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クラン《アヴァロン》②

ご覧いただきありがとうございます!


……むむむ、この人、単純に真面目な騎士では無さそうです。


「……ふむ、面白い事を眺めるのが好きなタイプの人ですね?」

「否定はしません。面白いものには噛ませて貰いたいですし、戦力が必要なら喜んで向かいますよ」

「……アーサーさん直々にですか?」

「ええ。自分で言うのもアレですが、アヴァロンの最高戦力ですので」


にこりと笑みを浮かべるアーサーさん。

………ふむむむ、嘘はついてないんですよね。

中々読みにくい所はありますが、嫌な感じはしません。


……それに、彼らからは、一度も【鑑定】の視線は飛んできませんでした。

まあ黒玉のイヤリングがあるので見抜かれませんが……もし見抜かれていれば呪われてしまいますからね。


まあ信頼出来るかはこれから考えてくとして…

信用出来るか問題ですね。


「……ひとまずお友達からで」

「…おや、フレンド申請しても良いのですか?」

「フレンドが増えるのは歓迎です。ご期待に応えられるかは……応えられる自信はありますけども」

「言い切りましたね?」

「ただアヴァロンさんから貰えるものに今はあまりメリットがですね……無さそうで?」

「大分言い切りましたね」


お互いに苦笑します。

うーん今は特に欲しいものとか無いですしね。


「…とりあえず世間話でもしましょうか」

「構いませんよ。こうして話をさせていただけるだけで最初の一歩としては大きいですからね」

「皆座りましょう……」


立っていると疲れますからね!!


「…アーサー氏が真面目で実直な性格した騎士って言ったの誰だ……」

「おや、猫を被るのは人の得意技でしょう」

「カーッこの男丁寧な物言いと自分のルックス利用して目的の為に色々と画策するタイプの男ですわ!!」

「そんな褒めても何も出ませんよミカゲさん」

「褒めてねえですよ!!」


わたしの隣に座ったミカゲさんがサングラスを外して小さく呟くと、アーサーさんがニッコニコで返しました。


「ふふ。では友人となった記念として、情報共有でもしましょうか。何か質問があれば答えますよ。答えられる範囲でですが」

「……アーサーさんの名前には漢字は入らないんですね?」

「……そこを聞かれるとは、驚きましたね。まあ単純に嫌だったからですね。では次の質問をどうぞ」

「えっ…あっ…この世界の、世界情勢とかご存知です?」

「世界情勢、ですか」

「色々な所で色々な事あるでしょう?そろそろ日輪の国とか行きたいですが、アーサーさん達何かご存知かなぁと」

「……ふむ、そうですね。ある程度の情報しかありませんが、共有しましょう。マーレの沖合で、海竜が暴れているのはご存知ですね?」

「うっすらと……何かで聞いたような……?」

「マーレと日輪の国の間にはそれなりの距離があります。船で一日はかかるかと」

「一日かかるんですね…」


日輪の国……海を越えてくとなるとやはり遠そうですね。向かうのに船を使うとして、ログアウトのタイミングが難しそうな…?


「そして海竜が暴れている影響なのか、仕様なのかは不明ですが、巨大な渦潮が存在しているようです。それらから、海竜を倒すか、何かしらの海のギミックを解かなければならないのか……と言う結論に至ってます。これは海が大好きな漁師クランと、海鮮を扱いたい料理人クランとの話し合いで協議した結果ですがね」

「…そこまで教えて下さるんですね」

「アヴァロン、そして私の有用性をアピールしてます」

「色々と隠しもしねえですねこの人…」

「ミカゲ、この人はそういう人なんです」

「苦労してますね嵐スロット氏…」


ふむ、海竜…そして渦潮。

海竜を避けても渦潮に捕まって戦闘不能になる、と言うことですね。


「流石にまだ空から行けるとか無いですもんね」

「錬金術師達や空に希望を持つ者達が何かしら作っているようです。まあそちらが早いか、こちらが何かしらを掴むかですね」

「……あまり海竜には攻撃しない方がいいと思います」

「…どうしてそう思われるのです?」

「海竜に対してマーレの人達が何か対策を立てていないのであれば、それはきっとマレ様の眷属なんだと思います」


以前訪れた時マーレの人達は、困っている雰囲気では無かった気がします。

イル・マーレ神殿のシアンさんも特に何も言ってませんでしたし。


「マレ様……ああ、神殿が祀る海神ですね。マーレを守護する、海の概念的存在でしたか」

「そうです。それに、プレイヤーが海上で戦うのは余りにも不利ですし……マーレで情報集めれば、教えてもらえそうですけどね」

「その辺りが難航していますね。海竜が眷属なのは間違いありませんが、他の海に関する情報はイル・マーレ神殿の神官からは得られませんでしたので……恐らく何かしらの資格か好感度が必要なのでしょう」


アーサーさんすごい情報集めてますね!?

