建国祭 7日目 武闘祭③
ご覧いただきありがとうございます!
約6000文字あります……
三人でお昼をパパっと済ませ、簡単に夕食の仕込みもしてログインしました!
キッチンに向かいます。
じゃがいもを薄く切って、暴れ牛のバラ肉で巻いて焼きます。
他にもアスパラやら大根やらチーズやら白菜やら巻きます。
一口サイズですし、簡単に摘めて良いです。
玉ねぎとにんにくを細かく刻んで、シーオレンジの醤油に合わせます。
食欲を刺激する香りに、ほんのり爽やかなオレンジが加わりました。
案外いけますね……アスパラの肉巻きにつけて味見です。
………んま!おいし!これはご飯が進みます!
これはいいソースになります。
人数分のお皿に盛り付けたらかけちゃいましょう。
お肉は正義です。
塩豚を薄く切って焼き、余ったスペースで暴れ牛のサーロインをサイコロステーキにします。
……贅沢!
火が通った塩豚を皿に乗せて、暴れ牛のサイコロステーキを増やします。
見つけてしまったのです。
冷蔵庫にバターを……!
じゃがいもを角切りにして軽く塩振って炒めて、にんにくをみじん切りにしてバターとドーン!です!醤油もいれます。
うおお背徳的な香り………
ガーリックバター醤油ってやばいですよね。
だいぶいい香りになったので、盛り付けるためにフライパンを持って振り返るとレンさんとミカゲさんがソファからジッとこちらを見つめていました。
片腕を背もたれに乗せて、頬杖つくようにこちらを振り返るレンさん。
背もたれに両腕を乗せ、更に顎も乗せてこちらをガン見するミカゲさん。
少し驚きました。
「うおっ」
「いややべーですよなんてもん作ってるんですかミツキ氏」
「……美味そう」
「ボクお腹なりそうです」
「ふふ、もう少しで出来ますよ」
「あら〜いい香り」
「お肉しか焼いてないや。少しだけ野菜に巻いてるけど」
「まあこの後も戦いあるし、活力つけないとね」
そうですそうです。
腹が減ってはなんとやらですから。
前にパン屋で買ったバゲットを斜めに切り分けて、人数分のお皿に乗せます。
わたしワンプレート好きなんですよね。
お皿には野菜の肉巻き、じゃがいもとサイコロステーキ、バゲットをいい感じに盛り付けました。
「出来ましたよー!」
「待ってました!」
俊敏な動きでミカゲさんがきました。
耳と尻尾の幻覚が見えました。
それぞれにお皿を渡して、わたしも自分の分の皿を持ってソファに座ります。
片付けは食べ終わったらやります。
「いただきます」
「どうぞ召し上がれ!」
「………!」
サイコロステーキを口に運んだミカゲさんから花が飛びました。
よかった、口に合いましたね。
レンさんは黙々と、同じペースで食べてます。
両親もバゲットと一緒に食べてますね。
わたしもサイコロステーキを口に運びます。
んんん!ガーリックバター醤油がお肉を引き立ててます!結構しっかり焼いたので赤みは少ないです。肉汁がじゅわっと溢れてきました!
じゃがいもとお肉ってなんか食べちゃいますよね……
野菜の肉巻きは今度しそ巻きにもしましょう!しそ巻き美味しいですからね!
「そういえばミツキ氏、最初に魔法使ったとき何か考え事してましたよね?何かありました?」
「むぐ………いえ、魔法使ったプレイヤーよりも、わたしの魔法のが速度が速いなって」
「ああ、なるほど」
ステータスを開いて確認します。
多分服では無いので……あ。
プレアデス・リング
エトワールによって作られたアクセサリー。
【MP消費半減】【MP+30%】【魔法速度上昇(中)】
これですね!
魔法速度が上昇してます。
それと……
アストラル・ワンド
ヴァイスによって作られた杖。
素材に世界樹の枝を使用しているため、魔力伝導率が高く、魔法の発動速度が速い。
石はタンザナイトが使われている。
魔攻+40 【魔力修復】【魔法威力上昇(中)】
杖ですね。
魔法の発動速度が速くなってます。
ありがとうございますお師匠様、ヴァイスさん!
