建国祭 8日目 武闘祭本戦③
ご覧いただきありがとうございます!
『次!ある意味準々決勝!8パーティーに絞られたからね!』
『《ステラアーク》と《トリガーハッピー》の戦いだ!』
モニターを見てた限りだと、銃を扱うパーティーとの戦いです。
また同じようにフィールドへと向かいます。
ユアスト、ジョブも武器も種類多すぎですよね…
観客の声は小さく聞こえますが、中々熱狂的に叫んでるような雰囲気です。
フィールドの端に立って深呼吸します。
ぺこりと頭を下げて、杖を握ります。
父がわたしの斜め前に立ちました。
対戦相手が、こちらにむけて銃を構えました。
『では、スタートッ!』
「斉射!」
「【黒鎧換装】【黒ノ揺籃】」
(【身体強化(魔)】【ブースト】【ハイブースト】)
父が黒い光に包まれると、その身に黒い鎧を纏いました。
そして何かを唱えると、わたし達を黒いドームで覆いました。
『トリガーハッピーの一斉掃射!』
『ステラアークは……防いだ!えっそれもしかして特殊武器のジョブアーツじゃない?』
『かつての大戦を生きた戦士が所持していた武器で、同じジョブなら使えるようになるアーツじゃないか……!』
えっそうなんですか???
この黒いドーム中から外が見えるので、魔法放とうと思います。
銃が防がれたと分かると相手が散開して何かしようとしてますし。
(【流星雨】!)
『おっと魔法陣!これは!』
『【流星群】…ではないな。数が違うから【流星雨】か!』
『数が多いから避けるに避けられない!直撃したー!』
父がドームを解いた瞬間に、レンさんと母が飛び出して行きました。
ミカゲさんはドームが溶ける前に気配を消してどこかに行きましたね。
「銃と言っても、魔力で出来た弾のようだね」
「実弾だと再装填するの大変だもんね」
「それも含めて銃の良さだと思うけどね」
……こう話している間も、父は剣で弾を斬ってます。
弾、斬れるんですね……アニメとかで見た事ありますけど。
「見えれば斬れるよ」
「わたしは斬れないよ……」
(【流星】!)
ずっとこちらを狙う銃を構えたプレイヤーに向かって流星を放ちます。
プレイヤーは自分に落ちてくる流星に目を見開くと、流星に向かって銃を乱射しました。
『おや!流星に向かって撃ってるね!』
『流星が壊せればダメージ受けなくて済むかもしれないからな!』
『あっでもさすがに削りきれなかったみたい!直撃!』
『うお、なんか一人だけバズーカみたいなの持ってないか!?』
いやでも削れる事がわかりました!
威力が若干下がりましたからね!
「ミツキ、僕の真後ろに」
父の言われた通り真後ろに移動します。
一際大きい音が響いた瞬間、父は剣を持った腕を振り上げ、下ろしました。
その瞬間、左右を何かが通り過ぎました。
な、なに!?
『……えっ斬った?……斬った!?』
『目が良いな……飛んでくる弾斬るのすごいぞ…』
『とりあえず弾斬った!』
斬った!?
という事は左右を通り過ぎたのは弾!!!
すご……父は剣士でした……侍……??
と、とりあえず攻撃しましょう。呆けていたら危ないです。
(【惑星加護】)
「ウィンドアロー!」
放った風の矢は銃撃で相殺されました。
むむ、ランダムですが、【惑星加護】で魔法の威力上げておきます。
『お!ウェポンコンバートで武器換えたね!』
『接近されても戦えるように訓練されているな……軍隊か?』
『あーぽいね!』
「なるほど理解した。銃の扱いに慣れていると思ったら恐らく経験者だね」
「えっ」
「狙いも良かった。急所ばかり狙っていたからね……これは早めに決着つけたいね。ミツキ、やれるかい?」
わたしはふよふよと浮かぶ惑星を見て、頷きました。
MPが残り7割しかありませんから。
「地球の加護があるから、威力1.5倍だよ。【流星雨】」
わたしの隣でミニ地球がふよふよと浮いてます。
再びフィールドに星の雨が降り注ぎました。
わたしのパーティーメンバーにはダメージ無いですし!大盤振る舞いですよ!
