日常 その9 ②
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『むンッ』
ラクリマは身体を反らしてミノタウロスへ糸を吐き出します。
ミノタウロスは斧を振って糸を切ろうとしますが、斧を持つ右腕にシリウスが噛み付いたのでラクリマの糸はミノタウロスの左腕へと巻き付きました。
そして視認出来るほど、ミノタウロスの魔力がラクリマへと流れていきます。
その間もラクリマから風、光、闇の球体がミノタウロスへ向けてまるで弾幕のように飛んでいきます。
慣れてますねラクリマ…
回復しながら魔法で魔力を消費しているような感じですね。
……負けてられません。
「ファイアーボム!ウォーターボム!【流星】!」
あ、短時間で倒したいので【神秘】も使いましょうか。
「【1:魔術師】」
わたしの魔攻をメキメキ伸ばしてもらいましょう!
手のひらの上で魔術師の描かれたカードが浮かんで消えました。
ハイMPポーションを呷って杖を掲げます。
「【宇宙線】!」
「ッ!ブモオオオオオッ!?」
ミノタウロスを見ると、混乱のデバフが付与されたようです。
ラクリマの糸を腕力で引き千切り、左腕で顔を抑えて斧をがむしゃらに振り下ろします。
「っと!」
大振りなので避けるのは可能です。
振り下ろして地面を打ち付けた斧による土塊は飛んできますが、ダメージになるほどではありません。
ラクリマも左右に転がって避けています。
というか【宇宙線】が強すぎます。
MP7割持っていくだけありますね!
振り下ろしを避けながらシリウスは噛みつきヒットアンドアウェイしてます。
ペルセウスさんは空を飛びながらミノタウロスの目や首などの急所を狙っていますね。
「ゴアアアッ」
『!』
「ファイアーウォール!ウォーターボム!」
ミノタウロスは口元から風の塊をラクリマへ向かって飛ばしました。
わたしはラクリマの前に炎の壁を出現させて、ミノタウロスの顔に向けてウォーターボムを食らわせます。
「【流星】!」
『くらエッ!』
ミノタウロスが振りかぶった斧はペルセウスさんが両手で握った剣で弾きました。
頭へと流星が直撃し、ラクリマが重力操作で強化した糸でミノタウロスの片脚を引っ張りました。
バランスを崩したミノタウロスは勢い良く地面へと倒れました。
「グッ!?」
「んくっ【宇宙線】!」
(その首貰ったァ!)
『どりゃリゃりャ!』
(視ろ、アルゴル!)
好機!とばかりに思い思いの技を倒れ伏したミノタウロスへと放ちます。
わたしはハイMPポーションを再度呷ります。
至近距離でアルゴルと目を合わせたミノタウロスはその動きを止めました。
そしていつの間にか握っていたハルペーで斧を持つ右腕を斬り飛ばしました。
ラクリマは今使える魔法を次々とミノタウロスへと放ち、シリウスはその喉元へ、青い炎を散らしながら噛みつきました。
残りのHPが2割になったので、流星で飛ばそうと口を開いた時、瞬間的にミノタウロスの魔力が跳ね上がりました。
(離れろッ!)
シリウスの言葉にわたしはすぐ後ろへと飛び下がり、ペルセウスさんがラクリマを抱えて飛びました。
-特殊フィールド 《ミノタウロスの迷宮》が展開します-
「は、」
(ミツキッ!)
そのアナウンスを聞いた瞬間に、シリウスの声と共に身体へ衝撃が走り、視界が黒で塗りつぶされました。
(……い、ミツキ)
「……!」
目を開けると、石造りの通路に立っていました。
すぐ近くでシリウスがこちらを見上げます。
「……ここは」
(ミノタウロスの迷宮だな。アイツ【迷宮化】ってアーツ持ってたし)
「…わたしには見えなかったな」
ミノタウロスのステータスを見た時に???がありましたが、迷宮化というものでしたか。
これはあの有名なミノタウロスの迷宮、ラビュリントスと似たようなものですかね……
使わせる前に倒したほうが良かったのかもです。
今考えても状況は変わりません。
この迷宮を出るために進まないとですね……
「ペルセウスさんとラクリマは無事かな…」
(ペルセウスがついてりゃ問題ないだろ)
「ラクリマの糸がアリアドネの糸みたいになれば助かるなぁ……」
(あいつらが出入り口にいればワンチャンあるな)
「だよね……」
そんな事を話しながらシリウスと進みます。
勿論警戒しています。
ですがモンスターの気配はありません。
ミノタウロスしかいないのでしょうか。
そのミノタウロスもどこにいるかわかりません。
「…シリウス、ペルセウスさんとラクリマの気配とか追える?もしくはミノタウロス」
(これがミノタウロスによって生み出されたものであれば、ミノタウロスを倒せば出られるだろう。ミノタウロスを追うか?)
