建国祭 8日目 武闘祭本戦②
ご覧いただきありがとうございます!
『始まりました武闘祭!』
『己の武を示すには絶好の機会だぜ!』
『改めまして実況はツェーンと!』
『ゼクスでお届けするぜ!』
『パーティー戦の後にソロのトーナメント戦を行うからね!』
扉を抜けると、歓声と熱気に包まれました。
今回は1戦毎に行うのですね。
係員にそのまま進むように促されます。
レンさんの後について歩きながら、その様子を目を動かして眺めます。
『最初の戦いは、《ステラアーク》と《チャイニー》の戦いだ!』
『お互いベストを尽くしてくれよな!』
フィールドの端にたどり着くと、同じようにフィールドの端に立つプレイヤーの姿が見えます。
……フィールド広いですね。
わたしはぺこりと頭を下げます。礼儀は大事ですよね。
対戦相手の彼らの姿が……なんというかお揃いの中華風な装備ですね?
細部は異なりますが、みな系統は似てます。
色が違うくらいですかね?
レンさんがガントレットを装着したので、わたしも杖を握ります。
ミカゲさんが軽く大鎌を振り回しました。
母は跪き、その母の近くに父が立ちました。
『準備はいいね!』
『ではスタートッ!』
「…コスモス様、その力をお借りします」
「【ブースト】【ハイブースト】」
母が腕を組みました。父も自身に強化をかけます。
向こうのパーティーがこちらに向けて走り始めました。
わたしも強化を施しておきましょう。
「【代行者】【ブースト】【ハイブースト】」
(【身体強化(魔)】【ブースト】【ハイブースト】)
「【宇宙空間】!」
頭上に宇宙空間が広がるのを確認すると、両親が相手に向かって走り出します。
わたし達も距離を取りながら走り出しました。
『うおおおお!使徒じゃねぇか!これは【宇宙空間】だー!』
『この空間内だと、特定の使徒のステータスがアップするよ!』
『額に眼があるだろ?あれは【代行者】のアーツだな』
「はァ!?なんねアレ!?」
「知らんが!?」
「とりあえず行くヨ!」
「オラァ!【幻影槍】!」
……みんな怪しげな黒い丸いサングラスをかけてるんですよね。
その中でも黒い中華服を着た男性が、母に向かって槍を投げました。
槍は空中で分裂し、飛ぶ間も数を増やして母へと迫ります。
「サクヤ!」
「ああ!」
母よりスピードを上げて先回りした父が、滑りながら振り向きます。
そして身を屈めると……
『うわお!空中に放り投げたよ!』
『空中だと攻撃避けにくい場合あるが、何をする気だ!?』
父の手へと飛び乗った母が空中に飛び、父は飛んできた槍を見つめます。
このままでは、全て直撃するのでは!?
っと思っていたら、最低限の動きで槍を避けると、その中の一つの槍を剣で弾きました。
「レンくんとミカゲちゃんは左右に!」
「!」
「ミツキは好きに動きなさいな!【宇宙嵐】!」
空中から母が叫ぶとその手に魔力が集まり、両手を相手のプレイヤーに向けると突如暴風が吹き荒れ、相手のプレイヤーが四方へと吹き飛びました。
『……え?みんな使徒知らないの?』
『知らないから使徒の渡り人が少なかったのか?』
『えーんじゃ簡単に説明するよ!許可も得てるからね!この場合の使徒は、概念的存在の力を使う事ができるジョブだよ!』
『概念的存在については知ってるだろ?ソル・ネーソスでソル様にお会いした渡り人もいるだろ?』
『……えっ概念的存在の言葉を知らないの!?みんな図書館とか神殿とか行かないの!?』
『まじか……詳しくは図書館とか神殿で聞けよ。概念的存在ってのはそれぞれあるものを司る存在なんだよ。例えばソル様は太陽を、マレ様は海を……神では無いが神に近い存在だ』
『信仰心によって使える力が増えて行く、それが使徒だよ!』
『概念的存在を信仰するためには認識しなきゃならねえけど、神殿に行けば信仰する事は出来るからな。……それを知らなくて使徒になる人少なかったのか……?』
『なんと……』
それぞれ吹き飛んだプレイヤーの元へと、ミカゲさんとレンさんが拳と大鎌を振り上げるのが見えました。
わたしは暴風に飛ばされたのであろう黄色い中華服を着た、細長い棒のような物を持ったプレイヤーへ向けて杖を向けます。
(【流星】)
「ファイアーボム!」
「うおおお!?いってェ!?」
(【惑星加護】)
『わーお!容赦なく星が流れたね!』
『なるほど、【流星】だな。宇宙空間の中だと威力が上がってるみたいだ』
『ってええええ!?中華鍋って盾なのぉ!?』
『拳を中華鍋で防いでんなあ!』
えっそうなんですか!?
確かに目の前のプレイヤーのHPはもう半分しかありませんが!
