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ルクレシア防衛イベント⑤

ブクマ登録とご評価ありがとうございます!

とても嬉しいです、励みになります!

今回で戦闘パートは終わります。



「何がなんだか知らないが、増援ならありがたいな。行くぞお前らァ!!!」


カレンと彼らは面識はないが、増援だと判断してドラゴンゾンビへと向き直す。

光魔法の使い手で冒険者たちに光属性を付与するなんて、聖女でなければできない芸当だからだ。


「うおおおおおやったるぜええええ」

「渡り人ばかりに頼ってらんないよなぁ!」


「聖女ちゃんサイコー!」

「俺達も悪あがきすんぜー!」


NPCもプレイヤーも、お互いに士気が高まりドラゴンゾンビに突撃していく。

中にはおかしいテンションの奴らもいるが。




若い冒険者がドラゴンゾンビに斬りかかる。

まるで泥でも斬ったかのような感触だったが一緒に剣も溶けた。


「うげっ剣が溶けましたぁ!」

「下がって補給から新しい剣貰ってこい!」

「はい!」

「ゾンビだからか斬撃あんま効かねえかな……」

「それになんか【腐食】ってのがヤバそうだよなぁ」

「それフラグってやつだから」


ドラゴンゾンビは腕と羽で周囲をなぎ払い、首を後ろに大きく反らせた。



「ッブレスが来るぞ!」

「お任せあれッ!」


大きな盾を持ったプレイヤーがドラゴンゾンビの前に立ちはだかる。


「1日1回しか使えないのだからここで使うしか!【絶対防御(イージス)】!!!」


盾とともに展開された薄紅の壁は、見事ブレスを防ぎ切った。


「よくやった!」

「あとはお任せしますっ」

「聖女様に栄光あれ!【ホーリースラッシュ】!」


シンディの放つ斬撃はドラゴンゾンビの片羽を切り飛ばす。

その瞬間にプレイヤーたちもドラゴンゾンビに魔法や斬撃を与えていく。


それでもまだドラゴンゾンビのHPは8割残っている。


「ガァァァァッ」

ドラゴンゾンビは咆哮を上げると、斬られた片翼を再生する。

そして黒い炎で出来た矢を無差別に放つ。


「ギャァァァ」

「当たると燃え広がるぞこれ!」

「しかも消えねえ!!」


地面も冒険者たちも黒い炎に焼かれていく。

その攻撃でレベルの低いプレイヤーたちのHPバーは一瞬で消し飛ばされた。


「【ホワイトベール】」


騎士に囲まれながら膝を突いて祈りを捧げるモモカが放ったアーツは、冒険者たちの黒い炎を消していく。


「おお、すげえ………」

「聖女ちゃんサイコー!」

「ありがとー聖女ちゃん!」


プレイヤーたちはなんとなるが、NPCは死んでも生き返らない。ゆえにモモカは聖女として、NPCを死なせないようにずっとアーツを発動している。

それはモモカの負担となっていた。


「聖女様……」

「いいのです。彼らを死なせてはなりません」

「………ご無理はなさらないよう」




「ドラゴンがいるときいてきちゃった」


あまりにも軽い挨拶に一部のプレイヤーが顔を引きつらせて振り返ると、そこには見覚えのある白衣を着た少女の姿があった。


「げぇっマッドサイエンティストのミカゲだ!」

「お前らドラゴンゾンビから離れろ!」

「失礼ですねー。フレンドリーファイアはしませんぞー」


ミカゲは両手の指の間すべてに試験管を挟みながら、軽い掛け声でドラゴンゾンビへと己の作品を投げる。


「えい、えーい」

「ガッ!?」


軽い掛け声とは正反対の大爆発がドラゴンゾンビを襲う。

羽は燃え、手足は凍り付き、ところどころ腐った身体が焦げ付いている。


「改良結果は良好ですなくひひ」

「お前ら本当に巻き込まれてねえよな!?大丈夫だよな!?」