「…そうだね。本物のラビュリントスじゃないし、倒せば出られるかもしれない」
(じゃあ気配が濃い方に向うか)
シリウスが目を閉じて耳を立てました。
そして再び目を開けると、迷い無く通路を進みます。
その後ろを警戒しながらついていきました。
(この先に広間があるな)
「じゃあ迷宮の番人がいるはずだね」
(……ん?この気配……もう既に戦ってるぞ)
「えっ!?」
通路を駆け抜け広間へと飛びこむと、ペルセウスさんがミノタウロスと単身で戦っていました。
(……来たか)
(何一人で戦ってるんだ)
(倒したほうが早いだろう)
「ペルセウスさん、ラクリマは…」
(彼女には糸を使わせている。死角になる所で待機している)
広間を見渡すと、柱の影からこちらを覗くラクリマの姿を見つけました。
ペルセウスさんもアリアドネの糸の事知ってたんですね。
って事は入り口近くにいたんですね??
(最終手段だがな。ひとまず倒すぞ)
「はい!【ブースト】!【流星】!」
「ブモオオオオオッ!」
わたしをみたミノタウロスがこちらへと駆け寄りますが、わたしの魔法の方が速かったです。
流星はミノタウロスのHPを消し飛ばしました。
ミノタウロスはその身体を地面へと打ち付けました。
HPは無くなりましたが、迷宮が消えません。
…まさか。
突如迷宮が揺れはじめました。
地震……!?
(…チッやはりか!)
(ミツキ!ラクリマの糸を辿って迷宮から出るぞ!)
「うわあああラクリマあああ!!」
『こっチ!はやク!』
わたし達は急いでラクリマの糸を辿りながら通路を走り抜けました。
背後からは建物が崩れる音が聞こえてきます。
ボス倒しても消えないフィールドって質が悪いですよおおお!
出口と思われる光に迷わず飛び込むと、先程までいた草原に出ました。
-フィールドボス ミノタウロス を倒しました-
種族レベルが2上がりました。
任意の場所へステータスを割り振って下さい。
SPを4獲得しました。
メインジョブレベルが2上がりました。
アストラルハイウィザードがレベル20となったため、新たなアーツ【重力操作】、【惑星加護】を取得しました。
契約召喚:ラクリマのレベルが3上がりました。
ミノタウロスの角、召喚石を手に入れました。
「…ありがとうラクリマあああ!!」
『崩れルなんテびっくリしタ……!』
(チッ…厄介な能力だな)
(ラクリマがいなかったら巻き込まれていたぜ)
思わずラクリマへと抱きつきました。
ラクリマの糸のおかげで無事に迷宮から出る事が出来ました……!
それにアナウンスが久しぶりにたくさんです。
……今日はもう終わりにして島に戻りましょう。
ステータスの操作と新しいスキルの事も確認です。
「…レベル上げはまた明日にする。今日はお師匠様の島に戻る……」
(そうか。んじゃ、また喚んでくれよな)
(ミノタウロスの事は仲間くらいには周知しておけ)
シリウスとペルセウスさんは瞬きの間に消えました。
わたしもラクリマを抱いたまま、懐中時計を取り出してお師匠様の島へと戻りました。
お師匠様の庭のベンチに座ります。
隣にラクリマを乗せて、ステータスを操作します。
ミツキ Lv.49
ヒューマン
メインジョブ:アストラルハイウィザード Lv.20/サブ:薬師 Lv.9
ステータス
攻撃 54 +1
防御 76 (+49)
魔攻 158 +4 (+40)
魔防 73 +1 (+49)
敏捷 50 +2 (+15)
幸運 67 +2
よし、こんな感じで良いでしょう。
ラクリマに世界樹の葉を与えます。
『いいノ?』
「ラクリマ今日のMVPだからね」
『えむぶいぴー?』
「一番活躍した!」
『!1番!?』
「ラクリマの魔法も糸の援護もとても助かったよ。ラクリマのおかげで迷宮からも出られたからね」
『……へへ』
照れたように笑ってもしゃもしゃと世界樹の葉を咀嚼してます。
本当にMVPです。星明りを浴びながら、ラクリマを撫でました。
そしてラクリマを横目に、新しく覚えたアーツを確かめます。
【重力操作】はお師匠様が使っていた、重力を操るアーツですね。
ラクリマも使っています。
これは使って慣れて行かないとですね。
次回のバトルで使いましょう。
………さて、次のアーツです。
【惑星加護】……とんでもない気配を感じますね!
