ティータイムと天体観測
ご覧いただきありがとうございます!
「お待たせいたしました」
そう言ってアルフレッドさんが、わたしの前にケーキと紅茶を置きました。
そしてアストラエアさんと一緒に、皆の前にケーキと紅茶をセットしました。
「う、うおお優雅なティータイムですわ!ボクもいいんですか!?」
「皆で食べましょう!」
ミカゲさんが白衣を脱ぎました。
わたしもポンチョはしまいます。
「私たちもいただいていいのかしら?」
「皆で食べたら美味しいし!」
「じゃあ、頂こうかな」
「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」
レンさんは小さくですが、皆の声が重なりました。
わたしは皿の上のケーキを見つめます。
太陽のプラムのタルトケーキ
アルフレッド作。適切な量で作られた完璧なスイーツ。プラムは切り分けられているため、効果は完全回復ではなく蘇生のみになっている。
……完全回復ではなく蘇生のパワーワードです。
プラムが花びらのように隙間なく飾られています。
フォークをいれると、さくりと切り分けられました。
焼き立て出来上がりなのでほんのりとあたたかいですが、プラムの甘みが口いっぱいに広がり、カスタードの甘みと香ばしく焼き上げられたタルトがさくさくで、美味しいです!
んんんんん!美味しい!!
アルフレッドさんに、満面の笑みで頷くと、安心したように微笑みました。
「……とても美味しいわ」
「マジうま」
「え、うま…」
「紅茶と合うね」
美味しいものは幸せになります。
頬も自然に緩んでしまいますね。
「やっぱり太陽のプラムは美味しいわねぇ」
「甘みが違うよなぁ」
「ここまでくると、育ちに日差しも関係するのかと思ってしまいますなぁ」
後ろから聞こえるスピカさん達の会話に頷きます。
やはりソル様の光をたっぷりと浴びて、作られているので……隠し味はソル様……?
「……2000万相当のフルーツを使ったタルトケーキですかぁ」
「いやまってプラムいくつ使ったの」
「この量だぞ……億だろ」
「多分また貰えるから…」
「また貰えるから!?!?」
恐らく、お願いすれば貰えそうです。
タルトを供えておきましょう。
「……うめ……うめ……」
「ミカゲちゃんその反応は辞めておいた方がいい」
「……リュー氏、通じます??」
「むしろミカゲちゃんもその辺りのネタ詳しいな」
「なんか悪ノリしたくなるんですよね…」
いや本当に美味しいです…わたしは作れませんし、これを味わうためなら戦闘もがんばります…
ふう、ごちそうさまでした!
大満足です。お皿を持っていこうとしたらアルフレッドさんに回収されました。
あ、お願いします…
ちょっと慣れないですね…
「んあ、ミツキ氏、そして皆さんに相談があったんでしたわ」
思い出した!と叫んだミカゲさんの言葉に、皆首を傾げます。
「んー、ミツキ氏、アヴァロンってクラン聞いたことあります?」
「……いえ、全然詳しくなく」
「まあ珍しく真面目にプレイして真面目に攻略しているクランなんですけどね……ミツキ氏と話したいんですって」
「……えっ」
えっ……
何か話したい事が、あるんですか!?わたしと!?
「まあステラアークと同盟結びたいのと、情報交換とか…単純にクランマスターと話してみたいんだと思います」
「え……何か話す事ありますか…」
「うーんミツキ氏、うちの評判知ってます?」
「知らないです…」
「まあ悪いもんじゃないですよ。むしろ個性強すぎて一目置かれてるんですけど、皆見たことない装備身に付けて、お揃いのアクセサリーつけて、あんまり姿を見せないから運営が用意したサクラだと思われてるっぽい所あるみたいで」
「えっっっ」
あれですよね、運営が用意した盛り上げ担当みたいな奴って事ですかね!?
む、無実です!エンジョイしてます!