読めない人ですが、すごく頭良さそうで回転も速そうです!?

ふむむ……今度神殿行ってみましょうかね?

一応シアンさんと知り合いですし!


「アーサー氏は拠点はクリスティアです?」

「ええ」

「レダンで活動してるバルムンクの動向追えます?」

「……何故?」

「アーサー氏達は掴んでると思いますけど、レダンで何か起きそうじゃないですか。プレイヤーの中心になってるのがバルムンクだって聞いてるんで…」

「……成程、その辺りは掴んでいるのですね」

「さすがのボクもそこまでしか追えませんでしたー。戦争でも起きます?」


スムーズに、違和感なく放たれたミカゲさんの言葉に、アーサーさんの雰囲気が変わりました。

ミカゲさんも、真剣な目でアーサーさんを見つめます。


「………国家間の戦争は起きないでしょう」

「…情報源(ソース)は」

「クリスティアが物資を集めていないから、ですね」


背後から聞こえてきたレンさんの声に一瞬びっくりしました。レンさんは我関せず精神だと思ってました。

…それにしても物騒な話です。戦争……

レンさんが鋭い目線を送っているのか、アーサーさんが苦笑してます。


情報源(ソース)は私のジョブに関係ありますが……皆さんは地位も栄誉も資金にも興味無さそうなので、教えても問題無いでしょう」

「アーサー」

「彼らの中に騎士になりそうなプレイヤーもいませんしね」


焦ったような反応をしたガウェ院さんを、片手で制したアーサーさんは、目の前でウィンドウを操作しました。


「私は今、聖騎士のジョブを得ていますが、聖騎士になるのには特定のNPCの師事を得なければなりませんでした。それがミゼリア騎士団の、騎士団長だったのですが」

「ミゼリア騎士団……あ、もしかしてコルテさんとかの?」

「ああ、コルテさん」


聞き覚えのある言葉に、思いついたままにぽつりと呟くと、リーフくんも思い出した!と手を打ちました。


「……コルテ副団長をご存知なのですか?」

「「えっ」」

「?ご存知ではない?」

「いえ、あの…副団長であるのは知りませんでした。以前依頼でお会いした程度ですね」


副団長とは、知りませんでしたけどね!!

微妙な表情を浮かべるわたしとリーフくんをみて、アーサーさんが咳払いをしました。


「……ひとまずその騎士団経由の情報なので、間違いは無いかと」

「……成程……?」

「……レダンで戦いが起こるが、それは国家間では無いとなると……うん、モンスターですな」

「定番ならモンスターね」

「恐らくモンスターでしょう」


皆がうんうんと頷きます。

モンスター……レダン……戦い……


『なんか同族の気配するんだよね、この国』

『…………そうかい。情報提供に感謝するよ』


あっ………あーーーー成程。

………もしかしてお師匠様はレダン帝国に星詠み関連で何か伝えてますかね。

悪魔がレダンにいるのは知ってそうでした。


「…ミツキさん、何か心当たりでも?」

「……確証が無いので、何とも言えませんね」

「………わかりました。では、最初から伺いたかった事を聞いても良いでしょうか」


おや、何でしょう。

首を傾げつつ、言葉の先を促します。


「………皆さんの格好は、一体……?」

「聞いてた装備と違うから、本当にヤのつくプレイヤーか考えた」

「攻撃しかけるか迷った」

「ヤのつくプレイヤーか極のつくプレイヤーか疑った」


アーサーさんに次いで各々の言葉を紡ぐアヴァロンのプレイヤー達。

え、えーーっと……


「そんなの決まってるじゃないですかー」

「「「「悪ノリ」」」」


ミカゲさんと兄、ジアちゃんとリーフくんの声がハモりました。


「………本当に、申し訳ございません」

「………いえ、お似合いですよ」

「あざーーっす☆」


ミカゲさんが顔の横でピースして、嵐スロットさんに頭を叩かれました。

サングラスかけた黒い装備の集団なんて怖いですよね…


そして場が少しだけ和んだ時に、ノックの音とともにマイヤーさんがオードブルを手に入ってきました。


「ごゆるりとお寛ぎください」


その言葉に甘えて、皆でオードブルに手を伸ばしました。


各々がお互いのプレイヤーに質問している中、モルド赤と名乗った赤い軍服を着た男性が、遠慮がちにこちらを窺っていました。


目が合ったので首を傾げると、そろそろと近づいて来ました。


「えと、モルド(レッド)です。少しお願いがありまして…」

「何かありましたか?」

「俺はリアルで攻略サイトを運営してるんですけど、何か書ける情報とかありますか?言えるもので良いんですけど」


その言葉に、レンさん以外が首を傾げました。

ふ、ふむむ……ジョブについては触れられないですし……アイテム……?


