柘榴と黄金のダンジョン
ご覧いただきありがとうございます!
アイオンさんの後についてたどり着いたのは、鍛冶場の入り口でした。
ここからでも、熱さを感じます。
「さすがに売り物は渡せないからな……試作品だが使い勝手は保証する。振ってみろ」
アストラエアさんに、短剣の柄の部分が差し出されました。
それを無言で受け取って、重さを確かめて、突き、振り下ろし、型を構えてからの振り回し……色々と動きを確かめています。
「お前さん達も、似たようなのはこれしかねえが、使ってみてくれ」
鎌と、細長い棒……先が尖った鋭いものを持ってきたアイオンさんが、それぞれウィローさんとアルフレッドさんに渡しました。
各々それを確認して……なんか、手慣れてるんですよね、振り方が。
ウィローさんにいたってはそれ草刈の動きではないんですよ。
「……ふむ、馴染みます。ほっほ」
「おー!アイオンの旦那!これ使いやすいねぇ!」
アストラエアさんが遠くから叫びました。
なんだか楽しそうです!
「……ええ、問題無いかと」
アルフレッドさんもウィローさんも、扱えそうです。
いやまあ、積極的に戦闘には連れて行きませんけどね??
「……本日はお世話になりました、ありがとうございます」
「……いや、これも何かの縁って奴だ。これからもよろしく頼む」
アイオンさんと握手をします。縁に感謝です。
武器も借りたので、そろそろこの場所を離れましょう。
スカーレットさんの所で、服を見繕いたいと思います。
アイオンさんにもう一度一礼して、三人に掴んでもらい、スカーレットさんのお店へと向かいました。
入り口のベルがなり、カウンターにいた店主の視線が向けられました。
「……おや、いらっしゃいミツキさん」
「どうもです、スカーレットさん」
「それに…」
スカーレットさんが背後の彼らをみて口笛を吹きました。
「藍銅の人形じゃないか。なるほど、服を見に来たんだね?」
「はい!彼らに」
「オーケー!彼らの服は俺とクレハが作っているからね」
ウィンクするスカーレットさん。
……人形の服はスカーレットさんとクレハさん作でしたか。
「ミツキさんにはまだプラムの代金分のお礼をしないとだから、君らの服は好きに持っていっておくれ」
「えっ」
「それでもミツキさんに用意したその装備分含めてもまだまだお釣りがあるよ」
「……えっ」
「やあ、いらっしゃいミツキさん。彼の執事服に合わせて、このドレスとかどうだい??」
背後から現れたクレハさんに手を取られて一回転して、身体に服を当てられました。
当てられたのは、所々に青色のリボンが編まれた、全身黒いゴシックなドレスでした。
「ミツキさんのその群青色の髪に合うと思ったんだよね」
「か、可愛らしいですが、あまり着たこと無いですね」
「そう?じゃあ試してみても良いね。性能も保証するよ。秘密は女を飾る武器だからね」
神秘の青を混ぜたゴシックドレス
クレハ作。見る者の目を奪いながら、見た者に呪いを付与するゴシックドレス。
【絶対隠蔽】【絶対保護】【呪詛】【魅惑】【呪福】
……?祝福……じゃない!?
なぁんですかこれは!?
「ミツキさんのご母堂と並んでピッタリじゃないかな」
クレハさんの言葉に、思わず目の前のゴシックドレスを眺めます。
………ゲームですし、着てみても良さそう、ですかね?
「合わせて用意したこの厚底ブーツもセットで、あとモーニングベール付のハットも」
クレハさんのテンションが上がりました。
お、おや?
「クレハ、君の癖が出てる出てる」
「……執事の君にはこの素材に拘ったロングテールコートの一式、ホワイトタイガーの君には獣人用の機能を備えた、しなやかさと強靭さを持ったこの軍服タイプの服はどうだい?そして、穏やかな御仁、貴方には汚れにくさと破れないよう頑丈に作り上げたエプロンなどは如何でしょうか」
ノンストップで流れてくる言葉……!
こんなクレハさん見た事ありません!
