建国祭15日目 建国祭最終日② フィナーレ
ご覧いただきありがとうございます!
終わらせようと詰め込んだら約7000文字になってしまったので、ゆっくりとお読み下さい。
王城の前には、既に多くのプレイヤーとNPCが集まっていました。
さすがにこの人混みを進む勇気は無いので、壁際から眺めるとします。
……プレイヤーの装備とか眺めてしまいますね。
全身鎧とか、重くないんでしょうか。
見たことない武器や、盾などがあります。
マントも……やはり装備の自由さがすごいゲームです。
好きな装備で冒険するのは、嬉しくて楽しいですからね。
あ、あの装備とても可愛らしいです。
ゴシック系ですね……背中の大剣がギャップです。
わざわざ背負ってるのはこだわりでしょうか。
そうしてプレイヤーをチラ見していたら、王城の門が開きました。
王様と王妃様、リヒト様とメーア様が出てきました。
そして王様が1歩踏み出します。
「……本日はお集まり頂き、感謝申し上げる」
その言葉に、胸に手を当てて王族の皆様が礼をしました。
礼1つとっても洗練された動きです。様になってます。
「民の、渡り人の尽力により、今日という日を迎える事が出来た事、クリスティア国王としてとても嬉しく思う。これからも国のため、世界のため、共に歩んで行くことを私は誓う。…よろしく頼む」
フッと柔らかい笑みを浮かべた王様に、NPCと多くのプレイヤーが叫び声を上げました。
びっっっくりしましたね…
でも普段キリッとしている人が柔らかく微笑むと、心臓に悪いのはわかります。
そしてプレイヤーの目の前にディスプレイが出現しました。
えっと……?
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-建国祭 後夜祭のお知らせ-
いつもプレイいただきありがとうございます。
『Your Only Story Online』運営チームです。
只今の時刻を持ちまして、クリスティア王国 建国祭イベントは終了となりますが、後夜祭として建国祭限定セールや限定アイテムの販売を日付が変わるまで行います。
これを機に限定アイテムなどをお求めいただければと思います!
コインの交換は明日以降可能となりますので、よろしくお願いいたします。
詳しくは公式サイトをご覧ください。
今後とも『Your Only Story Online』をよろしくお願いいたします。
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ほほう、日付が変わるまでセールは継続とのこと!
わたしは午前中買い物して満足しましたが、今日が終わるまでゆっくりと建国祭を楽しめそうですね。
後夜祭……良い響きです。
あ、ディスプレイを眺めていたらいつの間にか王族の皆様が扉の前へと戻っていました。
NPCが王族の皆様の名前を叫びつつ、手を振ります。
本当に慕われてるのが伝わりますね。
王族の皆様も手を振り返して、扉の前で軽く一礼しました。
コインの交換も明日からですし、わたしは鉱山で大理石集めに行きましょうか。
この、人混みから、抜け出します!
懐中時計でエリペ鉱山を選択して、転移しました。
やってきました。
鉱山へと入るための列に並びます。
ふむ、チャイニーとは別のパーティーが料理を振る舞っていますね。
料理人パーティー、多そうです。
香りは中々スパイシーなのですが……もしやエスニックな??
ユアストでエスニック料理作る、と言うのは本場の人か真剣にエスニック料理を愛している人では??
ちょっと気になります。
香りを楽しんでいる間に順番になりました。
さて、大理石のためにとりあえずレベル60からの第六階層へ挑みましょう。
‑エリペ鉱山 第六階層 に入りますか?‑
はい
いいえ
はいを押すと、石造りのフィールドに転移しました。
今日の仲間はパワー!を求めてヘラクレスさんとオリオンさんですかね。
倒して大理石を入手するのです。
後はわたしのサポート目的にドラコーンを喚びます。
その巨躯で投石を弾いて貰いたい所……!
「〈ヘルクレス座〉、〈オリオン座〉、〈りゅう座〉」
目の前で石が合体するのを見つめながら、仲間を召喚します。
強化もします。
(【ブースト】【ハイブースト】【惑星加護】【変光星】【魔力強化(星)】【魔力強化(太陽)】)
この石造りの空間だと【魔力強化(太陽)】などの効果があるか怪しいのですが…試しに使ってみました。
太陽光の下じゃないので意味ないかもですがね。
よし、盛れるだけ盛りました!
どんとこい、です!