母の攻撃と流星の直撃を受けたようですね。
というか中華鍋気になるんですけど!!!
目の前のプレイヤーから距離を取りつつ、ふよふよと浮かぶ球体をちらりと見ます。
この特徴的な環を持ちながら回転しているのは!
土星!土系アーツの威力が2倍です!
「【二重詠唱】サンドボム!」
「チッ…【鉄壁】!」
「サンドアロー!」
「シッ!」
男性の細長い棒のような武器が、突如3つに分かれ振り回すことにより、砂の矢は打ち消されました。
も、もしや三節棍!?
「【ソニックブースト】!」
「!」
(【真空空間】!)
速度の上がった男性が接敵し三節棍を振り回します。
「ッ、ハァ!?」
「ひぇあああ!?」
「わはは!当たらんなコレ!お嬢さんどうなってんのォ!?」
わたしに近付くに連れてゆっくりとなる三節棍の攻撃を、どうにか避けます。
『大鎌ってそんな回転させられるんだね!?』
『相手もよく防いでるなあ!』
『わー!大鎌のスピードが上がった!トンファーを飛ばして、首刈り一閃だー!』
『こりゃ即死だな…』
!
ミカゲさんが倒したかもです。
わたしも避けるの大変ですし、どうにか倒さないとです。
「まじかー!ユンやられたナ!」
(【流星】)
「うおおお!?」
(【流星群】!)
慌ててわたしから離れた男性へと、次々と流星が流れ落ちます。
『いやあっちめっちゃ派手!』
『【流星群】だな』
『さて彼はどう防ぐのかな!』
「ファイアーウォール!サンドボム!」
流星群を避けるためにフィールドを駆け回る男性を炎で囲います。
念押しでサンドボムを次々と放ちます。
「うおおおお容赦ないなァ!こりゃ無理ヨちくしょおおお!」
「サンドボム!」
「む、無念…!」
男性へ流星群の一つが直撃すると、次の流星も直撃しました。
男性のHPが、全て無くなりました。
た、倒しました!
ほかの対戦相手のメンバーを見ます。
ミカゲさんとわたしが倒したので、あと3人いるはずです。
『物量ってこわいね……』
『あっ中華鍋凹んだぞ。対戦終われば修復できるからなー!』
『対戦終わりにHPMP回復して耐久度も回復させるからねー!安心してねー!泣かないでー!』
「お、おまえええええ!料理人の魂を!許せないアル!」
「知らねェよ武器にしたのお前だろ」
「その通りアル!クッソ!【バーニング・スイング】ゥ!」
『ベコベコに凹んだ中華鍋をフルスイングだー!しかも炎を纏ってる!』
『それもっとボコボコになるよな!?いいのか!?』
『あー!向こうでは使徒の女性と剣持った男性と2対2してたチャイニーの渡り人が!』
『武器を放り投げて拳を構えた!』
実況を聞きながらミカゲさんに駆け寄ります。
ミカゲさんがこちらをみて笑いました。
「ミツキ氏いい動きでしたな!」
「ミカゲさんもなにやら大鎌の扱いが凄かったらしいですね?」
「へへ。…あれの援護も難しいですし、いつでも攻撃出来るよう距離を取りつつ戦闘見ましょ」
「そうですね…」
レンさんと戦う、中華鍋を持ったピンクの中華服を纏う女性は的確にレンさんの攻撃を中華鍋で受けます。
すごい反射神経ですね…
「…レン氏少し遊んでますね」
「遊んでます?」
「いい感じに気を抜いているというか。……むしろウォーミングアップしてるような」
『容赦ない!容赦なくボディへ拳を振りぬいた!』
『戦士として優秀だな。攻撃への躊躇いは命取りだからな』
『お腹を抑えながらどうにか立ち上がったけど、結構ギリギリだね!?』
「うぐ…まだ、まだやれるヨ!」
「………」
「【リミッターバースト】!うおおおお食らえっ【バーニング・スイング】ゥゥ!」
淡いイエローのオーラを纏って、炎を纏わせた中華鍋を両手でレンさんへと振り下ろします。
レンさんはそれを無表情で見つめ、右足と右手を引いて思い切り振り上げました。
「…【ギガ・インパクト】ッ!」
「ガッ!」
中華鍋は粉砕し、女性の身体は宙に浮かびました。
…女性のHPは無いです。地面へと落ちる前にその身体は消えました。
『ナイスファイト!』
『さて、残るはあちらの肉弾戦だな』
『めっちゃ肉弾戦してる!』
『使徒の渡り人、素手なんだよなぁ…』
『いくら重力纏わせてるとはいえ、すごいねぇ…』
ゴッ!とか、ガッ!とか聞こえます。
打撃音が重すぎますね??
