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古の秘薬

ご覧いただきありがとうございます!

これからもミツキと共に、ミツキの物語をお楽しみ下さい!



「【精製】」


ずっと鍋を見て、都度素材を足して混ぜ合わせていたリゼットさんがぽつりと呟きました。

すると鍋から、小さな水球が浮かびました。


用意していた瓶を手に取り、漏斗を使って瓶へと入れました。

あんなに色々な素材を入れたのに、その液体は無色透明でした。


「……ラピス、貴方」

「フン、作った本人にはわかるかい」

「…ええ」


リゼットさんは眉間に皺を寄せて、ラピスさんへと秘薬を渡しました。


「……ありがとよ」


ラピスさんは秘薬を握りしめて、柔らかく笑いました。

……一体どんな薬なのでしょう。

リゼットさんは作ったので、秘薬の性能はわかったのだと思いますが……


「……さて、継承を始めるよ」


一族の方々が神妙に頷き、ゲルに入りました。

け、継承……不穏な気配になってきました。


ササッとリゼットさんに近付きます。

あれよあれよと言う間に、広場が物々しい雰囲気になりました。

何というか、黒魔術でも行われそうな……?


そして別のゲルから、一人の男性が簀巻にされて連れてこられました。

さらに別の布が目元に巻かれています。



「うううううう!!」

「おとなしくせんか!」

「ぷはっ……いきなり簀巻にされて大人しくする訳ないでしょう!!」


……おや、あの制服は、ギルドの。


「……シルヴァンさん?」

「!その声はミツキ様!助けて下さい!」

「えっ……えっ!?」


えっ!?

簀巻にされているのはシルヴァンさんです……!

何故、簀巻に……?そもそも何故、ここに!?


「往生際が悪いねェ……シルヴァン」

「ゲッ族長!何なんですかこれ!」

「この間言ったろうが、力の継承はお前にすると。それでお前いいですよって言ったろ」

「そんな事言った覚えは無いですけどォ!?」

「全員聞いていたぞ。まあお前ベロベロに酔っ払ってたが」

「………無効でしょう!知りませんね!」

「あの時言質取ったからな。…あたしはもう、視えなくなってきた」


ピタリとシルヴァンさんが動きを止めました。

……みえなく、なった?


「……早くないですか。族長、何を視たんです」

「……とある古代兵器の中身さ」

「そんな無茶したんですかアンタ!」

「…色々あったのさ。だから早くこの力を、オクルスの民であり最も視る目があるお前へと継承する」

「ッ僕まだギルドの仕事続けたいんです!他にいるでしょう!」

「そのギルドの仕事でお前は瞳を使っているだろう。……お前が残るオクルスの民の中で、一番瞳の力を使いこなしている」

「………」

「あたしは隠居するさ。元からニックス一族はオクルスの民の群れから離れた一族……我らはシュタール王の手引で浮島に住むさ。むしろギルドの仕事だって続けるといい。我らの存在は一部の者しか知らないんだ」


シルヴァンさんは、何かを考え込むように黙り込みました。

……簀巻の姿がシリアスを壊してますが……


ここまでの話を纏めると、族長さんのその特殊な瞳が、視えなくなってきてしまっている、と。

そして使いこなしているオクルスの民であるシルヴァンさんへ、力を渡したいと……?一族の者では無く?

……酒で酔わせて言質取ったようですが。


ちらりと古代兵器の話も出てきましたし、古代兵器を視る事は、思っていたよりもダメージがあるみたいです。

まあ神の兵器ですもんね……隠された情報も視える瞳です。

すごい負荷なのでしょう。


……これ、わたし達も見守ってていいんですかね?


「邪魔者がいないうちに、お前へ継承する。見届け人は、翠玉(エメラルド)と星の魔女の弟子がいる。十分だ」

「…族長、リィシャは」

「…もういない。だが何回でも言うが、お前が一番使いこなせる」


秘薬を両手で握りしめ、ラピスさんは魔力を込め始めました。

恐らく額だと思われる場所に、秘薬を握りしめた手をくっつけます。


無色透明だった秘薬は、徐々に色が変化しました。

赤、緑、青……やがて混ざり合って、白くなりました。

おお、光の三原色……


「……ニックス一族は、歴史の影に葬られると?」

「元は我らもオクルスの民……在るべき所に戻る時が来た」

「……その秘薬、血族以外に力を渡す秘薬でしょう。族長とリィシャは、一体()()()()()()()()古代兵器を視させられたんですか」

「……本当に勘がいいね。我らが隠れ住むと言うくらいに、きな臭い国があるだろう」

「……本当に厄介だな。なんで僕なんです?」

「他国のギルド職員にわかりやすく手は出さないと踏んでだな。それにお前さんは一応シュタール王直轄職員と言うことになってるんだろう?……ニックス一族は力の使い過ぎで、力を失った事にするさ」

「……」

「我らにお前ほどの戦闘能力は無い。お前は逃げる能力に特化しているだろ。さ、ぐいっと一気に」

「急に酒を勧めるような言い方しないでくれませんかねえ!?あっちょ!ごぼぼ」


…ラピスさんが無理やりシルヴァンさんの口に瓶を突っ込みました。

……だ、大丈夫なんですかね!?そんな無理やり!?