これで残りMP5割です。
さて、各個撃破を狙うとしましょう。
「1人ずつ倒してこう」
「行こうか」
父と共にプレイヤーの方向へと走り出しました。
「……ふむ、エトワール」
「なんだい」
「【天体魔法】を防ぐ術はあるのか?」
「何言ってんだい。勿論あるに決まっているだろう」
「……あるのですね」
シュタールからの言葉にさらりと答えたエトワール。
ローザが、口元に手を当てて目を丸くした。
「簡単さ。魔法陣を壊すか、相殺するかさ」
「……簡単に言う」
「単純で簡単だろう?魔法陣が展開したら落ちてくるのがわかるからね、その前に魔法陣を壊すか、落ちてくる流星やら何やらを相殺すれば防げるんだからね」
「……彼等にとっては容易な事では無いだろうな」
「容易にされちゃ困るけどね。あの子もよく鍛えているから、防げる渡り人はそう多くないんじゃないかね。まあ威力はまだまだだけどね」
そう告げるエトワールの口元は弧を描いていた。
「…困ったな。女性が相手か」
「……」
「まあ手加減なんて、出来そうもないが、なッ!」
顔面に向かって放たれた右ストレートをバックステップで避けたトリガーハッピーのプレイヤー。
目の前には、黒衣に身を包んだ女性が拳を構えて立ちはだかっている。
女性は、冷笑を浮かべていた。
地雷を踏んだと、理解した瞬間その場を飛び抜くと目の前をブーツの爪先が通り過ぎて行った。
「……あらあらちゃんと反応できるじゃない」
「っ」
「戦闘でそんな事言うくらいだから、低能かと思ってしまったわ」
「それ、は!」
軽く会話するようにスムーズに放たれる右のストレートを顔を傾けて避けた先、左手のアッパーを顎に受けた。
「ガッ!?」
「戦場で舐めた口利くと、死ぬわよ」
一瞬飛んだ意識、顔面を掴まれる感覚、そして最後に地面へと叩き付けられ痛みを覚えたのを最後に、男は意識を失った。
「……ねえアレ」
「すっごくキレてるね」
「だよね?」
容赦ない戦いをしている母の姿を見つけました。
なんだか少し荒い戦い方してます。
『左からのアッパーが直撃!そして顔面を捕まれ地面へとドーン!』
『……容赦ねえ……いい事なんだけど思わず震えあがるほど容赦の無さ……』
『強い女性のカッコ良さってなんか、いいよね…』
AIが何か言ってますね……本当に感情豊かなAIです。
母は大丈夫そうですね…というか怒りが収まってなさそうなので他のプレイヤーへと突撃しに行きました。
「……援護ってどうやればいいんだろう」
「……どうやろうね」
わたしと父は、戦場を見渡します。
レンさんは2人を相手に立ち回ってます。
ミカゲさんは……気配をうっすらとなら感じますが……あ、不意打ちで背後から大鎌を振り回しました。
そして怒りの鉄拳を振るう母…
レンさんも母も銃を持つ手を弾いて肉弾戦仕掛けてます。
……とりあえず【流星】でしょうか。
んんんでも戦闘の邪魔そうです。
『うおおお!?気配消しながら大鎌使ってたステラアークの暗殺者さんまさかのチョークスリーパー!?』
『いやチョークだけだな。背後からぬるりと出てきて頸動脈締めてるぞ』
『じわじわとHPが減っているー!でもやっぱり体格差とパワーの差があるね!』
『振りほどかれたな!でもトリガーハッピーはフラついてる!』
みみみミカゲさん!
ミカゲさんが大鎌を消して背後から男性を締め上げました。
が、剥がされて距離を取りました。
挑戦的な笑みを浮かべたミカゲさんはそのフラつきの隙を見逃さず、接近して大鎌の石突の部分で喉元を突き倒れた男性を踏み付けました。
「ガッ!?く、そ」
「試してみたかっただけですが、ボクには向いてないですねぇ。やはり大鎌のが手に馴染みましたわ」
思い切り大鎌を男性へと振り下ろしました。
うーんミカゲさんは結構色々試しますよね。錬金術師だからでしょうか?
