天空竜へのおもてなし
ご覧いただきありがとうございます!
ブクマ登録もご評価も嬉しいです!
「……おもてなしです」
「そうですな……」
「肉ならある」
「ありがとうございますレンさん。使わせてもらいますね」
「ミツキと私とサクヤで沢山作っていくから、皆はお皿とか、場所のセッティングを続けて頂戴ね。ミツキもそれでいい?」
「うん、大丈夫」
「……料理は苦手だから、よろしくお願いするわ。お皿の準備とかは手伝えるはず」
「うっす。もてなすためにセッティングして来ます」
各々やる事を決めて、動き始めました。
さ、とりあえず焼いていきましょうか。
レンさんから送られてきた肉を受け取ります。
……見たことない肉ばかりです。
フロストワイバーンにファイアーボア、雷撃鳥……
………よし、焼きましょう!
わたしのアイテムボックスの7割は肉野菜果物調味料ですし!
食後のフルーツにはまだデイジーさんから貰った果物がありますし、野菜もたくさんありますから。
とりあえずたくさんの種類の肉料理を作りましょう。
それにお師匠様のキッチン、オーブンもあるのでいい感じに焼けます。
「……質より量かな」
「質も高めつつ量作りましょう」
「僕離れた場所で七輪使って炭火焼きするよ」
「ご飯炊くのにはんごうをセットしてくる」
「お母さんのも使って」
「ありがとう」
肉に米は必要です。
っと、サダルスウドを喚びます。
サダルスウドの水で炊いたご飯が美味しいのです。
「〈みずがめ座〉」
魔法陣から浮かび上がったサダルスウドは、見渡して料理の準備をしているのを見ると、頷いて水瓶を差し出しました。
「ありがとう。終わったら一緒に食べようね」
こくりと笑顔で頷いたサダルスウドを撫でて、水を貰ってサッとセットします。お父さんがトライポッド持ってて助かります。
「あ、ボクはんごう見てますよ」
「ありがとうございます!」
「たくさん炊きます?」
「お肉にはご飯があると嬉しいですよね?」
「……違いないですわ」
「父が飯盒マスターなので、飯盒のコツを聞いてみてください」
「わかりましたわ!」
ミカゲさんとわたしはお互いニヤリと笑います。
父キャンプが趣味なのもあって、飯盒の炊き加減が絶妙なのです。
ミカゲさんにお米を渡して、キッチンに戻ります。
「ミツキ、キャベツ千切りにしてくれる?」
「わかった」
お手軽調理セットから包丁を取り出し、キャベツを千切りにします。
母は……揚げ物作ってますね。
パン粉とかあったんですね……
「とんかつと唐揚げ作るわ」
「あっちでお父さんが炭火焼きステーキ作ってるもんね」
「それが終わったらハンバーグよろしくね」
「……合い挽き肉無いんだよね」
「じゃあ色々な野菜を巻いて焼いていきましょ」
そうしましょう!
コッコのササミを使ってサラダを用意しておきますかね。
母が手際よくファイアーボアを揚げていくのを横目に、鍋にマーレの塩を入れつつコッコのササミを茹でます。
沸騰させたら弱火で5分程度茹でて、火を止めて蓋して冷まします。
冷めるまで待ってる間にキャベツと人参を千切りにします。
ついでにマーレの塩をもみ込んでおきます。
大分冷めたササミを手でさいて、深めの皿に盛り付けます。
……マヨネーズとポン酢が美味しいんでしたっけ。
小鉢でマヨネーズとポン酢を混ぜて味見します。
「……うっま」
「なにかしら?」
「ポン酢マヨネーズ美味しい」
「ま、楽しみね」
さっとポン酢をサラダにかけて、マヨネーズを適当にかけます。
あぁ、これは美味しい予感です。
ポン酢でさっぱりしますが、マヨネーズって万能です。
次キャベツと豚バラ肉をマヨネーズと味噌で炒めましょう。
キャベツも万能です。わたしはキャベツも好きなのです。
キャベツは一口サイズにザクザク切って、アイテムボックスを眺めます。
豚バラ肉……豚バラ肉……ジャイアントピグのバラ肉があります。
豚バラ肉を薄く切り分けていきます。
フライパンに豚バラ肉とマヨネーズを混ぜながら炒めます。
火が通ったらキャベツを投入、マヨネーズ味噌も混ぜます。
さて味見を……んむ、丁度いいです!
量産量産っと。
天空竜さんの皿とは別に皆が摘める大皿を用意します。
冷めないようにアイテムボックスに入れておきます。
アイテムボックス便利です。
となりでさくりといい音が聞こえます。
揚げた豚肉……とんかつを母が切り分けてキャベツの千切りの上に乗せてました。
……ご飯と一緒に食べたいですね!
