建国祭 3日目 ①
ご覧いただきありがとうございます!
おはようございます!
ぐっすり眠ったので元気です。
制服に着替えてユアストからの通知を開きます。
Your Story -ミツキ-
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催し物の特別な依頼を受注しました。
隠し条件を達成しましたので、新たな依頼も発生しました。
おめでとうございます。
これも貴方と仲間の紡いだ縁でございます。
ぜひ、彼の想いを辿っていただければと思います。
良い建国祭を。
お疲れ様でした。
……隠し、条件??
隠し条件が設定されて……!?
あ、もしかして王家のイベントの時の、特殊クリア内容と書かれていたのと同じような感じですか!
ゆ、ユアストの作り込み!!!
すごいですが、今までの任務にももしかしたらあったのかと思うともどかしい気持ちになります。
……まあそれらを含めてわたしの選択で物語です。
割り切るしかないですね。その条件とやらもわかりませんし……
墓守犬のお願いもありますし、今日も気合い入れるとしましょう。
よし、学生生活を今日も平穏に終わらせます!
何事もなく学校から帰宅しました。
あれ、靴があります。
リビングを覗くと、母がいました。
「あら、おかえり満月」
「ただいま。今日は早いんだね」
「システムメンテナンスがあってね」
「なるほど」
「私もお父さんも土日は休み取ったから、バリバリイベントやるわよ」
「そ、そうなんだね」
「今日も何かあれば手伝うわね」
「うん、よろしくね」
そう言って部屋に戻ります。
制服を着替えて、食事とお風呂を済ませて部屋に戻りました。
ピコンと携帯の通知がなりました。
あ、兄からです。
『お裾分けだぞー』
その一文と共に、写真が送られました。
わ、綺麗な天の川……!
空を裂くような天の川が、とても美しいです。
保存しました。
『めっちゃ綺麗』
『せやろ』
『天気良さそうだね?』
『ようやっと撮れた奴だからな』
『さすがお兄ちゃん』
『敬い給えよ』
『……そういえばもうすぐ皆ユアストレベル50になるかもだから、お兄ちゃん帰ってきたらレベル上げ頑張ってね』
『は!?そんなに上げてんの皆!?』
『イベントがあるから。プレイヤー同士の戦いとか』
『……めっちゃ見てえな』
『ふふ。お兄ちゃんも、いい写真撮ってね』
『おうそれは任せろ。……そっちも頑張れよ』
『うん』
『んじゃ俺は作業に戻るわ。おやすみ』
『おやすみ』
時差の事忘れてました。
時差約4時間くらいでしたかね。
それはおやすみとなる訳です。
よし、ではわたしもログインしましょう!
ログインしました。
ディアデムを喚び出して、身嗜みを整えます。
そしてパン屋さんで買ったほうれん草とじゃがいものキッシュを食べます。
んん!ごろごろしたじゃがいもとぎゅっと詰まったほうれん草と生地!美味しい!
お腹にたまる……いいボリュームです。
よし、ごちそうさまでした!
リーフくんに、ログインしました、とメッセージ送っておきます。
よし、ではプレアデスに向かって世界樹に水あげに行きましょう。
「お師匠様こんばんは」
「やあ」
「王都行ってきます!」
「…その前に一つ聞いていいかい」
「何でしょう?」
「お前さん苦手な物、できない事あるかい」
お師匠様は本を片手にこちらを見ます。
唐突な質問ですね?
でもまあ苦手なものなら……
「………虫ですかね?できない事は、近接戦闘ですか?」
「……これをやってくれると嬉しいとか無いのかい」
「……ふむ」
これをやってくれると嬉しい……
なるべくわたしは、この世界だと自分で色々やってみたいんですよね。
「…料理も島の手入れも、菜園も花壇も掃除もやろうとは思うので、その手伝い?とかをしてくれると嬉しいですね?この答えで合ってます?」
「…お前の補佐だね。わかった、ありがとうよ」
「???」
納得されました。
何でしょう?
