クラン《アヴァロン》 ①
ご覧いただきありがとうございます!
おはようございます!
夜は雨なのに、朝は微妙に晴れてます。
よし、今日は例の話し合いです。
気合い入れましょう!
よし、制服に着替えます。
そのついでに通知も開いておきます。
Your Story -ミツキ-
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レダン帝国でドリームキャッチャーを入手しました。
悪夢を捕まえて良い夢を届けるアイテムです。
貴女の夢は守られるでしょう。
ランタンを手に入れました。
色々な場所を照らすのに有用です。貴女の心も照らしますように。
友とのかけがえのない一時を過ごしました。
大切な思い出の一部となるでしょう。
お疲れ様でした。
ドリームをキャッチですね…!
ランタンも、持ち歩き用にもう一つくらい買っても良かったですね。
……大人数での料理イベントとかありませんかね?スパイス料理も気になります。
料理人プレイヤー達の料理食べたいです!
よし、では学校です!
「じゃあ花ちゃん夜にね」
「ええ、気合い入れましょ」
無事に一日を終えて帰宅します。
「ただいまー」
「おかえりー」
リビングから兄の声が返ってきました。
部屋着に着替えてリビングに向かうと、兄がキッチンから顔を出しました。
「今日はチャーハンにした」
「ありがと!絶対美味しい」
「カレーはスープになったのだ…」
「そう……美味しいでしょうね…」
大変……美味でした……
ごちそうさまでした……
そしてサッとお風呂を済ませてログインです。
ディアデムを喚び出して……装備を変えます。
神秘の青を混ぜたゴシックドレス、青い靴紐の厚底ブーツ、青い薔薇のコサージュが添えられたモーニングベール付きのハットです。
………すごく、アンティークな屋敷が似合いそうな、服装です。
にしても可愛いですねこのデザイン…このベールも、全然視界の邪魔じゃないです。むしろクリアです!?
母のベールもこんな感じなのでしょうか…
母がいる時に聞くことにします。
部屋から出て共有ルームに行くと、珍しく誰もいませんでした。
よし、今のうちにお腹を膨らませましょう。
よし、サンドイッチを貰います!
サンドイッチを一つ貰って、ベールを避けつつ大きく口を開けたときホームの扉が開きました。
「あ」
「…」
「んぎゃっ止まらんで下さいよレン氏」
開けた口を閉じます。
少し恥ずかしいですね……!
盗み食いじゃ無いですが、盗み食いがバレたような感覚……!
「うおおおおお!ミツキ氏めっちゃ似合ってますぞ!」
「あ、ありがとうございます」
「ボクも着替えようっと!」
ウィンドウを操作し始めたミカゲさんと、クローシュを持ち上げてバーガーに噛み付いたレンさん。
これはスルーしてくれてますね!
ありがとうございます!
サンドイッチを咀嚼しながら、レンさんとミカゲさんの様子を窺うと、レベルが、レンさんが69、ミカゲさんが67になってました。
レベル上がるの早いですね…
わたしも頑張らないとです。コスモス様、もう少しだけお待ちくださいね……!
中々群れのボスには会えないので…ダンジョンで稼げるといいのですが。
「よし、これで良いでしょう」
ミカゲさんが、冥界に挑んだ時と同じ全身真っ黒な装備になりました。
「みんなして黒い装備だとすごい不審者ですね…」
「それなですわ。でもまあ面白ければオッケーですな」
レンさんはデフォルトで全身真っ黒なので、いつもと変わらないです。
「うお、皆黒い」
「こう見ると中々シュールね」
「そういう集団に見えるわねぇ」
そしてぞろぞろとクランメンバーが集まりました。
よし、作戦会議です!アルフレッドさんも喚びます。
「と言ってもまあ作戦という作戦もありませんが」
「あくまで、話し合いですからなー」
「情報交換の場だと思えばまあ気負わなくてもいいしな」
「持てるカードの枚数はチラつかせつつ、中身は吟味しましょ」
「ミツキ、ぺろっと話さないように気を付けて」
「ミツキの情報が一番の爆弾だからね」
「えぇ…」
き、気を付けますけども!!!