「……もはや表で活動する直系のオクルスの民はお前しかいない。他の奴らはほぼ()()()()()()()籠っているからな」

「うぐおおおお目があああ!目があああ!」

「……案外余裕そうだね」


ラピスさんは簀巻のまま転がるシルヴァンさんを軽く蹴り、リゼットさんの目の前に立ちました。


「……ありがとうリゼット。助かったよ」

「まあ儀式にしては少し乱暴だけど、ちゃんと見届けたわ」

「お前さんもありがとう。枝が無かったら作れなかったかもしれんしな」

「い、いえ、お役に立てて良かったです本当に」

「礼は弾むからね」


ラピスさんはニヤリと笑うと、転がるシルヴァンさんを無視して一族の人に片付けさせます。


リゼットさんは苦笑して、使った鍋を片付け始めました。

わ、わたしは……シルヴァンさんの様子を見ましょう。


「……シルヴァンさん、ご無事ですか?」

「ご無事じゃないですねえ……」


ラピスさんと目が合ったので、簀巻を指差して解くジェスチャーをします。

するとため息をついて頷いたので、シルヴァンさんの簀巻を解きます。

うお、すごい雑に固く結んであります。


一族の方からナイフを借りて縄をときました。

シルヴァンさんはのそりと起き上がって、手足の感覚を確かめます。


「……うおおまだチカチカしますわ」

「大丈夫です?みえます?」

「いつものミツキ様がみえますー」


シルヴァンさんはにへらと笑って、すぐに口を閉じて考え込むように黙り込みました。


「……シルヴァンさん?」

「…リィシャはもういないと族長は言ったから、恐らく力の使い過ぎで亡くなったか、もしくは囚われて実験台にされたか……血の契りで生死がわかるニックス一族の事ですし、古代兵器を見たことによって致命的なダメージを受けたか……」


とても小さな声でぽそりと呟きました。

所々しか聞こえませんでしたが、無意識に声として出てしまったのでしょう。


……なんだかとても重めの話です。

恐らくきな臭い国として噂になっているのは今も入ることのできないセレニア神聖王国のはずです。


……大きな力は、利用される。

ニックス一族も、利用されてしまった可能性が高いですね。

少し怖いです、セレニア神聖王国……


お師匠様やヴァイスさんより御しやすいわたしなので、アストラルウィザードとして利用されないように、気を付けないといけません。


……わたしも善悪が見分けられる目が欲しいですね。

オーラでなんとなく見分けはつきますが、それでもなんとなくですからね。


「お嬢さん、族長が呼んでいる。シルヴァンも族長のゲルへ向かってくれ」

「わかりました」

「…わかりましたよ。ミツキ様少し肩に手を置かせて下さい」

「はい」


一族の方に声をかけられ、シルヴァンさんと共にラピスさんのゲルへと向かいます。

また目に違和感があるのか、シルヴァンさんはわたしの肩に手を置いて、片手で布の上から目元を抑えます。



ラピスさんのゲルを覗くと、いつの間にかリゼットさんが片付けを終えてゲルの中にいました。


「シルヴァン、落ち着いたかい」

「まあ、どうにか」

「お前の瞳の負荷も抑えてくれるだろうよ。さて、リゼットへの報酬は渡したから、ミツキと言ったね。お前さんの報酬だ」

「は、はい」


ラピスさんは机にごとりと短剣、腕輪、袋を置きました。


「リルならば、世界樹の枝は1本1,000万リルだな」

「ひょっ!?」

「もしくはこの瑠璃の短剣、瑠璃の腕輪、高ランク素材の詰めた袋だな。直感で選んでみろ」


ち、直感で!

不思議な瞳を持つラピスさんの事です。

何かしら意味があるのでしょう。


リルはありますので、気になるのは短剣と腕輪と素材の袋……全部でしたね。


でもまあ、選ぶとしたら……


「……こちら、でしょうか」


わたしは瑠璃の短剣を手に取りました。

刃渡り10cm程の、瑠璃色の短剣です。


「…そうか、それをやろう。きっと役に立つはずだ」

「あ、ありがとうございます」




瑠璃の短剣

攻撃 +40 魔攻 +40

ニックス一族族長であったラピスが作った短剣。

ラピスラズリとオリハルコンを混ぜ合わせて作った逸品。

魔力伝導率が高い。アーツ【魔絶】が使用可能となる。

以下のスキルが付与されている。

【破壊不可】【魔法威力上昇】【攻撃威力上昇】




「ぴぁ」

「自信作さ。大事に使っておくれ」

「ももも勿論です!」


とんでもない短剣です……!

こ、これは生半可な使い方をしてはいけません。

至急短剣の使い方を、学ばないとです!


それにオリハルコンとは、なんでしょう?

あとでミカゲさんにきいてみましょうか……


「シルヴァンにはまだ話がある」

「そうですか……わかりました」

「リゼット、ミツキ、ありがとう」




- 称号 オクルスの瞳の閉じる時 を手に入れました-



ラピスさんは目元の布を取り、透き通るような橙の瞳を細めて、柔らかく微笑みました。





ほんの少しだけシリア………ス??

次はミツキのプレイを見た運営の呟き挟みます!


これからもこの作品をよろしくお願いします!

ご感想も全て読ませてもらってます。大変励みになっております( ˘ω˘)気になる点ありましたら気になる内容でご感想いただければ、積極的に返信させて頂きますね。

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― 新着の感想 ―
シュタール王の手引で浮島に住む...ねぇ... シェアハウス希望かな?
[一言] 移動先の浮島がラピュ◯しか思い浮かばない件
[一言] もしかして魔法の触媒として杖の代わりにもなるのかな?
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