紫雷との出会い
ご覧いただきありがとうございます!
休みなのでここまで投稿します。
ラクリマと共に兄の元へ移動しました。
そして目に入った光景に、すぐに距離を取って杖を握り締め、構えました。
「っ、待て待て、敵じゃないんよ一応」
「……ほ、本当に!?」
「俺の所に移動できたろ。戦闘中だと出来ねえし」
た、確かに。
構えをといて、少しずつ兄の元へ近寄ります。
兄の近くには、身体の大きな狼が、いました。
薄い紫色の体毛をしていて、金の瞳でこちらを見つめています。
『……ほう、これはまた珍しい』
「っ!しゃ、喋った!」
『星詠みの娘と、宇宙の気配がする……いや、知らない気配も混ざってるな…』
紫雷月狼〈トニトルス〉 Lv.80
パッシブ
【???】【???】【???】
【???】【???】【???】
っ!ネームド!レベルたっかいですね!?
……って、あれ?
兄が前に会ったといっていた、雷を使うウルフの……?
「……ミツキと申します。こちらはわたしの相棒のラクリマです。もしや以前兄に爪をくださった方ですか?」
『そうだ。我は紫雷月狼、名をトニトルスと言う』
「そ、俺のライバルモンスターなんだけどさ」
「……そういえば、何で呼んだの?紹介?」
「……そう、それはさっき起こった話なんだけどさ」
そう前置きを置いて、兄は遠い目をしました。
◆◆◆
世界樹の根本で、ミツキから得た情報を整理していると、ホームの方から歩いてくる気配を感じた。
振り向くと、ミツキの友人のミカゲが、俺を見て破顔した。
「……うおおおお!リュー氏!おはようございます!」
「はよーミカゲちゃんや」
「戻られたんですなぁ……島に色々増えてて驚きました?」
「さっきミツキから今までの経過聞いたよ…」
「それは………お疲れ様でしたな」
可哀想なものを見る目で見られた。
やっぱ普通の経過じゃねえよな……
「ミカゲちゃんもレンくんも強くなったって聞いたからさ」
「ジョブチェンジして特殊なルートへ進んだら、癖が強くなった感じですね……今度クランメンバー皆で、能力のすり合わせをしたいです」
「俺もレベル上げるか…」
「久しぶりのログインであれば、少しずつ感覚慣らしていくのが良いと思いますぞ!では、失礼しますわ。あ、これ危ない時に使ってくださいね!」
試験管を何個か俺に預けて、ミカゲは世界樹にお供えした後、何処かへと移動した。
世界樹にお供えしたな???
……少しずつ、な。じゃあルクレシアの周りから行くか。
「……世界樹、妹が世話になった。これからもよろしくな……」
団子を取り出すと、枝が団子を撫でるように素通りし、流れで俺の頭上も素通りした。
……本当に話通じてるんだな。
俺はとりあえずルクレシアの門前へと移動した。
ストレッチをして、軽く槍を素振りする。
ん、少し思い出してきた。
ひとまず近寄ってくるモンスターを薙ぎ払い、蹴り飛ばし、突き穿つ。
身体を捻って背後のウルフを石突の部分で突き上げ、その勢いを利用して槍を回転させ、刃でウルフを切り裂いた。
いけるいける、思い出してきた。槍を、血を払うように回転させる。
人気のない森の方まで身体を動かしながら移動した。
……その時、大きな身体を持つモンスターが近寄ってくる気配を感じて、その方向を見据える。
『………ァァア!』
「……ん?何か聞こえんな」
『キッサマァァァ!』
めっちゃ遠くから睨みつけてくる紫色したでっかいウルフ………トニトルスが、土煙を上げながらこちらへと猛スピードで走っていた。
え、こわ。
とりあえず近くの森に逃げ込む。
爪貰って、加工してから会ってなかったのに、何で今……?
