよう」
「大胆な発想」
「その方が安全に下まで行けるかなって……」
左手を兄に差し出すと、躊躇いなく左手を掴まれました。杖をしまってソウくんへ振り返りましたが、気付きました。
「……そんなに仲良くない人の手を掴むとか嫌だよね!ラクリマ、ソウくんの事をお願いね」
『わかった!』
ラクリマが糸を出して、ソウくんの片腕へと巻き付けました。
「よし、お兄ちゃん、フリーフォールといこう」
「ゆっくり、ゆっくりな」
重力操作で体を浮かせて、ゆっくりと下ります。
よし、着地です!
「いやあ便利だな」
「重力を操れるなんて、恐ろしいけどね」
「それはそれ」
ラクリマとソウくんの様子を見るために振り返ると、そこにもまた、壁画がありました。
この壁画は……太陽と月、風や雷などの自然現象……そして、争いの様子がはっきりと描かれていますね。
逃げる者、祈りを捧げる者、モンスターの前にひれ伏す者……
「モンスターの前でひれ伏すのは……」
「まあ命乞いか」
「……あの建物、ここの遺跡と似てますね」
地面へと降り立ったソウくんが指差す先には、遺跡がありました。
おお、確かに面影はあります。そしてその前で跪く者の姿が……
「……封印か祀られている線が濃厚になったな」
「なっちゃったね……石版が完成するの恐ろしいな……」
「……掲示板にはこの遺跡はダンジョンである、という情報しか無さそうなので、役立つ情報はありませんね」
ひえ……何が待ち受けているのかわかりませんが、十分に準備を行ったほうが良いです。
お師匠様から天体魔法、教わってきましょうかね。
「んー、十五分くらい休憩するか?」
「クライミングで結構、精神的に疲れましたね」
「……その間に、少しだけお師匠様の所に行ってくるね。新しい魔法を教わってくる」
セーフティエリアに入って、一旦パーティーを解散して、お師匠様の下へ向かいました。
実はミツキ達は白無地のパズルと判断しましたが、触れれば各地の風景が浮かぶパズルでした。さすがに白無地のパズルは鬼畜ですわ……
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