杖を構えて、合体を終えたマッドゴーレムを見据えて、息を吸い込みました。
「【流星群】!」
フィールドに星が流れ、ゴーレムが雄叫びを上げました。
「オラオラ!吹っ飛べ!」
オリオンさんの棍棒の一撃によってゴーレムが粉々に弾けました。そしてまた集約し、1周り小さくなって動き始めます。
その際HPは半分程度にまで減っています。
むむ、少しずつ身体を削ってHPを減らすか、1回粉々にして段階的に倒すか。
一撃でHPを削れば、1回の攻撃で倒せるんですかね…
(【宇宙線】!)
不可視に近い放射線がマッドゴーレムのHPを一撃で消し飛ばしました。
思わずぽかんと口を開けてしまいました。
傍らに浮かぶ地球による加護と、変光星の、3等星の強化で、モンスターの防御系がまるで豆腐のような柔らかさです!
こ、これはいけますね!
傍らのドラコーンが目を閉じて頷きました。
よし、大理石たくさん下さい!!
(【二重詠唱】ウォーターボム!)
わたしは次のゴーレムへ向けて、魔法を放つのでした。
「ふぅ……」
制限時間で、待機エリアへと戻ってきました。
ゴーレムは倒せば倒すほど、次に出現するゴーレムのレベルが上がります。
強化の効果時間が終わったあとの戦闘が中々長引きました。
ぐぬ……前回よりは奮戦したと思います。
レベル66のマーブルゴーレムによる地震攻撃が厄介でした……
ダメージも受けますしバランスも崩しやすくなるのです。
オリオンさんとヘラクレスさんは耐えてました。
さすがの体幹です。
でも前回よりは倒せたので、今回大理石を8個手に入れました!
また明日鉱山に挑むとします。
……さて、この後はどうしましょうか。
後夜祭の期間の王都を楽しむか、行ったことのない場所へ向かうか。
……いえ、イベント最終日ですし、王都の雰囲気を楽しむとしましょう。
わたしは王都へと戻りました。
「…わぁ!」
夕陽に照らされる王都へ戻ってきたら、花が舞ってます!触れません!不思議です!
なんて美しい光景なのでしょう……素晴らしいです。
花の舞う王都ミゼリア……スクショしました。
なるべく人が写らないようにしました!
プレイヤー達の様子も、とても楽しそうです。
わたしも、昼間見たお店とは別の方向のお店を覗きにいきましょう。
王都広いんですもん!全て回り切るのは難しいです。
「セール中だよー!見てってくれー!」
そうして歩いていると、店の前で熱心に呼び込みをかける男性がいました。
何のお店でしょう?
そっと視線を向けたら、男性と目が合いました。
「お嬢さんどうだい!魔法道具のセール中だよ!」
「魔法道具、ですか?」
「お、お嬢さんあまり魔法道具知らないかい?」
「コンロと冷蔵庫の魔法道具なら見たことありますが……」
キッチンを買ったときに、冷蔵庫には氷の魔石が、コンロには炎の魔石を使用すると説明書に書いてありました。
そしてそれぞれ魔力を補充するのに、炎魔法や氷魔法が使える魔法使い等に頼むか、定期的に購入する……という手段があるとも書いてありました。
炎魔法はわたしが使えますが、氷魔法は使えませんからね。
……こぐま座は使えますし、ポラリスに頼んだらいけますかね……?
「そうさ!セール中なのはこの持ち運びコンロや氷袋等のアウトドア用の物だな!最近渡り人が良く買ってくれるんだ」
「皆さんいろいろな所へ行きますからね」
「お嬢さんもどうだい?」
屋外やダンジョンで料理する時用のコンロは気になりますね!
いつでも枝が拾えるとは限りませんし。
「コンロは欲しいですね!」
「おう!デザイン色々あるから好きに見てってくれよな!」
おお、二口のコンロもあります!み、三口も!
し、しかもIH型のも……!
この世界でIHコンロをみるとは……
……技術を惜しみなく再現してますが、ファンタジーな世界観とバランスを保つのはすごいです。
とりあえず二口のコンロを買いましょうか。
後で土鍋を買って、土鍋でご飯を焚きつつ隣で焼くこともできますし!
値段は15万リルですね。
……わたしも今度黄金のダンジョンに行ってお金を入手しに行きましょう。
やはり何かあった時のために貯めておかないとです。
「これを下さい!」
「あいよ!」
リルを払ってコンロを手に入れました。
これで砂漠で料理するときに困りませんね!
