渡したいもの
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皆様のおかげです!ありがとうございます!
千歳カンパニー
第一モニタールームにて
「おいラスボスのレベルが推奨レベルより高いぞ!」
「っていうかラスボスがゴブリンキングだったはずでは!?」
「あぁぁぁぁ一撃で低レベル帯のプレイヤーが死にましたよ」
複数人の男女が焦った様子でモニターを眺めている。
「どうしますか主任!?」
「このまま行くしかないだろう……」
「ですが………」
「プレイヤーたちとNPCを信じるしかないだろう……」
彼らは自分たちが設定していたイベントエネミーが違うエネミーになっていたことに対し頭を抱えていた。
ギリギリまでイベントのために色々プログラミングしていたはずだが、何故か想定より高いレベルのイベントエネミーがラスボスになっていた。
「あれ、ドラゴンゾンビ負けそうですねぇ」
「……ッ久住!お前が手を出したのか!?」
「そうですよ。ちょっと防衛イベントにしては甘すぎるボスレベルだったので」
久住と呼ばれた若い男はモニターを眺めて考え込む様子をみせる。
「始まりの街であるルクレシアが壊滅したらどうする!」
「それならそれで他のプレイヤーたちに、本気で取り組まないと街は簡単に壊滅するって見せつけられていいじゃないですか」
「お前、」
「まぁ思っていたよりプレイヤーがNPCと交流して好感度上げていたのと、プレイヤースキルが高いやつが多いですね。このままだと普通に倒せます」
「~~~ッせめて言ってから変えろ!ここにいる誰もがイベント進行がシナリオと異なるから焦ったんだぞ」
「それは申し訳ないです。でもイベントならもう少し難しくした方がスリルがあって楽しめるでしょう?」
悪びれもなく笑みを浮かべる男、久住に主任と呼ばれた男はため息をつく。
「とりあえず今後勝手なことはするなよ」
「善処します。……お、このレンってプレイヤーすごいなぁ。身体強化系でずっとぶん殴ってる面白いな。なぁ、佐藤。NPCの好感度高いのなんで?」
「は、はい。サギリというプレイヤーがルクレシアで自警団を組織したのもありますが、個々のプレイヤーがNPCたちと多数の関わりを持っているからですね」
「ふぅん」
まるで興味を無くしたように久住と呼ばれた男はモニタールームを出ていく。
「……素行に難があるが優秀なプログラマーなんだよなぁ……」
「お疲れ様です主任……」
「もうこれはしょうがない。イベント報酬に少しだけ色をつけよう」
「……今夜も徹夜ですね」
「すまないなお前たち……」
残されたモニタールームにいた人間たちは、大きなため息をついて自分のデスクに戻るのであった。
「もうちょい面白くしないとすぐプレイヤーは離れますからね………次はどうしようか」
久住と呼ばれた男はそう呟くと、その顔にうっそりとした笑みを浮かべた。
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おはようございます!ユアストにログインしました。
色々家のことをやっていましたので、現在9時頃です。
顔を洗ってストレッチして、備え付けの椅子に座ります。
今日のユアストでの朝ごはんはグレナダさんのところで買いました、ワイルドボアバーガーです。
「いただきます!」
んんんんん溢れる肉汁!お肉とピリ辛ソースが合います~!食べるのが止まりません!
このピリ辛ソースいい辛さですね………辛いの苦手な人も食べられるピリ辛加減です。ソースだけでも欲しいです。
これ1つで大満足です。
「ごちそうさまでした!」
今日はリゼットさんのところへ寄って、12時過ぎからのイベント報酬を楽しみにしましょう。
どんなものが貰えるのでしょうか。
とりあえずお金が貰えたら嬉しいですね……
欲しいものがたくさんありすぎます。
よし、ゆっくりリゼットさんのところへ向かいましょう!