「まあ有名な所と知り合いになるのは良いんですけど、ぶっちゃけメリット無いんですよ」
「あーね。確かに同盟組むメリットは思いつかんな」
「なるほど、確かにうちは特殊だわ」
ミカゲさんの言葉に兄と母が頷きました。
同盟……同盟……?
わたしが首を傾げていると、ミカゲさんが苦笑しました。
「同盟を組むメリットは、普通ならまあ有名な所のクランだと能力高い人が所属している事が多いので、まあ技術的な支援とか、便宜を図って貰ったりとか、情報の交換とか……色々やれるんですけどね」
「ここは装備は凄腕NPCの手作り、薬師としてはミツキが、錬金術師としてミカゲさんが、鍛冶師としてリーフくんが、彫金師としてジアちゃんがいるわね」
「情報に関してはある程度はボク調べられますし、ミツキ氏の情報網のがやべえ所もあるので、向こうからの情報を得るメリットも無い」
「向こうが起こすイベント系も、あまり興味惹かれないな…」
「困った事に、知り合いになるくらいしかメリットが無いんですよねー」
ふむふむ……
確かに聞くと……
「……え、うちってそんなにうちで完結出来るほど独立して……?」
わたしの言葉に皆が頷きました。
「ぶっちゃけ世界が滅んでもここは無事とかありそう」
「ひえ」
「でもまあアヴァロンを率いるアーサー氏とその仲間の円卓達は人としては真面目なタイプなので、仲良くしても良いとは思いますけどねー……カリスマ性もありますし」
「……なる、ほど、です。……わたし、プレイヤーの知り合いは多くないので、知り合う程度であれば、話してみたいのもありますね」
他のプレイヤーがどんな感じなのかは気になります。
どのように日々過ごしているのか……
「お、じゃあひとまずセッティングしますね」
「俺らも行っていいの?」
「ステラアークと話したいって言うんで……ミツキ氏がナメられないよう圧かけようとしてましたボク。サングラス買いましたよ」
何故にサングラス…
兄もかっこいいな…!って顔してます。
「サングラス……俺も買おうかな」
「狼獣人のサングラス姿なら、服も揃えなさいな」
「……やっぱりスーツ?」
「なら私もスーツにサングラスにしようかしら」
「エルフがスーツにサングラス」
「インパクトあるわね」
「いっその事みんなで黒衣装統一します??」
何だか話の流れが変わってきました。
おやぁ……?
「圧かけた手土産を用意したい所ですな…」
「プラムのケーキ作ります?」
「…それは辞めたほうがいいですな。でも太陽島のフルーツはとても圧かけられそうです」
「…それをプレイヤーじゃないアルフレッドさんに持たせて、ミツキの合図でお渡しすれば」
「ミツキ氏が得体のしれないプレイヤーに…!」
あれ?仲良くなりに行くのでは?
なんか脅しに行くような流れになってませんか?
「ミツキ氏、黒い洋服お持ちです?」
「えっあっ………ドレスなら、あります」
「えっみたい」
「ちょっと女子で集まりましょ」
「殿方は待ってて頂戴」
そして部屋へと連れて行かれ、今日買ったゴシックドレスを着てみると、全員が親指立てました。
「やっぱりサングラス買うわ」
「私はミツキに合わせて、この格好で良さそうね」
「ソラ氏はそのままでミツキ氏といてもらって!」
とりあえず装備を戻して、共有ルームへと戻ります。
ミカゲさんがアヴァロンの人と連絡を取り合ってくれるそうなので、ひとまずお任せします。
あ、ギルドへの報告、忘れてました。
ギルドに行って、依頼の報告しないとです。
「すみません……ふと思い出して、ギルドへ報告にいかないといけなくて」
「あーたまにありますよね。依頼終わったけど色々あって報告忘れるやつ」
「行ってくるといいわ」
「行ってらっしゃい」
皆に挨拶して、アルフレッドさん達には好きに過ごしてもらい、わたしは急いでひとまず王都のギルドへ向かいました。
そして依頼達成したので、ランクアップまでは
採集依頼 10
討伐依頼 11
となりました!コツコツやらねばです。
………よし、とりあえず今日やるべきことは終わりましたので、夜は砂漠で天体観測しましょう!
