建国祭 14日目 ① ヴァルフォーレンの女傑
ご覧いただきありがとうございます!
おはようございます!
とりあえず着替えて、顔を洗ってリビングへと降ります。
「おはよう」
「おはよう満月」
「何か手伝える事ある?」
「食パン焼いてくれる?」
「わかった」
朝食の準備をしている母に声をかけて、手を洗った後にトースターで食パンを焼きます。
「カリカリに焼いていいの?」
「いいわよ〜カロリー摂取しないと今日頑張れないでしょう?」
ベーコンが焼ける香ばしい香りがキッチンに広がります。
そして目玉焼きを作り始めた母を、2度見します。
「ま、まさかあの朝食を……!?」
「組み合わせの相性抜群だものね!少し半熟にしたわ」
「天才……」
焼き上がった食パンに、スライスチーズをおいて、更にその上にベーコン、そして目玉焼きです。
天才の食べ物ですよね。
野菜たっぷりコンソメスープと一緒にテーブルに並べます。
「おはよう、美味しそうだね」
「天才的な組み合わせだよね…」
「胸が一杯になるよ」
父が、人数分の飲み物をテーブルに置きました。
いつの間に……
3人でトーストにかじりつきます。
うっっっま………
3人無言になりました。
これは、止まらないです。止まらないまま3人とも無言で食べ終えました。
「ごちそうさまでした」
お皿を洗って、父に渡します。
よし、終わりました!
「満月、色々済ませてから行くから何か作っていてちょうだい」
「わかった!」
ふむむ、何を作りましょうかね。
ログインして考えましょう!
あ、その前にユアストの通知を見ておかないとです。
Your Story ‐ミツキ‐
61ページ目
討伐依頼を熟しました。
強化を施した結果、一撃でレッドディアとブルーディアを討伐しましたね。流石です。
新しい天体魔法、大きな威力でした。
成長し、新しいアクティブスキルを習得しました。
戦闘の効率が上がるでしょうか。
これからの戦闘に期待しています。
良い建国祭を。
お疲れ様でした。
やはり自己強化って必要なんだな……というのを理解しました。
恐らく魔攻が300オーバーだったと思います。
……こわいですね!
自分が成長したのもありますけども!
よし、ではログインです!
ディアデムを喚び出します。
まだ空腹アラームは鳴らないので、身嗜みを整えてキッチンへ向かいます。
ポンチョをしまって、腕まくりします。
土鍋を使ってとりあえず米です。炊きます。
さてこちらの冷蔵庫の中身は、と……
……いっぱい食材入ってます。
まあ、お肉ですよね。
イベント前にはお肉です。
満腹になるほど食べなければ、満腹のデメリットも胃もたれもありませんし!
ワンプレートにサラダとステーキとご飯で良さそうです。
お皿を置いて、野菜を洗います。
今度ルクレシアで、レジアさんの野菜を見に行きたいですね。
ていうか調味料が多く揃ってるのは、母ですかね?
せっかくなのでオリーブオイルのサラダにしましょう。
好き嫌いあるかもなので、皆きたら確認しましょう。
母も合流して、ワンプレート完了です!
皆も揃ったので、食べるとします!
「わーいいただきますー!」
「いただきます」
各々挨拶して、口に運びます。
うん、良い焼き加減です。
軽くかけたオリーブオイルも、サラダに合いますし。
これはいけますね……
「……ミツキ氏とソラ氏のおかげで、ボク、グルメになった気がします」
「俺もっすね…」
「携帯食料で満足出来なくなったわ」
ミカゲさん、リーフくん、ジアちゃんがぽつりと呟きました。
レンさんは黙々と口に運んでいます。
「空腹とか満腹とか実装されてるから、運営も推奨してるんじゃないかな……?」
「これは料理人達が移動レストランするのもわかるわね」
「ね!チャイニーの皆さんの中華料理、美味しかったよ」
「わ、ミツキ氏チャイニーのご飯食べたんです?」
「偶然武闘祭の後に会いまして…」
本職?なのか、とても美味しかったです。
本格的な中華料理でしたからね!