『我から逃げられるとでも?』
「……こええよ。ここなら人目が無いから話しやすいと思ったんだよ」
『……そうか。いやそうではなく』
どっちだよ。
背後に近付いていたトニトルスを振り返る。
……以前より巨躯、なんか装飾も付けてる。
「……何かデカくなってねえ?」
『貴様と会わない間に時間があったのでな!!我進化したのだ!!』
「……はァ?それ以上強くなられても相手できねえよ」
『それなのだ!今まで、渡って来なかったであろう!気配を感じなかったぞ!』
「……そりゃ、俺も忙しいし」
『……我、貴様と戦うの、楽しみにしていたのだぞ』
急にしょげた雰囲気で尾を丸め、耳も下げたこのデカい狼の姿をみて、流石の俺も罪悪感を覚えた。
……いや俺悪くねえけどさ。
『来る日も来る日も待ち続け、やっと気配を感じて追って来たら……貴様、成長してるがそこまではしてないな』
「そりゃ数週間来れなかったからな。まだレベルも40だし」
『………我、強くなりすぎたか』
それはそれでイラッとくるが、今挑むと瞬殺されるだろうから何も言わねえ。
『……そうだ、我が貴様を鍛えれば良いのだ!』
「………は?」
『我、貴様を気に入っているからな。うんうん、それが良いであろう』
「………ちょ、待てよ。え、」
『……何だ?』
「ちょっと一人だと頭痛いから妹と考えさせて。あと人目につきそうだから場所移動したいんだけど」
◆◆◆
「……そんで、イマココ」
「………」
開いた口が塞がりません。
え、めっちゃ狼さんから矢印向けられてませんか?
『其方のように契約するのも良いかもしれんな。契約はどうだ?』
『………契約者が最高だから、最高だよ』
『ほう???』
ラクリマと、何か話してます。
すごい……フレンドリーです……
「すごいフレンドリーだけど……」
「好敵手の称号貰ってから、一回も会ってなかったんだよなぁ」
「渡航したから……会えない時間が、想いを爆発させちゃったと……」
「流石の俺も驚きが天元突破したから、呼んじゃった☆」
てへ、とウィンクする兄をジト目で睨みつけつつ、トニトルスを見ます。
わたしの視線を受け止めたトニトルスが、首を傾げました。
『どうした、ミツキよ』
「……兄と契約したら、何か変わります?」
『……ふむ、【雷魔法】に補正はつく、それに我の背に乗せて戦う事も出来るだろうが……新たな職業が出るやもしれんな』
……こ、このモンスター、すごい物知りです!
実は幻獣系だったりします??
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!あれだよ、昔動物に乗って戦う騎士系のゲームしてたやつの、ウルフバージョンのライダー?になれるよ!」
「ドラゴンライダーじゃなくてウルフライダーか……大穴で面白えな……」
トニトルスに跨がる兄……強いですね。
絶対速いです。
『我は進化して、恐らく幻獣へと至った。知らぬ知識が流れ込んできたからな……ラクリマ、其方も元は幻獣であろう?』
『……そう、ラクリマの場合は一回生命を終えて、宇宙によって再構築されたから新しいモンスターになったけど』
『ふむ、この広がる無限のような気配は宇宙であるな。そしてその広がる無限に、枝葉、根のように伸びる気配は世界樹か』
『そんなにわかるの…』
えっ幻獣!
ひゃあ……え、幻獣って契約出来るんですね。
『四六時中一緒に居る訳ではない。喚ばれれば向かう、その程度だ』
「……なるほどな」
『その為にもレベルを上げて、我の力を扱うに相応しくなって貰いたい所よ。勿論其方が気に入らなければ、違う道を歩むのも良かろう』
トニトルスの言葉を受け、兄は考えるように沈黙しました。
この世界の話が通じるモンスター、とても親切です。
…いや、敵対してくるモンスターもいますけどね。
「……とりあえずレベルを上げるわ。ミツキ、いい所知ってる?」
「………うーん、砂漠か…あ、今度はダンジョン行こうかと思ってたんだけど、お兄ちゃんも行く?まあ土日にだけど」
「それってレダンのアルヒラル遺跡?」
「大きいダンジョンのやつ」
「アルヒラル遺跡だな……三十階層あるやつ」
わあ、そんなに!