「ありがとうございました!」
「こちらこそ!また来てくれよな!」
男性に見送られながら店を後にしました。
いい買い物できましたね。
そろそろ夕食の時間なので、一旦ログアウトしても良さそうです。
そんなことを考えながら歩いていると、八百屋を見つけました。
…生姜と唐辛子はあるでしょうか。少し覗いてみましょう。
あ、あります!生姜が詰められたカゴから、生姜を手にとって眺めます。
…すごいです。一つ一つ形が違います。作り込みすごいですね。
「…あ!」
「ミツキさん…?」
生姜を手に取って眺めていると、数人の気配を感じました。
名を呼ばれ振り返ると、そこには…
「…ここで会ったが100年目ね」
「…チェリーさん?それにカメリアさん達」
エクリクシのメンバーが、飲み物片手に立っていました。
生姜と唐辛子を10個ずつ買わせて貰った後、場所を移動しました。
「まさか今日会えるとは思っていなかったよ」
「この人の数だと、知り合いを見つけるのも難しいですからね」
カメリアさんの言葉に頷きます。
目立つ格好や背の高い人なら、見つけやすかもしれませんが…
「…チェリー、ミツキさんに会ったら言いたい事あるってこの間言ってたよね。今がチャンスじゃん?」
「…」
その言葉に、チェリーさんへ目を向けます。
隣の女性は…おこめさんですね。武闘祭では回復担当のため、出場を見合わせたと聞いています。
…チェリーさんは、先程ここであったが100年目と言っていましたが、わたしまだ何もしていないはず、です!
「…貴女、あの戦闘は、全ての力を出していないでしょう」
「あの時に出せる力の全ては、出したつもりです」
「…でも全てでは無いのよね」
その言葉に、少し迷った末に小さく頷き返しました。
わたしの様子を見て一度目を閉じて、メニューを操作し始めたチェリーさん。
…少し緊張しながらその様子を眺めていると、
-プレイヤー チェリーからフレンド申請が届きました-
響いたアナウンスに目を瞬かせます。
…今の会話の流れに、フレンドに誘うような流れがありましたかね?
「…こ、今度」
「は、はい」
「………」
何度か口を開いては口を閉じる…を繰り返しているチェリーさんの言葉を、じっと待ちます。
「…ッ、今度、貴女の戦いを、見たいから、フレンドになりたいんだけど」
顔を逸らしながら、罰が悪そうにそう言ったチェリーさんの言葉を咀嚼します。
…わたしと、フレンドに…!
「…ぜひ、お願いします!」
大歓迎です!嬉しいです!
今私には両手で数え切れるフレンドしかいませんし!
今後何かあったときに、フレンド同士の横の繋がりも必要になるかもしれません。
それに何より、同性の友人が増えるの、単純に嬉しいです。
「私はミツキさんとフレンドだからね。ずるいだの羨ましいだの言っていたんだよ」
「カメリア!」
「チェリーはこないだのミツキさんとの戦い後から、ミツキさんのことが気になってしょうがなかったみたい。あ、私はおこめだよ。よろしくね」
-プレイヤー おこめからフレンド申請が届きました-
流れるような申請です。
こちらこそよろしくお願いします!
