国境の街〈マルム〉
ご覧いただきありがとうございます!
ロックゴーレムのレベルが45でした。
そしてこの辺りに出現するモンスターはそれ以上のレベルです。
これはレベルを上げたら来られるエリアですね!
好奇心で来ると痛い目をみます。
戦闘は避けたかったのですが、避けられませんでした……!
ハマルも疲れていましたからね……
「【宇宙線】!」
宇宙線はゴーストを貫いて消えました。
ゴーストも声も無く消えます。
MP消費量は大きいですが、レベルが上がれば些細な問題でしょう。
流星と同じくらい使い勝手が良いです。威力はこちらのが大きいですけどね。
MP消費を抑えるパッシブスキルがあると嬉しいですね……調べましょう。
と、言いますか。
夜になるとゴーストやスケルトンが増えました!
ゴーストは物理攻撃の効果が無いため、ペルセウスさんは魔力を纏わせて剣を振るっていました。
ハマルは、空中を飛んで逃げてます。
……攻撃手段は無いんですかね……?
(チッ面倒な)
「【流星群】!」
周囲を囲っているゴーストに向かって、流星群が流れました。
違わずゴーストへ衝突すると、爆発しました。
-ゴーストを倒しました-
ゴーストの魔力玉を手に入れました。
ご、ゴーストの魔力玉……?
そんないわくつきみたいな素材あるんですね。
よし、ここまでくればあとは目と鼻の先です。
ハマルを撫で回して還します。
「ありがとうね、ハマル」
魅惑のもふもふでした。
そしてペルセウスさんへ向き直ります。
「今度こそありがとうございました、ペルセウスさん」
(……報告は済ませろよ)
「勿論です!」
(じゃあな)
ペルセウスさんは瞬きの間に消えました。
たくさん助けて頂きました……
宴を催さないとです。
わたしは小走りで、マルムの門へと近寄りました。
マルムに近付いてわかりました。
国境沿いに、壁があります。
これは、モンスターを近寄らせない為なのか、それとも……
……そこは調べるとしましょう。
石造りの壁と門に囲まれた街のようです。
「…お疲れ様です。ギルドカードを」
「は、はい」
「……ようこそ、国境の街〈マルム〉へ」
ギルドカードを門の前の水晶に翳し、青く光ったのを確認して兵士が門の横の小さな扉を開けてくれました。
お礼を告げて扉を潜り抜けると、一瞬にして人々のざわめきが耳に入って来ました。
おおおおお!
夜だからか、お店では盛り上がっているようですが!
石造りの街並みで、お店もたくさんあり賑やかです!
……殺伐としていたらどうしようかと思いましたが、とても栄えています。
…っと、19時はとうに超えています。
一旦ログアウトします。
通りの端によって、わたしはログアウトしました。
ハンバーグを食べながら、母と会話します。
中からチーズがとろりと溢れて、デミグラスソースと混ざって最高です。
「エリアボス?」
「うん。クリスティアから、国境の街マルムに行くにはエリアボスと戦うのが一番早いんだって」
「ゲームっぽいわねぇ」
「ゲームだからね」
頬杖つきながら相槌を打つ母にハンバーグを飲み込んでそう返しました。
コスモス様の使徒として、母のプレイ状況はどうなんでしょう。
「お母さんはどんな感じなの?」
「使徒の事?」
「うん」
「私にはとても合うわね。重力を手に纏わせ攻撃するのが一番ダメージが出るわ」
「ステゴロってやつ?」
「武器もいいけど、素手のが感覚が伝わって攻撃しやすいのよね」
………ヤバそうです。
お母さんの拳骨、すっごい痛いのを思い出しました。
「太陽光は大丈夫?」
「今の所夜のログインばかりだったから、問題は無いわ。明日は昼間にログインするから、暗黒物質で身体を覆う練習でもしようかしら」
「……すごい事だよねそれ」
「信じられないわよね」
暗黒物質で身体を覆う……字面がやばいです。
「受けるダメージも軽減できそうな気がするのよね。熟練度上げるためにも使い続けるしかないわ」
「おお、それは便利だねぇ」
常に鎧を纏うようなイメージですもんね。
着用するには重いですし母には似合いません。
それを暗黒物質を覆うことで代用できるなら防御としても大変ありがたいですよね!