ホームでログアウトする時にアイテムボックスへ還して、夕食を済ませてログインしました。
よし、砂漠に向かいます!
マレフィックさんに食事を振る舞った遺跡に移動して、人気がない事を確認して、マットを出します。
そして寝転がって、視界いっぱいに広がる星空を見つめます。
やはり彩度が違います。くっきりはっきり、鮮やかに星が見えるのです。
天の川がちゃんと見えるので、現実の季節感と近いのだと思うんですよね。
夏と冬は天を縦に二つに割くように天の川は流れています。
秋は横に、春は……割と端に寄ってるような?
今は春と夏の間みたいな感じなので、両方の星座を見れるお得な季節です。
この世界は特殊ですが……一応配置的に天の赤道と黄道は現実とそっくりなので、技術力の高さが窺えます。
……季節で星の傾き方が変わるのであれば、本当にユアストは何処まで目指しているのか。
少なくとも、始めた時より星の見え方は少しずつズレてるので、ちゃんと季節に合わせてるのだと思います。
最高ですね!!!
日本じゃ見えない角度です。周りに何もないので、本当に見やすいのです。
なんたってだいぶ下の方ですが、みなみじゅうじ座がみえるのです。
響きが格好良いですよね、南十字星。
アクルックスとミモザ、という一等星があります。
二等星のガクルックスと、三等星のイマイという名の星で作られているのです。
イマイ……響きは親近感ありますよね。
みなみじゅうじ座の近くには、有名な暗黒星雲もあります。コールサックとも呼ばれますね。
あ、暗黒星雲とは光源となる恒星が近くにあると影として浮かぶ星間雲です。
とっても綺麗なんですよね。有名なのはオリオン座の馬頭星雲でしょう。
さすがに目視は無理ですけどね。
それにちなんだ技があるかもしれないので、今度喚び出してみたいところです。
喚び出すまでわからないんですよね…
あと会話ができるか問題があります。
……意思疎通は難しそうな気がします。
困ったときのサジタリウスさんで、サジタリウスさんを喚び出してから気になる星座は喚び出しましょうかねぇ……
にしても……
「落ち着く…」
じっと星を見つめているの、落ち着きます。
ここまで落ち着いて天体観測したの久し振りです。
わたしがゲームを始めたときの、モチベーションでしたからね。
あの時のわたし……今は頼りになる仲間達も増えて、落ち着いて天体観測しています。
杖でモンスター殴っていた頃が懐かしいですね。まあ今も殴ってますけども。
あの時よりは成長してますし、これからもがんばりましょう。
その為にも……とりあえず優先順位高めで、コスモス様の御神体の為のモンスター討伐をしつつ、ダンジョン攻略です。
よし、ホームに戻ります。
タルトを供えます!
よし、戻ってきました。真っ直ぐ祭壇に向かいます。
ソル様用と、デイジーさん用と…マレ様達用と…
よし、完了です!
再度アルフレッドさん達を喚び出して、わたしと共に膝をつきます。
太陽のプラムで作った、タルトケーキです!
とっても美味しいので、是非ご賞味ください。
『……ふむ、預かるぞ』
その言葉に視線を上げると、ソル様がソファにかけていました。
わ、わあ……フットワークが軽いです。
「こ、こんばんはソル様」
『励んでいるようだな、星詠みの娘よ。……あぁ、これはデイジーからだ、後布を出せ』
手紙を手渡され、布をご所望なのでマットを出します。そこにソル様が手をかざすと、どこからか太陽島の果物を出しました。
『プラムもやろう』
「はわ……あ、ありがとうございます」
『供物の対価だ。では、太陽は戻る』
「はい、ありがとうございました!」
小さく笑みを浮かべて、ソル様は消えました。
く、果物のために来てくれたのですね!ありがとうございます!
