アルヒラル遺跡 ③ 第四〜第五階層
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◆アルヒラル遺跡 第四階層
階段を下りました。
今の所景色は変わりませんね。
「景色変わらないねぇ…」
「ボス戦終われば変わるだろ」
「せめて天井がもう少し高ければ圧迫感が無いんだけどな……」
通路での戦いは、どうしても壁とかの閉塞感がですね!
それに放った魔法が仲間を巻き込まなくて本当に良かったです。もし仲間にもダメージを与えるものだったら、確実に巻き込んでました。
「ウォーターボム!」
「オッラァ!」
「ハッ!」
『くらえ!』
押し寄せるゴブリンナイトの群れを、蹴散らしながら進みます。
……こう見ると、兄は槍も使いますが、足技?も使いますね。
アストラエアさんも全身をしなやかに使っています。
「ウォーターボム!ウォーターボム!」
ゴブリンナイトを倒しつつ進むと、拓けた空間に出ました。あ、奥に階段が見えます。
絶対モンスター出てきますね……
兄がこちらに視線を寄越したので、頷きます。
そうして全員が足を踏み入れると、雄叫びが響きました。
人食い大虎 Lv.50
アクティブ
【捕食】【噛み付き】【爪術】
【狂化】【共食い】【風魔法】
【指揮】【咆哮】
あ、いつぞやかヘラクレスさんがボッコボコにした人食い大虎です。
よし、先手必勝です!
(【重力操作】!)
杖と左手を向けて、重力で押さえつけます。
そこに更に圧が加わり、人食い大虎とともに地面に亀裂が走りました。ラクリマですね!
「……その技も本当に強いな」
「わたしも驚いてる。ラクリマのおかげだね」
「レベル差もあるしな。うし、そのまま動き止めておいてくれ」
『じゃあもっと動けないようにしよう』
ラクリマが魔力糸を伸ばし、必死に重力に抗う人食い大虎に巻き付くと、更に地面の魔法陣から木蔓が巻き付きました。
(【二重詠唱】、ウォーターボム!)
ラクリマが人食い大虎を縛り上げたので、重力操作を解いて杖を向けます。
兄が胴体へ向けて槍を握った腕を振るい、アストラエアさんが空中から人食い大虎を勢い良く踏み付けました。
そしてそのまま飛び上がり、回転して着地します。
獣人の脚力とジャンプ力はすごいですね……
あと速さが段違いです。
「そら、弾けろ!【スパーク・ランス】!」
両手に握り締めた槍を勢い良く突き出した瞬間、槍先がバチバチと明滅し、次の瞬間電流が迸りました。
雷と槍のアーツ、すごいですね!?
派手です。それを使いこなす兄もすごいです。
そして目にも止まらぬ突きを繰り返し、人食い大虎のHPを全て削りました。
「……ん、レベル上がったな」
人食い大虎を倒したアナウンスを聞くと、兄がウィンドウを操作しました。
レベルが55になりましたね。
「次はボス階だし、サクッと行こうぜ」
「うん!」
『ここにはもう何もないよ』
宝箱もありませんでした、残念……
では次の階層に下りちゃいましょう。
◆アルヒラル遺跡 第五階層
階段を下りると、そこは広い石造りの空間となっていました。奥には扉があります。
そして数人のプレイヤーがいました。
おや、もしやこの場所がセーフティエリア……?
部屋の角には、ダンジョンの入口で乗ったサークルの縮小版と言えるような、小さいサークルがありました。
「下りてすぐセーフティエリアとか優しいな」
「ボスに挑む前に準備出来るんだね」
「すぐ行くか?休憩する?」
わたしはふわりと浮かぶラクリマと、アストラエアさんに視線を向けます。
ラクリマはふわふわと揺れて、アストラエアさんは笑みを浮かべています。
……全然疲れてなさそうですね。
「わたしは大丈夫、いけるよ」
「じゃあ行くか」
天体魔法をビッグスライムと重力操作でしか使ってないので、MPに余裕はあります。
「順番とかあるのかな?」
「んー、どうだろうな」
「……あの、誰も挑んでいないので大丈夫です。最大10パーティーまで挑めるのは確認してます」
「……お、ありがとな」
近くにいたプレイヤーが教えてくれました。
最大10パーティーも挑めるんですか!?どうなってるんですか!?