……少し羨ましいですが。
「それに、すごいのよ」
「すごい?」
「使徒は、一日に一回リキャストタイム24時間で、力のみをお借りする【代行者】のアーツと、この身にコスモス様を降臨させる【依代】のアーツがあるのよ」
「え」
「5分間だけね。熟練度が足りないのとレベルも足らないから【依代】は使えないけど、【代行者】はこの前使ってみたわ」
「!どんな感じなの!?」
「そうね、まず10分間だけ第三の目が開くのだけれど」
「???」
だ、第三の目???
目、ですよね?どこに目があるのでしょうか?
「ふふ、額よ。その目が10分間だけ開くのだけれど、瞳の虹彩は宇宙でね。その能力はフィールドに宇宙空間を展開、そして重力を操作する事で擬似超新星爆発を起こしたりする事が出来るみたいね」
「つっよ!!」
「でも私のレベルが低いから全然威力は出ないし超新星爆発も1回限りだし、まだまだこれからね。宇宙空間ではモンスターの動きも阻害出来るから、戦闘でとても便利だったわね」
「へえ………使いこなせるようになったらとても強そうだね」
使徒、中々テクニックが必要そうです。
使いこなせれば、唯一無二の戦闘スタイルが生まれそうですね!
よし、ごちそうさまでした。
お皿を片付けます。
……明日はリゼットさんの依頼に同行させて頂く予定です。
【星光】を使ってラクリマにMPを注いで、ゆっくり休みましょうかね……
お風呂をサッと済ませて、ログインします!
ログインしました!
リゼットさんからのおつかいを済ませないと!
まだお店はやってるといいのですが!
「あの、〈緑の箱庭〉というお店はどちらにありますか?」
「おう!それならあの十字路を右に曲がってすぐにあるぞ!植物が店の前に並んでるからわかりやすいだろう」
「ありがとうございます!」
道行く人に声をかけて、お店の場所を聞きました。
よし、邪魔にならないように走って向かいます!
教わった通りに十字路を右に曲がると、緑溢れたまるで花屋の雰囲気のようなお店がありました。
看板に、〈緑の箱庭〉と書かれています。
良かった、まだ開いてます。
シャルトルーズさんはいらっしゃるでしょうか。
扉を開けると、カランと軽快な音が響きました。
広い店内の四方に棚が置かれ、多くのポーションが並んでいます。
こうたくさんのポーションが並んでいるのを見ると壮観ですね!
プレイヤーもNPCの方もちらほら見かけます。
店員さんも数人いますね……
棚へポーションを並べている店員さんに声をかけます。
「仕事中すみません、シャルトルーズさん宛にお手紙を預かってまして」
「シャルさんに?」
アイテムボックスから手紙を取り出して見せると、店員さんは手紙をひっくり返してぱちりと瞬きます。
「おやリゼットさんから。おーい!シャルさーん!」
「ひょあ」
突然大声を出しました。
少し驚きました。
カウンターから、一人の男性が出てきました。
深緑の髪色をした、長身の男性です。
「なんだ、どうした」
「お手紙ですって」
「手紙……?」
恐らくシャルトルーズさんだと思われる方が、手紙を受け取り、差出人を確認して目を見開きます。
「なんだ、母さんからか」
「こちらのお嬢さんが届けてくれたんですよ」
「お嬢さん?」
店員さんの斜め後ろから様子を見ていたら、目が合いました。
そして襟元に視線がズレました。
「!そのブローチは」
「大変お世話になっております。渡り人のミツキです」
「こりゃ失礼、シャルトルーズだ。長いから人にはシャルって呼ばれてる」
「シャルさん、ですね」
「おう。届けてくれてありがとう。……なるほど、お嬢さんがミツキさんだったか」
「え」
「前に母さんから手紙を貰ったとき、渡り人を弟子にしたって聞いてね。俺達兄弟共々よろしくな」
「よ、よろしくお願いします!」
にっと笑ったシャルトルーズさん……シャルさん。
目元がリゼットさんと似ているような気がします。
お仕事中ですし、あんまり邪魔しない方がいいですね。
「お仕事中にありがとうございました。失礼しますね」
「何も構えなくてすまんな。また来てくれ」
「今度はたくさん買わせてもらいますね!」
挨拶をして、そそくさとお店を出ます。
チラチラですが、視線が煩かったですからね!