あれよあれよとわたし達四人は、着せ替え人形になりつつ、気に入った洋服をいただいてしまいました。
すごく満足気な顔をしたクレハさんに見送られ、店を出ました。
最終的にスカーレットさんもノリノリで洋服を持ち出してきました。
「………濃い、時間でしたね」
「……あたし、体力が減っちまったよ」
「ほっほっほ……」
「…ミツキ様、休息を取られた方が良いかと」
そろそろお昼になりそうです。
確かに、一旦ログアウトするのも良さそうです。
午後は、黄金のダンジョンへ向かいたいと思います。
そうしたら、アルフレッドさん達を、島に案内しなければ。
「では、一旦皆様眠っていただきますね」
わたしの言葉に頷いた三人に触れて、道の端でログアウトしました。
「……負けちゃったと」
「急にレベル高いモンスター出てくるからさ……」
「確かに、一定数倒すとボスっぽいの出てくるよね」
「それらを倒すと経験値たくさん貰えるのよね」
「うん。僕と宙はそれでレベル上げてた訳だからね」
食事を終えて、皆でお茶を片手に、兄の話に相槌を打ちます。
………人形の事、話すタイミングを図っているのですが、皆にどう紹介しましょう。
……三人を並べてスクショを撮って、皆が集まった時に紹介ですかね。
アルフレッドさんにはプラムを使ったタルトを作ってもらいたいんですよね…
「わたしも今日は黄金のダンジョン行ってこよう」
「たくさん倒せると良いわね」
「鉱山のダンジョンとほぼ同じだよね?」
「ええ。自分が倒れるまで、倒したモンスターの数でリルが貰えるわ」
「ミツキのレベルなら、第六階層でいいんじゃないかな。一体50万リルだよ」
「一体50万……!」
アイオンさんの1000万リルを稼ぐために、目標二十体ですね!
毎日行けば、貯められそうです。今週は頑張りましょう。
「……よし、稼ぐぞ!」
「俺も毎日行こう……」
「貯めておきたいわよね」
「コツコツ貯めてるよ」
よし、再度ログインです!
ふむ……アストラエアさんは装備が揃わないので、ダンジョンに連れて行くのは遠慮したいです。
攻撃を受けて傷付いたらどうなるんです……!?
なのでとりあえずは、黄金のダンジョンに向かいます。
黄金のダンジョンは次元の狭間にあるので、メニューから向かいます。
よし、たどり着きました。
謎の広い空間です。プレイヤー達がたくさんです。
パーティーメンバーを募集しているプレイヤー、露店を開いてプレイヤー相手に商売をするプレイヤー……
すごい賑やかです。
それらを素通りして、扉前の水晶にギルドカードをかざします。
-黄金のダンジョン へ 挑みます-
-階層を選択してください-
今のわたしのレベルは64なので、60〜のモンスターが出現する第六階層へ挑めます。
……たくさん貰える方が良いですからね。第六階層へ挑みます。
-黄金のダンジョン 第六階層 へ挑みます-
視界が明るく染まり、目を閉じます。
そして目を開くと、そこは……まるで舞踏会でも行われそうな、キラキラとした広間でした。
「……どういう事」
とりあえず杖を握り締めて、ラクリマを喚び出します。パワーが欲しいので、ヘラクレスさんも喚んじゃいましょうか。
手数でふたご座の二人、りゅう座………今日は、ほうおう座と戦いましょう。
魔法陣からシルエットが浮かび上がるのを確認して、目の前の黒い靄に視線を向けます。
そこから、次々とモンスターが出てきました。
ゴールデン・タイガー Lv.63
アクティブ
ゴールデン・ライオン Lv.63
アクティブ
ゴールデン・ディア Lv.63
アクティブ
ゴールデン・ウルフ Lv.63
アクティブ
頬が引きつりました。
き、金色のモンスターが出て来ました。
……あ、悪趣味なくらいピッカピカなゴールドです!?
と、とりあえず様子見つつ……自分を強化して……
「…【流星雨】!」
数多の流星がモンスターへと当たります。
次の瞬間にはカストールさんとポルクスさんが、己の武器を構えて飛び出していきました。
「ヘラクレスさんはご自由に!ドラコーンも、アンカーも………好きにやってください!とりあえず倒したいので!」
『……雑……まあ良い、承った』
『余は其方と、ラクリマのサポートをしよう』
ドラコーンさんがジト目でわたしを見たあと、ふわりと浮かんで、素早い尾の一撃を放ちました。
「「あっぶなー!」」
『其方達なら避けられるだろう』
「「避けられるけどさ!」」
それをしゃがんで避けたカストールさんとポルクスからブーイングが飛びました。
避けられるんですね……
アンカーがわたしの近くで翼を広げました。
不死鳥の概念……赤から黄色に彩られた翼に魔力が集中して、燃え上がりました。
- 鳳凰のオーラ が 付与されました-
『……少しはダメージを減らせるであろう。耐性もだ』
「ありがとうございます、アンカー!」
『どりゃー!』
ふわりと浮遊するラクリマが魔力糸を使って器用にモンスターを転がします。
そこをヘラクレスさんが、すかさず追撃しました。
ラクリマ、蝶ですが凄く速く飛べるのです。凄すぎ!
