建国祭 4日目 ②
ご覧いただきありがとうございます!
少し短いですがお楽しみください。
夜の森は鬱蒼さがマシマシです。
というか獣道です。
草を踏み固めながら森を進みます。
割と離れた所に集団の気配を感じるので、ひとまずその方向へと向かいます。
……案外数が多いかもです。
群れですもんね。
気配の方向へと進むと、武器と防具を装備した大きな人型のモンスターが見えました。
オーガ Lv.52
パッシブ
【棍術】【雄叫び】【打撃】
【狂化】【捕食】
オーガ Lv.52
パッシブ
【棍術】【雄叫び】【打撃】
【狂化】【捕食】
オーガ Lv.52
パッシブ
【棍術】【雄叫び】【打撃】
【狂化】【捕食】
角の生えた、棍棒を持った大柄なモンスターが闊歩しています。
いや大きいですね……
今は草むらから見てますけども。
ペルセウスさんがわたしに近寄ります。
「…お前の強みは魔法だ。短剣で受けるのはまだ早い……しかしその短剣は杖にも成り得る。攻撃を避けて至近距離で魔法を撃て」
「…避けて、魔法」
「動きをよく見ろ、棍棒の軌道もだ。振り上げるのか振り回すのかで避け方も変わる。…フォローはする」
「わ、わかりました」
わたしは短剣を握り締める手に力を込めます。
その様子をみたペルセウスさんは、ぶっきらぼうに頭をわしゃわしゃ撫でたあと、オーガを見据えて言いました。
「敵は攻撃を寸止めしてはくれない……が、俺がいる。避けられないと判断したら、お前への攻撃は弾いてやるよ」
「………」
「「僕らもやるよ?」」
『ラクリマも!』
「私もいますよ」
「俺もいるが?」
格好良すぎる言葉に顔を覆っていたら背後から次々と言葉が聞こえてきました。
なんて頼もしすぎる仲間達なのでしょう……!
頼れる仲間もいますし、モンスターに近付かれる恐怖も無いとは言いませんが、そこは頑張るしかありません。
あんなに転がり方と避け方を鍛錬してきました。
大きく深呼吸して、わたしは駆け出しました。
(【身体強化(魔)】【ブースト】【ハイブースト】)
オーガから目を逸らさずに強化を施します。
(【魔力強化(星)】【魔力強化(月)】)
カストールさんとポルクスさんが、戦いやすいようにオーガ1体を残して周りのオーガを吹き飛ばしました。
心の中で感謝を叫びながら、わたしはオーガと一対一で見つめ合います。
「グオオオオオッ!」
「!」
オーガが大きく振り上げた棍棒の一撃を横に避けて、すかさず魔法を放ちます。
(【流星】!)
そして距離を取って短剣を構えます。
短剣の構え方はペルセウスさんの見様見真似ですけどね。
短剣を持った右手を前に、少し腰を落として足を引いてます。
……【流星】は威力高すぎましたね。
HPを8割くらい削りました。
「ガ…ガァァアアア!!」
オーガが雄叫びを上げると、赤黒いオーラで覆われました。
【狂化】ですね。モンスター大体【狂化】持ってますし、HP減ったら発動しますね。
【狂化】で上がるのは攻撃と敏捷だったはずです。
その代わり防御、魔防が下がると聞きました。
これは気を引き締めないとです。
止まっていたらいい的なので、木々を利用して動きます。
とりあえず接敵して、攻撃を見切れるように鍛錬しましょう。
まるで地団駄を踏むように棍棒を振り下ろすオーガ。
…さすがに近付けません。
(ウィンドボム!)
オーガに風の爆発が起き、オーガのHPを吹き飛ばしました。
頭上を見上げて、飛んでいたペルセウスさんに伝えます。
「…怖くて倒しちゃいました」
「まあいいだろう。あの攻撃の時に近付こうと思わなくていい」
「わかりました」
「振り下ろしは左右に、振り回しはしゃがむか飛べ」
「……ジャンプ力に自信もなく身体の柔らかさにも自信がない場合には」
「試して駄目なら考える」
「はい……」
転がるのもありですか??
………あ、なるほど。
オーガとわたしでは、そもそもの身長に差があります。
水平に振り回したとして、オーガが振り回すと高さはわたしの頭の辺りです。
………避けられるかもです!
