アルヒラル遺跡 ② 第二〜第三階層
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◆アルヒラル遺跡 第二階層
階段を下りると……景色は変わりませんでした。
しかし天井が高くなり、道幅も広くなりましたね。
「明らかに背の高いモンスターが出てくる気配」
「んええ……」
「ラクリマ、幻術の気配無いか?」
『……うん、この辺りには無さそう』
気配を探りつつ通路を歩きます。
今の所モンスターも、プレイヤーもいませんね。
「ミツキ、止まりな」
「はい?」
「一歩進めば落とし穴さね」
「へっ!?」
「空気が入る音がする」
アストラエアさんの言葉に、兄の方へとそっと寄ります。そんな音しませんが!?
ラクリマが糸で押すと、地面が開きました。
わ、わあ……典型的な落とし穴です。
1mほどの深さで、所々から槍の穂先のようなものが突き立てられてますね……
「……エグいな。死ぬほどじゃねえけど痛いもんは痛いタイプじゃん」
「えっこわ……」
「まあ普通のパーティーは罠察知する職がいるからなぁ」
「なるほど、レンさんみたいな」
「レンくんのは特殊。盗賊職とか……罠感知出来る職もあるんだが、俺はそっち系のスキル無いからな……勘だな。まだこの辺の階層なら、罠で死なないと信じてる」
兄が遠い目をしました。
……下層だと罠で死ぬかもって事ですか!?
「……っと、なんか来るな」
『うん、体が大きいやつ』
「……ふむ、こりゃオーガの足音じゃないかい」
アストラエアさんの言葉と同時に、通路の奥から鎧の擦れる音が聞こえてきました。
オーガ・リーダー Lv.50
アクティブ
【棍術】【雄叫び】【打撃】
【狂化】【捕食】【号令】
オーガ Lv.50
パッシブ
【棍術】【雄叫び】【打撃】
【狂化】【捕食】
オーガ Lv.50
パッシブ
【棍術】【雄叫び】【打撃】
【狂化】【捕食】
「グオオオオオオオオッ!」
オーガ・リーダーが上げた雄叫びは、空気を振動させ衝撃波となってこちらへと到達しました。
それに合わせて引き連れてきたオーガ達も雄叫びを上げます。
「っ!」
「チッ!」
一瞬体が強ばりましたが、すぐに解けたので杖を構えます。この雄叫び、少し体が硬直しました。
そういう攻撃なんでしょうね!
(【ブースト】【ハイブースト】サンドボム!)
顔周りに向けて放った魔法は顔の近くで爆発し、オーガの顔が砂まみれになりました。
「うおっとあぶね!?」
纏わりついた砂を払い、棍棒をがむしゃらに振り回すオーガの攻撃を、兄は伏せたり避けたり、器用に躱します。
(ファイアーボム!ウォーターボム!)
「【チャージ】【ペネトレイト】【ライトニング・スピア】ッ!」
周囲のオーガ達を狙った爆発に巻き込まれ顔を覆ったオーガ・リーダーの胴体へ一直線に飛んだ兄の槍が胴体を貫きました。そしてオーガ・リーダーの胴体を踏み台に槍を抜きながら、振り回された棍棒を避けて後方へ宙返りしました。
(フレイムピラー!)
兄が離れた瞬間を狙って魔法を放つと、オーガ・リーダーの体を覆うような火柱が昇りました。
兄、めっちゃ身軽ですね……身長あるのにすごいです。
「グオオアアアッ!?」
『よいしょっ!』
ラクリマが糸でオーガ・リーダーを転ばせました。
オーガ・リーダーのHPは残り僅かです!
「じゃあな!」
兄が背中に槍を突き立てると、オーガ・リーダーは小さく呻いて消えました。
それをみて激高したオーガが雄叫びを上げて兄に突進しましたが、それをひらりと避けて槍による的確な急所への一撃で地面へと倒れ伏しました。
-オーガ・リーダー、オーガを倒しました-
オーガ・リーダーの爪、腰蓑、肩当てを入手しました
オーガの爪、牙を入手しました
ふむ、少し硬かったですね。
………いつも天体魔法を使っていたので、天体魔法の威力が高かったことを再確認しました。
早く熟練度を上げて、他の属性のピラー系魔法を覚えたい所です。
「下りて直ぐに来るのはクソだぞ」
「お兄ちゃん口が悪いよ」
「まあスケルトンよかマシだけどな……まだ肉体がある方が攻撃しやすいし」
なんか物騒な事言ってますね……
ひとまず警戒しつつ先を進みます。まだ第二階層なので!