「ルクレシアの冒険者さん達も大丈夫か!?」


「なんだ、渡り人にも面白い奴らがいんなぁ」

「頼りになるなあ渡り人たちは」


カレンたちは爆風に飛ばされたが怒っておらず、むしろ笑い飛ばしていた。


「それもういっちょー」

「グッ……ガァァァアァア!!!」

「あ、やば」


あまりに爆発が煩わしかったのだろう。

ドラゴンゾンビは標的をミカゲに定めた。

そして少ない動作でブレスを放つ。それは人ひとり吹き飛ばすには十分な威力であった。



「いくよカイ!」

「いくよユイ!」

「「【ツイン・インパクト】ッ!!」」


ドラゴンゾンビの真横から与えた打撃はドラゴンゾンビの体勢を崩し、ギリギリミカゲの横を通り抜けていった。


「こわぁー助けてくれてさんくすです」

「どういたしまして!」

「リーダー遅いからもうドラゴンゾンビのHP7割まで減ってるよっ」

「しかも噂の聖女さんと女騎士さんだー!先越されちゃったーー!!!」

「しょうがないだろ仕事だったんだから……」

「こっちの仕事もちゃんとやりなね!」



「……重役出勤じゃないかサギリ」

「カレンさんがいてくれて助かりましたよ」

「ルクレシアの自警団隊長としてきっちり働いてくれ」

「お任せくださいよ」


この男はサギリ。

ルクレシアで初めてプレイヤーだけで自警団を組織し、それが街から正式に認められ、ルクレシアでそれなりの知名度を持つプレイヤーだ。

レベルは29だが高レベルのモンスターを単独で狩るくらいプレイヤーとしてのスキルが高い。

その辺にいそうなちょっとくたびれたお兄さんのような風貌だが、ルクレシアで怒らせたらヤバいプレイヤーランキング(SNSより)堂々たる1位に君臨している。



「ユイ、カイ、テツ」

「「はーい」」

「ハイっす」

「ルクレシアの敵だ。……消すぞ」

「「「はい!」」」


ルクレシアを守るために自警団になったプレイヤーによる攻撃が始まろうとしていた。







「「リーダー!」」

「あいよ!」


サギリの腕を踏み台にしてユイが空高く飛ぶ。

後を追うようにカイも空を飛ぶ。



ユイとカイは双子の男女である。

何をするにも2人同じものを選び、同じことをしてきた。

それはゲームの中でも同じだ。

ゲームの中でも2人して同じもの、行動をし続けていると、いつしか2人同じ称号を得ていた。


『一心同体』


2人で同じことをすると威力が上がる双子ならではの攻撃方法。これは2人の大きな武器となっていた。



「「【ツイン・シュート】!!!」」

「2人の邪魔はさせねッス!【挑発】ッ!」


テツが【挑発】でドラゴンゾンビの注意を引き、一瞬フリーになった2人はドラゴンゾンビへ落下攻撃を食らわせる。

それは大きな衝撃となって、ドラゴンゾンビを大きく転がした。


「あいつらにばかりいい思いはさせねえぜ!【ファイアスラッシュ】!」

「そうだそうだ!【スプラッシュ】!」

「拙者も行くでござる!【影打ち】!」

「魔法少女の魔法を喰らいなさい!【プリズムライト】!」

「鍛えた筋肉は裏切らない!【マッスルストライク】!」

「急にイロモノプレイヤーが増えたな!?」

「ボクもこれだけ投げとこ。たーまやー」


プレイヤーたちは己のアーツをドラゴンゾンビへと次々と放つ。

それは無防備な状態であったドラゴンゾンビのHPを容赦なく削っていった。


「グキャアオオオオオオオッ」


残りのHPが4割になったとき、ドラゴンゾンビの身体に亀裂のように赤黒いヒビが走る。

ドラゴンゾンビが両腕を地面に叩きつけると、黒い棘が地面から全方位を容赦なく貫いていく。

それはまるで有名な串刺し公のように、プレイヤーたちを貫いた。


「こふっ」

「聖女様!」


