ブティック『スカーレット』
お待たせしました!
誤字報告ありがとうございます!助かります!
今後気を付けます………
ギルドへたどり着きました。
割と人は多めですね。
みなさん依頼を受けているようです。
カレンさんはいらっしゃるでしょうか。
ギルド内を見回すと、ギルドの職員さんとお話をしているカレンさんを見つけました。
なにやら真面目な雰囲気ですので、依頼ボードを眺めながら様子を窺おうと思います。
わたしはランクアップまで、
採集依頼 2
討伐依頼 3
となっています。
今度は見たことのないモンスターや素材を集める依頼を受注しておきましょうかね。
ギルドの依頼は受けたら1週間以内の依頼達成期限があります。
その期間を過ぎると依頼は失敗となってしまいます。
ランクの低い依頼はルクレシア周辺なので、このあと防具をみたあと行けるでしょうか。
念願のキャンプセットを手に入れたので、お肉集めもしたいです。
やはりキャンプではお肉食べたいですよね。
(あ、コッコの討伐依頼がある)
ルクレシアの東門から出た草原に生息してるみたいですね。
よし、狩りましょう。
コッコ15体狩ります!
あとは採集依頼ですね。
魔力草や魔力キノコはみたことあります。
常時貼りだされてるんですねぇ。
見覚えがないのは月光草、精霊池の水、妖精の雫、キラービーの蜂蜜……色々ありますね。
月光草はおそらく夜に採集するものでしょう。
夜に採集するのはまた今度にします。
精霊池の水、は汲んでくるだけなら難しくなさそうですね………
妖精の雫はそもそもどんな素材かわかりませんし、キラービーの蜂蜜はちょっとルクレシアから遠めの森みたいです。
精霊池の水にしましょう!
わたしは依頼カウンターに並んで、サイファさんにギルドカードと依頼を渡しました。
「こんにちはサイファさん。よろしくお願いします」
「こんにちはミツキ様。……はい受注いたしました。水の採取にはこちらのボトルをお使い下さい。……カレンとは話せましたか?」
「あ、いえ…依頼を受注したら話しかけようと思っていまして」
「そうなのですね。カレンもミツキ様に用があるらしいので、話しかけても大丈夫ですよ」
「そうなのですね。ありがとうございます」
サイファさんにお礼を告げてカレンさんに近付きます。
なにやらカレンさんのことをプレイヤーがチラ見している気がしますね。
話しかける前にカレンさんがこちらにお気付きになりました。
「お、ミツキ」
「こんにちは。カレンさん」
「……ふぅん」
カレンさんは私のことを上から下まで眺めて、胸元のブローチをみてニヤリと笑いました。
「少しは成長したみたいだな。ばあさんのブローチもつけてる」
「はい!先程リゼットさんから頂きました」
「はは、おめでとうな。薬師としての1歩だな」
「はい!………それでカレンさんにオススメの防具屋さんをお伺いしたくてですね」
「そうだな。そろそろ見習い服は卒業してもいいだろ。いいところがあるから案内するよ」
「お時間大丈夫ですか?」
「今日は午前中に依頼受けたからいいんだ」
カラカラと笑ってカレンさんは歩き出します。
私もその後を付いていきます。
………やはり見られている気がします。
ギルドから出て街を歩くカレンさんにこっそり話しかけます。
「なにやらギルドで注目を集めてらっしゃったようですが……」
「あー、昨日の戦いでアタシの戦い方見た渡り人がすげー見てくるんだよなあ。でも話しかけてこないし何なんだろうな」
「そ、そうなのですか」
「ギルドに入った瞬間こっち見るからつい睨みつけちまったんだよな」
それは話しかけづらいかもしれませんね………
「昨日の戦いはどんな感じだったのでしょう。わたしずっとリゼットさんとポーションを作っていて」
「まぁ雑魚がたくさんとゴブリンキングとその配下たち、最後にはドラゴンゾンビなんかが出てきたな」
「ど、ドラゴンゾンビなんているんですか!」
「そうそう。ドラゴンゾンビはアンデッドだからな。光魔法が使える聖職者がいれば戦いが有利になるんだが、渡り人の聖女?がいて助かったぜ」
