ギルドでの出来事と港町マーレ
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これからもミツキの物語をお楽しみ下さい!
「闘技場、手伝いますか?」
ギルドへの道を歩きながらレンさんにそう言うと、レンさんはキョトンとしました。
「…目立つの嫌いなお前からそんな言葉が出るとはな」
「た、確かに苦手ですが足止めくらいは出来ると思います!【重力操作】もありますし…お、囮とか出来ます!強くなったレンさんも気になるので、素材欲しいですし!」
【宇宙線】もありますしね…
お師匠様から許可出たらかもですが…
「…まあ、そン時は声掛ける」
「レベル上げておきますので!」
「おう」
プレイヤーとの対人戦はほぼ無いですからね。
少しだけ興味あります。
いや近寄られたら危ないんですけどね……
やはり短剣だけでも鍛えておかないとです。
「ではササッと聞いてまいりますので、ラクリマをお願い出来ますか?」
レンさんは無言で片腕を上げてくれたので、そっとラクリマを乗せます。
わたしより安定感抜群ですね!
……全身黒ずくめのレンさんが片腕に虫型の召喚獣を乗せているのはちょっと不思議ですね。
ギルドへ入ると、珍しく落ち着いていました。
これ幸いと受付にいるサイファさんに声を掛けます。
「サイファさん、おはようございます」
「ミツキ様、おはようございます」
「本日リルファさんはいますか?」
「リルファは本日お休みを頂いておりまして……代わりに伝言を預かっています」
「伝言ですか?」
「港町マーレにあるイル・マーレ神殿で、シアンという神官を訪ねて欲しいとのことです」
「イル・マーレ神殿……」
「話は通してありますので、訪ねれば取り次いで貰えるはずです」
「ありがとうございます、向かってみます!」
サイファさんにお礼を告げて、ギルドの外へ出ると何か騒がしいです。
何でしょう?人が集まっています。
って………
「ねえ、暇なら手伝ってよ!」
「僕ら強い人がいると助かるんだよ!」
「……」
「ねえ、聞いてるの!?」
れ、れれれレンさん!
レンさんが年下っぽいパーティーに囲まれてます!
それをプレイヤー達が遠巻きに見てますね……
というか人が多すぎてレンさんの元にも行けませんが…
ひとまず近くにいたプレイヤーに、どんな状況なのか聞きましょうか。
「な、何の騒ぎでしょうか」
「あぁ、何か助っ人探してるって言うパーティーだったんだけど、レベル差もあって誰も見つからなかったみたいでね。それでギルドの外にソロっぽい強そうなプレイヤーを見つけたから話しかけたみたいだけど、あのお兄さん全部ガン無視でね…それでヒートアップしてるみたい」
「そ、そうですか……」
確認すると、レベル10前後のパーティーです。
なるほど、絶賛冒険中の若いパーティーみたいですね。
…ユアストは何歳からでもやれますが、あの子達は中学生くらいでしょうかね……?
というか本当にレンさん話し掛けられても我関せず目を瞑ってます。
たまにラクリマを撫でてますね。
「……五月蝿い」
「なっ」
「このレベル差を手伝う程暇じゃない」
「っ!」
人垣の後ろで飛び跳ねていると、レンさんと目が合いました。
レンさんは溜息をついてこちらに歩いてきます。
おお、モーゼみたいに人が避けました。
「用事は終わったンか」
「はい。マーレに行きたいのですが、まだ行ったことが無いんですよね……ラクリマありがとうございました」
「マーレか」
レンさんからラクリマを受け取り、マップを開いて確認すると王都ミゼリアからマルムまでと同じくらい距離があります。
んんん、モノセロスに乗って走ればお昼前には着きますかね………?