……そしてあのモンスター達、硬いです。
ゴールデンだからでしょうか……ヘラクレスさんの一撃を受けても、耐えてます。
「………面白い」
ヘラクレスさんが獰猛な笑みを浮かべました。
南無南無……わたしも働きましょう。
「フレイムピラー!」
ゴールデンディアの足元から出た火柱は、その身体を容赦なく貫きました。
………表面が、少しどろりとしたようです。
しかし次の瞬間に、固まりました。
金って溶けるんでしたっけ……!?
ダメージは負ってます。とりあえず攻撃ですね。
天体魔法はコストが高いですから……装備やアクセサリーのおかげで、ばかすか撃ててますけどね!
「ミツキ、炎魔法は控えてくれると助かる」
「溶けて固まって、硬くなってる、って感じ?」
「わ、わかりました!」
カストールさんとポルクスさんの助言を受けたので、その通りにします。
硬くなってしまうのですか……
「ストームピラー!」
………うーん、あまり効いてませんね。
ゴールデン・ディアは健在です。
「【宇宙線】!」
四本の宇宙線がゴールデン・ディアを貫きました。
次いで爆発し、ゴールデン・ディアのHPを五割まで削りました。
……天体魔法のが効きますね!
しょうがない、HPが減っているモンスターを目掛けて使うとしましょう。
そうしてヘラクレスさんが圧倒的パワーでHPを減らさせ、カストールさんとポルクスさんが素晴らしい手際で瀕死にさせ、ドラコーンが尾で一か所に集めます。
それらに【彗星】でトドメをさし、次のモンスターが出てくるの待っていたら、追加のモンスターと共に何か……全身、金で覆われた、小さな人型のモンスターも出て来ました。
み、見覚えが無いです!ひとまずスクショを撮って…
ゴールデン・メン Lv.65
アクティブ
わたしと目が合った瞬間、シュンッと近くのモンスターの元へ走り出しました。
はやっ!?
素早いですね!?でも何か普通のモンスターでは無さそうですし、倒したいですね!
「ラクリマ!」
『なーに!?』
「あの小さいすばしっこいモンスター、捕まえよう!」
『………わかった!』
(【重力操作】!)
重力操作で近くにいたモンスターごと、地面へと抑えつけます。ぐぬ……ちょっと抵抗ありますね!
そこに床から木の蔓が蔓延り、ゴールデン・メンの身体をその場に繋ぎ止めます。
『ミツキ』
よし!攻撃しないと!
MPを回復しようと思った時、アンカーから声をかけられました。
見上げると、アンカーの瞳から雫が……わたしの額にぶつかりました。
「わっ!?」
HPとMPが、全回復しました!
なんと……素晴らしすぎる力です!
『一日に一回しか使えぬがな』
「ありがとうございます、アンカー!皆、あの人型のモンスターを攻撃してください!」
わたしの言葉にヘラクレスさんが瞬時に周りのモンスターを蹴散らして反応し、その赤黒いオーラを纏った棍棒を振り下ろしました。
轟音と煙に覆われ、ゴールデン・メンは………うげ、五体満足です。
HPはまだ七割あります。
そこにカストールさんが剣を貫くように突き出し、ポルクスさんが拳を叩き込みました。
『…オオオッ!【星竜の吐息】ッ!』
周りのモンスターへ、多頭化したドラコーンによるブレスが直撃しました。
す、全ての頭から放たれるブレス、強力です!かっこいい!
『……金と相性は良くないとな……まあ、全て燃やせばよかろ。【輪廻転炎】』
巨大な火の鳥となったアンカーが、倒れ伏すモンスター達に突撃しました。そして爆発、溶けて原型を留めないモンスターが、灰まみれになっています。
その灰から、ポンっと軽快な音を立てて、小さくなったアンカーが出現しました。
『……疾くトドメを刺さぬか、ミツキ』
「は、はいっ!【隕石】!」
音を立てて落ちてきた隕石が大爆発を起こし、モンスター達のHPを掻っ攫っていきました。
と、とりあえずあのモンスター!あのモンスターだけでも倒したいので、MPポーションを惜しまず、集中砲火、です!
ゴールデン・メンのイメージはアレです、某アト…スさんで出てくる手の形した逃げ足早い金ピカのアレです。
いっぱい経験値くれて…ちなみにメンなのは仕様です。
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




