建国祭 7日目 武闘祭②
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「ッ!?」
「は、なんだこれ!?」
「空中の魔法陣!?」
見たことのない空中に展開された大きな魔法陣。
それから流れ落ちて来る光を、避けるためにフィールドを駆けるプレイヤー。
作戦も何もない。
避けるためには他のプレイヤーが邪魔だ。
プレイヤー達は近くにいるプレイヤーを無差別に攻撃し始めた。
そして黒い線が迫ってくるのをみたプレイヤーは、その手に握り締めた剣でその線へと斬り上げる。
しかし剣はその黒い線を斬る事は無く、謎の衝撃が身体を襲った。
「、は?」
衝撃はあるが痛みはない。
でも何故か、自身のHPが減っていた。
「な、なんの攻撃だ!?」
「術者がいるはずだ、探して倒せ!」
「斬れないぞ!」
「…面倒ね!全員怪しいわ!」
「魔法も駄目そう!」
プレイヤーは惑う。
見たことのない攻撃に、どう対処すれば良いか頭が回らなくなる。
単調な攻撃を周りのプレイヤーに行うことしか出来ない。
いつまたこの不思議な攻撃が来るかわからない。
いつまた空から光が降るかわからない。
他のプレイヤーと戦う間に、攻撃されるかもしれない。
モンスターとは異なる戦い方をする事はわかっていた筈なのに、プレイヤーとはこんなにも厄介だったのか。
こんなにも、自分と違うのか。
プレイヤー達は、一種の恐慌状態となっていた。
‐ミツキ視点‐
「効果は抜群ですわ!」
プレイヤーの様子をみたミカゲさんが、にんまりと笑いました。
「じゃあ行ってくるね」
「行ってくるわね」
レンさんは既に地面を踏み抜いて駆け出しました。
別の方向へと、両親が飛ぶように駆けて行きました。
「じゃあボクらも行きましょうか」
「はい!」
離れた場所にいるプレイヤーへ近寄ります。
やられる前にやるのです……
「っくるぞ!」
「ウォーターアロー!」
ウィザードと思われる女性からウォーターアローが飛んできました。
それは迷わずわたしに向かってきますが……
(…あれ、遅い……?)
飛ぶ速度が、わたしより遅いです。
全然避けられます。
(ウォーターアロー!)
「ぐあっ!?」
「お命頂戴!」
「きゃあっ!?」
わたしが放ったウォーターアローは倍の速度で、剣士に直撃しました。
ミカゲさんがその間にウィザードと共に剣士も斬り捨てました。
「ミツキ氏?」
「いえ、バトルロイヤルが終わったら考えます」
「……わかりましたぞ」
今は戦闘中ですし。
きっと装備で魔法の速度が上がる何かがあるのだと思います。
「隙あり!」
「オラァ!」
背後から踏み込んできたプレイヤーの攻撃を、前方に転がって避けます。気配はちゃんと読めてましたよ。
「ファイアーボム!」
「ぐっ!?」
「サンドボム!」
「うおお!?」
レベル差がありますからね。
2発で沈んでくれました。今のプレイヤーはレベル42でした。
レベル差があっても装備が整えられてますし、2発も使いました……って考えると、MPの使い方を考えないとですね。
片側から剣を振り下ろしてきたプレイヤーはミカゲさんが大鎌を下から振り抜いた事により、その剣を打ち上げられなす術無く回転斬りされてました。
「皆考えることは同じですねえ。各個撃破って感じですわ」
「そうですよね……遠くから悲鳴も聞こえてきますし」
「んー……レン氏が男女関係なく殴ったり蹴ったりして罵声を浴びせられてますね」
「……まあ戦闘ですし、しょうがないですよね」
「これで女の子に優しくとか言う奴は対人戦闘向いてないですよねー」
「戦闘は恨みっこなしです。……まあレンさんが向かってきたらわたしは全力ダッシュで逃げますよ」
「うーん逃げ切れればいいんですけどね。ボクらよりも速くて攻撃高いんですよねー」
敵に回ると厄介すぎますねレンさん!
まあこちらもこちらで徹底的にやりましょう。
最後まで残らないといけませんからね!
(【流星雨】)
「容赦ないですねぇミツキ氏」
再び空中に魔法陣が展開され、星が流れます。
まあまだ半分以上MPありますしね!
(ウィンドアロー!)