皆さんも普通じゃないでしょうに…
そんな事を考えていたら、皆さんからジト目が送られてきました。
「よし、ではそろそろ向かいましょうか。ボク先に行くので、ボクの所まで転移してきて下さいね」
そう言ってミカゲさんがホームから出たので、わたし達もホームを出ます。
わたしとアルフレッドさんは祭壇に手を合わせて、世界樹の元へと声をかけに行きました。
そして頃合いを見て、アルフレッドさんと共にミカゲさんの元へ転移しました。
目を開くと、一軒の店の前に立っていました。
なんだか高級そうな、レストランです。
「ボクの知り合いがオーナーをしていて、そのオーナーの知り合いが料理人してるんですわ」
「なるほど……経営するのは凄いですねぇ」
「注目集めるのもアレですし、貸し切りなので入っちゃいましょ」
貸し切り!?
ミカゲさんの後を追って店に入ります。
内装はとても落ち着いていて、モダンでシックです。
「ミツキ氏、彼がボクの知り合いのオーナーで、プレイヤーのマイヤー氏です」
「この度は当店のご利用、誠にありがとうございます」
「お、お世話になります。ミツキです」
スーツを着た初老の男性が笑みを浮かべて一礼しました。
知り合い、若い方かと思っていましたが何というか、敏腕そうな方です!
「アヴァロンはもう来てます?」
「奥の部屋に」
「じゃあアルフレッド氏にはお土産持っていて貰って……準備は宜しいです?」
ミカゲさんの言葉に、頷きます。
そしてかけ始めるサングラス……完全に、怪しい絵面になりました。
マイヤーさんの笑みも引き攣ってます。
よし、舐められないように!軽く頬を叩いて気合いをいれます。
そしてマイヤーさんがノックして扉を開くと、部屋の中では一人の男性がソファに座り、その背後に5人のプレイヤーが立っていて、その視線がこちらへと突き刺さりました。
そしてその瞬間、彼らの表情も引き攣りました。
そんな中ソファに座っていた一人の男性が立ち上がり、優雅に微笑みました。
そして何故かわたしだけソファに座らせられ、向かいのソファにも一人だけ男性が座りました。
お互いの背後に、クランメンバーが立ちました。
………圧!圧を感じます!こわ!
思わず顔をしわしわにすると、向かいの男性も顔顰めました。
しかし諦めたように首を振って、笑みを浮かべました。
「…本日はお時間いただきありがとうございます。クラン《アヴァロン》のクランマスターを務めている、アーサーと言います」
「ご丁寧にありがとうございます。クラン《ステラアーク》のクランマスターのミツキと申します」
アーサーと名乗ったわたしよりいくらか年上に見える、金髪に海のような深い青をした瞳を持つ軍服のプレイヤーが口を開いたので、同じように返します。
「後ろのメンバーは右から嵐スロット、ガウェ院、モルド赤、京、我羅ハッドです。……本人達は至って真面目だから気にしないで貰えると有り難いですね。彼らの名を文字だとしても名乗るのはまだ未熟…と名付けたようです」
「ご、ご丁寧にどうも…えっと、こちらは右からわたしの執事のアルフレッドと……」
アーサーさんに紹介された背後のプレイヤーは、名前を呼ばれる毎に一礼します。
えっと、嵐スロットさんが青い軍服、ガウェ院さんが黒い軍服、モルド赤さんが赤い軍服、京さんが深緑色の軍服、我羅ハッドさんが暗めの紫……
癖強そうですね……こちらも負けてませんが!
わたしもアルフレッドさんを紹介して……そしてちらりとミカゲさんを見ると、ミカゲさんが頷きました。
「ミカゲです」
「ハイドレンジアよ」
「リーフっす」
「……レン」
「リュー」
「ソラよ」
「サクヤと」
サングラスを装着した面々が淡々と自己紹介しました。圧ですねぇ……SPですかね??
「あ、こちらは手土産、です。フルーツタルトなので、宜しければ皆さんでどうぞ」
アルフレッドさんが流れるような所作でクローシュごとテーブルに置きました。
その際クローシュを持ち上げて、タルトを見せました。
「これは……ありがとうございます。ではこちらも」
アーサーさんがそう言うと、嵐スロットと呼ばれた男性が箱を置きました。
「失礼いたします」
それをアルフレッドさんが触れて、一瞬長めに目を閉じました。そして開けると、わたしに頷きます。
ふむ?…悪いものでは無いという事ですかね?
アルフレッドさんどんな能力あるのか聞くの忘れていましたからね……!
