宇宙蝶とお供え
ご覧いただきありがとうございます!
身体を小さくしたラクリマを、わたしの腕をとまり木代わりにして支えます。
よ、良かったです!!立派に成体になりました……!
「ラクリマ、身体は大丈夫?」
『大丈夫!何処もおかしい所はないよ』
「良かったああああ!!お腹空いてない?何か食べたいものある!?」
「……落ち着けミツキ」
わたしの頭をポンと撫でたヴァイスさんが、ラクリマの身体を人差し指で撫でます。
「元気そうで何よりだ」
『ふふ、君もね』
「ワタシ達にもラクリマを見せておくれ」
「はいっ!」
ラクリマを腕に留まらせたまま、お師匠様達の元へ向かいます。
そしてみんなに囲まれるラクリマは、とても楽しそうに、嬉しそうに皆の顔を見回しました。
「ほう、これは……」
「とても美しい羽ね」
「なんかコスモスの力が強くないかい?」
王様と王妃様、お師匠様がラクリマを覗き込みます。
ラクリマはふわりと浮かび上がりました。
「契約獣の進化なんて、滅多に見れるものじゃないわ」
「神秘的だな」
「美しい契約獣だなぁ!」
「強く美しくなったね、ラクリマ」
あ、ラクリマ用の首飾りがあります。
預かっていましたし、それを着けてあげましょう。
アイテムボックスから取り出してラクリマを呼ぶと、わたしの手の中にあるものをみて更に目を輝かせました。
「これはラクリマのだからね」
『うん!ありがと!』
首元で輝くプレアデスの首飾りを見せ付けるように、ラクリマは皆の元へと飛んで行きました。
「ああ、そういやミツキよ」
「?はい」
「お前さんの兄が戻ってくるんだったね?じゃあこれを渡しておくさね」
皆に声をかけるラクリマを眺めつつ、お師匠様が一つの腕輪を取り出しました。
「お前さんの両親がそんな話をしていたのさ」
「あ、ありがとうございます!今の所ほぼ仲間外れにしてしまっているので……後で都合つけば、皆様に紹介させていただきますね」
「あら、ミツキさんお兄さんもいらっしゃるのね」
「見所が有りそうだな」
お、王様と王妃様が興味持ってくれましたよ!
やりましたね兄よ!
脳内で兄がサムズアップしました。
「ラクリマめっちゃ美人さんになりましたなー!」
「本当に……オーラが違うわね」
『皆も、この少しの間で強くなったね!』
「お、わかります?ボクもレン氏も以前とは違うんですよ」
『うん!破壊と死の気配がするよ!』
「…分かるのか」
ラクリマは器用に頷きました。
幼体の頃も感情、表情が何となく分かりやすかったですが、成体になって言葉もスムーズになりましたし…感情を表に出すのが上手になりました!
「せ、成長したねラクリマ……!」
「お前さんは母親かい」
はっ!そういえば、今のラクリマのステータスはどうなっているのでしょう?
離れた所にいるラクリマをじっと見つめます。
宇宙蝶 《ラクリマ》Lv.1
パッシブ
【休眠】【魔力糸】【硬化】【斬撃耐性(中)】
【衝撃耐性(中)】【風魔法】【闇魔法】【光魔法】
【重力操作】【自然回復】【身体転変】【気配遮断】
【心眼】【超速再生】【光合成】【木魔法】
【世界樹の知恵】【世界樹の加護】【宇宙創生】
「んっ??」
え??
目をこすって二度見しました。
成体になったので【蛹化】と【羽化】が無くなったのはわかります。
ただ何か物騒なものが増えてます……!
「ら、ラクリマーーー!?」
『わっびっくりした。ミツキ、どうしたの?』
「ら、ららラクリマのステータスが」
『…そうだ、説明しないと!』
ふわりとこちらへ戻ってきたラクリマがわたしの肩に留まりました。
『ミツキ、ラクリマに世界樹の葉をくれたでしょう?』
「うん」
『それのおかげで、世界樹から二つのスキルを貰ったんだ』
皆はわたしとラクリマの会話を、目を丸くしながら聞いています。
『一つは【世界樹の加護】。これのおかげで世界樹と会話出来るし、妖精や精霊から一目置かれる存在になったね』
「なんと!」
『再生力も上がったと思う。あと世界樹の破邪の力も少しだけ使えそう』
「ほああ」
ぽかんと口を開けてラクリマの話の続きを促します。
肩にいるので、ラクリマのいる方向へ視線を向けます。
『【世界樹の知恵】は、多分一日一回だけ、世界樹が持つ膨大な知識にアクセス出来そうって枝が言ってる』
「せ、世界樹の知識…?」
「……世界樹は創世記から存在する天地を支え大地に根を伸ばす大樹だ。蓄積される歴史や時間は膨大な物、故に世界樹はそれらを記録する機能がある……と言われている」
『合ってる。世界樹は全ての記録を持ってる図書館みたいな感じらしくて、とりあえず知りたい事があれば調べられそう!』
王様の言葉にラクリマは頷きました。
あ、頭に詰め込むのに必死です。
ラクリマがすごい存在に……!