「………そう言われるとあんまり思い付かないですなぁ」

「ジョブについて細かくは教えられないわね…」

「アーツも、俺が覚えてるのは使える人多いっす」


うーんうーん……あっ


「……それはモンスターの討伐報酬とかも入ります?」

「全然アリですね!」

「…成程!それならレン氏とかたくさん知ってそうですな!」

「たくさん倒してるものね、レンさん」

「……黄金のダンジョンの、ゴールデン・メンの討伐報酬の需要とかありますか?」


普通に聞いたつもりですが、全員の視線がこちらへ向きました。

ヒョォ!こわ!


「……ミツキ、倒したんかいアレ」

「たおした…」

「あれ倒せたんですかミツキ氏!?」

「たおしました…タルト食べたら報告わすれました…」

「あの日か…」


プラムの美味しさにですね!!やられて報告忘れてました……!


「……これはこれは、やはり面白いですね」

「ぜひ!ぜひ聞かせてください!」

「わ、わかりました…!と言っても、わたしが戦ったのはレベル65のゴールデン・メンで、逃げないように捕まえてボコボコにしたくらいで……討伐報酬は500万リル、初めての討伐者だったようでアイテム貰いました。あと称号も」


アイテムボックスから黄金の仮面を取り出します。

うお、明るいところでみると更に異色さが際立ちますね……黄金のファントムマスク……


「称号は、特定黄金生物討伐者というもので、これは黄金のダンジョンで特定のゴールデンモンスターを倒した者に送られるもののようです。効果は遭遇率が上がるもの、この仮面はダンジョン内で装備すると入手リルが1.5倍になるものらしいです」


テーブルに置いた黄金の仮面を皆がじっと見つめます。


「……普通は捕まえられないんよ」

「小さいしすばしっこいし周りの金ピカモンスター邪魔だし…」

「あの金ピカモンスター硬いし…」

「確かに硬かったですね……十二体しか倒せませんでした」

「十分倒してるが??」


そらもうヘラクレスさんと双子の二人、ドラコーンさんとアンカーでボッコボコにしましたからね!!


「あ、保管庫に入れておくので、ダンジョン入る時装備して良いですよ」

「……少し恥ずかしいですなこれ」

「ファントムマスクだしな……」

「……でも、リル1.5倍なのよね」

「………ごくり」


1.5倍は結構気になりますよね……

みんなで挑んで、ボッコボコに出来れば……山分けしてもそこそこ貰えそうな!?


「むしろどれだけ倒して、リルを貰えるか挑戦しても良さそうですよねぇ……レンさん今度一緒にどうですか?」

「……構わねェよ」

「ボクも混ざりたいですわ!」

「皆で行きましょう!」


……はっ!アヴァロンの皆さんを放置して話しちゃいました!

