建国祭 1日目 ③
ご覧いただきありがとうございます!
皆様ご感想ありがとうございます。
色々反応とか気にしてしまいましたが、これからもミツキの特異性を上手く盛り込んで行けるように、物語を紡いでいければと思います。
皆様からのご感想で作者の創作力が回復しました!
ばりばり書きますー!
三人で王都を歩きます。
王様達を乗せた馬車は王城へと戻ったのか、人々が王都中へと散りはじめました。
イベントは争奪戦とかならないんですかね?
「…イベントが、プレイヤーに取って取られてにはならないですかね」
「さすがにそのシステムだと不平不満が爆発しそうですが、今回のイベント依頼を発生させるには住民に話しかけたり、ギルドで依頼を受ける必要があります。まあスタートダッシュは速い方が良いでしょうな」
「むしろ誰かが発生させて、熟せなかったら他の人がやれる、なんてものもあるかもしれないわよね」
「ハイドレンジア氏の言うように、誰かしらは達成出来るような依頼だと銅コイン、ちょっと難易度高くなると銀コイン、難易度バリ高なのは金コイン、とんでもねえのは白金コインとか言う謎依頼ですからね」
難易度バリ高………
そのような依頼は簡単には出て来ませんよね……
「あ、荷物持ちますよ?」
「あら、いいのかい」
「渡り人は力持ちですから!」
「お任せくだされ!どちらまで運びます?」
大きな箱を持ち上げた老齢な女性を見つけて、声を掛けます。
中々重そうです。
-イベント住民依頼 《配達依頼》が発生しました-
「あら、ありがとうね。家がすぐそこだから、そこまでお願いしてもいいかい」
「お任せ下さい!」
ミカゲさんが荷物を持ち上げたので、わたしは老齢の女性を支えます。
まあ配達依頼ですね、ある意味。
ジアちゃんは女性の荷物を抱え、示された家に近寄ると扉を開けました。
「ありがとうねぇ。助かったわ」
「いえいえ!」
「お礼よ」
銅コインを1枚取り出してわたしの手に乗せました。
わたしはぎゅっと握り締めて、女性に会釈してその場から離れました。
「住民依頼っていうより単純に人助けですな」
「わたしそういうの好きですね」
「ミツキは人当たりがいいから、ミツキに話し掛けられてもそんなに警戒されないわね」
「うーんブローチのおかげかな…」
銅コインは累計3枚になりました。わたしが持ってる分ですが。
「うええん」
「あら、どうかしたかしら?」
大きな木の近くで泣いている男の子に、ジアちゃんが声を掛けました。
男の子は、泣きながら木の上を指差します。
-イベント住民依頼 《風船》が発生しました-
おや、赤い風船が……これもアナウンスあるんですね。
ジアちゃんを見つめると、ジアちゃんは笑顔を浮かべて頷きました。
「お姉さんに任せなさい。【木蔓】」
ジアちゃんは手を地面へと翳すと、地面から一本の蔓が出て来ました。その蔓はスルスルと伸びると、器用に風船の紐を絡め取り、また地面へとスルスル戻ってきました。
「ほら、次は手を離しちゃ駄目よ?」
「ありがとうお姉さん!」
男の子は満面の笑みで、ジアちゃんに何か渡してしっかり風船の紐を握り締めて駆けていきました。
「今の【木魔法】?」
「ええ。【木蔓】という魔法よ。蔓を伸ばせるの。モンスターの足止めとか、有用よ」
「単純ですが汎用性高いですねぇ」
「ミツキのアレは、人目がある所だと使わない方がいいわ」
…確かにプレイヤーの気配はしますが、ジアちゃんの木魔法はバッチリ見られましたね?