でもそこまでレンさんを拘束する訳にも行きませんし。
「ちょっと、無視するなんてヒドいじゃん!」
「あ、おねーさん!おねーさんは手伝ってくれるでしょ?」
うおう押しが強い子供たちですね。
この断られるとは微塵も思っていない真っ直ぐさは、若いですねぇ……
「わたしは行くところがあるからごめんね」
「…チッんだよー」
「優しくなーい」
そう言うと、子供たちは周りにいたプレイヤーに突撃しに行きました。
今の子ってすごい押しが強いですね……
「…チッ」
「お待たせしてすみません…」
「いい。…行ったこと無いンなら飛ぶが」
「よろしいのですか!」
レンさんがウィンドウを操作したので、服の裾を軽く掴ませて貰います。
そして片腕でラクリマを抱きしめます。
慣れた浮遊感を感じて、わたしは目を閉じました。
「なあ魔女ちゃん実はサモナーだったのかな」
「いや多分契約召喚だと思う」
「いいなぁ…服の裾掴まれるシチュ」
「お前の服の裾なんて誰も掴まねえしな」
「番犬くん、『ガキが近付くんじゃねえよ』とか言うかと思った」
「ガン無視だったな……」
「あの子供たちにはゲームのマナーをそっと教えてあげないとな……姐さんが」
「私!?」
「俺達が行ったら通報待ったなしっす」
「今日は魔女ちゃん見られたからいい日だな」
「魔女ちゃんがいつの間にか絶滅危惧種みたいな扱いになってんな」
「いつの日かバチバチなバトルが見てえな」
「イベントに期待」
「そやな」
「魔女ちゃんを見守るスレで自慢してこよ」
「せやな」
こっそりとミツキの様子を窺うプレイヤー達の活動は、本日も行われているのであった。
果たしてそのスレッドが、ミツキの目に留まる時はくるのか……
頬を撫でる潮の香りに目を開けると、街の先に太陽光をキラキラと反射する青い海が見えました。
「海!」
『?』
「ラクリマ、後で一緒に行こうね!」
すごい、海沿いの街です!
船がたくさん停泊してて、港町の雰囲気が伝わります!
「…んで、どこ行くンだ」
「は!レンさんありがとうございます!イル・マーレ神殿、と言うところに向かいます」
「知らねェな…聞くか」
「歩きながら聞いてみますね」
ラクリマを抱いたまま、入り口へ近寄ります。
港町マーレは、出入りの門は無いのでギルドカードの提示は必要無さそうです。
モンスターとか近付いて来ないんですかね?
通りには、魚や貝類などの海鮮がたくさん並んでます!
とても美味しそうです!焼魚も良さそうですし、海鮮丼にしてもいいですね!
は、港町なら魚醤とか塩とかありそうです。
後で一人で来たときに散策しましょう。
あ、あのベンチで休まれてるご婦人に聞いてみましょう。
「あの、すみません。イル・マーレ神殿とはどちらにありますか?」
「おや、旅の方かしら?イル・マーレ神殿はこの先を右に曲がって、砂浜を進むと建っているよ」
「ありがとうございます!」
「いえいえ。あなたにマレの祝福あらんことを」
お礼を告げて、離れた所で待っていたレンさんの所へ戻ります。
「……この先の道を右に曲がって、砂浜を進むとあるみたいです…?」
「なんで疑問形」
「いえ砂浜を進むと神殿って聞くとすごいなと思いまして……」
響き的には海に関係する神殿のようですし、海の近くに建っているんですかね??
「ラクリマ、大丈夫?」
『大丈夫!』
小さい声でラクリマに話し掛けると、小さな声で返ってきました。
ラクリマは素直で可愛いですね……ラクリマを撫でて道を進みます。
道を右に曲がると、街の終わりに砂浜が見えます。
そしてその先に、岩を削り建てられた石造りの建物が見えました。
「…あそこですね」
「分かりやすいな」
「レンさんも行きます?」
「ここまで来たら見届ける」
「ふふ、分かりました」
ここまでお付き合いいただいてますし、お礼は何がいいですかね。
港町で食事でも良いかもしれません。
う、海の幸が気になるとかじゃないですからね!
ラクリマが食べられる何かがあるかもしれませんし!
道中お店を眺めながら、レンさんとラクリマと街の中を進みました。
ミツキ:((꜆꜄ ˙꒳˙)꜆꜄꜆シュッシュッ
これからもこの作品をよろしくお願いします!