NPCにスキル【聖者の加護】を使い、致命傷を防いでいたモモカ。

防いだダメージはモモカの身体へと襲いかかった。



「チッ【狂化】しやがったな」

カレンは口に溜まった血を吐き出すと、大剣を構える。

【聖者の加護】は攻撃を防いでくれたが、大人数にかけているため衝撃は相殺できなかった。


「チッ魔剣解放…………【クリムゾン・ブレイク】ッ!」


カレンの持つ大剣が赤黒いオーラを放ち、ドラゴンゾンビのHPを貪り喰らう。


「カレンさん離れて!」

「ッ!」

「【グライド・ブレイド】ッ!」


サギリが両手剣を構えトップスピードで突進、接敵する。

その勢いのまま両手剣を勢い良く薙ぎ払う。


「私も負けてられないな…聖女様に栄光あれ!【ホーリースラッシュ】!」

シンディも負けじとドラゴンゾンビに斬りかかる。


ドラゴンゾンビの攻撃も苛烈になり、低レベルのプレイヤーはほぼ死に戻っている。

ポーション類に余裕はあるが、長時間の戦いは精神的な疲労を確実に蓄積していた。



「聖女様!」

「はい、魔を払うのは聖なる光…ッ【ホーリーレイ】!」


「グギャッッッ」

聖なる光がドラゴンゾンビを襲う。

ドラゴンゾンビのHPはのこり1割となった。

だがドラゴンゾンビの闘志は消えない。

ドラゴンゾンビには目の前の命を喰らう怨念しか残ってないのだ。



「だが、そろそろ終わりにしよう」


サギリは空中を()()()()()


「【フライング・インパクト】ッ!」


空中からドラゴンゾンビに向かって落下しながら両手剣を叩きつける。

その一撃はドラゴンゾンビのHPを消し飛ばしたかと思われたが、執念なのか、ほんの少しのHPを残した。ドラゴンゾンビは目を見開き、サギリに向かって大きな顎を開くのであった。





刹那。





ドラゴンゾンビに何かが衝突した。

それはすぐポリゴンとなって消えたが、周りにいた冒険者はみていた。


ドラゴンゾンビに飛んできたものは、()()()であったと。



その衝撃でドラゴンゾンビのHPは0になった。

ドラゴンゾンビの巨体が消えていくのを呆然として冒険者たちは眺めていた。




「んだよこんなところで戦ってたンか」


そんな空気を壊すように声がかけられた。

ウルフを殴り飛ばした張本人、レンである。




ゴブリンキングを倒したあと、モンスターと戦っていたが実はこいつは方向音痴である。

モンスターの跡を辿っていたはずがいつの間にか逆方向へ向かっていたのだ。





-モンスター討伐率が100%になりました-


-これにて緊急イベント ルクレシア都市防衛クエストを終了します-


-イベントポイントを集計いたします-


-結果発表は明日12時を予定します-





「お、終わった………」


誰かがぽつりと呟くと、なんとも締まらない終わり方に誰もが脱力し、お互いを労うのであった。




ラストアタック:レン(が殴り飛ばしたウルフ)




自分に戦闘パートはあまりにも難産でした。

ですが変なプレイヤーたちがいるなぁくらいでさらっとお楽しみください。

これからもこの作品をよろしくお願いします!

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あまりにも切なすぎる最後www でも誰も悪くないし、そもそも好都合ではあるという……() この話で実感しましたが体感時間加速の無い時間一致型のゲームなせいで、リリース半年では思ったより社会人プレイヤ…
[良い点] おはようございます。 よりによって最後の一撃がそれとはwwww
[一言] 最後の一撃は、切ない
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