よし、次は野菜の肉巻き作ります。
人参、大根を短冊切りにして薄く切った豚バラ肉で巻きます。アスパラガスも巻いて、薄く伸ばした豚バラ肉にほうれん草をしいて巻きます。綺麗な渦巻きです!
あ、しその葉も巻こう。絶対美味しいです。チーズも!
ある程度の数巻いて作って、それを焼いていきます。
確か焼肉のタレもまだありました。ちょっと味付けしましょう。
……いい匂いです!
「いい匂いですわ……あ、ミツキ氏とりあえずはんごう2個は焼き上がったんで持ってきましたわ。サクヤ氏の言う通りにやればボクにも出来ました!」
「ありがとうございます!この大皿に乗せてアイテムボックスにしまいます」
「わかりましたー」
ミカゲさんはしゃもじで丁寧にご飯をお皿によそいました。
「ミカゲさんミカゲさん」
「!」
フォークで焼いたばかりの大根の肉巻きを一つ持ち上げます。
「あと3回くらい炊いてもらうかもなので、先に味見をどうぞ」
「!……わーいいただきます!あつ!はふ!んま!」
はんごうを持たない手で親指立てて、笑顔で火の元へ戻りました。
味は大丈夫そうですね!
「お母さんも食べる?」
「んーん、後で貰うわね」
母は真剣に油の様子を見てます。
……ここは母に任せましょうか。
わたしもお肉焼くのに戻ります。サダルスウドがお皿を持って近付いて来ました。
「……焼いたお肉を受け取ってくれるんだね?」
「!」
「ありがとう」
サダルスウドはよくお手伝いしてくれます。
これは好きな果物を切らないとです。
サダルスウドの手伝いもあって、次々とお肉を焼いていきました。
あ、マーレのサーモンフィッシュもムニエルにしちゃいましょう!キラーフィッシュの白身もありますし!紅白で見栄えも良いです!
……1時間程経ちました。
ひたすらにお肉焼きました。時折みんなでおにぎりを作って、焼いたお肉を巻いたりしました。
父はレンさんとリーフくんと七輪を囲いながら会話してました。
途中からジアちゃんとミカゲさんも含めて、教えながら料理してました。
手が増えると作れる量も増えますから!
そして太陽島の林檎とオレンジ、桃を切ってお皿に見栄え良く並べます。サダルスウドにはこっそりと切りながら分けました。
天空竜とお師匠様の方を見ると、ジアちゃん達が用意したスペースで寛いでいます。
大きな布が敷かれた所に身体を横たえてます。
その前には大きなテーブルがありました。
見覚えないので、お師匠様のですかね?
母と頷きあって、片付けも終わらせて料理終了です!
「お待たせしました」
『!待ってたぞ!』
「コイツがいい匂いがする、なんて言ってずっと待ってたのさ」
「良かった、たくさん作りましたので並べますね」
次々と料理をテーブルに乗せれば、その青い瞳をキラキラさせて料理を見つめます。
『…これ、本当に食べて良いのか!?』
「天空竜様にお作りしたものですからね。……でも大勢で食べるともっと美味しく感じます。ご相伴に与っても良いですか?」
『?ご相伴?』
「一緒に食べていいかって事だよ」
お師匠様がそう言うと、その瞳はわたし達をぐるりと見つめます。
『……いいぞ!』
「わ、ありがとうございます!」
わたし達の分もテーブルの手前に並べます。
お師匠様の近くにもワンプレートで置いておきました。
「ありがとうね」
「いえいえ」
皆思い思いの場所に座ります。
さて、気に入ってくれるといいのですが……
『……この姿だと食べにくいな』
目の前の天空竜の身体が徐々に小さくなり、最終的に光に包まれて人の形になりました。
明るい水色の髪が眩しいです。でも耳は尖ってますし、肌には所々鱗のような模様がみえます。
「……お前さんその姿で食べられるのかい」
『マナーは大地の姉さんに仕込まれてるから問題ないぜ』
「そうかい」
「天空竜様、ご飯置いておきますね」
『?』
「あ、お米です。お肉に合いますよ」
『…これが米か!日輪の奴等が好んで食べてるやつだな!』
見た目は大人ですが、中身は子供のように好奇心旺盛のようです。
しかし綺麗にフォークを使って、ステーキを1切れ口へ運びました。
『!』
綺麗なサファイアのような瞳を大きく開き、口を動かします。
そして思い出したようにご飯を一口運びます。
『!!』
白い頬に赤みがさし、わたしの顔とお肉を視線が行ったり来たりします。
『美味い!』
きちんと咀嚼が終わってからこちらへと満面の笑みを浮かべた天空竜に、つられて笑顔になりました。
わたし達もそれぞれ料理に手を伸ばしました。
んむ、炭火焼きステーキ香ばしい!