慌てて振り返ると、アーサーさんはニコニコしてこちらを眺めて、モルド赤さんは興奮したようにウィンドウで……キーボード操作みたいに何か打ち込んでました。


「仲がよろしいですね」

「す、すすすみません」

「いえ、構いませんよ。微笑ましいな、と」

「荒んだ心が癒やされた」

「アーサーの相手するの疲れるからマジ癒やされた」

「我羅ハッド。フロストワイバーンを単独討伐してきて」

「ゲッ」

「……ふふ、そちらも、仲がよろしいですね」


わたしの言葉に、アーサーさんは一瞬目を丸くして、小さく笑いました。



「そこそこいい時間になりましたな」


確かに、夜九時から話していたので、すぐに一時間経っちゃいましたね。

平日なので、あまり遅くまではログインしたくない所です。


「……こうしてお話しさせていただいて、アヴァロンの皆様はとても誠実で、ユアストが好きなんだなぁというのはわかりました」


扉の前でアーサーさん達アヴァロンのメンバーへと振り返ります。


「ですが、まだわたしの事情には巻き込めません。なので、ひとまずお友達からでお願いします。あ、手を借りたいとかであれば、可能な限り力添えさせていただきますよ」

「……その言葉を頂けたのが、今回最大の収穫です。今後共よろしくお願いしますね」

「はい、本日はありがとうございました!」


ぺこりと礼をして、部屋を出ました。

中々濃密な時間でしたね。


「マイヤーさん、お世話になりました」

「またのご来店をお待ちしております」


マイヤーさんにもお礼を言って、ひとまず島へと戻ることとしました。



◆◆◆


「……まだ、()()()()()()、か」


アーサーは力強い瞳でそう言い切った少女の言葉を反芻する。


「……ならば、巻き込んで貰えるようにこちらも売り込んでいかないとね」

「……彼らに拘る理由は」

「言っただろう」


アーサーは京の言葉に対して、笑みを浮かべて返答した。

謎のNPCを連れていて、癖が強くて、決して驕らずマイペースにゲームを楽しむ彼ら。


「面白そうだから、だよ」


そしてふとテーブルの上のクローシュを持ち上げて、タルトを見つめる。数種類のフルーツが使われた、鮮やかなフルーツタルトだ。


……だが、フルーツにしては、それぞれの形が大きい。



太陽のフルーツタルト

アルフレッド作。

太陽島のフルーツで作られたタルト。

太陽島のフルーツは入手困難な為、伝説のタルトと言えるだろう。



「……なんだこのタルト!?」




◆◆◆



「ひとまず何事もなく終わりましたね!」


拳を作ると、皆苦笑しつつ頷きました。


「まあ本当に仲良くなりに来たのかは謎ですけど」

「……」

「ミツキ?」


ジアちゃんに声をかけられて、顔を上げます。


「……レダン帝国には、恐らく近い内に悪魔の侵攻があります」

「「「!」」」

「マレフィックさん……わたしが契約している悪魔は、レダンで悪魔の気配がすると言っていました。なのでレダン帝国はきっと悪魔の侵攻に備えています。これは恐らくお師匠様も知っているので、お師匠様の星詠みかもしれません」


わたしの言葉を神妙な顔で聞いていた皆が、同じタイミングでこちらを見ました。


「………えっ契約?」

「悪魔と?」

「悪魔と契約?」

「え、奴と!?」


ミカゲさんが目を見開きました。

ミカゲさんは冥界で会ったんですもんね…


「と、とにかく!海の事ならイル・マーレ神殿にわたしかレンさんならお話聞けそうですし、今度タイミングで行ってみますね!」

「うぐぬん…」

「情報が多すぎるっす……」


ぷしゅうとリーフくんから煙が出ました。

考える事が増えましたね……


「うーーーん考える事多いですな……一旦解散します?」

「そうしましょう。皆夜更かしは駄目よ?」

「はーい」


母の言葉に、皆でホームの中へと入ります。


「アルフレッドさんもお疲れ様でした」

「ミツキ様も、本日はゆっくりと休まれますよう」


アルフレッドさんを還して、部屋に戻ってログアウトしました。






「ふへぇ……色々あったな……」


ベッドに寝転がりながら、ぽつりと呟きます。

考えないといけないことがたくさんです。


悪魔の侵攻がいつかはわかりませんが、備えないとです。ひとまずレベル上げつつ……様子見ですね。


いつ侵攻が起こるかわかりませんし。

堅実にいきましょう。


窓から月を眺めつつ、わたしはいつの間にか寝ていました。








おはようございます!

今日は麗華さんの所へ稽古に行くので、ユアストはお休みです。


なのでユアストの通知を確認します。




Your Story ‑ミツキ‑



73ページ目



新しい装備を身に着けました。

良い気分転換にもなりますね。


そしてクラン同士で話し合いをしました。

意義のある話し合いは出来たでしょうか。

繋がりはかけがえのないものです。



お疲れ様でした。




ドキドキの話し合いでしたけどね!

フレンドは増えました!情報も貰いましたし、良い関係を築いていきたいですね。


よし、今日も頑張りましょう!


ちょっと詰め込みすぎました!少しずつ関わるメンツを増やそうと思います。


これからもミツキの物語をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] アーサー氏いい嗅覚をしている 俗に言うトッププレーヤーよりステラアークの方がこのゲーム楽しめているからな アーサー当て字だと亜ぁ佐ぁかな?w
[一言] 太陽のフルーツタルト、プラムが無くてもやっぱり爆弾でしたね
[一言] 朝一(アーサー)
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