リゼットさんの渡したいものも気になります。
「ティナさんおはようございます!」
「はいおはよう!」
「鍵お願いします!」
「あいよ!いってらっしゃい!」
ニコニコ明るいティナさんに送り出されてお宿を出ます。
ルクレシアが無事で良かったです。
いつもと変わらない日常が広がっています。
リゼットさんのお店につきました。
「おはようございます」
「あら、ミツキさんおはよう」
「昨日はお疲れ様でした!」
「ミツキさんもね。ゆっくり休めたかしら?」
「はい、ぐっすり眠れました」
「それは良かったわ」
リゼットさんはカウンターの中へ招いて下さいました。
そして紅茶とお菓子を準備して下さいました。
「ありがとうございます!」
「どうぞ召し上がれ」
リゼットさんの所で飲む紅茶とお菓子すごく美味しいんですよね。
疲労回復フレーバーティーといい、リゼットさんはお菓子作りも得意なんでしょうかね???
「今日は来てくれてありがとう。渡したいものがあって」
「渡したいもの、ですか?」
「ええ」
そう言ってリゼットさんは部屋の奥へと向かいました。
そしてすぐに戻られ、その手には小さな箱がありました。
「いつ渡そうか考えていたのだけれど、昨日のポーション作っているミツキさんをみて、今日渡そうと思ったのよ」
わたしの手に箱を乗せます。
開けてみて、と促されたので、開けさせていただきます。
「わぁ……!」
そこに入っていたのは、綺麗なエメラルドグリーンのブローチです。
リゼットさんのお店と同じマークが刻まれています。
「ブローチ、ですか?」
「ええ。薬師はある程度の経験を積めば、ポーションを量産できるスキルを習得したりしてあんなに1日中時間をかけて1つずつ作ることはあまりしないの。でもミツキさんはまだ薬師なりたてでしょう?だから1つずつ作るしかなかった」
「はい……」
「あんなにたくさんの量を1つずつ作って、泣き言も言わないで諦めないで作り続けることはとても素晴らしいことよ。腕も疲れるでしょう?でもミツキさんは諦めず、モンスターが討伐されるまで作り続けたわ。その諦めない真剣な思いで、薬師に取り組んでくれてとても嬉しかったのよ」
「リゼットさん……」
「だから、ミツキさんを私のお弟子さんなのよ!って自慢したくてそのブローチを友人に頼んで作って貰ったわ。ミツキさんが良ければ、つけてほしいわ」
わたしはもう一度ブローチを見つめます。
これは、リゼットさんがわたしを薬師だと認めてくださった、ということですよね?
これは堂々とリゼットさんの弟子です!と名乗れるようになるやつですよね??
「う、うれしい……ありがとうございますぅ……」
そんなの嬉しすぎるじゃないですかぁ!
つけさせて頂きますぅ!!!
翠玉のブローチ
リゼットの弟子に与えられるブローチ。
クリスティアの住人と薬師のNPCからの好感度が上がりやすくなる。
〈この装飾品はアクセサリースロットを消費しません〉
素敵なものをいただいてしまいました。
ひとまず上着の胸元にブローチをつけます。ローブは邪魔なのでアイテムボックスにしまいました。
ふふふニヤけてしまいます。
「良かった、似合っているわ」
「ありがとうございます!嬉しいです!」
「これからもよろしくお願いするわね」
「はい、お世話になります!よろしくお願いします」
改めてリゼットさんと握手します。
リゼットさんの手は、とても暖かい優しい手でした。
薬師のレベルが10になったら新しいポーションの作り方を教えてくれるそうなので、瓶を頂いてお店を後にしました。
この瓶もどこから調達しているのか、次確認しましょう。
今日はルクレシアの街を散策して、お店を物色しようと思います。
リゼットさんに認めて頂いたのが嬉しすぎてスキップしてしまいそうです。
気付けば鼻歌も歌いながら、街中を歩き出しました。
イベント報酬までたどり着きませんでした。
これが薬師としての1歩目です。
次はイベント報酬になります!
これからもこの作品をよろしくお願いします!