「と、とりあえず行ってきます」
「行ってらっしゃい」
片手をひらりとして目線を手元の本に戻しました。
この世界では、何でもやれますからね!
色々挑戦するのです。
外に出て、軽くストレッチします。
空気が少しひんやりしてて、吸い込むと頭がスッキリしたような気がします。
よし、行きましょう!
わたしはプレアデスへと飛びました。
世界樹への道を歩きます。
動物の気配は無く、道を歩くわたしの足音だけが響きます。
そして目に入る世界樹に、わたしは毎回圧倒されています。
星空と世界樹……宗教画になります。
ホームに飾りたいですね。
もし島のマーク作るとしたら、世界樹と青い星々を散りばめた星空になりますね!!!
兄が日本に帰ってきたら、スクショを任せましょう。
写真家としての兄の腕はわたしより大変信頼出来ますからね!
汲んでおいたサダルスウドの水を世界樹にかけます。
……瓶を傾けていると、なんかお神酒を伐採する木にかけるあのイメージが出てきます。
伐採しませんけどね!!!!これからも島のシンボル兼守護樹としてよろしくお願いします!
よし、瑞々しくなりましたね!
ふむむ、リーフくんが来るまで何しましょうかね。
あまりMPを使いたくはないですし……王都の散策でもしますか。
見るだけですよ?
と言う事でミゼリアに来ました。
建国祭期間中は人の多いこと……
なんかこう、ベテラン!初心者!住民!って感じの人で溢れてますね。……わたしは中堅です。
明かりに灯される花々と王都が綺麗ですねぇ!
わたしは花に誘われるように、王都を歩き始めました。
ピコンッと軽快な音が響きました。
中々有意義な時間を過ごせました……ウィンドウショッピング楽しいです。
メッセージでした。リーフくんからです。
王都にいるので、墓場で集合しようと送ってわたしは墓場へと向かいました。
「ミツキさん、遅れました」
「大丈夫だよリーフくん」
部活もありましたしね。
わたしの方が合わせやすいので、全然問題無いのです。
「じゃあ、クランチャットにメッセージ送るね」
「うっす」
『今から墓守犬と会います』
の一文をクランチャットに送って、リーフくんとパーティーを組みます。
「よし、行こうか」
「はいっす」
リーフくんと共に、墓場へと足を踏み入れました。
昨日と同じ場所へと進むと、昨日と同じように墓守犬が墓の前で墓を見つめていました。
そしてリーフくんを見つめます。
「………なるほど」
「?」
「昨日の動きで、俺達の事は信用出来ると判断したそうで」
「ふむむ」
「持ってきてもらいたい物があるみたいっす」
「持ってきてもらいたい、もの?」
持ってきてもらいたいもの??
……捜し物とは、違いますね??
「説明は手間だから、額に手を翳せと」
「………まあ、やるしかないね?」
「っす」
おそるおそるリーフくんと一緒に、墓守犬の額に手を翳します。
すると、淡く手元が光りました。
『……お前はいい子だな!』
『これからもずっと一緒だぜ!』
少年と、黒い犬の会話が思い浮かびます。
それはすぐに、別の光景になります。
『俺、騎士になるんだ』
『お前のことは連れてけねえけど、休暇で帰ってくるから』
『待っててくれよな』
少し成長した少年…青年が、荷物を纏めて歩き去る後ろ姿。
『今度戦争がある』
『必ずこの国を、守ってみせるさ』
精悍な顔をした青年が、覚悟を決めた顔つきで黒い犬を撫でます。
『見てくれ!働きが認められて、小隊長を任せられたんだ!』
『俺、強くなっただろ』
その身に傷が増えたけれど、五体満足で帰って来た青年に撫でられ、尻尾を振る黒い犬。
『……最近戦いが増えた』
『本格的に悪魔達が仕掛けてくるらしい』
『……騎士団長から、剣を授かったんだ。似合うか?』
『……じゃあ、行ってくる』