「…火力に自信を持っていた所に見たことない戦い方と、私の炎とやりあえるプレイヤーがいるなんて、気になるじゃない」
「わたしも、チェリーさんがどんな火力の伸ばし方しているのか気になります」
「…いつでも連絡していいわよ」
「ふふ、その時は一緒に依頼とかさせてくださいね」
わたしの言葉に、チェリーさんは小さく頷きました。
「女性の会話には混ざれないな…」
「俺も盾をボッコボコにしてきた女性について聞きたいことたくさんあるんだわ…でも混ざれねえよな」
「…カイトさんとグランさんですよね?お二人のこと、は、えと、ソラとミカゲさんが気にしていました」
「うお」
そんな会話が聞こえてきたので、振り向いて会話にそっと混ざります。
付与術師であるカイトさんと、シールダーであるグランさん。
プレイヤーに戦いに見慣れないわたしにとっては、その戦い方は新鮮でした。
「…君のクランメンバーの戦い方は、未知との戦いで楽しかったよ」
「特に俺が相手した女性と騎士さんは驚いたわ。盾持ってても恐怖を抱いたぜ…」
「あはは…戦闘に関しては容赦のない人みたいなので…」
カイトさんとグランさんともフレンドになりました。
強くて有名な方々とフレンドになれるなんて光栄ですね。
「……君達の戦い方は個性的だから、とても気になってはいたんだ。弟は何も教えてくれないからね」
「この短期間でレベルも上がってるし、頑張ってるんだねぇ」
「だからまあ、お互いに色々と助け合えたらというのもあるんだが、少し弟の事も心配していたんだ」
カメリアさんが苦笑しました。
……戦闘での会話やレンさんのやり取りで、わたしと兄のような和やかさが無いのはわかりました。
カメリアさんは姉として、レンさんに思う所があるようですね。
「……悪い報せが無いのは元気な便り、ですね」
「はは、そうだね。…まあ弟に関しては、掲示板とか見れば追えるのは追えるんだけどね」
「まあ今もプレイヤーに遠巻きに見られているし、有名所は大変だよねぇ」
「っと、話し込んでしまったな。そろそろ夜のモンスター討伐をしに行こうか」
カメリアさんの言葉に、エクリクシのメンバーが頷きました。
わたしも、ログアウトするのに島に戻りましょう。
「では、また会えた時には食事でも」
「…何かなくても連絡するし、待ってるわ」
「じゃあな」
「またねー」
「はい、ありがとうございました!」
エクリクシメンバーを見送って、わたしも島に戻ってきました。
ログアウトします!
家族と情報共有して、お風呂を済ませました。
明日の学校の準備をして、とりあえずもう一回ログインします。
人気のないホームを出て、世界樹の元へ来ました。
考えを纏めるのに、世界樹の下は落ち着きます。
建国祭イベントは堪能しました。
最終的に得たコインは、依頼もちまちま熟していたので銅コインが14枚、銀コインが7枚、金コインが11枚です。
白金コインは、慰霊の時に報酬で貰ったものを2枚預かっています。リーフくんも1枚持っていますね。
あ、武闘祭の報酬として銅コイン20枚、銀コイン15枚、金コイン10枚も預かっています。
明日以降交換出来るので、皆と相談ですね。
……後はこれからの予定、ですね。
わたしは手の甲のコスモス様の証を眺めます。
星マークがうっすら浮かび上がっていますが、一部の線の部分がグレーになっています。
確か60以上のモンスターを倒すと何かが集まるものだったので、このグレーの部分は倒した数で、線が消えているものだと思います。
…まだあと7割くらい線が残ってますので、モンスター倒さないとですね。
それも視野に入れつつ、本格的にレダン帝国探索を始めます。
レダン帝国も広いので、雨林と砂漠にしか無いものを探しに行きたいです。
砂漠にはダンジョンもあるようなので、それに挑むのも良いですね。
そして夜の砂漠での天体観測、これは外せません。
オアシスとか探します。
帝都も気になりますので、目指しましょう!
それとラクリマの羽化を見届け、神殿兼別荘を建てるのもあります!
…ラクリマの羽化を見届けてからレダン帝国に向かうとしましょう。
……やる事が、多いです!
嬉しい悲鳴ですね……時間が足りません!
星座達の力の確認も、神秘の力も……何かのタイミングで確認したいのですが、今日はゆっくりして、また明日から確認するとします。
つる座のインパクトもありましたしね……
…見上げた空には、夏の大三角が煌めいていました。
時折流れ星が一筋の軌跡を描いてます。
砂漠の星空は、ひと目見た時のインパクトは凄かったです。
今度じっくり、堪能したいと思います。
さて、明日は学校なのでそろそろ休みましょう。
中々濃いイベント期間でした。
ぼーっと空を見上げていると、視界で枝が揺れました。
プレアデスの《枝》
世界樹から浮島プレアデスへと伸びる枝
《枝》:休むなら、君達の家でゆっくりとお休み。
「……ありがとうね」
わたしの言葉にわさわさと枝を揺らして応えてくれた世界樹。
……いつも見守ってくれて、ありがとうございます。
さて、ホームに戻りましょう。
ゆっくり星空を眺めることが出来て落ち着きました。
きっと明日、皆で集まって相談する事でしょう。
ホームへ戻って、ログアウトしました。
ヘッドセットを外して、ストレッチします。
さて、明日からまた頑張りましょう!
おやすみなさい。
建国祭、完!!お付き合いありがとうございました!
これからも続くミツキの物語をよろしくお願いします!