「ほあぁ……どんな仕組みなんだ」
「まあゲームだしな。亜空間とかあるんだろ」
槍を担いで適当に言う兄をジト目で見つつ、まあ考えてもわかりませんからね。
挑めると言うなら挑みましょう。
さてどんなモンスターなのか…
杖を両手で握り締めながら扉へ近寄ります。
そして扉に触れると、ゆっくりと扉が開きました。
扉の先は白く、見えませんが……皆で足を踏み入れました。
瞬時に視界が切り替わりました。
石造りの、松明で照らされた広い空間です。
対角線上には、宝箱と扉があります。
そしてフィールドの中心から黒い靄が発生し、そこからガシャガシャとスケルトンが出現すると、最後にスケルトンより一回り大きい、朽ちた王冠を被ったスケルトンが出てきました。
スケルトン・キング Lv.50
アクティブ
【剣術】【弓術】【槍術】
【光魔法脆弱】【鼓舞】
【絶対命令】【大号令】
「……ぁぁぁぁぁ」
兄が小さい悲鳴を上げながら膝をつきました。
兄よ、やはりフラグとやらを立てたのでは?
「しゃんとしな兄貴さんよ!敵と妹の前で変な姿を見せちゃあ男が廃るぞ!」
「!」
「なぁに、バキバキにすりゃいいんだよ!」
拳を握りながら兄の背を軽く叩くアストラエアさんの鼓舞に、兄が立ち上がりました。
「……うおおおお!やってやんよおお!【ウェポン・コンバート】ッ!」
そう言って槍から何かに武器を持ち替え……ハンマー!?なんかハンマーみたいなの握り締めてます!
「ラクリマは光魔法ね!」
『任せて!』
ラクリマの背後に魔法陣が浮かび、そこから光の矢が次々と発射されました。
(【ブースト】【ハイブースト】ウォーターボム!ストームピラー!)
「そおおおらッ!【サンダーボルト・スタンプ】ッ!」
スケルトン・キングを守るスケルトン・セイバーやスケルトン・アーチャーを散らすべく放った魔法は違わず直撃し、そこにハンマーを振り落とす度に落雷も落とす兄がスケルトン達をバキバキにします。
ラクリマが光魔法でスケルトン・キングを牽制し、アストラエアさんがこちらへと放たれる魔法や矢を次々と弾きます。
(【二重詠唱】ウォーターボム!)
スケルトン達へ水が弾け、兄がハンマーを持ってグルグルと回りながらスケルトン・キングの周りのスケルトン達を散らしました。
「よっしゃあ!粉々にしたるわあああ!!【バラク・インパクト】ォッ!」
兄が雷を纏ったハンマーを、思い切り振りかぶるとスケルトン・キングが盾で受け止めましたが、勢いを殺せずに音を立てて壊れた盾と共に壁へと吹き飛びましたら、
「ホーム、ランッ!」
振りかぶったフォームのまま、兄が元気良く叫びました。…………ストレスでもありましたかね。
壁へと衝突したスケルトン・キングは肋骨を折りつつも立ち上がりました。
「【オオオオオオオオオッ】!」
そして発声器官が無いはずの口元から雄叫びをあげると、再び黒い靄がスケルトン・キングの足元から出現し、スケルトン達が溢れ出ました。
「おかわり!?」
「ハッハァ!バッキバキにしてやるぁ!」
「お兄ちゃん落ち着いて!?」
テンションの振り切れた兄がハンマーを片手にスケルトン達の骨を折りつつ、攻撃を避けながら的確に頭蓋骨をホームランしてます。
……まあ兄ならそう簡単に死なないでしょう!
(ウォーターウォール!ウォーターボム!)
兄の雷を感電させるのに積極的に水魔法を使います。
気のせいかもですが、なんか雷のバチバチ感が強くなっていると思ったので……
兄も水と雷凄いって言ってましたし!
きっと、相乗効果とかあるはず……!
(【二重詠唱】ウォーターボム!)
