イル・マーレ神殿
ご覧いただきありがとうございます!
砂浜を歩きます。
ラクリマは海に興味津々ですね。
「神殿での用事が終わったら、海に触ってみる?」
『うン!』
ラクリマは嬉しそうに頷きました。
ラクリマにとって初めての海ですもんね。
光を反射してキラキラと輝く海を、同じようにキラキラした瞳で見つめています。
わたしも目を向けると、沖の方では何かが海面へと飛び上がっている様子も見えますし、船で作業しているのも見えます。
ふむ、漁が盛んなんですかね?
海の幸が豊富でしたし、腕の良い漁師さんがいるのかもしれませんね。
ソル・ネーソスとはまた違った海の様子で飽きませんね!
さっきから海の幸の事しか考えてませんがね…
海を眺めながら歩いていると、神殿へ辿り着きました。
近くで見ると大きいです。
よくテレビでみるような神殿ですね。
た、確かこういう時はお参りをして献金する方がいいんでしたっけ!?
神殿なのでお参りという言い方は違うかもですが!
お祈り、お祈りですかね……!
「失礼、冒険者の方とお見受けいたします」
「はひ!」
神殿の前の階段を登り終えると、騎士に声をかけられました。
「申し訳ございませんが、召喚獣の立ち入りはご遠慮頂いております。こちらで還していただけると助かります」
「……わかりました。……ラクリマ、また後でね」
小さくそう伝えると、ラクリマは少ししょぼんとしましたが頷きました。
光に包まれてクリスタルになったのを確認し、アイテムボックスへしまいます。
「ご配慮、ありがとうございます。本日はどのようなご用件で」
「えっと、お祈りと、神官の方と約束をしていまして」
「その神官の名前を伺ってもよろしいですか」
「確か、シアン様という名でした」
「……お名前をお伺いしても?」
「ミツキと申します。ルクレシアギルドのリルファさんとやり取りをされていると……」
「……少々お待ちください」
もう一人の騎士と会話をして、神殿の中へと入っていきました。
思わずレンさんと顔を見合わせます。
レンさんが小さく溜息をつきました。
「…なァミツキ」
「はい…」
「普段から引きがいいとか運がいいとかあるか」
「………無い、ですね」
「………そうか」
「べべべ別にイベントとかじゃないと思いますよ??神殿か祭壇を建てるためにお話聞くためのアポイントメントでしたからね!?」
「……それにしては、神官の名を聞いた騎士が顔色変えていたけどな」
「……それに関してはわたしもわかりません」
リルファさんの知り合いの神官とは一体どんな方なのでしょうか……!
そんな事をレンさんと話しながら待っていると、騎士が戻ってきました。
一人女性を連れています。
「ご案内させていただきます。神官のリエラと申します」
「ミツキと申します。こちらはわたしの仲間のレンさんです。一緒に行っても良いですか?」
「はい、ご案内いたします」
神官のリエラさんが案内して下さるそうなので、有難く後をついていきます。
おお、何やら神殿の中はひんやりしています。
というか、下り階段です。幅が広くて降りやすいですが、登ってきたよりも下る方が長めなのですが!
「イル・マーレ神殿は海神マレ様をお祀りしております。故に、この神殿は海底へと建築されているのです」
「海底、ですか」
「初めて来た方はとても驚かれますよ」
海神マレ……きっとソル様と同じような、海を司るお方なのでしょう。
マレ様と勝手に呼ばせていただきます。
階段を降りきると、目の前の景色に圧倒されました。
「わぁ…!」
海の中の通路です!海の中に石でできた回廊があるといいますか!
どうなってるんでしょう!普通にガラスだと驚きますけどね!
「これ、どうなっているんですか!?」
「海神マレ様の加護により、この神殿は水没する事がありません。まるで膜に包まれるかのように、結界が張ってあります」
「結界…」
「窓から手を出せば、海に触れる事が出来るのですよ」
「えっ」
「海神マレ様の領域ですので、その手がどうなるかは知りませんが」
リエラさんは苦笑しました。
…これはやる人がいるんですね。
わたしはやりませんが!
そしてリエラさんの後について歩くと、開けた空間に出ました。
椅子がたくさん並んでいるのは、礼拝堂としてわかります。
……よく絵画や像などが置かれている壁の前にある聖卓の背後が、全面ガラス張りの如く海中なのを除いて、ですが。
周りも所々青い意匠が施されていて神秘的ですね。
絨毯もリボンも青くて、海と同化しそうです。
「私達マーレの住民にとって、海は海神マレ様です。故に、イル・マーレは海を祀っております」
…とても美しいです。
わたしの語彙力では、水族館の大水槽のようなイメージ、としか言えませんが、背後に美しい海が広がっています。
…言葉が出ませんね。
思わず見とれてしまいます。
色とりどりの魚や珊瑚礁、太陽の光が差し込んでキラキラと輝いています。
無意識にスクショを取りました。
「海神マレ様は海の化身……海の生命を育んでおります。我らマーレが生活出来るのは海神マレ様のおかげなのです。……こちらまでどうぞ」
リエラさんに促されて聖卓近くまで来ました。
ここまで近寄れるのに驚きつつ、ソル様の時と同じように跪きます。
隣でレンさんも片膝ついたのが見えました。
(マレ様初めまして。渡り人のミツキと申します。今後海での活動がありますので、その時溺れたら申し訳ございません……!)
……ひとまず謝りました。わたし、泳げませんので!
海の中での戦闘とかあったら溺れます。
海中活動に関するスキルとかありますかね?
呼吸とか泳ぎとか、心配です。
顔を上げると、ウィンドウが出てきました。
あっ献金ですね。
相場がわかりませんが10,000リル献金しました。
「では、シアン大神官の元へご案内させて頂きます」
「え、…うわ!?」
「ミツキ!」
立ち上がってリエラさんの方向へ振り向くと、リエラさんはそう言いました。
その言葉に驚いて足を止めた瞬間、視界が何故か水に包まれました。
-レン視点-
「ミツキ!」
目の前で何故か水に包まれ、聖卓の背後にある海中へと引きずり込まれたミツキ。
作法なんぞ知ったことかと、俺はその海へと近づいた。
「ミツキ様!?」
「おい、どうなってる」
「わ、わかりません!こんなの初めてです!人を呼びます!」
女の神官は慌てた様子で通路を駆けていく。
舌打ちしてその壁に触れるが、波紋が広がるだけで身体を通しはしなかった。
(……ミツキの事だから死なねェとは思うが……誘われたか)
宇宙と太陽に目をかけられている少女だ。
何かあれば黙っていないとは思うが、一体どこまで連れて行かれたのだろうか。
「何の騒ぎでしょうか」
「シアン大神官!」
試しに攻撃してみるかと拳を握った時、良く通る声が響いた。
声の主の方向へと振り向いた時、
『ふむ、お前も仲間だったか。ならば連れて行くとしよう』
「は、」
知らない男の声が響いたと共に、自分の視界も水に包まれたのだった。
天の声:何も起こらない訳無いじゃろ( ◜ω◝ )
これからもこの作品をよろしくお願いします!