「杖とリングのおかげでした」
「確かにミツキ氏の魔法は発動速いですし、飛ぶのも速いなって思いましたわ」
「あら、ミツキのリングは魔法速度が上がるのね」
「皆のは?」
「ボクは攻撃速度でしたね」
「私もよ」
「俺も」
「おや、僕は違うね。僕のは回復速度が上がってるよ」
「ふむふむ」
「お師匠様……星詠みの力なのか先見の明なのか…」
わたし達の戦い方に合わせて作ってくれたのかもしれません。
お師匠様、とんでもないです。
母の分もダメージを負いつつ戦う父は、回復速度が速い方がいいですしね。
「よし、ボクは情報収集してきますわ!武闘祭に参加するパーティーの探り入れてきます!」
ミカゲさんが立ち上がって、片手を振ってホームから出ました。
そうか、情報収集も必要ですよね。
「…このパーティーの大穴はミツキとソラさんだろ」
「はぇ?」
「そうだろうね。ミツキとソラのジョブは今の所唯一だろうし」
「そうねぇ。警戒されるかもしれないわね」
「……【天体魔法】は無詠唱使ってるし、余程じゃないかぎり【太陽嵐】は切り札にしようと思ってますよ」
「ソーラーストームは切り札でいいと思うわ」
「恐らく試合毎にリキャストタイムはリセットされると思うから、ガツガツ僕もアーツは使おうと思ってるよ」
「…いざとなったら重力操作で俺を空中へ投げろ」
「へっ!?」
「落下ダメ上がってるからな。天空竜の祝福で」
ふぇあ!な、なるほど……!
レンさんの落下攻撃……地面割れそうです。
「そン時は視線と手で合図する」
「わっかりました…」
「私もその時はサクヤに飛ばしてもらおうかしら」
「はいはい。踏み台になるよ」
父は慣れたように頷きました。
母も中々アクティブです。
「今度はパーティー対パーティーなんですよね?【流星群】を使ったあとは普通に炎とか水とか満遍なく使いますね」
「…嫌になるくらい注目集めるだろうな」
「ここまでくれば見せびらかす勢いでやります!お師匠様も見に来るかもしれないので、必ず明日も戦えるようにならないとですし」
「まあ……それは大変だわ」
「やる気出てきたね」
「…このパーティーなら勝てンだろ」
小さく口元を緩めてレンさんがぽつりと零しました。
……ふふ、レンさんが言うなら勝てますね。
「…まだもう少し時間あるみたいなので、王都を散策してきます」
「…俺も行く」
「僕らも王都を見に行こうかソラ」
「そうね」
「世界樹もグルメになってきましたし、何かご飯探しますね」
「……おう」
時間近くになるまで、4人でお店を覗きました。
建国祭と言う事で大売り出ししてました。
雑貨やちょっとした食べ物も買えたので、ミカゲさんと合流して武闘祭のアリーナまで戻りました。
『みんな!待たせたね!準備出来てるかな?』
アリーナでツェーンと名乗ったイベントAIが光と共に姿を現しました。
『ここにいる32組のうち半分が明日の本戦に出られるからね!ちゃちゃっと対戦表発表ー!』
モニターにトーナメント表が表示されました。
えっと、ステラアークは…
あ、ありました。
左から4番目くらいでしたが、対戦相手のパーティー名は《フェアリー・ガード》……可愛らしい名前ですね。
『一応制限時間は30分だよ!このフィールドをギュッとして分けて同時に4戦行うから、観客の皆は目が忙しいかも?終わったところからすぐに次の戦い始めるし!』
『まあモニターでも表示するから、見たいところの戦闘みててね!』
『明日は実況得意なAIつれてくるからねー!』
『じゃあ左から4戦目まで行うよ!それ以外はモニター付きの控室へバーイ!』
……あれ、もう戦闘です!
