建国祭 5日目 ③
ご覧いただきありがとうございます!
これからもミツキの物語をお楽しみ下さい!
よし、では家具もある程度揃いましたし!
サジタリウスさん達に鍛錬をお願いしにいきましょう。
「よし、鍛錬に行ってきます!」
「私達も行きましょ、サクヤ」
「そうだね」
わたしの言葉に両親が頷きました。
ジアちゃんとリーフくんも、それぞれ頷いてホームから出ます。
「スピカさん、これ!」
「…まあ!もう買ってきてくれたのかしら!」
「ただ道具はまだで…」
「無くてもどうにか出来るから構わないわ。嬉しい」
畑に手を翳していたスピカさんに、花の種と色々な野菜の種を渡します。
すると花が咲いたように笑うので、わたしもつられて笑います。
「よーし、張り切っちゃうわよ!」
「休みながらやってくださいね」
「ふふ、ありがとう」
スピカさんと別れて、島の気配を探します。
……ふむ、昨日と同じ場所に集まっている気配を感じます。
そちらに駆けると、カストールさんとポルクスさんが武器を使わず手合わせしてました。
………目で追えませんね。
かろうじて腕か脚を使ってるな、と言うことしかわかりません。
「ミツキ、目で追えますか?」
「こんばんはサジタリウスさん。腕か脚を使ってるなくらいしか追えないですね……」
「あいつら加減を知らないからな」
いつの間にかわたしの隣にシリウスが座ってました。
軽く頭を撫でると、満足そうに目を閉じました。
「おや」
「ミツキ」
「今日は」
「僕らの力を」
「「使うかい?」」
「すごいプレッシャーです…」
手合わせを止めてこちらに歩み寄ってきた二人は、同じ動作で左右からこちらを覗き込みます。
「…今のミツキに貴方達の力は無理でしょう。せめて【並列思考】のスキルを覚えなければ」
「並列思考、ですか?」
「二つ以上のことを同時に考える事ですね。双子の力を使うのであれば、あった方が良いでしょう」
SPの一覧から並列思考を探します。
……アクティブスキルにありました。SP30必要みたいです。
全然足らないですね!?
ちょっと難しいです。
今回のイベントでSPも欲しいです……
「今日は私が、身体の動かし方を教えましょうか」
「はい、よろしくお願いします」
「コーディネーショントレーニングですね」
あ、聞いたことあります。
確か、運動神経を鍛えるトレーニングだったような。
怪我しにくい身体にもなれるんでしたっけ?
わたしは準備運動をして、サジタリウスさんと向き合いました。
サジタリウスさんはとても丁寧に、身体の動かし方を指導してくれました。
指の動かし方、腕の動かし方、歩き方、重心移動の仕方など様々です。
………これはログアウトしてもやった方が良いかもです。
身体の動きのズレは致命的ですからね。
……まあ星座の皆みたいな動きは出来ませんが!
思い通りに身体を動かせるように鍛えるのも重要ですよね。
「…昨日はペルセウスだったんだろ。今回は俺の力を試して見るか?」
「シリウスの?」
「おう」
ちょこんと座ってこちらを見上げるシリウスに、膝を突いて視線を合わせます。
「…シリウスの力はまだ青白い炎のことしか知らないね」
「そういえばそうだったか」
ぱちりと瞬いたシリウスが、こちらをジッと見つめます。
「まあ簡単に伝えると、俺の力はこの青白い炎と、獲物を必ず捕まえる性質を持ってる」
「なるほど…」
「俺の力を使うなら、お前の攻撃に炎が追随する。逃げた獲物も……まあ一度だけなら捕まえることができるだろ」
「一度だけ?」
「一度使えば恐らくバテるぞ」
「バテる……」
バテるんですか…
思わずしょっぱい顔してしまいます。
「それに、俺の炎の温度は知ってるか?」
「…確か、シリウスAが約10000度、シリウスBが約25000度だったっけ」
「そうだ。……結論を言うと炎耐性ある敵も燃やせる」
「ひえ」
「俺の炎のが強いからな。何なら俺の炎に焼かれるから、炎攻撃をある程度なら燃料にも出来るぞ」
炎耐性のある敵を燃やせるとは……
お、恐ろしいですね。
……ん?…炎攻撃を燃料扱いです???なんて???
