アルヒラル遺跡 ⑥ 第十一階層
ご覧いただきありがとうございます!
お昼は野菜タンメンにしました!
麺を茹でる兄の隣で野菜を炒めました。美味しかったです!野菜は案外お腹いっぱいになります。
そして再びログインしました。
プレイヤーの姿は無いですね。
ラクリマとアストラエアさんを喚び出して、軽くお腹に入れられる物を作ります。
魔法道具のコンロを取り出して……
アイテムボックスを眺めます。……ふむ、バゲットがあるのでブルスケッタを作りましょう。
手早く簡単に作れますからね!
ひとまず切り分けてガーリックトーストにするのに焼きます。
あとはブルスケッタと言ったらトマトですかね。細かく切って、オリーブオイルとバジルで和えて。
あ、チーズも乗せちゃいましょう!
考えるだけで美味しいですね!炙れれば更に美味しいんですが……今度バーナーのようなアイテム探しましょうかね。
「うお、ログインしたら美味そうな匂いが」
「簡単に作れて、簡単に食べられるブルスケッタをね」
「さすがかよ」
「少しはお腹に入れないとね」
ひとまず一人四つ食べられるように焼きました。
よし、これで良いでしょう!
大きめの皿に乗せて、コンロは仕舞います。
マットを敷いて、皆で座ります。
「「いただきます」」
『いただきますー!』
「いただくよ」
一口かぶりつくと、口に広がるガツンとしたガーリック、トマトの酸味とバジルの風味……それらをチーズが包み込んで………美味しいです!
「うっっっま」
『美味しい!』
「こりゃ美味しいね」
これは止まらないですね!ぺろりと食べられます!
うま……至福……ダンジョン内でも美味しく食べられる幸せ……
「まじ美味かった。俺も今度コンロ買うかな……何処で買った?」
「これは王都で買ったよ。建国祭のセール中だったから、今はもう少し高いかも」
店があった場所をマップを開いて教えると、兄はマップに印をつけて頷きました。
コンロ、あると便利ですからね!
「うし、午後もダンジョン攻略頑張るか。モンスターのレベルも上がるだろうしな」
「うん!ラクリマ、アストラエアさん午後もよろしくです」
『任せて!』
「より一層注意して進むのがいいさ」
軽く頬を叩いて気合いをいれます。
いざ、第十一階層へ!
◆アルヒラル遺跡 第十一階層
階段を下りたら、森でした。
………えっ!森!?
「ゲッ森じゃん……マジかよ」
「ワンフロア森って……すごいね」
「面倒だな……さっきみたいに真っ直ぐ反対側に階段があるならいいが、森だと方向感覚が掴みにくい」
兄が上下左右を見回して、小さく舌打ちしました。
確かに太陽があるわけでもない、広い空間が森で覆われていると思われるこの空間だと、ちょっと歩いただけで方向感覚が狂いそうです。
『あ、ミツキ。報告なんだけどね』
「報告?」
『さっきレベルアップしたら新しいスキル貰ったから。ここは他の人の気配も遠いし』
「なんと!?」
アナウンスが無いのでわかりませんでした!
ラクリマをジッと見つめます。
宇宙蝶 《ラクリマ》Lv.65
パッシブ
【休眠】【魔力糸】【硬化】【斬撃耐性(中)】
【衝撃耐性(中)】【風魔法】【闇魔法】【光魔法】
【重力操作】【自然回復】【身体転変】【気配遮断】
【心眼】【超速再生】【光合成】【木魔法】【空間移動】
【世界樹の知恵】【世界樹の加護】【宇宙の加護】
「……………【空間移動】?」
『そうそれ』
「響きがエグいんだが?」
『名前の通りだね。えっとね…』
響きがヤバそうなんですが!?
ラクリマの言葉の続きを待ちます。
『……空間を越えるから、ダンジョンからでも移動出来るね』
「えっ」
『使おうとすると、今まで行った場所と……多分ミツキの仲間の元も行ける。リューも選べるし、ミカゲとかも選べる』
「えっ」
「は?マジ?」
『これは宇宙関連なのか、世界樹関連なのかな……空間だし。あ、ミツキの師匠の所も行けるみたいだから、届けるものとかあったら言ってね』
そう言ってふわふわと舞うラクリマを凝視します。
プレイヤーの元にも移動出来るんですか!?
わたしも欲しいです!
SPの数を確認して取得出来そうな中にあるかどうか急いで確認すると、
「SP20も使うの……!?」
「マ!?でもプレイヤーも取得できんだな!?」
「で、でも【瞬間移動】とかと似たようなものじゃない!?」
「………あー、ミツキ。一応【瞬間移動】は場所、【転移】は詳細な場所と人が選べるんだぞ。あと戦闘中は無理」
「えっあっそうなの!?」
『戦闘中はわからないから後で試してみるね!』
「……その辺にしておきな。モンスターの気配だよ」
待ってください初めて聞きました!
えっ………ええええ……!?