「【サンダーボルト・スタンプ】ッ!」
ラクリマによる木の蔓によって足を拘束され動けなくなっていたスケルトン・キングと、アストラエアさんが蹴り飛ばして寄せたスケルトン達の群れに、わたしの魔法と兄のアーツが直撃しました。
響く轟音、轟く雷鳴……骨が折れ、崩れ落ちる音。
-第五階層 ボスモンスター スケルトン・キング を 討伐しました-
響いたアナウンスに、小さく息を吐きました。
「ふぃー、折った折った」
「お兄ちゃん落ち着いた?」
「いい発散になったわ。でも槍のが好きなんだよなぁ」
「聞きたいこともあるし……ひとまずあの宝箱開けよ」
「おー」
四人で宝箱に近寄ります。
ダンジョン内にあった宝箱より意匠が少し豪華です。
兄と一緒に蓋を開けるとそこには……
スケルトン・キングのダイヤモンド
スケルトン・キングの骨から造られたダイヤモンド
武器、アクセサリーに使用するとスケルトンを召喚する【召喚・骨】のアーツを付与する
「「………えっ」」
「……宝石かい?」
『……宝石?骨から宝石ってつくれるの?』
……き、聞いたことあります!
遺骨で作る指輪とか……!いやでもこれはスケルトン・キングの骨から造られたダイヤモンドとか、なんか凄いですね!?
そっと手に乗せます。
光を反射してキラキラと輝くダイヤモンドは、どこから見ても……ダイヤモンドですね。
あっ宝箱が消えました。そして扉が開きます。
扉の先は、先程のセーフティエリアと同じような空間と、階段が見えます。
「……ひとまずセーフティエリアに行くか」
「……うん、わたしが持っておくね」
兄の言葉に頷き、アイテムボックスへスケルトン・キングのダイヤモンドをしまいます。
ここまで来るのに一時間半くらいかかりましたし、セーフティエリアで少し休憩しましょう。
「んで、聞きたいことって?」
兄とアストラエアさんと壁に背を預けて座ります。
ラクリマは膝に留まりました。
「んー、答えられればでいいんだけど……お兄ちゃんの雷の力って、魔法?属性?」
「……そうさな、どちらかと言うと属性付与って所だな。パッシブスキルに【雷属性付与】ってのが追加されてるんだけど、アーツでの攻撃に雷属性が付与されてる」
「アーツに、属性付与か……」
「そそ。俺はウィザードじゃないから雷魔法は無えけど……んでトニトルスの爪で作った槍は雷属性を増幅する作用があってさ。相性良いんだよな」
「……属性付与って強そうだね」
単純な事しか言えませんけど、強いですよね!?
もし相手の弱点で切り替えられたら、戦況も有利になります。
「……オンオフ出来る?」
「出来るんだなこれが」
「強いじゃん……」
「強いけど、入手方法が限られるからな……てか不明」
確かに、入手方法わかりません。
一人で何個も入手したら、それはとても強そうですし……騒がれそうです。
あれ、そういえばサジタリウスさんが、弱点属性になる矢とか使っていたような……?
「まあ雷のスペシャリストと呼んでくれたまえ」
「………頼りにしてるよ本当に」
「突っ込め……うし、そろそろ行くか?」
少し休憩出来ましたからね。
まだ第五階層ですし。
「ラクリマもまだ余裕ある?」
『うん。まだまだ行ける!』
「アストラエアさんも、武器や防具の使い勝手とか大丈夫ですか?」
「恐ろしいくらい使いやすいさ。手に馴染むし、頑丈だ」
それは重畳……!
アストラエアさん、わたしに目を向けつつモンスターへ牽制する視野の広さも持っています。
そしてその俊敏さ……さすがの俊敏性です。
パワーもありますし!
頼りになりますね……
契約した相手、優秀すぎます。
わたしも、レベルアップ、スキルアップ出来るよう……得るものがあるよう考えながら進みましょう!
「よし、いこっか」
「おー。サクサク進もうぜ」
次は第六階層です。
どんな階層か楽しみですね!
わたし達は軽い足取りで、階段を下りました。
作者もダンジョンに詳しい訳では無いので拙い所もあるかもですが……( ˘ω˘)
ボスモンスターどうしようかなぁ……
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




