建国祭 14日目 ③ 慰霊と追憶
ご覧いただきありがとうございます!
「………とりあえず話したい事はあるだろうが、慰霊を行うぞ」
王様が、頭を抱えながら力なく言いました。
慰霊の為に来たのに、始める前にどっと疲れました……!
王様達と共に来た騎士達が、石碑の近くで準備するのを横目に、お師匠様に近寄ります。
「お、お師匠様」
「全く……想定外の事ばかり起こるね」
「……私こそ想定外なのですが」
ヴァイスさんがため息をつきました。
た、確かに王都で待機していたら急に喚ばれましたもんね……
「星詠みの神殿の鍵だとか……」
「星詠みの神殿がある事は、初めて聞いたよ」
「……何故、白竜が鍵を持っていたのかも謎でしたね」
「……後で手記を見返すとしよう」
お師匠様は何かを考えるように目を瞑り、石碑を見つめます。
わたしもいっぱいいっぱいだったので、周りを見る余裕はありませんでした。
少しだけお師匠様達から離れて、見渡します。
…残るのはかろうじて建物があったと思われる土壁だけです。
それも長い間風雨に晒されて、風化しているようですが。
「皆、集まれ」
王様の言葉に、振り返ります。
準備が出来たようですね。
「石碑に、こちらを」
騎士から、花を受け取ります。
おお、白い綺麗な花です。
石碑の周りには小さく蝋燭の火が灯され、その手前に布が敷かれています。
王家の皆さんが、跪いて献花し、祈りを捧げています。
その後に、お師匠様とヴァイスさんが同じように献花しました。
わたし達も、同じように献花します。
……星詠みの一族は、どのような生活をしていたのでしょうか。
両親も献花を終え、戻ってきた瞬間、母が空を見上げました。
「……ソラ?」
「……かしこまりました、コスモス様。【依代】」
母が膝まずいてアーツを使いました。
そして次の瞬間、母の身体が光に包まれ、光が収まるとそこには、かつて幼子の姿で現れた、コスモス様が成人女性の姿で現れました。
『すまぬな、我が使徒よ。身体を借りるぞ』
「こ、コスモス様?」
『そうじゃよ。さて、我にも花をおくれ』
騎士から花を受け取ったコスモス様は、ゆっくりと石碑へと進みます。
コスモス様の姿をみたお師匠様と、ヴァイスさんが目を開きました。
『……花を供えるのは初めてじゃの。 其方達を救えなかった我に資格はないが、想う事は許しておくれ』
コスモス様は小さく囁くと、こちらへと振り返り歩いてきました。
『さて、邪魔したの。…我はいつでも、其方達を見守っておるぞ』
お師匠様、ヴァイスさん、わたしをみたコスモス様は、柔らかく笑うと光に包まれました。
……使徒の【依代】スキルは、言葉の通りに依代でしたね。
少し驚きましたが、コスモス様は恐らく、ずっとここに来たかったのではないかと思うのです。
コスモス様自身、星詠みの一族に対してずっとおもうところがあったと思われます。
「…コスモス様が気にされていたのは、これね」
「大丈夫?」
「問題無いわ」
確かに、MPが減っているくらいで、母に変わりはありませんね。
「……炎が消えるまでは滞在する、好きに過ごすがいい」
王様の言葉に、各々好きに動き始めました。
レンさんは、ツェアシュテーレンの花を探しに行きました。
わたしもこの跡地を、歩いてみようと思います。
案外、広いです。
クランホームの島くらいの広さがあります。
………何も、残っていませんね。
近くの岩に腰掛けて、見渡します。
むしろこの高さで、普通に暮らしていた星詠みの一族、とんでもない一族だったんじゃ……?
それとも昔は、ここも緑豊かだったんでしょうか。
何となく感慨深くなって、目についた一番大きく残っていた土壁で囲まれた跡地に足を踏み入れました。
‐星詠みの巫女の庵に辿り着きました‐
‐特殊ジョブを確認しました‐
‐称号 星詠みの魔女の弟子 を確認しました‐
‐称号 翠玉薬師の弟子 を確認しました‐
‐称号 星の視線 を確認しました‐
‐称号 クリスティア王家の友 を確認しました‐
‐特定のNPCからの一定以上の好感度を確認しました‐
‐ 追憶クエスト 《星の霊薬》 を 開始 します‐
そのアナウンスが響いた瞬間に、反応する間もなく視界がぐにゃりと歪みました。
歪みが収まると、景色がセピア色になってました。
それに、これは……
「おーい!巫女様が教えてくれるって!」
「わ!早く行かないと!」
「じゃあね!シリウス!」
見覚えのある犬を撫でて駆けていく子供たち。
丸太を運ぶ男性と、人馬。
人に教えながら指示する医者と、子供を乗せて走り回る獅子。
キッチンと思われる場所で水瓶を抱える少年と、その水を使って料理をする女性達。
……これは、かつての、星詠みの一族たち……?