「ごちそうさまでした」
「ご馳走様、美味かった」
レンさんが小さく言いました。
そしてキッチンへ向かいます。
「…レン氏ちゃんとしてますね」
「そこまで礼儀知らずじゃねェわ」
「ですよねー」
皆から皿を受け取って、アイテムボックスへと仕舞います。
ふむ、そろそろヴァルフォーレン領に向かいますかね?
「ラクリマと世界樹の様子をみたら、向かいましょうか」
「そうですな!」
皆ラクリマの様子は気になっているようなので、移動しました。
「今日は皆で出かけてくるね」
水をかけながら、世界樹に話しかけます。
ラクリマも変わらず、変化なしです。
太陽島の果物がまだあるので、世界樹に供えます。
ひと粒林檎の大きさのさくらんぼです。
「いやデッカ」
「太陽島の果物は大きいんですよねぇ」
「さくらんぼの概念」
背後から聞こえる会話を聞きつつ、手に乗せたさくらんぼが消えました。
プレアデスの《枝》
世界樹から浮島プレアデスへと伸びる枝
《枝》:瑞々しいね!とても甘いし、果肉も食べ応えあるね〜!皆に祝福あれ!
世界樹が食べ応えあるって言うのは謎ですがね…
枝がわたし達の頭上を素通りしました。
‐世界樹の祝福 を 得ました‐
あ、前にも貰ったやつですね。
幸運が上がりました。
「ありがとう、ラクリマをよろしくね」
わさわさと揺れた世界樹に背を向けます。
そして皆に向き合います。
「……とりあえず先に数人連れて行こうと思います」
そうして連れてきたヴァルフォーレン領の街の入口です。
皆が霊峰と、ヴァルフォーレンの街をみて驚いています。
「本当に街がありますわ……」
「…街が隠されてるのは流石にヤベェな」
レンさんの言葉に皆頷きました。
NPCからの紹介云々の話を聞いた後だと、街が丸々隠されるのは規模がすごいですよね…
「おはようございます」
「やや!ミツキ様ではありませんか」
「お話は聞いております、侯爵家へどうぞ!」
「はい!ありがとうございます!」
入口の兵士に挨拶をして、街へ入ります。
マップに表示される名前は、ヴァルフォーレンとなってますので街の名前もヴァルフォーレンなのでしょう。
前回リゼットさんと歩いた道を歩きます。
活気に溢れてますし、冒険者の姿が多いです。
「……やはりNPCしか居ませんね」
「そのようですね」
小さく話しかけてきたミカゲさんに、同じように小さく返します。
「Aランクの冒険者が所属しているようなので、レンさんは興味ありますかね」
「……あるな」
「SSランクの冒険者は、前にお師匠様が5人いると言っていましたし、王様もSランクですしね」
…会話が途絶えました。
あ、もう少しで侯爵家です。
「……なんて??」
「もうこの世界の住民がいればいいんじゃないっすかね」
「SSランクとか絶対人間辞めてる動きするんですよもーー」
どんな人達なんでしょうね……SSランクの冒険者の方々。
想像もつきませんが……
お師匠様はSランクですしね。
お師匠様より強い……?