黒い犬の目に、赤い石が嵌め込まれた黒剣が映った。
『………小隊長は、魔族と相打ちとなり、崖下へ転落!戦死されました!』
『……遺体は見つけましたが、小隊長の剣は、見つかりませんでした』
墓の前で横たわる黒い犬は、やがて眠るように息を引き取りましたが、次の瞬間に墓守犬となって目を醒ましました。
そこで、手元の光はおさまりました。
「……小隊長さんの、お墓なんだね」
「…………剣を持ってきて欲しいと」
「……剣」
「あの剣は、あいつの生き様だったから。共に眠らせたいらしいっす」
あの赤い石の嵌め込まれた、黒い剣……
記憶では、崖下へ転落した際に行方不明となったと。
……何年前かわかりませんが、朽ちてしまった可能性もあるでしょう。雨風に晒されて原型が無いかもしれません。
「……朽ちてても、形があれば見つけてほしい。って言ってます」
「……」
墓守犬は、わたしをじっと見つめます。
リーフくんも、わたしの様子を窺っています。
「…リーフくんはどうしたい?」
「…俺は」
リーフくんは墓守犬を見つめます。
「……見つけてやりたいっす」
「よし、じゃあクランメンバーに連絡して人海戦術しようか。7人いればまぁ…足りる、かな?」
「え」
「らしんばん座で近くまでなら行けると思うんだよね。わたし捜し物得意だよ」
「…いいんすか?」
「いいよ。リーフくんの言葉を待ってただけだもの」
リーフくん、年下だからか少し遠慮する所ありますからね。
ユアストでやりたい事をやれば良いのです。
「…でも場所がわからないね」
「……墓守犬もさすがに場所はわからないみたいっす」
「んんん……ならばお師匠様に聞こう。リーフくんはチャットに書き込んでくれる?」
「うっす」
あまり戦争については知りませんからね。
1000年前の大戦についてはうっすらと聞きましたが、ミゼリアの戦争についてはあまりわかりません。
と言うか墓守犬の記憶で悪魔達が攻めてくると言っていたので、【神秘】の【15:悪魔】を使うの躊躇うのですが???
別物って考えていいんですかね??はぐれ悪魔とかです??
わたしは鏡を取り出します。
「エトワール様」
『……………なんだ、ミツキか』
「お伺いしたい事がありまして。今お時間大丈夫ですか?」
『構わないよ』
「クリスティア王国で悪魔と戦ったのはどこの場所か、ご存知ですか?」
『…………ほう』
お師匠様は目を細めました。
そして考え込む素振りをみせると、一瞬鏡の前から消えて、一冊の本を手に取って戻って来ました。
『………そうさね。悪魔との戦いであれば、最近だと約100年前か』
「ひゃっ」
『奴らが世界に攻め込む周期がある。さて、その時の扉は確か……』
お師匠様はページを捲ります。
世界に攻め込む周期………扉………
『見つけたよ。その時の扉はマーレを南下した海沿いの崖だ』
「マーレを南下、ですね」
『慰霊碑が立っているから見つけやすいはずだよ』
「っありがとうございます!」
『あいよ』
ひとまずその100年前の戦いだと仮定しましょう。
墓も年季入ってはいますが、それより前だとさすがに見つけにくいです。
「リーフくん、とりあえず見当つけたよ」
「ホントっすか」
「お師匠様に最近の悪魔との戦いの場所聞けたから、そこに向かおう。マーレを南下した場所に、慰霊碑があるみたいだから」
墓守犬と視線を合わせます。
「では、見つけに行ってきます」
墓守犬は尾をひと振りしました。
よし、向かいましょう。
チャットにマーレ集合でお願いしますと打ち込んで、リーフくんを見上げます。
「マーレ行ったことある?」
「まだ行ってないっす…」
「じゃあ一緒に行こう」
がしりとリーフくんの腕を掴んで、懐中時計でマーレへと飛びました。
作者の癖がバレますな……( ˘ω˘)
作者はベタな展開も好きです( ˘ω˘)