確かアナウンスでは、色々と確認されたあと、追憶クエストと言っていたような……
とりあえずマップも反応しませんし、子供たちが向かった方向へわたしも向かってみましょう。
巫女様とやらが気になりますし。それに思ったとおり、この場所緑豊かです。
木も草も花も生えてます。
……子供たちを追いかけると、一際大きな建物にたどり着きました。
「ちゃんと覚えて帰るのですよ」
「「「はーい!」」」
そこには先程の子供たちと、老齢の女性と、成人女性と少女がいました。
……さすがにわかります。
恐らく先代、当代、次代の方々でしょう。
「これがあれば、怪我も治ります。健康でいられるのですからね」
「はーい」
「さて、覚えていますか?薬の材料は?」
「はい!魔力神草!」
「ヴァス様の花!」
「サダルスウドのお水!」
「一番大きな木の葉っぱ!」
「それに、巫女様の星!」
「よく覚えていましたね。では、採集しに行きましょうか」
「「「はーい!」」」
……一瞬理解が遅れました!
これは、恐らく覚えないといけない奴です。
とても大切なやつ、です!
そのまま後についていきます。
えっと、魔力神草はあります。
ヴァス様のお花とは……?
「さて、この花は普通に触ろうとしたらどうなるかしら?」
「消えちゃうー!」
「そうね。どのように採集するか覚えてる?」
「うん!」
1人の子供が、1つの花の前にしゃがみました。
あの、花は………!
「ヴァス様!お花ちょーだい!」
『……ふふ、いいとも』
「わーい!ありがと!」
子供が元気に叫んだ時、ふわりと白い髪に紅い瞳を持つ少年が現れました。
そして少年が花に触れると、子供が花をそっと持ち上げました。
え?………え??
「……ありがとうございます、破壊様。他の方法で採集出来ないんですか?」
『楽しいし面白いから』
「……そうでございますか。後ほど、神殿にお礼を持っていきますね」
『ふふ、待っているね』
少年は消えました。
……神殿!?え、もしかして中腹にあった、神殿ですか!?
「巫女様!わたしも行く!」
「ええ。皆でお礼を伝えに行きましょうね」
「やったあ!レグルスの背に乗れる?」
「山を下らないといけないから、レグルスやサジタリウス達に乗せて貰いましょうね」
「「「はーい!」」」
……ヴァス様の花とやらは、ツェアシュテーレンの花と言うことはわかりました。
そしてあの祀られているのがどなたかわからない不明な神殿も、恐らくヴァスタトル様と呼ばれる方の神殿だとも……!
でも採集の方法が、お花頂戴でよろしいんですか……?
とりあえず移動する子供達と共に移動します。
……クエストが終わったら、こっそりやってみましょう。
「ついた!一番大きな木!」
わたしは口を開けました。
いやこれ……【鑑定】はできませんが、ほぼ毎日見てますので、間違いありません。
「この木の葉を使うんだよね?」
「そうよ。この木じゃないと駄目ですからね」
「はーい!」
いや世界樹!枝!
枝ですよこれ!普通に生えてますけど!
え、えっと…
魔力神草、ツェアシュテーレンの花、世界樹の葉……あとサダルスウドの水、でしたね?
あのあと村に戻ってきた子供たちはサダルスウドから水を分けてもらうと、最初の大きな建物に戻ってきました。
「はい、お疲れ様でしたね」
「次は、巫女様の星!」
「そうです。作るときはおばば様か私、この子と共に作りましょうね」
「「「はーい!」」」
「【17:星】【星の祝祭】」
巫女様と子供たちを囲うように、星が浮かびました。
なるほど、【神秘】の星を……
「まず魔力神草と世界樹の葉を細かく刻みます」
「はーい!……できましたー!」
「上手いわね。その後器にサダルスウドの水を入れて」
「はーい!」
「丁寧に混ぜるんですよ」
「はーい。……これくらいでいい?」
「ええ。そうしたら花を茎と分けて、茎も刻むわ」
「はい!」
「ええ、上出来ですよ。そうして花を浮かべて軽く混ぜて……【精製】」
……巫女様は、薬師なのでしょうか。
作り方は、ポーションと似たようなものです。
「できた!」
「良く出来ました。覚えたかしら?」
「大丈夫!」
「ありがとう巫女様!」
「ここで霊薬は保管しておきますから、具合が悪くなったらすぐ来るのですよ」
「「「はーい!」」」
そして、ふと顔を上げた巫女様と、目があったような気がしましたが次の瞬間にはまた視界がぐにゃりと歪みました。
…視界に色彩が戻ってきました。
何もアナウンスは無いので、もしや作れと………?
魔力神草、世界樹の葉、サダルスウドの水はあります。【神秘】も使えます。
無いのは、ツェアシュテーレンの花だけです。
……や、やりますか。
わたしは花を探して、跡地の探索を始めました。
ゲームっぽさとファンタジー感をどう組み合わせればいいのか、日々悩みながら物語を刻んでおります( ˘ω˘)
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