少しドキドキしてきました。
8パーティーを除いて他のプレイヤー達は何処かへと転移され、わたし達もそれぞれのフィールドへと飛ばされました。
対角線には、6人の少年少女が見えます。
「あー、妖精のお気に入りチャンのパーティーですな」
「?」
「簡単に説明すると、フェアリーマスターの真ん中の女の子とその取り巻きです」
「な、なるほど」
フェアリーマスター!
真ん中の女の子はすごいふわふわした格好してますね。可愛らしいです。
『皆準備はいいかなー?』
「ミツキ氏、妖精に気を付けて下さい」
「…わかりました」
妖精……
アストラル・ワンドを握り締めます。
……深呼吸をして、目の前を見据えます。
わたし達の目的のために、踏み台になってもらいましょう。
『スタートッ!』
(【身体強化(魔)】【ブースト】【ハイブースト】)
『【ブースト】【ハイブースト】!』
(【流星群】!)
『みんな、行こ…っ!?』
『なっ!?』
フェアリーマスターの女の子が声を上げましたが、空から流れた流星群がそれぞれのプレイヤーに衝突しました。
『っ【妖精の祝福】!』
『うおおお!』
聞いたことのないアーツ名によって、向こうのパーティーメンバーが淡い光を纏いました。
そして少女を守るのか一人は少女の側に、ほかの4人がこちらへと駆けて来ます。
…レベルは52です。
まあプレイヤーは油断ならないですし、攻撃しましょう。
レンさんは既に剣を持った少年へと接敵しました。
『【アーク・スラッシュ】!…ッぐあ!?』
振り下ろされた剣をステップを踏んで容易に避け、その手元を拳で打ち抜きました。
その衝撃によって剣を吹き飛ばされ無防備になったその身体に一発です。
少年の身体が吹き飛ぶと、レンさんはゆっくりと吹き飛んだ少年の方向へ歩き出しました。
…わたしはあのフェアリーマスターと呼ばれた少女を狙いましょう。
なんか魔法使いそうですしね!
「【二重詠唱】ファイアーアロー!」
『ッさせない!』
『ファイアーアロー!』
「ウォーターアロー!」
少女へと飛んだ炎の矢は少女を守るように立ちはだかる少年の剣によって斬られ、少女から放たれた炎の矢を水の矢で相殺します。
次々と放たれる炎の矢を水の矢で相殺していると、その一つの矢に何か光が灯るのが見えました。
炎の矢はわたしの放った水の矢で相殺されず、真っ直ぐわたしの元へ飛んで来ます。
「ミツキ氏!」
(【真空空間】)
真空により炎の矢が消えたことを確認します。
その際、何か小さな影が炎の矢から慌てて飛び去って行ったのが見えました。
ふむ、なるほど……
妖精のお気に入りとはそういう事ですか。
妖精が攻撃の手助けをしてくれるんですね。
視界の端で母がごめんなさいねぇと言いながらも容赦なく地面へと少年を打ち付けるのが見えました。
『ってぇなクソババア!』
「……あらあらまあまあうふふ」
『ポイズンクロウ!』
鉤爪のような武器で母へと攻撃を仕掛けますが、まるで蝶のようにひらりひらりと避けて行く母。
その顔はずっと笑顔です。
『クソが!』
「…口の利き方から教えてあげようかしら?」
『ハァ!?……ガッ!』
「他所の子に口出す権利は無いけれど…」
攻撃のために振りぬいた鉤爪を着けた腕を引っ張ると身体を反転して背負い投げの如く少年の身体を地面へと打ち付けました。
うわぁ……母の肘も入りましたよ…
あ、今わたしは母の方をチラ見しながら少女の魔法を相殺してました。
ウォーターウォールで少女の周りを囲ったりしてます。
『グ、このッ』
「女性への口の利き方は気を付けなさい?何が地雷かわからないわよ?」
『…クソババアの指図なんか受けるか……ッ!?』
「……あら、手が滑ったわ。ごめんなさいね」
ひぇ……母が少年の顔の横に鉄球落としました。
少年が恐る恐る隣を見て、ビクゥッと身体を揺らしました。
「おばさんがマナーを教えてあげるわね」
『ッ』
………南無。
母を怒らせてはなりませぬぞ、少年…
っと、また妖精?が力を貸した矢です。
なんだか増えました……相殺出来ませんでした…
妖精の力を借りた炎の矢が真空空間によりわたしに当たらず消えたのを、目を丸くして見つめていた少女は慌ててその杖をわたしに向けます。
『【妖精の悪戯】!』
トリック……?