「渡り人の聖女さん……」
「他にも面白い奴等がいたぜ」
そう話すカレンさんは楽しそうです。
よかった、渡り人への印象は好印象のようです。
「これから向かうお店はどんなお店なのでしょう?」
「ミツキはあんまり鎧って感じじゃないからな。ウィザードだし、軽くておしゃれな防具とかあったらそっちのがいいだろ?」
「た、確かに鎧よりも今のウィザードの洋服やワンピースみたいなのが大変好みなのですが、防御力はそういう服装でも大丈夫なのでしょうか?」
「これから行くところはそういう服を防具として扱う奴等がいる店なんだ」
今のウィザードの洋服は、セーラー服みたいな感じです。
スカートは膝丈ですね。
ゲームなのでどれだけ走っても動いても捲れない仕様です。
「まぁあべこべな奴等が店主と店員してるし、きっとお前に似合う装備があるだろ」
「はい、楽しみです!」
「お、ついたぜ」
カレンさんは1軒のお店の前でとまりました。
ショーウィンドウにはお洋服が飾られています。
なにやら普通のアパレルショップにも見えますが……
「ブティック『スカーレット』……?」
「おう、行くぞ」
「は、はい!」
扉を開けてするりと入っていくカレンさんの後を追って慌ててお店に入ります。
「わぁ…!」
マネキンにはとてもかわいらしいお洋服が飾ってあります。
棚にはカラーバリエーション豊富なお洋服が置いてあります
「おや、いらっしゃい」
「よ、今日は客を連れてきたぜ」
洋服に見惚れていたら、男性の声が聞こえてきました。
あわてて振り返ると、カウンターにはとても綺麗でスレンダーな赤いドレスの美人さんがいました。腰まで伸びる黒髪がとても妖しい魅力を放ってます。
あれ???幻聴???
「おーいミツキー?」
わたしが宇宙猫みたいな顔になっていると、カレンさんがわたしの顔の前で手を振ります。
「はっなんか綺麗な美人さんが見えて固まりました」
「おや、ありがとう。嬉しいよ」
やはり目の前の美人さんから男性の声が聞こえます。
「???????」
「はは、こいつこんな見た目してるけど男だぜ。こいつがスカーレットだ」
「カレンが渡り人を連れてくるのは初めてだね。初めまして、俺が店主のスカーレットさ」
「み、ミツキと申します!」
すごい美人さんです!でも1人称が俺です!
見た目は女性ですが、話し方は物腰柔らかい感じの男性のようです。
ちょっとびっくりしました。
「今日はどんな用件で?」
「ミツキの装備を見立てに来た。ミツキが着られるウィザード向けの装備はあるか?」
「す、すみません。お金にそこまで余裕がないのです。……すごく頑張って10万リルしか出せないのです………」
「大丈夫大丈夫。レベルに合わせた装備にしようか。それなら全然予算内だしむしろ余るさ………おや?」
スカーレットさんはわたしを上から下まで眺めます。
そして胸元のブローチで目線が止まります。
「これはこれは。……ふふ、そのブローチにも合わせられる装備にしようか」
「は、はいっ」
リゼットさんからいただいたブローチみたら住人さんたちが含みを持った笑いを浮かべてすごい親切にしてくれます。
そんなに良くしていただいてなんだか申し訳ないのですが……
「か、カレンさん。このブローチって皆様から見たらとてもすごいものですか」
「そりゃそうだろな。なんせ翠玉の薬師リゼットばあさんの紋章が刻まれてる。ばあさんの弟子に変なこと出来ないさ」
ひええ………わたしも変なことせず、常識的な行動が取れるように気を付けましょう。
「あ、武器は今何を持っているんだい?それも装備に合わせようかな」
「はい。武器はこれです」
アイテムボックスから魔花の杖を取り出します。
「うん、いい杖だね」
「へへ、ありがとうございます」
「お、フラワープラントを倒したのか」
「森で採取してたらフィールドに迷い込んだみたいで……」
あれはびっくりしましたね………
1人で戦う大変さは身にしみました。
それでも1人でやりますけどね!自由にやりますよ!
