建国祭 14日目 ② 霊峰
ご覧いただきありがとうございます!
本当に近くで見ると、途轍もない迫力があります。
その霊峰の入り口と思われる石碑近くでは、ローザ様とリヒト様、メーア様とジル様が騎士達と立っていました。
目があったメーア様が小さく手を振るので、わたしも小さく振り返します。
可愛らしいですね……
騎士服とマントをつけたジル様が、護衛の騎士のようにメーア様と共にいます。
……少年少女の装い、良いですね。
絵になります。
ローザ様も動きやすいようにか、女性騎士のように凛々しいですね。
眼福です。
リヒト様は変わらずキラキラされています。
王様にそっくりです。
「ここから先は霊峰、立ち入りを許さぬ神の山。準備は良いか」
王様が振り返ります。
わたし達は各々武器を握り締めて、頷きました。
「…ミツキ氏、念の為パーティー組んでおきましょ」
「…そうですね」
わたしとレンさん、ミカゲさん、両親でパーティーを組みます。
よし、これで一蓮托生です。
「エトワール」
「はいよ」
お師匠様が入口の石碑に触れました。
……特に、何も変わったような気はしませんが。
「ミツキ、お前さん達もついておいで」
「は、はい!」
お師匠様に呼ばれたので、お師匠様についていきます。
王様より先に進んでいいんですかね!?
「王は最後でモンスター退治するからいいのさ」
「王様が!?」
「いいんだよ」
「私達におまかせを」
リヒト様が微笑みました。
い、いいんですか…
とりあえず周りの様子を見ながら登ります。
この辺りはまだ、緑溢れた感じです。
緑生い茂っています。
小さな草花も生えてます。
その奥には、青白い兎が飛び跳ねてます。
わあ、かわいらし……
ムーンライトラビット Lv.85
パッシブ
【???】【???】【???】
【???】【???】【???】
「レベルが可愛くない……!」
「わかっていたけどレベルたっけえですな!」
「無理ですぅ!」
「おやおや…」
わたし達みんなレベル60以下です!
いやレンさんとミカゲさんは、転職したら爆上がりすると思いますが…!
「…こちらから仕掛けなければ来ないから無視するんだよ」
「はひ…」
霊峰怖いです……
こんなにも静かで、生き物の気配はしないのに、モンスターは生息しています。
あと、ちらほら素材のようなものがあるのですが、さすがに採集するのはやめましょう。
本日の目的は採集じゃないですしね。
「そういえばこの霊峰には、中腹に小さな神殿がある」
「…その神殿は、どなたを祀られているのですか?」
「さてね。ワタシも知らないのさ」
「へっ?」
「昔から、本当に昔から神殿だけが存在しているんだ。それを各神殿の司祭や巫女達が、言われるまでもなく手入れしているのさ」
「……所属、と言う訳ではないのですね」
「無人さ。しかし神殿であるのならば、奉られるものであるべき、という考えをしているからねぇ神殿の者達は」
…無人の神殿ですか。
それは、何というか…
「……少し、寂しいですね」
「……そうかい」
お師匠様は微笑むと、また真っ直ぐ歩き始めました。
その背を追いつつ、景色を見ながら登りました。
そうして1時間程、でしょうか。
登っていると、徐々に木々は少なくなってきました。
途中にお師匠様の言った小さな神殿がありましたが、とてもよく手入れされていました。
……しかし空っぽな感じが、しました。
何かモチーフがある訳でもなく、像とかもありませんでした。
不思議な神殿ですね……
そうしてお師匠様を追って歩いていると、お師匠様が立ち止まりました。
「少し休憩しようかね」
「わ、わかりました」
頑丈そうな岩に腰掛けます。
本格的な山登りです。
「……エトワール」
「なんだい」
「一度も襲われないのは、何かしているのか」
「何もしていないがね……アストラルウィザードが1人以上いるからね。恐らく守られているんだろうよ」
「……そうか」
アストラルウィザードが、1人以上……?
