お師匠様の渡したいもの
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ミツキの物語をお楽しみください!
「いやぁ良い装備ですわ……」
「よかったです!」
「ありがとうございますミツキ氏。良い縁に恵まれましたわ」
ミカゲさんがくるりと周り白衣の裾を翻します。
とても気に入ったようです。
レンさんも頷きました。
これからも縁を大切にしましょう。
「この後は、わたしのお師匠様に会いに行こうと思います。皆を連れて来るようにって言われてて……」
「……ミツキ氏のお師匠様か」
「あら、何かしてしまったかしら…」
「いや、何か渡したい物があるんだって。…来てくれます?」
皆で首を傾げます。
わたしだけならともかく皆ですからね……
来てくれるか聞くと皆頷いてくれました。良かったです。
レンさんとミカゲさんはお師匠様の島に行ったことありますし、それぞれ連れて行って貰いましょう。
両親はわたしのポンチョを掴み、リーフくんはレンさんが、ジアちゃんはミカゲさんの白衣の裾を掴みました。
「…ミツキの師匠さんも空の島なのね……」
「わたし達の島より大きくて広いと思うよ」
「とんでもないわね……」
ジアちゃんがぽつりと呟きました。
お師匠様はとんでもないのです。
そして皆で森を進み、お師匠様の家に到着です。
「あら、素敵なお庭だわ」
「スピカさんがとても力を入れて育ててるんだって」
「まあ、そうなのね」
母がキラキラした目で庭を眺めます。
母もこういう庭好きですもんね。
「おかえり」
「シリウスさん、戻りました」
「賑やかなのはいいな」
扉近くで寝そべっていたシリウスさんがこちらを見ました。
ジアちゃん達が驚いて距離を取りました。
「しゃ、しゃべ……?」
「おう。話せるぜ」
「わたしはまだ熟練度が足らなくてねぇ」
「もうちょいってとこだろ」
「頑張ります!」
もうちょい……大分先が見えてきましたね!
毎日喚んでますし、熟練度Maxも近いです!
「……来たね」
「お師匠様」
扉が開いてお師匠様が出てきました。
そしてわたし達を見ると笑って頷きました。
「連れてきたようだね。感心感心」
「お手紙、驚きました」
「あのような連絡手段もあるのさ。さ、紹介しておくれ」
「はい」
両親とジアちゃんとリーフくんを手招きします。
ジアちゃんとリーフくんは少し緊張してるみたいです。
「わたしの両親です」
「ソラと申します。ミツキが大変お世話になっております」
「サクヤと申します。ミツキの事、ありがとうございます」
二人は揃って頭を下げました。
「こちらが友で仲間の、ハイドレンジアとリーフくんです」
「ハイドレンジアと申します」
「リーフ、と申します」
「なるほど、覚えたよ。ワタシはこの子の師匠のエトワールさ」
「あともう一人兄のリューがいますが、当分こちらの世界には来られなくてですね……」
「なるほどね。まあ後で渡すんだね」
お師匠様は黒い穴から大きな箱を取り出しました。
トランクケースのような箱を開けると、そこには……
「わぁ……!」
リングやネックレス、バングルなどの様々なアクセサリーが入っていました。
シンプルなシルバーアクセサリーですが、とても美しいです。
この無骨さが良いですよね、シルバーアクセサリー。
「お師匠様、これは……」
「師匠から弟子とその仲間への贈り物さ。建国祭で武闘祭に出るんだろう?」
「ど、どうしてそれを」
「星詠みで見たからね。……まあ師匠から弟子に渡すものは良い物で無くてはね」
……あ、気付きました。
気付いちゃいました。
わたしは普段見慣れているからわかります。
このシルバーアクセサリー、宝石が埋め込まれてます。
とても、綺麗な、青紫の宝石……
「……お師匠様この宝石まさか」
「そのまさかさ。これは付与したいパッシブスキルと相性が良くてね」
「こんな量あるんですか!?」
「一つの原石を削ればこの人数は余裕だね」
「タンザナイトの原石を!?」
お師匠様からのブローチとアストラル・ワンドに使われているので見慣れてますけど!
こんなにタンザナイトをあしらったアクセサリー初めて見ました!
「仲間なら同じものを身に着けるものだと聞いたんだが、違うのかい?」
「そ、それは中々興味惹かれますが、どなたからお聞きしたのですか?」
「シュタール王から」
「王様から!?」
おおおおお王様!?
お師匠様に何言ったんでしょうか!?
