建国祭 10日目 ③
ご覧いただきありがとうございます!
とりあえず敏捷が伸びるのはわかります。
でも魔攻が伸びるのは何故でしょう!?風魔法を纏って攻撃しているから、実は魔法アタッカーみたいな感じだったのでしょうか!
あ、アルタイルから早く使えというイメージが伝わってきます。
ラクリマがサキュバスの注意を惹き付けて魔法による弾幕攻撃をしてくれているのです。
ええいやりましょう!勝手に使ったら怒られるどころじゃない力ですが!
「えっと、【雷霆招来】!」
唱えた瞬間、瑠璃の短剣の刃がバチバチと音を立てて明滅し始めました。
……あの……これを、突き刺せ、と?
脳内のアルタイルが力強く鳴きました。
「お願いラクリマ、捕まえて!【星光】、【宇宙線】ッ!」
『ッ!分かっタ!』
自分とラクリマを回復し、こちらへと注目させるために放った【宇宙線】を浴びたサキュバスは、悲鳴をあげて身を固めました。
そして顔を上げたサキュバスと目が、あ、
…っ…目が、紅く……?
その紅い瞳を見つめてしまったその瞬間、サキュバスが視界から消えました。
……ラクリマが、自身を【硬化】しながらサキュバスへと転がり、体当たりしました………!
ら、ラクリマ!
そしてラクリマは吹き飛んだサキュバスを風魔法で加速して追いかけ、重力で強化した魔力糸で拘束します。
ラクリマ魔法の使い方上手すぎですね!
わたしも急いでサキュバスの元へと走ります。
そして拘束を振り解こうと身体に力を入れたサキュバスへ近付き、
「やぁぁ!」
握り締めた瑠璃の短剣をサキュバスへ振り下ろした瞬間、劈くような雷鳴と共に目の前で眩い光が弾けました。
‐ 特殊討伐依頼をクリアしました‐
この依頼では経験値のみ取得できます。
種族レベルが2上がりました。
任意の場所へステータスを割り振って下さい。
SPを4獲得しました。
メインジョブレベルが2上がりました。
契約召喚:ラクリマのレベルが2上がりました。
金コインを5枚取得しました。
な、何が起きたのでしょうか……?
アナウンスに目を開けると、サキュバスは消えていました。
それに、何だか身体が動きません。
なんらかの状態異常ですね!?
ステータスを確認すると、
《特殊麻痺》行動可能まで10分
と、書かれていました。
特殊麻痺…!?
これはアルタイルの、あの魔法の副作用ですよね!
『ミツキ、どうカした?』
「魔法の副作用で、動けなくて」
『…とりあエず、ここかラ出よ』
ラクリマは動けないわたしを糸で持ち上げると、フィールドの外へと進むのでした。
「ミツキさん!」
フィールドから出ると、アデラさんが駆け寄って来ました。
その背後から、レギオスさんも走ってきます。
「…何か行動阻害されている感じですか?」
「そ、そうです。あと10分経ったら動けますので端に移動しますね」
「だ、大丈夫ですか!?キュアポーションとか使いますか!?」
「恐らく効果は無いので…」
ラクリマに運ばれるわたしを2度見しつつ、アデラさんは冷静に話します。
反対にレギオスさんはオロオロとしています。
「申し訳ございません。初見のモンスターでしたし、魔眼系がことごとく阻害されていました」
「アデラさんも初めてでしたか」
「この依頼は割と初見のモンスターが出てきます。5戦程前にも、デーモンが出ましたから」
「…デーモン?」
「絵に描いたような悪魔でしたね。…サキュバスも恐らく悪魔の軍勢、のような立ち位置でしょう。かつてクリスティアは悪魔の侵攻があると聞いたことがあります」
「モンスターの系統が違うっすからねぇ…あそこまで完全な人型のモンスターとか見たことないですし……」
わたしも人型のモンスターは、あの謎の魔女しか見たことないです。
……クリスティアを襲ったモンスターと戦える依頼です。
そのようなモンスターが存在するという事は、今後出会う可能性もあると言うことです。
「今後も出てくる可能性があるってことですもんね…」