確かに、ここまで登ってきてモンスターは見かけましたが、一切こちらを襲ってきませんでした。
「あの手記を読んだだろう?神は星詠みに対して過保護なのさ。目を離したら滅んだからね、次こそはと何かしているんだろうさ」
……そ、そうなのですか。
確かに襲われたらわたしは瞬殺されますが、なんかこう、お師匠様の覇気とか、王様のオーラとかで近寄ってこないのかと……
「そもそも、当時の星詠みの一族の中でアストラルウィザードだったのは3人だけさ」
「……さ、3人?」
「先代、当代、次代の3人さ。そうして細々と継承してきたのが、アストラルウィザードなんだよ」
お師匠様が霊峰の頂上の方角を見つめて、ぽつりと呟きました。
「……さて、あともう少し登れば村の跡地、その先に石碑がある」
道中襲ってこないけれど、モンスターがちらほらみえます。
もはやレベルも見えなくなってきました。
やばいです。なんか強さと大きさが比例していきます。
強そうなモンスターは大きいです…
そんな中、ふと見上げた時、頂上に、一際異彩を放つとても美しい白いドラゴンが、こっちをジッと見つめていました。
「え、」
「……ッ、あれは」
「まさか……!」
お師匠様と王様達が、息を呑みました。
モンスターにしては神々しさがあります。
…もしや、前にスカーレットさんからうっすら聞いた…
「……クリスティアの聖獣の、白竜ですか?」
「……知っていたのかい?」
「以前、ラクリマの紹介に行ったときに、スカーレットさんから…」
「そうかい…あれは恐らくここ数百年、姿を表さなかったクリスティアの聖獣、白竜だろう」
「だが、どういう事だ。ここまで近付くまで姿形に気付かず、気配も悟らせないとは」
「……さて、偽物か幻影か」
王様が顔を顰めました。
見上げると変わらず、頂上にいます。
お師匠様と王様に気取らせないとは、余程の強さを持っているのでしょう……聖獣ですもんね。
「……行こう。何やら待ち構えているようだからね」
お師匠様の言葉に、王様は一度目を閉じて、頷きました。
ま、まさかのエンカウントです。
ミカゲさんとレンさんの袖を引っ張ります。
「……何か、アナウンスとかありました?」
「無いっすわ……」
「ねェな」
「遭遇アナウンスもありませんでした…」
山道を歩きながら、皆の様子を見ます。
お師匠様と王様達は、とても警戒しています。
そんな中両親……いえ、母も何か思う所ありそうです。
「……お母さん、どうかした?」
「んー……そうね、これは私というより、コスモス様が思う所ありそうな気配……を感じるわね」
「コスモス様?」
「……少し落ち着かれないようね」
コスモス様が、落ち着かれない……?
それは気になりますね。
そして言葉少なに山道を登り続け、ついにほんの僅かに建物や、村の痕跡と思われるものが残る拓けた場所にたどり着きました。
そしてその先の、崖に近い場所で、大きな迫力のある美しい白竜が、こちらを見据えていました。
近付いても、気配を感じません。
感じませんが、目の前に何か大きな力が存在するのをなんとなく感じます。
『……ようやっと、当代と次代が霊峰に足を踏み入れたか』
「!」
『フン、我も待たされたぞ』
しゃ、喋りました……!
敵意は感じませんが、余り好意的では無さそうです。
『しかもなんだ、此度の者達は世界樹やら太陽やら海やら…目を掛けられる程優秀なのだな』
「………」
『まあ良い。我には関係ないからな、さっさと渡して我は戻る』
声をかける隙もありませんが、目の前の白竜は淡々と話し続けています。
なにやら渡したいものがあるようですね……?
『当代の星詠みの巫女』
「……ワタシだね」
『次代の巫女』
「…………へぁっ!?」
視線がわたしに向きました。
……わ、わたしが次代ですか!?
「…お、恐れながら、兄弟子が次代であると」
『…都にいる覡の事か』
目の前の白竜が目を閉じた瞬間、魔力が増幅しました。
「グッ!?」
すると次の瞬間、何かが落ちたような、ドサッとした音と共に男性の悲鳴が響きました。
『星詠みであれば何人でも構わん』
「……」
「…ヴァイス、後で話す」
「……絶対ですよ」
「ミツキ、おいで」
空中から落ちたヴァイスさんがどういう状況だとお師匠様へ視線を送りました。
そしてお師匠様が小さく何か伝えたみたいです。
そしてお師匠様に呼ばれたので、恐る恐る近寄ります。
『我は貴様等星詠みから預かった物がある。ここへ来た星詠みが1人だけでは渡せぬ故、今まで渡せなかったのだが。そら、返すぞ』
白竜から、わたし達の目の前に光の塊が落ちてきました。お師匠様とヴァイスさんにもです。
思わず咄嗟に両手を差し出すと、それは手の中で弾け、1つの鍵の形をしていました。
『詳しくは知らぬ。それは鍵、この世界の何処かにある星詠みの神殿の鍵、だそうだ。それぞれ開く扉が異なるとも』
「!」
『では我は戻る。用は済んだ』
ほ、星詠みの神殿!?
やる事は済ませたとため息をついた白竜の存在が、揺らぎました。
『クリスティアの王』
「!はい」
『我は見ている。有事の際に現れるが、我が現れると言う事は、人が対処出来ないと判断した時だ。努努忘れるな』
そう言って白竜は、瞬きの間に消えました。
と、とんでもない爆弾残して消えました……!
この空気、どうしろと!?
わたしは、手の中の青く輝く鍵を見つめました。
アストラルウィザードとしてのイベントも兼ねているので色々と詰め込んでおります。
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