さて、お師匠様の島に戻りますかね。
マルムの街から、お師匠様の島へ飛びます。
マルムの街も、クロイツの街も、今度ゆっくり散策しましょう。
庭のベンチに腰掛けて、膝の上にラクリマの卵を乗せます。
MPすっからかんなので、回復して注ぎましょう。
「【星光】」
全回復したMPを卵にゆっくりと注ぎます。
星の光を浴びながら行うと、なんだかご利益ありそうです。
……終わりました!
94%になりました。あともう少しです!
……回復しても良いのですが、明日午後は時間がありそうなので、午後に孵化させたいですね。
クランチャットにも明日コメントしておきましょう。
そろそろお母さん達にプレアデス…浮島の事、伝えないとですからね。
よし、お師匠様に報告してからログアウトしますか。
「戻りました、お師匠様」
「おかえり、…」
お師匠様は振り向いて、こちらをじっと見つめます。
?なんでしょう?
「嫌な気配がするね。レダに会ったね?」
「……レダという方かはわかりませんが、お師匠様の事を知る魔女のような方と会いました」
「何かされたかい」
「鑑定しようとして呪いを貰いましたが、星のキュアポーションで解呪しました」
「…そうかい」
お師匠様はため息をついて頭を抱えました。
「……奴は一度ボコボコにしたんだが」
「ボコボコに」
「それから妙に絡んでくるようになってね。次に会ったときには容赦なくボコボコにして構わないよ」
「……すごいレベル差があると思いますし、勝てないって思ってしまいましたね……」
「…レベルや経験の差は大きいからね。でも諦めるんじゃないよ。倒すだけでなく、退ける事も手段の一つだからね」
「はい……」
「生きていればいい。逃げても準備してまた立ち向かえばいいのさ」
……エンカウントしたら逃げることにしましょう。
もっとレベルを上げて、せめて撃退できるようにならないとです。
お師匠様の言葉は、とても説得力があります。
「まあボコしたのは本当だがそれなりに因縁があるのも確かさ。……今度話そう」
「わ、わかりました……」
「明日は用事あるのかい?」
「リゼットさんに来た依頼に同行させて頂く予定です」
「ほう。翠玉への依頼か……よく学んでくるといい」
「はい!」
「今後はワタシからも素材採集依頼とかお願いするよ。今まではヴァイスに頼んでいたけどね」
「が、頑張ります!」
素材!
まだクリスティアしか進んでませんが、どんな素材を持ってこいと言われるのでしょうか!!
早く長期休み……長期休みでハーセプティア中の探索を進めたいところです。
それまではちまちま進みましょう。
「では、今日は失礼します」
「ゆっくり休むといい」
「おやすみなさい」
お師匠様に挨拶して部屋に戻ります。
そしてベッドに横になり、ログアウトしました。
「……レダめ」
誰もいなくなった室内で、星はぽつりと呟いた。
「あ、流れ星」
ハンモックに揺られながら空を見上げていた時、空を一筋の光が駆けました。
何だか良い事が起こるかもしれませんし、凶事の報せかもしれません。
明日、どんな事が起こるでしょうか。
よし、明日に備えて寝ましょう。
おやすみなさい。
使徒は考えるの難しいのですよね。アストラルウィザードとはまた異なる性能にしなければ……
これからもこの作品をよろしくお願いします!