レンさんは腕を回しながら両親の方を見つめています。
あ、父がヌンチャクを持った緑の中華服の男性へと斬りかかりました。
「ぐっ!【ハードスタンプ】!」
「【カウンター】」
「ぐあっ!?」
上から振り下ろしたヌンチャクを剣で受けた父がアーツ名を唱えると、ヌンチャクを持った男性が吹き飛びました。
『カウンター!剣士かと思ったらカウンターしたよ!』
『物理攻撃ならカウンターは強いよな。大体は盾使うんだが、剣で行うのは珍しいな』
『ヌンチャク使いも珍しいけどね!【ハードスタンプ】は叩き付ける攻撃の威力が上がるアクティブスキルだよ!』
吹き飛んだ男性へと近寄り、起き上がる前にその首元へと剣を向けた父。
男性は両手を上げました。
「こりゃたまげた。鍛錬し直しヨ」
「ふふ、いい動きだったよ」
「アリガトネ」
身体の真ん中へと剣を埋めた父は、消えた身体を横目に母の方向へと身体を向けました。
「あら、みんな終わったのね」
「余所見なんていい度胸だなァ!」
「ちゃんと見えてるわよ?」
「ガッ!?」
黒い中華服を着た男性の懐へと潜り込んだ母が強烈なアッパーを食らわせました。
男性の身体が浮きました……こわ……
「はぁ!」
そして勢い良く腰を捻って宙に浮いた男性の身体へと回し蹴りを繰り出すと、直撃を受けた男性がフィールドを土煙を上げながら滑っていきました。
母は足を蹴りぬいたままの姿で立ってます。
『うおおお体幹良いね!いい回し蹴り!』
『これは綺麗に入ったな……』
『っと、彼の身体が消えた!戦闘終了!』
『勝者は《ステラアーク》!』
『お疲れ様だ!次の試合の準備をするぞ!』
ツェーンさんの言葉が聞こえたあと、お互いのパーティーが対側へと移動しました。
あ、相手も復活してます。
ぺこりと礼をして、係員の案内で出てきた扉をまたくぐり抜けました。
控室に戻ってくると、大きく深呼吸をします。
やはりモンスターとプレイヤーは違いますね。
「お疲れ」
「お疲れ様ですレンさん」
「まだ終わらねェからあまり気を抜くなよ」
そう言うとレンさんは備え付けのモニターを眺めます。
次の対戦相手になるかもしれませんしね。
わたしもソファに座ってモニターを眺めます。
隣にミカゲさんが座りました。
「軽食もありますわ…」
「いたれりつくせりですね…」
「ソラ氏のアーツ凄かったですな!」
「【宇宙空間】内でしか使えないアーツだったのよ。上手く行って良かったわ」
「そうなんだ…」
「次は僕もアーツ使おうかな」
「期待してるね」
父も特殊ですからね。
母に何かあると父が強くなります。
「…狙われるのドキドキしました」
「近接系に狙われるのは怖いですよね。攻撃当たるかヒヤヒヤしますし」
「【天体魔法】が結構多対一に向いてるので、どうしても近寄られると決定打に欠けるというか…」
攻撃避けるのに必死になっちゃうんですよね…
距離を取ろうとしても相手は近寄りますもんね。
「次の相手によっては、僕はミツキと行動するよ。試したい事もあるからね」
「私も撹乱してくるわ」
「みんな遊撃でいいと思われますな。パーティー戦とは言え半分個人戦ですから」
自分と向き合うとある意味個人戦ですよね…
きっとほかのパーティーもわたし達の戦い見ていたでしょうし、妨害対策とか考えないとです。
「ボクらの戦い方見られましたし、次はもっとガツガツ攻めましょうかねぇ」
「わたしも開幕全体魔法うちますかね」
モニターで戦うパーティーを眺めます。
……銃とか持ってますね。
うーん避けられるか心配です。
開幕 真空空間のが良いかもです。
「もし次の対戦相手が銃を使う彼らなら、弾は僕が斬るから心配しなくていいよ」
「…頼もしいねお父さん」
「視力には自信あるからね」
頼もしい言葉です。
じゃあちゃんとバフしてから魔法使うとしましょう。
わたし達はモニターをじっと眺めながら、次の対戦を待ちました。
ステラアーク、あまりにも個の力が強すぎる……(今更)
これからもこの作品をよろしくお願いします!
《チャイニー》
移動レストランを営む料理人プレイヤー集団
セーフティエリアで出会うと、素材かリルで料理を食べる事が出来る ほぼ中華
ランタン
黒い中華服の男性 リーダー 槍
得意料理:満漢全席
華琳
ピンクの中華服の女性 中華鍋
得意料理:青椒肉絲、回鍋肉
シャオ
黄色の中華服の男性 三節棍
得意料理:麻婆豆腐、エビチリ
リーレイ
緑の中華服の男性 ヌンチャク
得意料理:小籠包、春巻
ユン
赤の中華服の男性 トンファー
得意料理:担担麺