フルーツをアイテムボックスにしまっていると、背後に気配を感じました。
『星詠みの娘!眷属からこれを預かったぞ!』
振り向くと、満面の笑みを浮かべたマレ様が立っていました。
『……ん?新しい契約を結んだようだな、精進するが良い』
マレ様の言葉に、三人は深く頭を下げました。
そしてプラムのケーキを目にとめると、一口かじりました。
『……!これは、駄目だ。眷属で喧嘩が起きる……食べて行こう』
「ふへへ、ありがとうございます」
『ほれ、これが眷属からの礼だ』
マレ様が差し出したものを両手で受け取ると、蒼く、光の加減で虹色に煌めく鱗がつけられた……イヤリングがありました。
人魚のイヤリング(特殊)
海の眷属による逸品。
装着者は、海の中で人魚へと転ずる事ができる。
装着中は水中呼吸可能、水魔法耐性、海の加護を得る
「……えっこんな凄い物をいただいて、良いのですか!?」
『供物の礼よ。太陽は知らんが、海は供物に対して、神殿にもちゃんと返礼しているからな……海の幸とか』
海の幸……!マレ様からの海の幸、とんでもなさそうです。
『それを装着した姿を眷属に見せれば、きっと喜ぶ。いつか見せてやってくれ』
「はいっありがとうございます!」
『ではな』
そして瞬きの間に、マレ様は消えました。
……海に潜ることがあれば、つけてみましょうか。
「…はー、びっくりしたねぇ」
「ミツキ様はとても落ち着いてらっしゃいましたね」
「ほっほ…背筋が伸びましたぞ」
「とてもお世話になっている方々で…目をかけてくださっているので、ちゃんと頑張らないと、と思うのです」
他の皆さんの祭壇からもプラムケーキが消えているので、皿を回収します。
目をかけて貰っているので、これからも見てもらえるように頑張らないと、です!
「そうさね!あたしもちゃんと働くよ」
「誠心誠意、ミツキ様の執事として務めさせていただきます」
「私も全ての技術を持って、お世話させていただきますぞ」
「はい!よろしくお願いします!」
それぞれと握手をして、頷きます。
これから共に進む仲間です。
縁も大切に、これからも楽しんでいきたいです。
そろそろいい時間なので、部屋に戻ります。
三人を還して、部屋に戻りました。
ベッドに腰掛けて、デイジーさんからの手紙を見つめます。
ふおおお……ドキドキします。
意を決して、手紙を開きました。
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ミツキ様
日々、体調に気を付けて過ごされていますか。
この間は、お手紙ありがとうございます。
とてもうれしかったです。
ソル様のけんぞくである私達は風邪はひきませんので、ミツキこそ気を付けてください。
お礼として、ソル様に相談してやはりフルーツをということになりました。
ソル様のおすみつきです。ぜひ、活用ください。
プラムもお渡ししますね。
ミツキの作ったガーデンは、きっと素晴らしいものだとおもいます。
また、お話をきかせてくださいね。
デイジーより
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頬が緩みます。
デイジーさん元気そうです。
今度はフルーツタルトとか良さそうです!
アルフレッドさんにお願いしましょう。
ぼすんとベッドに背中を預けます。
色々ありました。
学校もありますし、ログアウトしましょう。
ログアウトして、ベランダへ出てストレッチです。
横になってばかりだと、体力落ちちゃいますからね。
ゲームの中の星空も、現実の星空も……わたしにとってはどちらも魅力的です。
わたしの心を掴んで、離さないのです。
よし、また明日からも頑張りましょう!
おやすみなさい!
日々、皆さんからのご感想で活力をいただいております。ありがとうございます!
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