「美味しい……」
「お肉最高……」
「美味いっす……」
一気に語彙力が無くなったわたし達を、お師匠様が苦笑して見ていました。
「お、天空竜様この野菜の肉巻きも美味しいですぞー」
「この肉巻きおにぎりも美味しいっすよ」
『そうなのか!……美味しいなこれ!』
「タレが本当にお肉と合いますなー!」
『たれ……この肉にかかってる液体だな?』
「そうですぞ!」
『とても美味しい』
ミカゲさんとリーフくんが天空竜に料理をすすめています。
隙間で自己紹介はしました。
「…仲良くなりましたね」
「あの天空竜様、フレンドリーね」
「お師匠様、天空竜様って絶対強い存在ですよね?」
「天空竜は天空を支配するドラゴンの長だからね。滅多にその姿を人間に見せることは無いよ」
「天空を支配する……」
「さすがのワタシもマトモにやりあったら無傷じゃいられないね」
……負けるとは言わないのですね。
お師匠様何処までお強いのか。
『ミツキ!このサラダもさっぱりして美味しいぞ!地上で食べたやつより美味しい!』
「ありがとうございます。天空竜様は地上に降りられる事もあるんですね?」
『あるぞ。人の姿も、地上の様子を見るためのものだからな』
「地上の様子を…」
『まあ極まれにだけどな。でも今回の供物は気に入った!』
供物……まあ供物でいいんですね。
天空竜はニッコニコです。
お師匠様をちらりと見ると、ニヤリと笑って頷きました。
良かった、気に入ってもらえたようです。
『……今回の攻撃の事は忘れてやる。次は気を付けろよエトワール』
「次はバレないようにやるさ」
『エトワール??』
「お師匠様??」
いつぞやかのドラゴンみたいに、敵が視認できるところでやりましょう??荒野とか。
『……人と話すのは久しぶりで楽しかったぞ』
「わたし達も、お会い出来て嬉しかったです」
『まあ空から見守っててやるよ、お前達の事。なんだかいろんな奴らから気に入られているようだし』
少年のようににかっと笑う天空竜。
わたし達から離れたところで、元のドラゴンの姿に戻りました。
夕日を反射する鱗が美しいですね。
『……あー、まあ、うん』
「まだるっこしいね。言いたいことがあるならさっさと言いな」
『……私欲のない純粋なエネルギーを浴びたし、心のこもった供物に感謝を。これは礼だ』
-称号 天空竜の祝福 を手に入れました-
『じゃあな』
わたし達が響いたアナウンスに目を見開くと、いたずらが成功したかのように牙を見せて笑い、勢い良く羽ばたいていきました。
-特殊イベント 《天空竜へのおもてなし》をクリアしました-
クリア報酬は称号となります。
「……まあ悪いやつじゃない」
「…おもてなしは気に入ってくれたみたいですね」
「祝福まで与えたんだ。お前達の名前も覚えて帰ったろうよ」
お師匠様は指を鳴らしてキッチンをしまいました。
「キッチンありがとうございましたお師匠様」
「いや、こちらこそ美味い料理をありがとう。美味しかったよ」
おお、お褒めの言葉をいただきました。
良かったです。
「じゃあワタシは戻るよ。武闘祭では【天体魔法】は許可するが、無闇矢鱈には使わない事」
「はい、わかりました」
「結構。王様も見るだろうから、ぶちかましてきな」
そう言ってお師匠様は森を歩いていきました。
そろそろいい時間ですし、一回ログアウトしましょう。
「皆、お疲れ様でした。一回ログアウトしてから、状況整理しましょう」
「そうですな」
「驚きを通り越して無になったわよ」
「お父さんとお母さんの話も聞きたいしね」
「あら?」
「そうだね、話すって言ったからね」
そうです。
両親のジョブとか、HPの共有とか気になります。
「ログアウトして色々済ませたらプレアデス集合にします??」
ミカゲさんの提案に、皆頷きました。
わたし達は、一旦プレアデスに戻ってそれぞれログアウトしました。
そしてご飯やお風呂を済ませて、再びログインしました。
とりあえず世界樹の根本に向かいます。
落ち着くんですよね、この場所。安全と言うのもあると思います。
そして続々と皆が集まりました。
両親もログインしてきたので、ミカゲさんが天空竜に使った布を地面に広げました。
そこに皆で腰掛けます。お花見の気分です。
厳密には世界樹見……?
「ソラ氏とサクヤ氏の事はすっごい気になってました」
「レンさんも?」
「…何も情報が無いからな」
「是非、お聞かせ願いたいわ」
「二人が良ければ聞きたいっす」
わたし達は両親を見つめると、両親はお互い見つめ合った後、父が口を開きました。
おもてなし(ㅅ´ ˘ `)
次回はサクヤ&ソラ視点でお送り致します!
これからもこの作品をよろしくお願いします!