「ネクロマンサーは黄昏から夜にかけて出現するのは把握していましたが、ネクロマンサーがサキュバスを召喚するとは…」
「明らかにネクロマンサーの格上でした。倒されてしまいましたし…」
「そこが気になる所でもあります。召喚者を倒しても、サキュバスは顕現を保ったままでしたから」
「この世界、悪魔とか天使とかなんか敵多いよなぁー」
アデラさんは難しい顔をして考え込みます。
レギオスさんも首を振ります。
その辺りはよくわかりませんね………敵が多いのはわかります。
ふとわたしの身体が淡く光り、アルタイルが羽ばたいて肩に留まります。
そして小さく鳴くと、消えました。
「……武闘祭では見かけませんでしたね」
「パーティー枠を消費してしまうので、使えませんでしたね」
「……そちらの召喚獣も、中々興味深いですね」
あっアデラさんの瞳がキラキラしてます。
これは興味津々な感じです。
身体を小さくして寄り添うラクリマを抱き上げて、視線を遮ります。
「…失礼しました」
「…いえ、むしろ面と向かって聞かれないので、ありがとうございます」
「暗黙のマナーですからね」
「まあ気になる所ではありますけど」
アデラさんとレギオスさんが苦笑しました。
そうですよね……気になりますよね……
「申し訳ございません。魔法契約でお伝えする事は出来ないので…」
「いえ、お気になさらず。このゲーム、そういうものがたくさんありますから」
「不躾な視線向けられるかもですが、堂々としてても大丈夫だと思いますよ。マナー悪いやつは運営からイエローカードとかレッドカードとか出ますし」
「…ありがとうございます」
「ひとまず、動けるようになるまで観戦でもどうです??」
レギオスさんの言葉に頷いて、ラクリマに運んでもらいつつ身体が動くまで試合を観戦する事にしました。
アデラさんとレギオスさんが一緒に観戦してくれるようなので、気になっていた魔眼関係について聞いてみたいと思います。
「お答えできればで良いのですが、集まったプレイヤーそれぞれで魔眼の効果は異なるのですか?」
「いえ、同じです。【魔眼】は見る対象が異なる、といいますか…【鑑定】で見えない部分が見えるといいますか」
顎に手を当てながら、目を細めるアデラさん。
【鑑定】で見えない部分……?
「あくまでこのゲームで、という枕詞がつく前提の話ですがね。私が知る範囲で良ければですが…」
そう言うとアデラさんは、簡単に説明してくれました。
【鑑定】は、定められた固有の情報を読み取るもの
【看破】は、擬態や嘘を見抜くと共に【隠蔽】されたものを読み取るもの
【千里眼】は、文字通り遠くまで見通せるもの、そして宝箱の中身も見抜ける
【透視】は、相手のスキルやアーツの詳細を読み取るもの
【魔眼】は、耐性や弱点を読み取るもの
ということらしいです!
……とんでもないですね。
「……心の眼と書く【心眼】って聞いたことありますか?」
「…いえ、私は知らないですね」
リューイさんから貰った黒玉のイヤリングの防げる一覧にありましたが、アデラさんが知らないのであれば出回ってるものでは無さそうですね。
……リューイさん、とんでもないです。
「ユアストの作り込みは恐ろしいですね…」
「マイナーなものにもとんでもなく作りこんでいますからね」
「本当にそう思います」
あ、目の前のパーティーがウルフの群れを倒したらすごい大きな狼が出現しました。
………いや大きすぎでは!?
「……ジャイアントウルフ、風属性耐性!首元の露出している魔石が弱点のようだ!」
「あざざーーーっす!」
「でもどうやって首元まで近付けばいいんだ!」
「素早い!」
「あなた達も素早くなれー!」
「無茶言うな!」
周りでプレイヤー達が、戦闘中のプレイヤー達に向けて叫んでます。
知り合いですかね?仲良さそうです。
ん、そろそろ動けそうです。
立ち上がってストレッチをします。
よし、問題なさそうです!