「私はエルフだから良いのよ。エルフって【木魔法】使えそうでしょう?」
「ふふ、うん」
「ハイドレンジア氏中々わかってますな!」
ミカゲさんがぐっと親指立てました。
エルフってファンタジーですよね……
ふと通りの方へ目を向けると、泣いている女の子がいました。
何人かのプレイヤーが話しかけては、首を振って離れます。
女の子は、泣きながら歩き始めました。
「……どうしたのか」
「?……おや、女の子が」
「さっきからプレイヤーが話しかけては離れていってて」
「ふむ、話しかけたはいい物の恐らくそのプレイヤーにはどうも出来なかったんでしょうね」
「……行きましょうか」
「ええ。泣いている女の子を放っておけないわ」
何かを探すように地面をキョロキョロする女の子を追いかけます。
そして、少し離れた所から声を掛けます。
「…そこの何か探してる?女の子!」
「!」
「…どうかしたのかな?話を聞かせてくれる?」
屈んで女の子と視線を近くします。
女の子は迷うように目を逸らした後、小さく話し始めました。
「……ペンダント、失くしちゃったの」
「ペンダント?」
「ママから貰った、パパのペンダント……」
胸元に手を当ててぎゅっと握りしめる女の子の目に、再び涙が浮かんできました。
「どの辺りで失くしたとかわかる?」
「わかんない……建国祭が始まるまではあったけど、パレードみて人の間をすり抜けてたら、なくなってた」
「なるほど……」
(…なるほど、落し物捜索イベントですな。探す範囲が広すぎて、そこまで探し物に時間取れないって言って離れた感じですな)
背後からミカゲさんが小さく言います。
なるほど、どこで落としたかわかりませんし、捜索範囲も広いです。
ママから貰ったパパのペンダント……明らかに形見に近いものでしょう。
これは見つけてあげないとです。
……幸い、わたしには探すのが得意な星座がいます。
「なるほど、お姉さん達に任せて」
「……え、」
「わたし、探すの得意なの」
わたしは安心させるように女の子へと笑いかけました。
女の子は、涙に濡れた目をパチリと瞬いて、こちらに近寄ります。
「……ほんとに、ほんとに探してくれるの?」
「うん。君の協力も必要だけど、探すの手伝ってもいい?」
「……うん。お手伝い、お願いします」
-イベント住民依頼 《少女とペンダント》を開始します-
ひとまず女の子をベンチへと座らせます。
わたしは、ミカゲさんとジアちゃんを近くへと手招きします。
「わたしには方位磁石兼探知器のスーパーな相棒がいまして」
「方位磁石兼探知器」
「アイテムかしら??」
「…〈らしんばん座〉」
小さく唱えると、手のひらに羅針盤が出現しました。
スーパーな相棒です。
「方位の確認と失せ物探しが出来るのです」
「ほあー……何でもありですな」
「現実で欲しいわねそれ」
「わたしも欲しい……さて、名前を教えてくれる?」
「…セレナ」
「セレナちゃん、この羅針盤の上に手を乗せてくれる?」
泣いていた女の子……セレナちゃんは、素直に羅針盤の上に手を乗せます。
「…ペンダントを思い浮かべながら、魔力を少し流してくれる?」
「…うん」
セレナちゃんは目を閉じると、羅針盤に少しだけ魔力を流しました。
羅針盤は淡く光り、その針をぐるりと移動させます。
「わ」
「おお」
そしてある一定の方向でピタリと止まりました。
よし、では進みましょうか。
「セレナちゃん、一緒に探しに行こう」
「うん!」
わたし達はセレナちゃんと共に、羅針盤が示す方向へと進みました。
いや大通りから外れたら路地が多いですね。
結構入り組んでます。
針が指し示す方向は、細かく針が動くので結構わかりやすいのです。
そしてある路地に入った時、羅針盤が淡く光りました。
お、近くにありそうな雰囲気ですね!?
三人とセレナちゃんで羅針盤を覗き込みつつ、地面や植木鉢の近くなどをじっくり見つめます。
そしてある場所を通ろうとした時、人が出てきたので道の脇に避けます。
すると、針がぐるりと回りました。
「!」
「へいそこのおにーさん、ちょっと聞きたいんですが良いです?」
ミカゲさんがわたし達の隣を通り過ぎた男性に声を掛けました。
男性は、ポケットに両手を突っ込みながらその場に立ち止まって振り返りました。
「……なんだよ」
「ボクらちょっと探し物してるんですよ」
「おにーちゃん、ぎんのチェーンで黄色い石がついたペンダント、見てない?」
「……知らねえよ」
「ハイドレンジア氏」
「わかったわ」
目線を逸しながら右手に力を込めた男性はそのまま歩き去ろうとしましたが、ジアちゃんの【木蔓】が男性の脚に絡まりました。
「うお!?」
「嘘はだめですよぉ。嘘吐くならちゃんと自分も騙さないと、心臓がバックバクなのがバレちゃいますよ?」
「はァ!?何言ってんだ!?」
「ふっふっふー。今のボクはとある武器を装備しているおかげで心臓の位置と動きがわかるんですよぉ。まあ後は不自然に力を込めた右手と視線逸したのがわかりやすすぎですわ」
男性は舌打ちしながらミカゲさんを睨み付けます。
それをにんまり笑いながらミカゲさんが見下ろしました。
ジアちゃんの【木蔓】は男性を拘束します。
すごい便利ですねその魔法。
「まさか王様のお膝元で建国祭当日に窃盗事件が起こるとは……王様が知ったら怒り心頭ですね」
「そうですよなーこれは衛兵に突き出すしかありませんなー」
「ええ。建国祭の日に子供のペンダントを盗むなんて、許せないわよね」
「…う、うるせえ!拾ったんだよ!」
「そうですか。拾ってくださったんですね?」
こういう素直でない人と相対した時には、怒ったときの両親を真似してにっこり笑うといいと、兄が言ってました!