「性能は保証するよ。ワタシの力作さ」
わたしは恐る恐る一つのリングを手に取ります。
皆がわたしとお師匠様のやり取りを無言で見守っている気配を感じます。
プレアデス・リング
エトワールによって作られたアクセサリー。
【MP消費半減】【MP+30%】【魔法速度上昇(中)】
「用途によってパッシブスキルを分けているから、近接職はバングルかネックレスが良いね」
「ととととんでもないアクセサリーです!?」
「お前たちはプレアデスと言う島を所有し、《ステラアーク》という仲間なんだろう?青い星が集ってプレアデスになる、中々乙じゃないか」
お師匠様の言葉に息を呑みました。
これを付けた皆が集まって、プレアデス……
それはとても魅力的です。
なんだかお揃いのものを身に着ける、というのも特別感あってわくわくします。
わたしは皆を振り返ります。
も、もしかしたら揃いのもの付けるのは羞恥心が……とかあったらどうしましょう!?
「…み、皆でお揃いのものつけませんか」
小さい声になってしまいました。
そんなわたしを見た皆は、しょうがないやつとでも言うような表情で笑いました。
「……お前が言うなら付ける。正直、アクセサリーを付けるのは苦手だが、付けて欲しいンだろ」
「レンさん…」
「ボクはそういうの好きですからバリバリつけますぞー?」
「ミカゲさん…」
「特別感あって良いわね。一目でクラメンってのも分かるしいいと思うわ」
「うっす。抵抗ないっす」
「ジアちゃん、リーフくん…」
「まさかタンザナイトを身に着ける日が来るなんて、お母さん驚きよ。エトワール様、感謝いたします」
「エトワール様、お心遣いありがとうございます」
お師匠様はニヤリと笑います。
わたしは恐る恐る他のも手に取って、振り返ります。
「……レンさんはバングルでしょうか」
「腕の動きの邪魔にならないからな」
「ミカゲさんは……」
「ボクはアンクレットとして使えそうなブレスレットいただきますわ!」
「わたしは指輪をいただくとして、ジアちゃんとリーフくんは…」
「そうね、この中ならペンダントをいただくわ」
「俺はこのドッグタグをいただくっす」
「なら私はチョーカーをいただくわね」
「僕もチョーカーにしようか」
皆それぞれアクセサリーを選びました。
お師匠様の宝石彫刻師としての力はとんでもないです。
タンザナイトの原石も、一体どこで見つけるのでしょう。
早速右手の人差し指に装着します。
指輪はつける場所にも意味があったと思いますが、今は思い出せません。
ひとまず人差し指か中指がいいかと思いました。
皆の身体のあらゆる場所でタンザナイトが煌めいています。
とても美しいですね。
「ありがとうございます、お師匠様」
「ありがとうございます」
わたしの言葉の後に、皆が口を揃えて言いました。
お師匠様は、優しく微笑み返しました。
「あの、お師匠様」
「なんだい」
「アストラルハイウィザードのレベルが25になりました」
「ふむ。成長が早くて嬉しいよ」
頭をぽんぽんと撫でられました。
わたしは撫でられた場所に触ります。
「……武闘祭に出るに当たって、防御に特化したもの、もしくは広めに攻撃出来る魔法はありますか」
わたしはお師匠様を見つめます。
レンさんが近くに立って同じようにお師匠様を見つめました。
お師匠様は考える素振りをみせます。
「…【星魔法】は使えないと思ってます、【神秘】も。【天体魔法】はその威力と希少性で、段階を踏んで会得していくものであるとも理解はしています。ですが、わたしからアストラルウィザードを取ればただのウィザードです。他に取り柄もありません」
わたしからアストラルウィザードを取れば、普通のウィザードと代わり映えありません。
わたしの特異性は、アストラルウィザードである事だからです。
まだまだ使いこなしてなどいませんが、クランマスターとしても、皆をわたしの物語に巻き込んでいる身としても、人前に立つことから逃げては、いけないと思いました。
「わたしは皆の役に…いえ、皆と共に最後までフィールドにいたいです。その為に、わたしに生き残る力を教えてください」
がばりと頭を下げます。
……少し時間があいて、お師匠様がため息をつきました。
「……頑固な弟子だね」
「が、頑固ですか?」
「お前さんがアストラルウィザードだから一緒にいる訳じゃないだろうに。だがまぁそうだねぇ」
お師匠様は視線を逸らして顎に手を当てます。
「…弟子が無様に負けるのは師匠としての沽券に関わるからね。いいだろう、いくつか授けてやる」
ついてきな、と言って歩き出したお師匠様の後を追いかけます。
「…俺達は」
「?はい」
わたしの隣、人を一人分開けたところを歩くレンさんがぽつりと呟きました。
「…お前だから一緒にやってンの、忘れんなよ」
「?はい!」
「本当にわかってンのかよ」
「いやわかってないですわこの感じ」
反対側からミカゲさんが声をかけてきました。
むむむ、何となく理解してます。
何だかんだ皆さん優しいですからね。
付き合っていただいて感謝です。
「「はぁ…」」
両隣からため息が聞こえてきました。
むむむ…
わたしは小さく唸りながら、お師匠様の後をついていきました。
みんな!タンザナイトは持ったな!?
これからもこの作品をよろしくお願いします!