ステータスを開き、スキルの一覧から【惑星加護】をタッチします。
【惑星加護】
ランダムな一つの惑星による加護を得る。
太陽から土星の加護はパーティーメンバーにも効果するが、天王星、海王星、冥王星の加護は術者にのみ作用する。
継続時間:15分 リキャストタイム:8時間
太陽:HP上限アップ/MP消費半減
水星:水系アーツ威力2倍
金星:風系アーツ威力2倍
地球:全属性アーツ威力1.5倍
火星:炎系アーツ威力2倍
木星:全状態異常無効
土星:土系アーツ威力2倍
天王星:特殊アーツ【天王】が使用可能になる
海王星:特殊アーツ【海王】が使用可能になる
冥王星:特殊アーツ【冥王】が使用可能になる
……下3つ!!!
得体が知れなくて恐ろしいんですが!?
他のもすごい高性能なのですが!?
というか太陽は惑星ではありませんが………?
太陽系と言う事で含まれた感じですかね??
冥王星も十数年前に準惑星となりましたが…
恐らく天王星、海王星と似たようなアーツの兼ね合いで冥王星も含まれたのでしょう……
こ、これも使うしかないですが、ランダムですからね……
次回のバトルで使いましょう……
ひっそりと使い勝手を確かめないとです。
あ、メッセージも返ってきました。
二人は人が増えるの構わないそうです。
瓶も用意してくれるそうで、大変ありがたいです。
「…エトワールが呼んでいる」
「ひょっ!?」
慌てて立ち上がって振り返ると、ペルセウスさんが立っていました。
びびびびっくりしました。
「ありがとうございます」
ラクリマを抱え上げて、ペルセウスさんにお礼を伝えて家の中へ入ります。
「おや、早かったね」
「レベルアップで新しいアーツ覚えたので戻ってきました」
「…【重力操作】と【惑星加護】だね。使って確かめな」
「はい!」
「それでほら、これが魔法契約に使う契約書だ。アストラルウィザードに関する事を刻んであるから、今後はこれを使うといい」
「あ、ありがとうございます!」
ソファに座っていたお師匠様の対面に座り、お師匠様から巻物を受け取りました。
「ミツキと相手の魔力を通せば契約成立さ」
「なるほど、わかりました」
「これから友も仲間も増えるだろう。……まあ使いこなせれば、人前で思う存分使ってもいいだろうさ。変な輩は実力で捩じ伏せるのがいい」
「……大人しくしてます」
「ハハ、そうかい」
お師匠様は何というか、たまに好戦的ですね……?
巻物をアイテムボックスへとしまいます。
「それにラクリマに食わせてる物、欲しいならやるよ」
「え」
「勿論、お使いの駄賃でね」
「お、お使い…」
お師匠様のお使い、どんなお使いでしょう。
お師匠様の事なので、普通ではない気がします。
「と言う事でお使いだ。紹介状やるからスフィアの所にこれ届けてくれ。明日でいい」
「スフィア様に……」
「スフィアの人形の瞳さ。お気に入りには宝石で瞳を作るからね」
「ほあ……」
お師匠様から紹介状と箱を預かり、そっとアイテムボックスへしまいます。
以前お師匠様の家でお会いした人形師のスフィア様……
スフィア様の店はどこにあるのでしょう?
王都にあります?
「お店は王都にありますか?」
「あるよ。…王都に着いたら誘われるだろうから迷子の心配はしなくて良い」
「?…わ、わかりました」
「頼んだよ」
お師匠様に挨拶して部屋に戻りました。
「ラクリマ、またね」
『おやスみ!』
世界に戻ることを伝えなくても、ラクリマは何も聞きませんでした。
元気よく答えて、クリスタルへ戻りました。
……明日、頑張りましょう……!
わたしはベッドに横になってログアウトしました。
「ふむむ…やる事たくさん…」
夜空には一等星よりも眩しく明けの明星が輝いています。
明日は王都でスフィア様のお店です。
遅くならないように、早めに向かいましょう。
よし、おやすみなさい!
皆様ミツキの事よくお分かりですわ……この子は一撃の威力が高め(MP消費高)なので長く戦うにはMPポーションがぶ飲みじゃないと詰みます( ˘ω˘)
そして【惑星加護】に恒星の太陽が入っているのはソル様関係で少しありますので多めに見て下さい!
本文中少し訂正しました!ご指摘ありがとうございます!
これからもこの作品をよろしくお願いします!