「拾ってくださったのなら、持ち主に返しましょうね?」
「ッ!?」
(【重力操作】)
ついでに少し圧もかけます。
男性に圧をかけていたら、ジアちゃんの操る木蔓が、するりとポケットから銀のチェーンのペンダントを持ち上げました。
黄色い石がきらりと光ります。
「!セレナのペンダント!」
「では返してもらいますね」
「チッ」
「わぁーこいつ全然懲りてないですわ」
ペンダントをセレナちゃんに渡して、男性から距離を取らせます。
さて、この男性どうしたものか……
「…温いな」
「!」
「俺が連れて行こう」
「ガッ!?」
上から飛び降りて男性を踏み付けた黒マントの人物が、こちらを見つめます。
黒いローブから特徴的な青髪が見えます。
「……リューイさん?」
「こういうのはもっと痛め付けた方が良い。今後二度とやらせないようにトラウマ刻んだ方が良い」
「え、リューイさん!?いつからここに!?」
「屋根の上を駆けてたら見かけた」
男性の頭を踏み付けながらリューイさんは淡々と話します。
……少しセレナちゃんには後ろ向いてて貰いましょう。
教育に悪いですね!?
「……何者」
「気配が全くしなかったわ」
「…お前の仲間か」
「はい!」
「いい反応だ」
リューイさんは男性の襟首を掴んで、引きずります。
あ、リューイさんにはこの耳飾りのお礼をちゃんと伝えなければ!
「リューイさん!この耳飾りの件ではありがとうございました!何かわたしに出来る事あったらご依頼下さいね!」
「……フ、その時は金紅を通して依頼しよう。じゃあな」
そして何事も無かったかのように男性を引きずりながら路地から消えました。
はぁ、びっくりしました。
「後で、お伝えしますね」
「ミツキ氏なんか凄そうなNPCの知り合い多いですな??」
「……とても強いわね」
「縁は多いですね……セレナちゃん、それが探してたペンダントで大丈夫?」
「うん!ありがとうお姉ちゃんたち!」
「家の近くまで送るよ」
「人が多いから一緒に行きましょ」
「わかった!セレナの家はあっち!」
まさかのリューイさんの登場によって男性はきっと裁かれます、かね?
今はセレナちゃんのペンダントが見つかってよかったです。
そしてしばらく路地を歩くと、一人の女性が家の前でキョロキョロしてました。
「あ!ママ!」
「セレナ!戻りが遅いから心配したわ!」
セレナちゃんは走り、母親の腕へと飛び込みました。
心配させてしまったようですね。
「あのね、セレナ、ペンダント失くしちゃって」
「!」
「でもあのお姉ちゃん達が一緒に探してくれたの!ちゃんと見つけたよ!」
ペンダントを握り締めて、わたし達をみてそう訴えたセレナちゃん。
その母親の目が、こちらへと向きます。
軽く頭を下げると、慌ててこちらへとセレナちゃんと一緒に駆け寄って来ました。
「ありがとうございます、皆さん!」
「いえ、見つかって良かったです」
「セレナちゃんも一緒に、頑張って探したんですよ」
「ええ。とても良い子にしてましたしね」
「本当にありがとうございます……大事な娘なんです」
セレナちゃんを抱きしめながらそういう母親の姿をみて、わたしは見つけられて良かったと、安心しました。
母親はポケットをごそごそとして、わたしの手に1枚のコインを握らせました。それは光を反射して、とてもキラキラと輝きます。
「本当にありがとうございます。これしか渡せるものがなくて」
「いえ、むしろ貰って良いのですか!?」
「はい。本当に、ありがとうございました」
「ありがと!お姉ちゃん達!」
ばいばーい!と大きく手を振るセレナちゃんと、ぺこりと頭を下げる母親に同じように頭を下げ、手を振って返しました。
わたしは片手に金色のコインを握りしめながら。
わたし達三人はその場から離れたのでした。
なんて便利すぎる羅針盤なんだ……作者も現実で欲しいです( ˘ω˘)
これからもこの作品をよろしくお願いします!