「ひとまず採寸しようか。……おーいクレハ!」
スカーレットさんがバックヤードに声をかけます。
すると、
「呼んだかいスカーレット」
「女性のお客様だからね。採寸をお願いするよ」
「なるほど、わかったよ」
ひっ白皙の美貌を持った中性的な方が出てきました。
黒髪が白い肌に映えて、なんだか女子校の王子様、宝塚の男役の方のような美しさです。
「俺の妻のクレハさ」
「初めまして渡り人の少女。名前を訊いてもいいかい?」
「みっ!ミツキと言います」
「そう、美しい名前だね」
ひいい……キラキラしてます……… デフォルトでキラキラしてるように見えてきました。
あと背後に花背負ってます!花が見えます!
なるほど、カレンさんが仰ってたあべこべな店主と店員はスカーレットさんとクレハさんのことでしたか。納得です。
「じゃあ採寸しようかフィッティングルームに行こう」
「よ、よろしくお願いします!」
採寸していただきました。
ちょっとドキドキしましたね。
「スカーレットにみせても大丈夫かい?」
「装備を作っていただくので、全然大丈夫です」
「ありがとう」
カレンさんとスカーレットさんのところへ戻ります。
スカーレットさんとクレハさんがお話ししてらっしゃるので、カレンさんと洋服を見ながら待ちます。
「あ、カレンさんちょっと聞きたいことがありまして」
「ん?なんだ?」
「精霊ってパンとか食べれますか?」
「パン?まぁ実体化できる奴なら食えると思うが、どうした?」
「このあと依頼で精霊池の水を採取しに行くのですが、精霊池と言うなら精霊がいるんだと思って。勝手に持ってかれたら怒ると思うので、わたしが食べて美味しかったパン屋さんのパンとか供えようかな、と」
カレンさんはびっくりした顔で止まりました。
あとお話が止んだので振り向いたらスカーレットさんとクレハさんもこちらを見ていました。
「カレン、こんないい子どこで捕まえたんだ」
「こんな素直な子見たことないね」
「アタシもねえよ……」
「えっ」
「そんなこと聞かれたのは初めてだな」
「ま、別に供えてもいいと思うぜ。ミツキがやりたいようにやってみな」
そう言ってわたしの肩を軽く叩きました。
精霊さんに怒られたら嫌だなぁという単純な気持ちだったのですが、素直認定されました。
勝手に持って行って怒られないのでしょうか……
「ちょっと素直で心配になってきた」
「俺もなってきたよ」
「私もだよ」
「えっ」
「それにこれからレベルアップしたら見習いじゃなくなるだろ?アタシはウィザードじゃないから魔法教えられないしな……」
「知り合いの信頼できるウィザードに声掛けしようか……」
「ミツキさんは渡り人だから自由にやれると思うけど、やはり導く人がいた方が成長しやすいと思うからね………」
な、なんか3人で話し始めました。
え、わたしそんなにチョロそうですかね???
やりたくないことは割とNO!って言ってしまう方ですが………
レベル10になったらメインもサブもおそらく見習いが外れるんでしょう。
レベル10になったらヴァイスさんに来いって言われてますし、その話し合いは止めておきましょう。
「あ、あの」
「待ってろミツキ。ミツキを導いてくれそうなウィザード候補を話し合ってるから」
「いえ、レベル10になったら来いって声かけて頂いているのでおそらく大丈夫です」
「……なんだと?」
おっと空気が変わりましたね。
あれ???