「まあそんな感じだ」
「…使えるようになったら試してみるね」
「おう」
そう言ってシリウスはその場で寝そべりました。
……わたしもとりあえず先程サジタリウスさんから教わった動きを復習します。
………あっ!
武闘祭の参加費の銅コイン、わたし4枚しか持ってません!
慌ててイベント告知を確かめます。
………1人、銅コイン10枚とは書かれてないので、みんなで持ち寄れば足りそうですね……?
でもレンさんがすごい集めてそうです。
俺が出すってやりそうです。
…イベント終了後にアイテム交換できますしね。
明日は武闘祭前なので、討伐依頼で身体を動かしておきましょうか。
ディアデムを喚ばないで、MPがどれくらい減るか確かめておかないとです。
っと、そろそろ【星装】が使える時間です。
シリウスの力を借りてみましょう。
「シリウス」
「おう」
「力を貸してね」
「いいぜ」
「【星装】おおいぬ座」
シリウスが光となってわたしに降り注ぎます。
ステータスを確認すると、ペルセウスさんと同じように攻撃と敏捷が上がっていました。
それに……
使用可能:焼き尽くす蒼炎
……名前かっこいいですね。
人間のわたしが使ったらどうなるのかわかりませんけれど。
まあ試すのみです!
「焼き尽くす蒼炎」
ぽつりと呟くように唱えると、わたしの全身が燃え上がりました。
「!?!!?」
『いや普通は武器とか手とか脚とかに纏わせんのがコスト的によ』
「っ!そ、そうだよね!?!!」
『そんな全身に使うとMP消費速いぞ』
わ、本当です。
ぐんぐんMPが減ります。
とりあえず瑠璃の短剣に纏わせて見ましょう。
わたしは燃えないので不思議ですね……熱くも無いです。
【ウェポン・コンバート】で武器を変えようとした所、森から気配を感じました。
「あ、いたいたミツキ氏………」
「あ、ミカゲさん」
「ミツキ氏ーーーーーー!?」
ミカゲさんは手に持っていた箱のようなものを落としてこちらへ駆けてきます。
は、箱大丈夫ですか……?
「も、燃え!?燃えてる!?生きてます!?」
「大丈夫ですよミカゲさん!」
「えっと、消防車!?いや水魔法!?いやボク使えないですわーー!?死なないでミツキ氏ーーー!!」
謎にパニックになってるミカゲさんをどうにかしなければ……!
瑠璃の短剣に変えて、炎を短剣へと収束させるイメージを持ちます。
すると炎は徐々に短剣へと集まり、刃の部分で揺らめきました。
「ふぅ……わたしは燃えてないので大丈夫ですよミカゲさん」
「な、なんだ魔法ですか……驚きましたわ……」
ミカゲさんがその場で座り込みました。
カストールさんがミカゲさんが落とした箱を拾って持ってきます。
「恐らく中身は無事だよ」
「あ、ありがとうございます」
「驚かせてすみません」
「……いえ、こちらこそです。人が炎に包まれるの見るのトラウマで」
ミカゲさんは頭を降ると、先程までのパニックな様子はどこかへ行ったかのように振る舞います。
「これ、ボクの新作です!ミツキ氏あとで戦闘で試してみてくだされ!」
「わ、よろしいのですか?」
「後で感想教えて欲しいですわ!じゃ、まだまだ作るので失礼しますよ」
何事も無かったかのようにミカゲさんは手を降ってホームの方へ駆けて行きました。
……ミカゲさんの前では全身火だるまにならないように気を付けましょう。
いや普通はならないんですけれどね。
『…大丈夫かあの娘』
「ミカゲさんの前では全身包むのはやめましょう」
『普通は包まねえけどな』
「短剣燃えないの不思議ですね…」
ミカゲさんの様子が気になりますが、中々踏み込めなさそうな雰囲気でした。
炎の扱い、気を付けましょう……
『試しに地面でも刺してみろ』
「う、うん」
しゃがんで刃を地面へと近付けた瞬間、地面が溶けました。
腕を上げました。
「地面が!?」
『お前俺の温度知ってるだろ』
「えっと、えっと、サンドボール!」
砂で埋めておきました。
びっっっくりしました。地面溶けました!