「基本的には一本道だからわかりやすくていいわな」
「……でも宝箱を守ってるモンスターとかわかりやすすぎない?」
「それを倒していくか、スルーして進むかだな」
左の道はまた宝箱が置かれた小部屋、右は通路です。
結構わかりやすく宝箱あって、入手しやすいですね。
まあ階層がまだ浅いので、入っているものはこう、兄が言うにはレア度が低いとのこと。
「……まあ、謎の石版の欠片もあるし、回収してこう」
「そうだな」
そして小部屋に踏み込むと溢れ出るスケルトンの群れ。
「スケルトンは嫌だっつったろ!!」
兄が接敵すると槍を床に刺して、それを軸にしながら蹴りを放ってスケルトンの頭蓋骨を蹴り砕きました。
よ、容赦ない……!
アストラエアさんもこちらに近寄るスケルトンセイバー達を、地面を踏み抜いて空中へと飛び上がり攻撃を避け、空中で体を捻り近くの一体を蹴り飛ばし、着地した瞬間身を屈めて前傾姿勢で、目にも止まらぬ速さでスケルトン達の骨を折りながら駆け回ります。
……か、かっこいい!
このまま眺めていたいところですが、さっさと倒してしまいましょう。
(【二重詠唱】ストームピラー!)
『光よ!』
うねる風の柱と共に、白い光が弾けました。
おお、アンデッド系モンスターには光魔法が有効ですね!
ラクリマの光魔法でスケルトン達は倒しました。
アナウンスが流れたので、さっさと宝箱を回収です。
「骨折り損のくたびれ儲け……」
「物理的に骨折ったね……」
「さっさと行くぞ……」
宝箱からはハイMPポーションのセットを回収しました。
ふむ、アクセサリーの他にアイテムですか。
「とりあえず半々な」
「ありがと」
そしてポイズンバットやパラライズバットを倒しながら進むと、階段を見つけました。
この階層はすんなりと終わりそうです。
『何もなかった!』
「罠も無さそうさね」
「じゃあ降りるか」
三人が頼もしすぎますね……!
そのまま階段を下りることにしました。
◆アルヒラル遺跡 第三階層
「お」
「?」
階層を下りた兄が声を上げました。
不思議に思いつつその横に並ぶと、苔生した通路が現れました。
「滑らないように気を付けないと」
「そうだな」
造りは先程の第二階層と同じですが、苔が生えてます。……湿気が強いですね。
水場があるのか……水気のあるモンスターがいるのか。
そして恒例になった分かれ道に差し掛かった所、左の道からずるりと引きずるような、べちゃっとした音が聞こえました。
兄が無言で下がるようにジェスチャーしてくるので、そっと分かれ道から距離を取ります。
音が大きくなってきたので、いつでも魔法が撃てるように杖を向けて構えていた所、それはゆっくりと現れました。
ビッグスライム Lv.50
アクティブ
【吸収】【水魔法】【変体】
【鞭術】【分散】【再生】
【分解】【酸液】【吸収】
(【ブースト】【ハイブースト】【彗星】!)
通路を這うように蠢く巨大なスライムに、咄嗟に彗星を放つと、天井の魔法陣から放たれた彗星によって巨大なスライムは核まで凍り付きました。
(【二重詠唱】サンドボム!)
