建国祭 8日目 武闘祭終了!
ご覧いただきありがとうございます!
『《エクリクシ》の勝利だー!』
その言葉にふと目を開けると、完全回復した状態でフィールドの端に立っていました。
なるほど、戦闘不能になるとこんな感じなんですね……
そして《エクリクシ》と聞こえた、という事は……
……そう、ですか。負けてしまいましたか……
むむむむ、良いところまでいったと思いましたが、地力の差ですかね。
もう少しレベルが上がれば、もっと拮抗していたでしょうか。
反省は後ですね。
ぺこりと礼をします。
『表彰式はソロのトーナメントが終わったら行うから、出場者用の観客席で待っててね!』
『いい戦いだった!お疲れ様!』
出場者用の観客席……?
瞬きの間に、観客席の一角へと移動しました。
おお、本当に観客席です。
ですがなんか区切られていて、プライベート感があります。
「………」
無言です。
皆無言で眼下で繰り広げられる戦いを見つめてます。
もっとレベル上げれば、勝てたでしょうか……
むぅ……悔しいですね。
「……悔しいですわ!もう少し戦えると思ったんですが!」
「っ!」
「ちくしょおおおくやしいいいい!」
ミカゲさんが突如叫びました。
叫びながら頭を抱えて天を仰いでいます。
「……そうね、技術では勝ってた気がするのだけど、どうしてもステータスの差は大きかったわ。悔しいわね」
「そうだね……足を引っ張ってしまったかな」
「あ、わたしもごめんなさい。【太陽嵐】でお母さん達のバフも消してしまったから」
「いいのよ。戦闘のタイミングなんて一番掴みにくいもの」
「その点は向こうのバランスも良かったね」
折角のドレスと鎧を消してしまったと思います。
難点です……敵だけでなく味方のバフも消してしまいますから。
「……次は負けないです。わたしの持つ全てで挑みたいですね」
「ボクも新しいジョブにして強くなりたいですわ」
「私達も技の熟練度とレベル上げしましょう」
「そうだね。次こそは、だね」
皆前向きな発言になりました。
しかしレンさんだけは、ずっと目を閉じて無言です。
そっと窺うと、突然目を開いて自分の頬を叩きました。
あの気合入れるみたいな感じですけど、レンさんのパワーだと痛そうです。
じっと見ていたら目が合いました。
「……お疲れ。………ありがとう」
「っ、お疲れ様です!」
「お疲れ様でした」
「お疲れ様ね」
「お疲れ様」
「…皆も、ここまで付き合いに感謝する」
少しだけ穏やかな表情になったレンさんは、皆と視線を合わせてそう言いました。
「いえ、こちらこそいい経験でした。でも悔しいので鍛えますね!」
「ボクもですわ!あの一撃防がれたの本当に悔しいですわー!」
「私ももう少し対プレイヤーで使徒の力試せば良かったわね」
「中々このような機会は無いからね。……レベル差の大きさを実感したよ」
「技量も必要だけどレベル上げも必要ね……ステータスの差はどうにもならなかったわ」
両親はため息をつきました。
むしろ短時間でレベルすごい上げてましたし、両親の戦い方は凄かったです。
両親何者なのかってわたしも思いました。
「ソラ氏とサクヤ氏のアーツは中々面白かったですね。とても興味深いです」
「…今度手合わせをお願いしたい」
「あら」
「純粋な体術ならいい勝負になるかな?」
両親がレンさんと戦闘の振り返りを始めました。
身体の使い方がどうのこうの………聞くだけにとどめましょう。
「……うお、掲示板ですごい話題になってます」
ミカゲさんがウィンドウを開いて、スクロールするように指を動かします。
少しだけミカゲさんに寄ります。
わ、本当です。文字が流れてます。
カメリアさんたちと、わたし達が使ったアーツやジョブについてすごい語られてます。
「これは当分騒がれますなぁ…」
「そうですね……」
「一人で街歩く時にはうざったい視線が纏わり付くと思いますので気を付けましょうね」
「…わかりました」
「何かあればすぐ呼んで下さいね!ログインしてれば駆けつけますから!」
ミカゲさんが拳をつくりました。
その辺りはもう諦めもありますが、邪魔されなければ無視しておきましょう。
それよりも……
「この後王様とお話しするんですよね……」
「思い出してしまいましたかミツキ氏……」
「レンさんの花とミカゲさんの吐息の在り処だけでも……いやでもこの人前だと言いたくないような気もするので、後で時間を取ってもらいましょうかね……?」
こっそりお伺いしたいところです。
……お、お師匠様にも何言われるかわかりませんからね。
お師匠様の前で負けてしまいました……
ずーんと頭を抱えます。
ふおおおお…
「…後でお師匠様の所へ行かないと」
「……ボクも行きますよ」
「わかりました…」
ミカゲさんと掲示板を眺めたり、眼下の戦いを見ていたら時間はあっという間に過ぎ去りました。
『終了!』
『見応えある戦いだったな!』
『じゃあ表彰式しちゃおう!』
『3位は同率ってことになるからな!』
『じゃあ喚びまーす!』
ぐんと身体が引っ張られる感覚がしたと思ったら、フィールドに立っていました。
右隣りにカメリアさん達、《エクリクシ》のメンバーが立っていました。
左隣りには《インフィニティ》と見覚えのないパーティーがいますね。
『《インフィニティ》と《クリムゾン・ラージャ》には3位報酬として、金コイン5枚、銀コイン10枚、銅コイン15枚を付与します!』
『後は王様からの言葉と、ご褒美券をあげる!ご褒美券は欲しいアイテムを一つだけ入力すれば貰えるやつだよ!でもさすがに貰えないものもあるから、その時は在り処を教えてあげるね!』
ご褒美券……!