「ッイッテェ!?」
「【ポイズン・スラッシュ】」
「クソ!」
こちらへと向かってくるプレイヤーに魔法を放ち、ミカゲさんが追撃します。
っと危ない危ない。
身体を傾けて飛んできた矢を避けます。
ジアちゃんよりも狙いが雑ですね。
(【流星】)
「!?うわあああ!」
離れた場所で弓を引き佇む姿を見つけました。
バトルロイヤルってこんな感じなんですねえ。
隠れる場所もないので、堂々と打つしかないのでしょう。
……まあ、いい的ですよね!
流星は容赦なくプレイヤーのHPを削りました。
流星雨でHPが削れたプレイヤーが多いので、攻撃しやすいです。
ミカゲさんが踊るように大鎌を振り回してます。
さて、気配を探りながら残りのプレイヤーを倒すとしましょうか。
‐レン視点‐
振り下ろされた剣を避け裏拳で弾き、バランスを崩して空いた胴体へと潜り込み拳を振りぬく。
「カハッ」
「シッ!」
その身体は遠くにいたプレイヤーを巻き込むように飛び、HPを全損して消えた。
周りにいたプレイヤーは俺を警戒してか、各々武器を構えながらも近付いて来ようとはしない。
そんな中、再び空から星が流れてくる。
この魔法も規格外だ、範囲が広すぎる。
「う、うおおおおお!」
「数で押せ!相手は一人だ!」
「いくぞおおおお!!」
…そうだ。それでいい。
先陣を切って近寄ってきた男が斧を振り上げる。
そのガラ空きすぎる胴体へと一発拳を打ち付け、短剣を握り締めて突っ込んできた男の腕を避けて掴み足を払う。
槍を手にした男は何度もその手の槍を突き出してくる。
それをステップで避けつつ懐へと接近し見上げると、その見開いた目と目が合った。
顎を掌底で打ち上げつつ、浮き上がった邪魔な胴体を転がった短剣使いの方へと蹴り飛ばす。
やはり人間の方が戦いやすい。
自分の口角が上がるのがわかった。
「ハハッ…ハハハハ!」
レベル差も性別も関係ない。
俺の前に立つのであれば、皆等しく敵だ。
こちらに近寄らないプレイヤー達の方向へ、俺は拳を引いて地面を踏み抜いた。
‐サクヤ視点‐
「楽しそうだ」
そう遠くない場所で戦っていたサクヤとソラ。
ソラへの遠距離攻撃を弾きつつレンの様子を見ていたサクヤは微笑んだ。
ソラも同じように拳を使って戦うスタイルだが、それと同じくらい遠慮も容赦もない、ミツキと歳の近い仲間であるレン。
少しばかり危うい所があると思っていたが、良くも悪くも自分の信念に従って行動する真っ直ぐな男の子のようだ。
「うおおお!」
「声は出さない方がいいと思うよ」
背後から声を上げて突進するプレイヤーを避けて躊躇なく胴体を斜め上に斬り上げ、杖を構えてこちらを見ていたウィザードと思われる女性へと接近する。
「っえ、あ」
「戦闘中はいつでも反応出来るようにしないとね」
その無防備な首元を刎ねて周りを見渡すと、こちらを見ていたソラと目が合った。
結構プレイヤーがいたと思ったけれど、全てソラが倒したようだ。
この辺りには、レベルが下のプレイヤーしかいなかった。
「レベル差もまちまちね」
「たまにレベル50以上のプレイヤーもいるけど、このあたりにはレベル60を超えるプレイヤーはいなさそうだ」
「そうね。結構減ったし、ミツキ達と合流しましょ」
「ああ」
プレイヤーはモンスターとはまた違う、思考する敵だ。
サクヤが考えることと違う動きや、知らないアーツを使うだろう。
それは自分の経験になるし、それらを実力でねじ伏せるのが戦闘の醍醐味でもあるだろう。
「さて、骨のあるプレイヤーはいるかな」
「あ、ミツキの方にプレイヤーが近付いてるわ。鉄球投げるわね」
「うん」
「【第一宇宙速度】」
投手のような綺麗なフォームから放たれたのは異常な速度となった鉄球。
それはミツキの背後に近寄っていたプレイヤーの鎧を砕き、大ダメージを与えた。
「…もう少し重くてもいいわね」
「リーフくんに相談だね」
「ええ」
二人はプレイヤーの影と気配が無くなったこの場所から、ミツキ達の方向へと走り出すのであった。
‐ミツキ視点‐
大分プレイヤーの姿が見えなくなりました。
結構倒してきたようです。
レンさんが暴れている方向にはまだプレイヤーがいますし、そちらに合流しましょうか。
ミカゲさんの方向へと近寄ろうとした時、急に背後から気配を感じました。
前方のミカゲさんにも躍りかかる影があります。
「ッ!」
「死ねオラァ!…ガァッ!?」
「な、何!?」
短剣片手にわたしを狙ったプレイヤーが、呻いて倒れました。
すぐさま離れます。急にどうしました!?