「ソイツは大丈夫か、変な奴じゃないか」
カレンさんはわたしの両肩を掴んで迫ってきます。
わたし一応護身術も習ってますし変な人には近寄らない家訓もありますし気を付けてますよ???
「あまり話したことはないですが、しっかりされてる方だと思います」
「しっかりしたウィザードなんて居たかな……」
「結構戦闘狂多いからねウィザード……苦労人か戦闘狂か」
「職業がウィザードなのかはわかりませんけど身元はしっかりされてると思いますね」
司書さんですしね。
ほ、本当に司書さんなのかはわかりませんけど司書さんじゃないと図書館で働けないですよね??
しかしウィザードってそんな戦闘狂なんですか???
「………それアタシが知ってる奴か」
「えっと、」
「悪用はしない、名前だけ教えてくれ」
ルクレシアの人ならヴァイスさんのこともご存知でしょうか。
カレンさんならしっかりされてますし、お教えしても良いでしょうか。
スカーレットさんもクレハさんも変な人ではなさそうです。
「えっと、ヴァイスさんです」
「えっ」
「えっ?」
「…………………司書の?」
「えと、はい」
ヴァイスさんの名前をお伝えしたら3人とも頭を抱えました。
えっこわい。普通の人だとおもったのですが。
「これは十中八九彼女へ会わせるつもりだろう」
「予想の斜め上だったな……」
「ミツキのポテンシャルが想像以上だったな………」
「は、はぁ………」
「ならば洋服に妥協はできない!1から作るから6日後に取りに来てくれ!」
「えっでも」
「俺達を助けると思って、ね」
スカーレットさんの笑顔から圧を感じました。
これは断れる雰囲気ではありません……なにやらスカーレットさんの背後にオーラが出ている気がします。
「せ、せめて予算内でお願いします!」
「そこは任せてくれ!」
6日後にお会いする約束をして、ブティック『スカーレット』を後にしました。
な、なんか色々ありましたね………
時間は、今は15時くらいです。
「いやあミツキはいろんな奴等と関わってきてるんだな」
「渡り人としてはソロでやってるので、いつもカレンさんを筆頭にルクレシアの皆さんに助けて頂いてますね………」
「そうやって関係を持てるのも良いことだし大切なことだと思うぜ」
「はい!カレンさんもたくさんありがとうございます!」
カレンさんから冒険者として色々教わりました。
リゼットさんと同じくらいお世話になってます。
それらをどうにか言葉にして伝えると、カレンさんは照れたように笑ってわたしの頭をぐしゃぐしゃにしました。
「わっ!」
「冒険者の先輩として当然のことさ。………精霊池なら東門を出て東に進めば精霊の森がある。依頼頑張れよ」
「はい、ありがとうございます!あ、お礼にクロワッサンどうぞ!」
カレンさんに塩クロワッサンを渡して、わたしは駆け出しました。
東門ならコッコも倒してしまいましょう!
鶏肉入手もできるかもしれませんし!
あと3時間で難しくても水だけは採取しましょう。
「…………すごい縁を持ったな」
カレンはクロワッサンを手に持ったままその場に立っていた。
リゼットの元へ連れて行った時に薬師について教える、という話は一緒にいたから聞いていたが、そのまま弟子になっているのは初耳だった。
翠玉薬師の弟子で、ヴァイスに声をかけられているということは恐らく彼女の元へ向かわせられるだろう。
彼女はきっとミツキに興味を持つ。
そして弟子に迎えられるだろう。
そうであれば………
「これからどうすっかな………」
とりあえず信頼できる奴等に根回しするか………
カレンはそう考えながら、歩き出すのであった。
主人公は最強!ではなく1人で色々やれる主人公を目指しております。
これからもこの作品をよろしくお願いします!