コインもたくさん貰えるみたいです。在り処でもいいです気になりますし。
『じゃあ次は《ステラアーク》!2位報酬として金コイン10枚、銀コイン15枚、銅コイン20枚!』
『そして王様からの言葉とご褒美券!』
わたし達の目の前に、シュタール王が立ちました。
「見応えある良い試合だった。その強さを更に高みへと伸ばす事だ」
「ありがとうございます」
「…これなら任せられそうだ」
「っ!」
ぽそりと一言付け加えられました。
あれ、そういえば前王様に、鍛えておけって言われたような!
わたしが軽く目を瞠ったのをみたシュタール王は微かに笑うと、隣へと歩いて行きました。
建国祭が始まる前ブティックで会った時に、名指しで依頼するって言われたような!?
わたしが微かにマナーモードになっていると、ミカゲさんがこそっと話しかけてきました。
「み、ミツキ氏?大丈夫です?」
「大丈夫です……思い出し震えです」
「思い出し震え!?」
カメリアさん達《エクリクシ》メンバーにも報酬が渡され、ツェーンさんとゼクスさんがふわりと浮かびました。
《皆の健闘に喝采を!》
《お互い切磋琢磨して物語を綴ろうぜ!》
《では、これにて武闘祭は閉幕!》
《お疲れ様でした!》
花火と共に大歓声が上がりました。
うわ、びっくりしました!
一瞬建国祭のフィナーレかと思いましたが、まだ1週間ありました。
その花火を見たあと、わたし達はフィールドから飛ばされました。
「皆さん」
「はーい」
「島でお昼ログアウトしたら少しだけお時間いただきたく……世界樹集合お願いします」
先程の観客席に飛ばされました。
いい時間ですからね、お昼ログアウトしたら、思い出した事をみんなに伝えないとです。
わたしが真剣な顔で告げたので、皆の顔が引き締まりました。
「……了解ですわ」
「わかったわ」
「レンくんは大丈夫かい?予定とか」
「何も無いンで大丈夫です」
皆で島に戻ってきました。
そして同じタイミングで、ログアウトしました。
さっとお昼を済ませてログインしました。
ひとまずこの後の予定は未定ですが、ラクリマを喚び出すとして、星座の配置も変えておきますかね。
MPも回復してますし。
うーーーーん……喚び出したことのない星座……
人物や動物じゃない星座はなんというか用途が限られるんですよね。
りゅうこつ座とほ座、とも座、らしんばん座を喚び出したらかつてのアルゴ座になってアルゴー船が喚び出せるとかだったらさすがに……やばそうなのですが。
海で喚び出して試してみるのは良さそうですが、アルゴー船って大きいイメージです。
………アルゴ座は保留にします。
へびつかい座、カシオペア座、ケフェウス座、そしてアンドロメダ座で家族を喚び出してもよいですね。
その場合はペルセウスさんもですね!
よし…そうしましょう!
ほうおう座達を還して、ペルセウスさん達を喚びます!
「〈へびつかい座〉、〈カシオペア座〉〈ケフェウス座〉〈アンドロメダ座〉〈ペルセウス座〉」
あっへび座も喚び出した方が良かったかもしれませんが、枠がありませんでした。
へびつかい座であるのにへびがいなくなってしまったかもしれません。
魔法陣から出てきた人影は、お互いの姿を見ると小さくため息をついて手を取りました。
……ペルセウスさんが!アンドロメダさんの!手を!
「あら……わたくしも喚び出してくれたのね?」
「まあ、私達も」
「初めましてだね、星の娘よ」
「………フン」
「ミツキです。よろしくお願いします」
色々な反応されました。
アンドロメダさんはお師匠様の所でお会いしたことありますが、ドレスを纏ったお姫様です。
カシオペアさんとケフェウスさんは……王様と王妃様ですし、様付けのが良いでしょうか?
まあ今更ですし、無礼と言われたら考えましょう……
神話的に色々ありました二人ですが、とても穏やかな印象ですね。
ペルセウスさんとアンドロメダさんの事を見守っています。
……そしてこちらをジッと見つめる男性。
若そうに見えますが、見た目よりも老練な雰囲気を感じますね。
確か医学の神として有名な方だった気がします。
不老不死を成功させてしまったので、主神に殺されてしまった方……
「…もし、回復が必要なら喚べ」
「ひゃい」
「蘇生くらいならしてやろう」
そう言うとオフィウクスさんは世界樹の枝を見ては何かを呟き、触れては呟き……研究気質ですかね?
「アンドロメダさん達は、ホームにいてもいいですし、島の探索しても大丈夫ですからね」
「そうね。探索させてもらうわ」
「私達はゆっくりしましょうか」
「そうしよう」
ペルセウスさんの腕に捕まりながら歩いて行きました。
ペルセウスさんの眉間に少しだけ皺が刻まれていましたが……二人一緒だとアンドロメダさんが攫われる確率高くなるんですかねぇ………
神話の再現したいとは言いませんけれど……対処が出来る気もしませんからね。
「ラクリマ」
『……おはよウ?』
「そうだね、おはよう」
ラクリマを喚び出して抱き上げます。
そして世界樹の葉を口元に運ぶと、もしゃもしゃと食べます。
『どこカ行くノ?』
「これから決めるね。でもその時はラクリマも一緒にね」
『!…楽しミ』
ラクリマに色々な景色を見せたいですからね。
ラクリマと共に探索しますよ。
…王様の依頼もいつだかわかりませんからね。
皆の耳に入れたらコイン集めです。
皆が世界樹に集まるまで、ラクリマとたくさん話しました。
よし、物語を読み進めましょう!
これからもこの作品をよろしくお願いします!
少し仕事が忙しいので次回は11/12に投稿いたします。
皆様も体調とか気を付けて下さいね!