『世界樹の葉のおかげで色々貰えたから、木魔法も覚えた。ミツキが気になるのは【宇宙創生】ってやつだよね?』
「そ、そう」
『これについてはラクリマもわからない。多分、ラクリマを作り変える時に宇宙の力で満たされてるから、コスモス様由来だと思う』
「響きがやばいんですよね……」
宇宙創生ですよ、創生。
字面だと宇宙を創生するので、創るんですよ、宇宙を。
……ちょっと何言っているかわかりませんね。
『後はレベルが1になったから、レベル上げないと』
「そうだね、明日から砂漠の探索だよ」
『砂漠!今度は飛んでくから砂に負けない!』
ラクリマがウキウキとしました。
……まだラクリマの情報を飲み込めてませんけどね。
ちらりと母に目線を送りますが、母は首を横に振りました。
「……今はコスモス様と繋がるのは難しいようね」
「な、何かあったのかな」
「以前も多忙な時は繋がりにくいやもー!って言ってらっしゃったから、ご多忙なのかもしれないわ」
そ、そうですか……では今度、都合つけばコスモス様に聞いてみる事にしましょう。
……では、そろそろ。
「……ガーデンに向かいましょうか」
わたしの言葉に、皆が顔を引き締めました。
そう、ラクリマのお披露目と、ガーデンのお披露目予定でしたから今日は!
先導させていただいて、ガーデンへの道を歩きます。
そんなに時間はかかりませんからね、すぐです。
「到着しました」
「ほう…これは」
「まあ、とても美しいわ」
王様が目を見張り、王妃様も手を口に当てながら、とてもキラキラした瞳でガーデンを見つめています。
「素晴らしいガーデンじゃないか。……あれはガゼボなのかい?」
「ありがとうございますお師匠様。あれはガゼボですね……中に祭壇があります」
「ユニークだね、面白い」
ユニークですよね…
皆にガーデンを眺めて貰っている間に、祭壇に供えましょう。
両親を手招きします。
すると両親は頷いて、アイテムボックスからグラスとお酒を取り出しました。
わたしは一つのクリスティアのパンを取り出して、輪切りにします。
一個丸々はさすがにアレなので……気に入ってもらえたらまた切り分けます。
それを皿に二切れ乗せて、カトラリーと共にテーブルへと置きます。
両親がグラスと、栓の開いたお酒をボトルでテーブルに置きました。
よし、これで大丈夫でしょう!
他の皆も供える物を用意したと言っていましたし、それは自分の祈るタイミングで置いて貰います。
わたしは跪き、両手を胸の前で組みます。
太陽様、いつもお世話になっております。ミツキです。この度祭壇が出来上がりましたのでご報告です。
わたしが美味しいと思ったものと、両親からのお酒を差し入れさせていただきます。
そしてデイジーさんへの贈り物を用意しましたので、お手数おかけいたしますが、デイジーさんへ何卒よろしくお願いいたします!
これからもよろしくお願いいたします。
海様、いつもお世話になっております。ミツキです。この度祭壇が出来上がりましたのでご報告です。
わたしが美味しいと思ったものと、両親からのお酒を差し入れさせていただきます。
そして人魚のお姉様方へちょっとしたものをご用意いたしました。お手数おかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします!
これからもよろしくお願いいたします。
破壊様、いつもお世話になっております。ミツキです。この度祭壇が出来上がりましたのでご報告です。
わたしが美味しいと思ったものと、両親からのお酒を差し入れさせていただきます。
星の霊薬の為に今度またお花を採取させて貰おうと思います。
これからも、よろしくお願いいたします。
死様、いつもお世話になっております。ミツキです。この度祭壇が出来上がりましたのでご報告です。
わたしが美味しいと思ったものと、両親からのお酒を差し入れさせていただきます。
今後またお力をお借りするときには、どうぞよろしくお願いいたします!
これからも、よろしくお願いいたします。
それぞれへと祈りを捧げます。
これからも見守っていただかないとなので!
そうして顔を上げると、ソファに座ってクリスティアを口に運ぶヴァスタトル様の姿が目に入りました。
「ヴァッ!?」
『……むぐ、これ美味しいね』
「よ、よかったです……?」
『もっと食べたい』
「わかりましたぁ!」
なんか後ろが静かだと思ったら、皆距離を取って、膝を突きながら目を見開いてこちらを見ています。
急いでクリスティアを取り出して、食べやすいサイズに切り分けます。
『皆楽にしていいよ。プライベートだし』
「…お気遣い、ありがとうございます」
『今の俺にそこまでの力は無いからね。レン、レンは何かないの?』
王様の言葉にそう返答したヴァスタトル様は、レンさんを見て楽しそうに笑いました。
レンさんは顔を顰めて、それでもアイテムボックスから何かを取り出してテーブルへと置きました。
『これは?』
「…酒を使ったチョコレート」
『へぇ……美味しい』
レンさんとヴァスタトル様の会話を聞きつつ、心臓を落ち着かせて下がります。
そこにミカゲさんが近付いて来て、コソッと耳うちしました。
「ミツキ氏が祈りを捧げていたら音もなくソファに現れて、祈りを捧げるミツキ氏を楽しそうに眺めてましたよ」
「ひえ…」
「マジびっくりしましたわ…」
『ミツキ』
「はいっ!」
名前を呼ばれて飛び上がります。
そしてヴァスタトル様の元へと戻ります。
『多分他の奴らも来るから慣れておいた方がいいよ』
「へっ」
『ああ、ほら』
ヴァスタトル様が目線を送ると、ふわりと音もなく宙に現れたソル様、マレ様、タナトス様が音もなく着地し、ソファへと腰掛けました。
お、お早い!
心の準備が出来ていませんが!?
わたしはおっかなびっくりしながら、他の皆様へと振り向くのでした。
ラクリマは世界樹の葉を食べ続けたら凄いことになりましたね(白目)
破壊を司る彼は一番身軽な感じで来島します(いつも何処かを放浪してますので)
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