ステータスの操作だけしておきましょう。
ミツキ Lv.58
ヒューマン
メインジョブ:アストラルハイウィザード Lv.29/サブ:薬師 Lv.15
ステータス
攻撃 59 +2
防御 87 (+58)
魔攻 173 +5 (+40)
魔防 84 (+58)
敏捷 55 +2 (+15)
幸運 79 +1
あと1レベル上がれば、アストラルハイウィザードがレベル30になります。
恐らく何か覚えますし、レベルMaxになるはずです。
…とてもワクワクしますね!
ラクリマを抱き上げて、目の前の戦闘を見つめます。
他の人の戦い方を見るのも勉強になりますからね。
「お、復活しましたか」
「復活しました。なにやらデメリットのある技だったみたいですね」
「俺達もリアルに目がァー!ってやりましたよ」
レギオスさんが笑いながら目を抑えました。
眩しかったですからね!
あ、大技の連発と数の暴力でジャイアントウルフは倒されました。
プレイヤー達は死屍累々ですがね……勝利した側が死にそうになってますが……
……そろそろいい時間ですし、島に戻ってログアウトしますかね。
「アデラさん、レギオスさん、ありがとうございました」
案内と説明をしてくれた二人にお礼を伝えます。
するとレギオスさんがにっと笑って、
「お礼はフレンド登録でお願いします」
「!あああ頭を上げてください!全然わたしで良ければ」
がばりと頭を下げました。
笑顔からの直角のお礼までの時間がはやすぎました。
「…アデラさんも、フレンド申請よろしいですか?」
「…是非」
二人とフレンド登録をして、もう一度お礼を伝えてプレアデスへと戻りました。
戻ってきました。
……皆は出払っているようですね。
ホームに入って、ソファにラクリマを抱えたまま座ります。
「ラクリマ、ありがとうね」
『見たこトないモンスターと戦うノ、強くなルのに必要!』
「そうだね。…ラクリマたくさん助けてくれたから、世界樹の葉を差し上げましょう」
『!いいノ!』
アイテムボックスから世界樹の葉を取り出してラクリマに渡します。
するとラクリマは目をキラキラさせて、わたしを見上げます。
わたしが頷くと、ラクリマは嬉しそうにもしゃもしゃと世界樹の葉を食べます。
今日の戦闘で、わたしが何かを喚び出せる事が一部の人に知られたはずです。
……話しかけられない限りは、マイペースに使うとしましょう。
ラクリマの事もありますし。
「ありがとうね、ラクリマ」
『…ン、またネ』
お腹いっぱいになったのか、うつらうつらとするラクリマは、召喚石へと戻りました。
よし、わたしもログアウトしましょうか。
王様からの依頼までに、レベルを上げておきたい所なので明日も討伐依頼を見ることとします。
ログアウトする前に、ギルドで達成報告をしておかないとです。
忘れない内にギルドで報告をして、また戻ってきました。
そして部屋に戻って、ログアウトしました。
「アルタイルの雷霆……絶対あの全能神のだと思うんだけど、勝手に使ったからデメリットでわたしにも状態異常が付いたんじゃないのかな……」
ベッドの上で、星座の神話をまとめた本のわし座のページを眺めます。
雷霆の矢を運ぶ役割を持った鷲の伝説……戦闘中に10分間行動不能になるのは致命的です。
……全能神の化身の伝説もありますし、許されるやも……?
これはラストアタック向け、というやつですね。
試せて良かったです。
ベランダに出て空に瞬く星々を見つめ、部屋へ戻りました。
よし、寝るとしましょう!
おやすみなさい。
唐突なこそっと裏話ですが、天体魔法は無属性イメージです。
どんな相手にも等倍ダメージが与えられるイメージですね。
これからもこの作品をよろしくお願いします!