注意して確認すると、背中がバキバキのボロボロです。
………あー、鉄球です。鉄球が転がって消えました。
「ファイアーボム」
レベルが52と高かったプレイヤーですが、鉄球の直撃を受けて瀕死になってました。
ファイアーボムでトドメをさします。
周りを見渡すと、離れた場所からこちらに駆けてくる二人が見えました。
「あの距離からの鉄球はやべーですわ……大砲?」
「ロケット弾みたいな感じですかね?」
「装備を一発で破壊出来る威力はおかしいんですよね」
「ですよね」
「もしや攻撃ステを換算しつつ距離で威力が伸びたり……?」
突如レンさんがいた方向から轟音が聞こえてきました。
振り返ると、腕を振りぬいた状態のレンさんが見えました。
レンさんの周りがクレーターだらけです。
地面がボロボロになってます。
ついでにプレイヤーもいなくなりました。
『おっと、グループ16は終了!残ったパーティーは〈ステラアーク〉だね!』
『試合までゆっくりおやすみー!』
終わったようです。
やっぱり全体攻撃魔法があると便利です。
今回みたいに一か所で多くのプレイヤーが集まってると狙いやすいですしね。
「ミツキ氏、お疲れ様ですわ」
「ミカゲさんもお疲れ様です」
「いやぁアーツあんまり使わないで攻撃できて楽しかったですわ!」
「最初の技とか、ミカゲさん凄かったですね」
「ふふん、そうでしょうそうでしょう。ミツキ氏の魔法も凄かったですよ!」
ミカゲさんのアーツはよくわからない攻撃でした!
プレイヤーのHPが一撃で、呻きもせずに減ったので痛みが無さそうな攻撃だと思いました。
痛みが無いと、HPが減った事も気付かないかもです。
気付いた時には手遅れ……なんて事になったら困惑です。
「終わっちゃったね」
「まあ対人戦闘は楽しめたわ。多人数の戦いも慣れておかないと」
「お疲れ様」
「お疲れ様ですわ!」
「ミツキも中々良く動けていたんじゃないかしら?」
「ミカゲさんは言わずもがなだけど、大鎌の扱いがまた上手くなっていたようだね」
「日々鍛練中ですわ。お二人もすごい安定して倒してましたね」
「見敵必殺だったからね。着実に、堅実に倒したよ」
さすがです。
やはり戦い慣れてるようですね。
そんな会話をしていたらレンさんが戻ってきました。
ほぼ無傷ですね。
「お疲れ様ですレンさん。手応えありました?」
「…お疲れ。手応えある奴はいなかった」
「じゃあきっと次にトーナメントで戦えますね」
「だといいがな」
満足しなかったようです。
きっと次はバトルロイヤルを制したパーティーと戦えますから!
「にしてもここ、控室的な感じなんですかね?」
「他が終われば出られるのかしら」
「まあいつでも戦えるように呼吸は整えておこうか」
「…サクヤ氏整えるほど息切れしてませんな」
「あれ、バレたね」
入念にストレッチをします。
次の戦いに備えないとです。
きっと次の戦いはそう簡単に行かないはずです。
『全てのグループのバトルロイヤルが終了したよ!』
『勝ち残ったパーティーを転移させるね!』
ツェーンさんの言葉が響き、瞬きの間に風景が変わりました。
あのコロッセオドームに戻ってきました。
同じようなプレイヤーが見えます。
武器も装備もしっかりした、強そうなプレイヤー達です。
『13時にトーナメント発表するから、それまでは休憩させて貰うよ!』
『出場するパーティーは時間までに戻ってきてね!』
今の時刻は11時半くらいです。
わたし達のグループは1時間かからないで倒し終えましたからね。
他のグループが時間かかっていたようです。
じゃあお昼の為にログアウトしましょうかね。
「ホームに戻って、ログアウトしたらお昼作りますね」
「そうね。少しお腹に入れましょ」
「わーい!楽しみですわ!」
「じゃあ戻ろうかな」
ひとまず休憩として、ホームに戻ってログアウトしました。
プレイヤーの数は多いけどガチ勢や攻略勢はレベル突出してるの理解してるから一部しか出てませんのだ( ˘ω˘)
そして主人公が少し自分と周りの差を自覚しましたな!
これからもこの作品をよろしくお願いします!