超高温ですもんね……容易に溶けますよね……!
森で使ったら大火災では……?
むしろモンスターが溶けたりしないですよね??
それを見る耐性はないですからね…!
しかも刺してませんから!
刺したらそのまま沈みそうで怖いです。
「……すごい炎だね」
『すごいだろ』
どやっとしてるシリウスが思い浮かびます。
っと、MPが尽きそうです。
炎が消えて、シリウスが出現しました。
「まあ試すまでいかなかったが、そんな感じだ」
「次は実戦で試せるように、だね」
「おう」
よし、では今日はここまでです。
お師匠様の所へ向かってホームに家具を揃えたことを伝えなければ……
ついでに島の星座の配置も変えます。
スピカさんは畑作業をしてもらってるのでそのままで、ほかの4体の枠は喚んだことない星座にしましょう。
「……サジタリウスさん」
「はい、なんでしょう」
「水生生物系の星座って、陸で喚び出しても大丈夫です?」
「基本的に彼らは水魔法が使えますから。問題ありませんよ」
「ありがとうございます!」
陸で喚び出して大丈夫でした!
確かにうみへび座は洞窟で喚び出した時水魔法纏ってました。
ならば今回は水に関係ある星座と会いたいですね!
スピカさん以外は休んでもらって、わたしは星座を思い浮かべます。
ふむむ……
「……〈うお座〉〈かじき座〉〈とびうお座〉〈くじら座〉」
わたしの周りから魔法陣が展開されます。
………一応知識としては知っていたので心構えしてたのですが。
くじら座は鯨では無いのですよね………
かじき座は一応シイラからカジキと見なされてきたのでカジキですね。
ケートスは鋭い牙と、魚のような尾と、手?をもつ海獣でしたっけ…
水を纏って大人しくこちらを見つめています。
うお座は2匹の魚が紐で繋がれています。
これもイラスト通りですね。遊んでいるかのようにお互いに紐を引っ張り合ってます。
とびうお座はそのまま、とびうおですね。
比較的新しいので、神話は無いはずです。
皆水魔法を纏ってます。
「わたしはミツキ。皆、よろしくね」
「…よろしく。此度の主よ」
「「よろしくねー」」
声を発したのはケートスとアルフェルグでした。
この辺りは謎ですね。神話の有無なのかと思ってましたが、みずがめ座は人型ですが話しませんし、前お師匠様の島で出会ったはと座は念話的な感じでした。
ひとまず皆を並ばせてスクショを撮ります。
そしてクランチャットに貼り付けておきます。
……ケートスが見たことないモンスターみたいな見た目してますからね。仲間なのですよ。
よし、ではお師匠様の所へ行きます。
わたしはお師匠様の島へ移動しました。
「エレノアに会ったのかい」
「はい!素晴らしい家具を買えました」
「そうかい。それはよかったよ」
お師匠様は優しく笑いました。
「もう少し家具を揃えたら、是非お師匠様を招待したいです。神殿も作りますし」
「そうかい。その時は邪魔するよ」
「はい!たくさんお世話になりました」
「何、これも師匠の務めさ」
「これからもたくさんお土産持ってきますので!」
「…たまに顔見せに来ればいいさ」
「かなりの頻度で来ちゃいますよ」
わたしの言葉に一瞬目を丸くして、口元を緩めたお師匠様。
これからも色々教えてもらわないとですからね!
「まあ好きな時においで」
「全力でお言葉に甘えます!あっこれミゼリアで買ったクリスティアってパンです!美味しかったです!」
「はは、そうかい。ありがとうよ」
お師匠様に挨拶して、プレアデスへ戻ってきました。
自分の部屋へと入ります。
窓からは島の様子が見えます。
アルフェルグが2匹仲良く森の中をすいーっと移動してるのが見えました。
やりたいことがたくさんです。
今日はここまでにして、また明日ですね!
わたしはベッドに横になって、ログアウトしました。
窓から外を見ると、いつの間にか空は分厚い雲で覆われてました。
さっさと寝てしまいましょう。
おやすみなさい。
星座を喚ぶぜ喚ぶぜ……
これからもこの作品をよろしくお願いします!