砂の爆発によって砂埃が起こり、煙が晴れるとビッグスライムは消えました。
アナウンスも流れました。
「……ハッ、倒した!?」
「お、おう早業だったな」
「以前戦った時面倒だったから……」
あの時は池を陣取っていたので面倒さマシマシでしたからね!つい体が動いて天体魔法を使っていました。
「まあサンキュ。ビッグスライムの核まで攻撃すんの大変なんだよな……アーツもMP食うし」
「お兄ちゃんなら槍で核を貫けそうだけど…」
「レベルの高いビッグスライムは攻撃を受ける時に核をズラすんだよ」
うへぇ……面倒ですね。
次に出てきたらすぐに倒すとしましょう。
来た方向は……行き止まりですね。
行き止まりから来るってなんなんでしょうか……こわ……
『……あ、スイッチあるよ』
ラクリマが再び謎のスイッチを発見しました。
その心眼とやらはどんなもの何でしょう。
「……ふむ、ラクリマその心眼というのはどんなものなの?」
『目で見えない真実を見抜くもの、本質を捉えるもの……故意に隠されたものは見抜けるね』
文字で聞くと難しいですね……
ここはラクリマに頼るとしましょう。
ラクリマがスイッチを押すと、また壁から宝箱が転がってきました。
そこにはまた、小さな石版の欠片が出てきました。
「ラクリマはすげえなぁ」
『適材適所ってやつだよ!』
「ぐうの音も出ないほど正論。そこに痺れるッ!」
集めると石版になるはずなので……ちゃんと回収したいですね。
「ラクリマ、違和感ある時は遠慮なく言ってね」
『うん!』
「アストラエアさんも、罠とかお願いします!」
「任されたよ!」
ニッと笑ったアストラエアさんは自身の胸を叩きました。
よし、では階段を探す為に進みましょう。
そして道なりに進むと、階段を発見しました。
しかしその階段の手前に、水路があります。
……何故ダンジョンに、しかもここだけに水路が……
「……水中にいるね」
『引っ張り出す?』
「……何だこの気配……?」
水路を注意深く見つめると、何かが飛び出しました。
アーヴァンク Lv.50
アクティブ
【爪撃】【捕食】【水魔法】
【怪力】【奇声】【硬化】
青黒い色をした、鋭い前歯を持つモンスターが、水中へと戻りこちらを見つめます。
「アーヴァンクだと!?」
「知ってるのお兄ちゃん!?」
「別ゲーのモンスターとしてな!女性を狙ってくるやつ!」
「さっきから目が合う!!サンドウォール!サンドボム!」
そのアーヴァンクから、多くの水球が飛んできます。
それを砂の壁で防ぎつつ、距離を取ります。
サンドボムは水中に避けられました。
ふむ、やはり引きずり出さねば……
「ラクリマ」
『任せて』
ラクリマが糸を伸ばしながら川へと向かいます。
水中から放たれる水魔法を、糸で弾きながら進み、まるで投網のように糸を広げアーヴァンクへ向けて伸ばしました。
「ギッ!?」
『そぉれっ!』
それをラクリマが引っ張りました。
水路から地面へと引きずり出され、尚且つ重力操作で圧をかけるラクリマの追い打ちに、アーヴァンクは地面へとめり込みました。
「ナイスだラクリマ!【ライトニング・ロッド】!」
兄が投げた槍がアーヴァンクの近くに突き刺さった瞬間、雷が落ちました。
そして兄が伸ばした手に戻った槍が、微かに帯電しています。
「……今のは?」
「直訳は避雷針だな。槍に雷落とすアーツ」
「こわ……」
「俺はトニトルスのライバルだから、雷耐性あんのよ。だから自分に感電してもまあ耐えられる」
だからそんなバチバチしてても、槍持てるんですね……
「経験値としてトドメ刺してきていい?」
「いいよ」
兄が黒焦げになったアーヴァンクへと槍を突き立てました。
-アーヴァンクを倒しました-
アーヴァンクの爪、歯、魔石(中)を入手しました
知らないモンスターでしたね……
しかも水中から攻撃してきて、少し面倒でした。
「まあ、倒さなくても階段へダッシュすれば逃げられそうだが……橋を渡っている時に水中に引きずり込まれても困るしな」
「怖すぎ……」
「まあアストラエアさんが攻撃弾いたろうけど」
兄の言葉にアストラエアさんは口元に笑みを浮かべました。アストラエアさんならやりますねきっと…
「まあ進めるし、サクサク行こうぜ」
そうして橋を渡って水路を越えた時、水中に宝箱を見つけました。
「…宝箱の番人だったのかな?」
「そういうパターンか…じゃあ遠慮なく」
兄が水路へと手を入れて宝箱を回収します。
おや、小さい宝箱ですね。
「お、宝石じゃん」
「レア物ってやつ?」
「討伐したら貰えるんだろうな……ルビーだってよ」
ルビーを手に取ると、宝箱は消えました。
宝石……ジアちゃんがアクセサリーとかに使えますかね。
まあ貰えるものは貰うとしましょう!
わたし達はそのまま階段を下りました。
コツコツダンジョン攻略が続きます!
合間に掲示板や天体魔法の設定など挟む予定です。
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