それはとんでもないですね……
「お待ちしておりました、〈ステラアーク〉の皆様」
「お、お世話になります!」
門の内側にいた老齢の執事が、門を開けてくれました。
敷地内では、冒険者達と思われる一団と、その中でも目を惹く美しさを持った女性が……
「貴方達、ちゃんと準備してきたのかしら?」
「勿論ですよ姐御」
「山から降りてくるモンスターとか蹴散らしてやりますから」
「……口に出したのなら最後までやりなさいな。もしサボったなら……ヴァルフォーレンの訓練10倍よ」
「「うっす!任せてください姐御ォ!」」
扇子で口元を隠して、騎士服を纏った美女が、冒険者達を震え上がらせています……
わたし達の視線を受け、その女性はこちらを振り返りました。
長く美しいプラチナゴールドの髪をポニーテールにされ、透き通るような碧い瞳……
「……あらあらまあまあ!もしかしてミツキさんとそのお仲間さん達かしら?」
「ひ、ひゃい!ミツキと申します!彼らは、わたしの仲間です」
思い切り頭を下げて、皆を身振り手振りで紹介すると、目の前の女性が顔を輝かせました。
「ご丁寧にありがとう。私はヴェロニカ=ヴァルフォーレン…ギルベルトの妻で、ジルの母ですわ」
目の前の綺麗な女性……ヴェロニカ様は、とても美しい所作で礼をしました。
「……姐御、その子らが言ってた渡り人の?」
「ええ……冒険者と共に行動する子達はいるかしら?」
「…私、ハイドレンジアと」
「俺、リーフです」
ヴェロニカ様の言葉に、ジアちゃんとリーフくんが手を上げました。
心なしか表情が強張っているようです。
わ、わたしも緊張してきました。
「「よろしくお願いします!」」
「あらあら、そんなに気を張らなくていいのよ。私も、」
「そうそう。姐御もいるから大丈夫大丈夫」
「姐御めちゃ強いから、姐御の戦いみて勉強しよ」
「姐御は『ヴァルフォーレンの女傑』って呼ばれる程強いからァ゛!?」
……名前も知らない冒険者さんが、裏拳1発で吹き飛んでいきました。
「……私が、話しているでしょう」
「す、すびばせんでじだ……」
「……ふふ、ハイドレンジアとリーフと言ったわね。貴方達は私と共にモンスターの討伐で良いのね?」
「「はい!」」
「いいわ。ヴァルフォーレンの戦い方を学んで行きなさいな」
「「よろしくお願いします!」」
…すごく体育会系な雰囲気になりました。
ジアちゃんとリーフくんは、ヴェロニカ様と行動ですね。
「おや、もういたのかい」
「お師匠様、おはようございます」
「おはよう。お前さん達も元気そうだね」
お師匠様がいつものローブ姿で立っていました。
お師匠様も、元気そうです。
「もうそろそろ出発するだろうよ」
「王様達は、もういらっしゃるのですか?」
「彼らは準備があるからね。ワタシ達は五体満足で行ければいいのさ」
ケラケラと笑うお師匠様ですが、その五体満足が少し怖くなりましたよ……?
「ヴェロニカ、お前さんも変わらないね」
「エトワール様、ご機嫌麗しく」
「今日はよろしく頼むよ」
「お任せくださいませ」
そしてヴェロニカ様と母の目が合うと、勢い良く握手しました。
びっくりしました。
「……何だかとても仲良く出来そうな方ね。お名前を聞いてもいいかしら?」
「ソラ、と申します。ミツキの母です」
「まあ!お母様でいらっしゃるのね」
……すごい盛り上がっています!
出会い、いつあるかわかりませんね…
「…賑やかだな」
「ぴょっ!?」
「妻も楽しそうです」
「おおお王様、ギルベルト様」
気配を感じさせず話しかけてきたのは、王様とギルベルト様でした。
気配!気配を出していただいて!
「おはようございます、本日はよろしくお願いします」
「……堅苦しいな。砕けて構わないんだが」
「いえあの癖ですので…」
「……そうか。まあいい、準備が出来ているならば出発する」
王様の言葉に、場が引き締まりました。
「ヴェロニカ、頼んだぞ」
「はっ!お任せ下さい」
「お前たちも、存分に力を奮ってくれ」
王様の視線を受けた冒険者達は、雄叫びをあげました。
空気が震えました。
……わたしも、気を引き締めなければ。
ユアストで初めての山登りなのは置いておいて、あの霊峰です。
かつての星詠みの一族が住んでいた、霊峰。
そこには何があるのか……
ドキドキします。
隣に立つミカゲさんと、レンさんを見上げます。
…二人とも平然としてますね。
「…んあ、どうしました?緊張してます?」
「し、してますね」
「ボクはワクワクしてますよ!恐らくプレイヤーは登った事ありませんし、正規のルートで入れるんですもん!楽しみですぞー!」
「…初めて見るモンばかりだろうからな」
「初めて行く場所はワクワクするでしょ?」
ミカゲさんの言葉と笑顔に、緊張が少し収まりました。
レンさんはいつも通りに準備運動してます。
そうですね……初めての場所は、楽しみです。
それも皆と行けますし!
「……ワクワクしてきました!」
「その意気ですぞー!」
わたし達は、お師匠様の後を追って霊峰へと歩みを進めました。
この14日目は色々あり15000文字オーバーしてますので、分けて投稿いたします!
ミツキの物語をよろしくお願いします!