開けると、そこには一つの水晶玉が入っていました。
それに首を傾げて見つめていると、
「そちらは最高ランクのスキルスクロールです」
「えっ」
「単刀直入にお話ししますが、今回はステラアークの皆さんと私達アヴァロンで、同盟を結びたくてアポイントメントを取りました」
真面目な表情でアーサーさんがそう言いました。
「……一つ、良いですか?」
「ええ」
「何故、ステラアークと同盟を?わたし達はソロでの活動が多いので、個人と繋がりを持ちたいと言うならまだわかります。ですがクラン全体であるなら……まだクラン全体では何もしてないですし」
一番の疑問点です。
ミカゲさんからの情報やSNSの情報によると、アヴァロンは初期からパーティーとして名を馳せるプレイヤー集団だとか。
現にアーサーさんのレベルは72、後ろの方々は70です。ユアストはレベル70を超えると必要経験値がすごい増えるって攻略サイトに書かれていましたし……恐らく顔が広くて強いクランなんだと思うのです。
「まあ背後の圧もありますし、嘘を言うつもりもないのでぶっちゃけますが、得体の知れない……未知数の貴女方を敵に回したくないのが本音ですね」
「……今後クラン同士で戦う事があるって事ですか?」
「ゲーム性を考えると無きにしも非ず、ですかね。今後クラン単位での共同イベント、攻略があると考えると有力なクランとは同盟を組んでおいた方が良いのはあります。お互いの牽制にもなりますし」
「……その声掛けは他のクランにも?」
「今後生産職のクランに声をかける予定です」
何かあったときに足並みを揃える目的もある、と?
うーん、あまりゲームやりませんしその辺りはよくわかりませんね。
「そのスキルオーブはこれから仲良くしていきたいという証でもあります。最高ランクのスキルオーブは高レベル帯のダンジョンボス討伐報酬でしか出回りませんし、確定報酬でも無いので」
何だか凄いぶちまけてくれてますね。
こう……飾らないと言うか何というか…正直と言うか……?
「……ここはお互いのクランメンバーしか居ませんし、ここは本音で話し合いましょう」
「…と、言いますと?」
「わたし達にお声掛けいただいた理由はなんとなくわかりました。まあわたし達は皆何処かしら普通じゃないゲームのやり方をしている自覚もあります」
「その筆頭はクラマスですぞー…」
後ろからぼそっとミカゲさんの一言が聞こえました。
皆どっこいどっこいでしょう!
「癖が強いのは自覚しています。していますが、他にも個性的なパーティーはたくさんいました。その中で、あえてわたし達へと声を掛けてきた理由がわかりません。もう一回言いますけど、クランを組んではいますが、皆ほぼソロプレイヤーです。敵に回したくないクランは、他にもあるでしょう」
「…………」
「わたしはゲーム不慣れなので……わたし達を使って何かをしたいとか、謎の思惑があるとか……そう言うのばかり考えてしまうのです。ましてや相手は有名なクランですしね」
わたしの言葉を真剣な表情で聞いていたアーサーさんは、聞き終えた瞬間にそれはとても綺麗な笑みを浮かべました。
「えっこわ」
「……ふふ、失礼しました。そのような捉え方をされるとは思っていましたが、やはり素直な方だったなと」
「……貶しておられる…?」
「とんでもない。素直な貴女に、こちらも偽り無く話しましょう」
そう言ったアーサーさんの雰囲気が鋭く変わりました。
お互いの背後から殺気のようなものが突き刺さりました。
「見たことのないアーツ、ジョブ、装備、プレイスタイル……それらは他人の目を惹きます。仮令本人が意図しなくとも。実力もおありでしょう……先日行われた建国祭で、武闘祭の事や、貴女方も白金コインを手に入れました」
「……」
「そして運営が用意したサクラで無いこともわかりました。サクラにしてはあまりにも無知で素直過ぎますし……あ、貶してはいませんよ」
「……」
「なのでまあ……単純な話ですよ」
ふっと雰囲気を柔らかくして、小さく笑みを浮かべました。
「貴女達の力の詳細を知りたい訳ではありません。そこに割り込むつもりも。ただ、そこまで個性的なクランであれば……見たことの無い、面白い景色が見られそうだと、思ったんですよ」
この黒服の集団(レンやソラは通常装備)、今後も何処かで出したいですね( ˘ω˘)
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