「オーガを視界に入れろ。武器ばかり見るな、常に視界に全身を入れろ。いつ手足が視界の外から飛んでくるかわからんからな」
「はい」
「お前の体格だと吹き飛ばされるだろう。受けるな、避けろ」
「はい!」
オーガのパワーは受けられないです。
数m吹き飛ぶ自信しか無いですからね。
「…と言っても今のお前にはモンスターの攻撃を近距離で避けるのも慣れてないから難しいだろう。……まあどうにかして避けろ、そして魔法で倒せ」
「…………はい」
まあ今までウィザードとして少し安全な所からプレイしてましたので、どうにも近距離で戦うのは慣れません。
数をこなさないとですね。
よし!
「ミツキ、一体そっちにぶっ飛ばすぞ!」
「っはーい!」
シリウスが体当たりしたオーガがこちらに転がって来ました。
そして立ち上がり、わたしを視界に入れます。
「注意を引くための魔法はありですか」
「ああ」
「わかりました」
(サンドアロー!)
妨害も込めて顔辺りを狙って魔法を放ちます。
逆手に持ってるので短剣のグリップの部分で示すと魔法飛ぶので使いやすいです。
ここから魔法を撃つ!とイメージしやすいんですよね。
杖は杖の先からってイメージしやすいですし。
「ガァッ!」
「ッ!」
右から左への振り下ろしを左に、脚に力を込めてぐるりと踏み抜きます。
(【二重詠唱】ウィンドボム!)
「ガッ!?」
風の爆発を受けてオーガが倒れ込みました。
HPが風前の灯です。
「狙うなら首か心臓だが」
「っ」
「…手足に短剣を突き立てろ」
棍棒を持つ腕に短剣を振り下ろします。
オーガは、小さく呻いて消えました。
「…よくやった」
「はい」
少しだけ手が震えているのを、握り締めて誤魔化します。
「忘れるな」
「それは殺す事が出来る武器なのだと言う事を」
ペルセウスさんがオーガを見据えながら自身の短剣を顕現させます。
……杖でスライム殴った時とは、また違う感覚です。
斬れ味が良すぎて、豆腐に包丁入れた感覚と似てました。
ハッいかんいかん考え方がなんか違う方向へと向かいました。
……つまり、近接攻撃は、料理………???
「…おい、変な事考えてるだろう」
「はっ…ちょっと逃避してました」
「…まあいい。短剣での攻撃は余程の時にしよう」
「わかりました」
「ひたすら動くぞ」
「…………はい、わかりました」
深呼吸して、頬を叩きます。
何かあればペルセウスさんが割って入ってくれるので、少しだけ安心できます。
「よし、次ください!」
「2体行くよー!」
「うぇ!?」
カストールさんとポルクスさんによって2体転がされて来ました。
それぞれ立ち上がって、わたしとペルセウスさんを見つめます。
「相手に近寄って片方の攻撃の盾にするも良し、両方相手にするも良し」
「難易度高めですね……」
とりあえず構えながら走ります。
すると、棍棒をそれぞれのタイミングで振り下ろします。
左のオーガの振り下ろしを踏み込んで右に避け、右のオーガの振り回しを勢いのまま踏み込んで膝を折ります。
ふおおおおお!頭上を棍棒が通り過ぎていきました!!!
(【二重詠唱】サンドボム!)
「うわぁ!?」
魔法を唱えたら、バランス崩して転がりました。
そこに魔法を受けたオーガも倒れ込んで来ます。
し、下敷きに!!
その瞬間目の前のオーガが蹴り飛ばされました。
飛ばされたオーガは木にぶつかって動かなくなりました。
「……」
「ありがとうございますペルセウスさん…」
有翼のサンダルで空中をスライディングするかの如く飛び込んで来たペルセウスさんが、呆れた目でわたしを見ました。
「…なるほど、ミツキは本当に慣れてないんだね。武器を握るの」
「ふぐっ」
「なんというか、危なっかしいね」
カストールさんとポルクスさんにトドメ刺されました。
武器を握るの慣れてる女子高生はわたしの知ってる中ではいませんよ!!
サンドアローで動かなくなったオーガにトドメを刺し、残りのオーガを見ます。
まだ後5体くらいいますね。
シリウスとラクリマとサジタリウスさんが糸を使って囲い込みしてます。
「…まあ慣れるのが一番の目的だ」
「はい」
「残りは近寄って近距離で魔法を使う」
おや、近寄るんですね?
ペルセウスさんは囲い込みされてるオーガを見つめます。
「目標は剣を刺してボム系の魔法を発動させる」
「ひょえ」
「それがお前にとって一番殺傷力が高いだろう。短剣を扱うのであれば」
まあ短剣のアーツはありませんし、短剣を使って魔法を放つスタイルのがやりやすい気がします。
5体一気には辛いので、1体ずつでお願いします!
ミツキは武器持つのに慣れた女子高生では無いですからね??
これからもこの作品をよろしくお願いします!