それなら結構レベル上げられそうです!
「俺も今週は写真の選定と打ち合わせとかで忙しいから、土日に行くかなぁ」
「わたしもレベル上げに行くね」
ラクリマと、アストラエアさんと、レベル上げです!
『……ん?決まったのか?』
「とりあえずはな。ひとまずレベル上げてくるから、待ってて。今度はそんな待たせないよ」
『……そうか。では、祝福を授けておく故、何かあれば呼ぶが良い』
頭を兄の身体に擦り付けて、森の中へと消えて行ったトニトルス。
「……とりあえず、来てくれてサンキューな」
「この後戻るけど……ダンジョン、一緒に行ってもいい?なるべく、レベル上げるために自力で頑張ろうとは思うから……ダンジョンは人の目もありそうだし」
「まあ構わねえけど……むしろ良いのかって感じ」
「うん。レベル差があっても、多分お兄ちゃんには体術とか負けるだろうし……準備と下調べしておくね」
ステータス差があっても、力量の差は誤魔化せないですからね!体術は負けますが、魔法は勝ちます!
「……おう、俺も準備しておくわ」
「今日この後は?」
「リル稼ぎだな。装備整えて、依頼してくる。ミツキは?」
「買い物かなぁ」
わたしもアルフレッドさん達の装備を整えないとなので。王都に戻ります。
「うし、じゃあ行くか。また何かあったら連絡するわ」
「わかった。行ってらっしゃい」
片手を上げた兄が何処かへと移動しました。
………よし、装備の事もありますので、再度三人を喚び出しましょう。
アイテムボックスから喚び出すと、瞳を開けて周りを見渡しました。
「……改めまして、ミツキです」
『ラクリマです』
ど、ドキドキします!
とりあえず自己紹介です。ラクリマも続けて名前を言いました。
するとアルフレッドさんが、流れるような所作で一礼しました。
「この度は、私どもとのご契約、誠にありがとうございます。身命を賭して、お仕え致します」
「しっ身命は大事に!」
「……ふふ、存じております。魔力を込められた時に、お嬢様の人となりは理解いたしました」
えっっっ!
ちょっと恥ずかしいですね……
ウィローさんはニコニコと会話を見守っていて、アストラエアさんはこちらをじーっと見つめています。
「?何かありますか?」
「……そうさな、お嬢。お嬢は割と戦いの経験値はあるだろ?何故、あたしと契約したんだと思ってな」
「なるほど……見ての通りわたしは魔法職なのですが、狙われる事が多く……わたしへの攻撃を弾いたり、いざとなれば運んで逃げてくれるように、戦闘が得意な方を雇いたかったのです」
「おお、納得。わかった、あたしに任せな」
アストラエアさんは、牙を見せて笑いました。
「ウィローさんには、ホームが建つ島で、一緒に作物やガーデンの手入れをして欲しくて」
「ほっほ。お任せください」
「あ、あと皆様には、お嬢様とかではなく、なるべく名前で呼んでいただければと……」
そっと、窺いつつ伝えると、アルフレッドさんが苦笑しました。
「……時と場合で、呼び方を使い分けるのを許可いただければ、人前でなければ……ミツキ様とお呼びしてよろしいでしょうか」
「はいっ!」
「では私もミツキさんと呼ばせていただきますぞ」
「お嬢が言うなら……ミツキって呼ぶな」
よし!!
第一ミッションクリアです!
拳を握ったら、笑われました。
「ではこの後は、王都で買い物しようと思います」
「はい。お供致します」
「ウィローさんも、アストラエアさん用の武器とか……使いやすいものを教えて下さいね」
「ん、わかった」
契約召喚で喚び出したメンバーはパーティー扱いなので、このまま王都へと移動しました。
明確に何か違うことさせたいなと考えたら、ウルフライダーの方向に……?癖は強そうですね( ˘ω˘)
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