混乱している最中、アストラエアさんの言葉に兄とラクリマは臨戦態勢になりました。
わたしはまだ混乱中ですが、杖を握りしめます。
キキーーーッ
キィーーーッ
甲高い声が近付いてきました。
そしてガサガサと木を揺らしながら現れたのは、猿のようなモンスターでした。
フォレストモンキー Lv.55
アクティブ
【奇声】【投擲】【招集】
【木魔法】【根術】【挑発】
フォレストモンキー Lv.55
アクティブ
【奇声】【投擲】【招集】
【木魔法】【根術】【挑発】
フォレストモンキー Lv.55
アクティブ
【奇声】【投擲】【招集】
【木魔法】【根術】【挑発】
深緑のように深い、暗い森のような色の体毛をした、猿の群れです。
爛々とした瞳で、枝からぶら下がっています。
「【ブースト】【ライトニング・シュート】ッ!」
「【ブースト】【ハイブースト】ストームピラー!」
瞬時に強化し、体を捻って槍を投げた兄に続いて、強化してぶら下がる木々を巻き込むように風の柱を出現させます。
ぐぬぬ、森の中はこう、圧迫感があります!
木々が邪魔ですよね!
他の木へと飛び移ったフォレストモンキーは枝を折りそれを思い切り投げつけて来ました。
「っ!木は大切にしなさいっ!」
(ウォーターボム!)
落ちている枝ならまだしも、枝を折るとは!
フォレストと名のつくモンスターなのに!
『森は大切にしないといけないんだよー!』
「そうだそうだー!」
ラクリマの言葉に便乗して叫びます。
その隙にアストラエアさんが木に登り、フォレストモンキーを地面へと蹴り落としました。
「キキーーーッ!」
「キィーーーッ!」
「【スパーク・ランス】!……ってやっべえ!ミツキ、水!」
焦ったような声で叫ぶ兄の方向を見ると、一体のフォレストモンキーを木に刺し貫いた兄が、勢い良く槍を引き抜きました。
そして消え落ちたフォレストモンキー、穴が開いたように抉れた木が……小さく燃えていました。
「うわあああウォーターウォール!えっと、ウォーターボム!ウォーターボムー!」
水の壁で火が燃え移らないようにカバーして、とりあえず威力の高い水魔法を放ちます。
まだ水魔法のピラー系魔法は覚えてませんので!
森林火災は洒落になりませんから!
「すまんかった。雷で燃えた」
「要注意だね……」
『ミツキー!リュー!残りのモンスター捕まえたー!』
消火活動をしていたら、ラクリマとアストラエアさんが逃げたフォレストモンキーを捕まえていてくれました。
-フォレストモンキーを倒しました-
フォレストモンキーの毛皮、魔石(小)を入手しました
フォレストモンキーをボッコボコにして、アナウンスが流れた事を確認して森を進みます。
一応、獣道よりは少しわかりやすい道がありましたので……
なんか、日々ゲームやっていると知らない事がたくさん出てきます。
知らない事ばかりなので知れるのは嬉しいですが、知った時の衝撃が……
「……ミツキ?」
「……ん、何かあった?」
「いや、珍しく何か考え込んでるみたいだから声かけた」
珍しくとはなんですか珍しくとは。
兄の言葉に少しむくれつつ、知らない事ばかりで日々驚きだ、と言うことを伝えます。
「そりゃミツキはあんまりゲームしないしな。色々なゲームやってると経験則でこのパターンの時はこういう事起こりそうだよなーとかあるけど」
「ここまでガッツリゲームやるの初めてだからね」
「新鮮で良いじゃん。ミツキはそれで良いよ」
森に視線を向けつつ会話をしていたら、兄の声音が柔らかくなったのでちらりと兄の顔を見上げます。
「俺みたいに経験則で考えるのもアリだし、ミツキのような考え方が突破口を見つけたり、新たな視点で見れるかもしれないしな」
笑みを浮かべながら視線を前に向ける兄に、そういう物なのか、と納得します。
『……ミツキ達は、バランス良いと思うよ』
「そうさね。ミツキ達の個性はバラバラだが、上手く調和されてるんじゃないかとあたしは思うぞ」
『皆あらゆる方向に個性伸びてる感じ』
「……二人に言われるとか、俺達やべーな」
そんなにですか……!
ラクリマとアストラエアさんからみても個性的ですかわたし達は!!
「ほら、進むぞ」
軽く背を叩かれ、小さく頷きます。
ゲームって奥深いですねぇ……
気配を探りつつ進むと、森の終わりと共に階段が見えました。道の通りに進んできましたが、道はくねくねしてましたので反対側なのかわかりませんね。
「さすがに隅々まで見ると時間かかるしなー、どうすっかな」
「宝箱?」
「そ。石版の欠片の事もあるからな……さすがにラクリマも見ないとわからんだろ?」
『確かに見ないとわからないけど……ここには無いみたいだよ』
「えっわかるの?」
『うん』
ラクリマが小さく頷きます。
えっわかるんです!?
『ラクリマは半分コスモスの眷属で、半分世界樹の眷属みたいな感じでもあるから。木に聞けばわかる……というか、教えてくれる』
表情はわかりませんが、なんてことないように言うラクリマに、わたしも兄も口を開けました。
「お兄ちゃん、うちのラクリマが凄すぎる……」
「ラクリマ、恐ろしい子……!」
『詳細な事はわからないからね!あと、石版の欠片を持ってなければ教えてくれないだろうし』
「ラクリマのお手柄だねぇ」
アストラエアさんの言葉に嬉しそうに回転するラクリマ。
ラクリマが言うなら、間違いないでしょうね!
「……じゃあ下りるか」
「そうしようか…」
顔を見合わせて、ラクリマを褒めつつアストラエアさんの聴覚と嗅覚にも頼りながら、階段を下りました。
ラクリマの能力と相性の良いダンジョンだな……
あとステラアークの中なら言わずもがな、ダンジョンを踏破するのに最適なのはレンです。
もう少しレベルが上がったら、リューのステータス入れますね……
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