何が起こるのか、杖を構えて警戒していると、突如手に持った杖の感触が無くなりました。
「!」
『今!【妖精の怒り】!』
見上げると、何体かの妖精が両手をわたしに手を向けながら浮遊します。
っ!わたしの杖を抱えた妖精が!
見つけた瞬間、妖精達の魔力が、大きく揺らぎました。
(【ウェポン・コンバート】!)
右手にしっかりとした感触があるのを確かめます。
「【真空空間】!」
杖を奪われた瞬間に解除された真空空間を再度展開します。
妖精達の手から、4色の光がわたしに向かって放たれました。
(いけたわ!)
少女は手応えを感じていた。
【妖精の祝福】で仲間を強化して戦う。
妖精達の力はすごいもの、それでバトルロイヤルも切り抜けられた。
妖精達は気まぐれだけど、力を貸してくれる妖精の数が多ければ多いほど【妖精の祝福】の力は上がる。
その祝福を受けた仲間が全身黒い、怖い男の人に一発で吹き飛ばされるのを見るのは怖かったが、皆それぞれ相手のプレイヤーへと勇敢に駆けていった。
必然的に、対角線にいたウィザードのような格好をした女の人と魔法を撃ち合う。
精密に少女の放つ魔法を相殺する女の人に痺れを切らした少女は、【妖精の悪戯】で狙ったプレイヤーの武器を一瞬だけ奪い、仲間が倒れたのをみて【妖精の怒り】を使った。
仲間が減ると威力の高まる【妖精の怒り】。
使う頃にはすでに三人戦闘不能になっていたから、威力も上がっていたはずだ。
ウィザードであれば、杖が無ければ魔力のコントロールも難しいはず。
少女も杖のない状態で魔法を使うのを試してみたが、発動が安定しなかった。
何故か炎の矢を防がれたのには驚いたが、この一時であれば防ぐ術は無いはずだ。
そう、思っていた。
『……え』
女の人は、大してダメージも負わずに立っていた。
その手に、短剣を構えて。
目が合った瞬間に、身体に大きな衝撃を受けて、少女はよろけ倒れた。
‐ミツキ視点‐
あっっぶなかったです!妖精こわ………!
妖精の力ってすごいです。
本当にびっくりしました。
少女と目が合った瞬間に【宇宙線】を使いました。
少女が倒れ、その様子に慌てて振り返った少年へとミカゲさんの刃が届きました。
「ふふふー騎士様捉えたり」
『うぐっ』
ミカゲさんが少年を大鎌で攻撃しながら少女から離します。
少女のHPは1割残ってます。
まだ何があるかわかりませんし、退場してもらいましょう。
『ジュン!…ふぇ、フェアリー、』
「ウォーターボム」
『っ!』
まだフェアリーの引き出しがありましたか!
ウォーターボムで少女は戦闘不能になり、少女が戦闘不能になったことで少年の身体を覆う光が消えました。
『エナ!……くそ、』
「よそ見はいけませんよ少年」
『ッ!』
「認識されないと、ボクが首を刎ねてしまいますからね」
そしてその身体がミカゲさんの大鎌によって斬り飛ばされると、元々HPの減っていた少年は戦闘不能になりました。
『おっ!《ステラアーク》VS 《フェアリー・ガード》の戦いは、《ステラアーク》の勝利だ!お疲れ様ー!』
その言葉と同時に、わたし達はアリーナの外へと出されました。
ふぅ……わたしは肩の力を抜いてひとまずメニューを開いて杖が戻ってきているかを確かめました。
怒らせちゃ駄目な人、たくさんおるじゃろ?( ◜ω◝ )
これからもこの作品をよろしくお願いします!