こちらを振り返るとにぱーっと笑いました。
……ギャップですね。
『MP消費する銃撃はMP管理が大変なんだけどね…牽制としては優秀だし手数として良いと思うんだぁ……それに避けるの大変のはずなんだけどぉ……』
『言いたいことはわかるぞツェーン…』
『あの距離で銃撃避けたりガントレットで弾いてる渡り人は何者なのぉ……?』
『動体視力が良いのかもなぁ…弾の軌道読んでるのもあるかもしれねえけど』
レンさんとトリガーハッピーのプレイヤーの距離は10mは無いと思うのですが、あの距離の弾避けてるんですか……?
レンさんが避けながら近付くので、トリガーハッピーの人も銃じゃなくてナイフのようなものを握り締めてレンさんへと攻撃してます。
それらを全て紙一重で避けるレンさんは、口元に笑みを浮かべてます。
やっぱり接近戦が好きで得意なんですねぇ…
「…そういえばその鎧って、例の男の人の?」
「そう、《彼》の鎧だね」
「そのひとも守護剣士だったんだね」
「ああ。手練の剣士だったようだし、恐らくレベルが上がればもっと攻撃的になるんじゃないかなって思ってるよ」
護るのも出来て攻撃も出来るのであれば、戦術の幅が広がりますね。
あ、母が強烈なアッパーを食らわせました。
そして浮いた身体に掌底打しました。男性が吹っ飛んでいきました。
「…何か格闘技とかしてたんだっけ」
「してないね。恐らく動画からかな……僕も面白そうって思ってアニメとか観てたよ」
「えっそのアニメの動きとか、再現出来るの?」
「やろうと思えば出来るだろうね。アーツと噛み合えばだけど」
ほあ……見様見真似が出来るのはとんでもないですが。
少し見てみたい気もしますね……!
「ギブギブギブギブ!」
「あら」
「腰……!折れる……ッ!」
「大丈夫折らないわよ」
「折れるゥゥゥ!?」
……母の言葉とは裏腹に悲鳴が聞こえます。
なんでしたっけアレ……エビ固め……?
『まさかの逆エビ固め……?』
『あの女性結構なんでもやるのな…』
『あっ継続ダメージでHP全損!戦闘不能ー!』
「他愛ないわね」
「程々にね」
「次は違う戦い方するわ」
こちらにゆっくりと歩み寄る母に、父が声かけました。
母、意外とアグレッシブです……?
父のHPが減ってるので、母は無傷です。
『そうしてる間にトリガーハッピーは残り一人だ!』
『ラッシュラッシュ!避けられるのすごいぜ!』
『でも反応すればするほどステラアークの渡り人のスピードも上がる!』
『うお!モロに顔面入ったぞ!』
『これはK.O.!ステラアークの勝利!』
レンさんのラッシュに対応出来ずトリガーハッピーの人は直撃食らってHPを全て飛ばしました。
わたし達の勝利ですね。
戻って振り返りをしましょうか。
フィールドの端に立って礼をして、控室へと戻ります。
「ミカゲ」
「うお、なんですかレン氏」
「バックチョークなら腕はこう組め。極め方は…」
レンさんによる絞め技の講義が始まりました。
レンさん詳しいですね……?
「ソラ、君も何かあったのかい?」
「女性と言うだけで手加減されそうになったのよ。頭にきたわ」
「それは……戦場でそんな甘い事言うプレイヤーがいるんだね」
「次は使徒としてもう少し上品に戦おうかしら」
顎に手を当てて悩ましそうに呟く母の様子をみて、父が苦笑します。
ふむむ、もっと積極的に行くべきですかね?
皆に援護は必要ないですし、もっと経験積まないとです。
まだ本戦では【宇宙線】と【彗星】は使ってないですし、切り札にしましょう。
次の相手はどんなパーティーでしょうか。
ここまで上がるという事は、手強いはずです。
わたしはモニターをジッと見つめました。
援護って難しいですよね( ˘ω˘)
これからもこの作品をよろしくお願いします!
《トリガーハッピー》
任期満了し実家の家業を継ぐために田舎に帰ってきた男とサバゲ好きな友人達とで組まれたパーティー
銃の扱いが上手い




