VS 《ラクリマ》④
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「【紅炎】!」
次の瞬間、フィールドが紅く染まりました。
木々は一瞬で灰になり、地面は一部マグマのように溶けました。
口を開けて呆けてしまいました。
ひえ、とんでもない威力です……
そして壁際に、所々が黒く焼け焦げたラクリマの姿がありました。
『……ウぅ』
「……ッ」
一瞬ラクリマを倒してしまったかと思いました。
むしろあれに耐えたラクリマ、すごすぎです!
「っっっべーですわ……ミツキ氏の後ろに避難してなかったら灰になってたかもですわ」
「……コレに同士討ちは無ェだろ」
「それでもちょっとはビビりましたよ!」
仲間への影響が無くて本当に良かったです!!!
わたしは胸をなでおろします。
「あ、ありがとうございます、ソル様」
『太陽は選択肢を与えただけで、使えたのは其方が正確にイメージしたからだ。見事であった』
「!ありがとうございます」
写真集をガン見したかいがありました。
ありがとう、太陽の写真集!
……ふとラクリマへ目を向けますが、ラクリマは、地面に転がったまま動きません。
HPは、残り2割ほどあります。
……何故、ラクリマは成体にならなかったのでしょう。
成体になれば、とても強い力を持ち、好きに生きていけるはずです。
わたしは、ラクリマの元へ向かいました。
オリオンさんが、わたしに何かあればすぐに踏み込める位置で待機します。
わたしは、ラクリマの顔の前で、ラクリマへと問いかけます。
「………ラクリマ」
『…………………』
「…あなたは何故、成体にならなかったのですか?」
ラクリマの虹色の眼が、わたしを見つめます。
『……恐くテ』
「…こわい?」
『……もシ成体にナったラ、ラクリマもきょうだいを戦ワせなイとダメなノかなっテ』
ぽそりと呟くように小さな声で言うラクリマ。
その声音は、とても悲しそうです。
「考え、行動するのはラクリマです。ラクリマがやらないと決めれば、やらなくても良いのではないかと」
『デも、力を継承すルにはそレしかナいっテ』
「…その方法は、先代さんからですか?」
『幻獣トしてノ、知識』
幻獣としての知識、ですか………
きっとラクリマしか知らない知識がたくさんあるんでしょうね。
というか力と共に知識も受け継がれるんですね。
「……大きな力を扱うには、知識と覚悟が必要だと、誰かが言っていました。使い方を誤れば森が滅んでしまうかもしれませんし、仲間を傷つけてしまうかもしれませんからね」
『仲間……』
「もしかしたらラクリマにも、幻獣仲間とか出来てたかもしれませんね」
『………』
ラクリマは視線を下に落とします。
幻獣は、ラクリマがはじめましてですけれどね。
「難しく考えなくてもいいんですよー。ラクリマがトップになったなら、ラクリマがルールを作ったって良かったんですからね」
「ミカゲさん」
「ラクリマの世界は狭かったから、何も出来なかったんですなぁ………」
そう、ですね。
世界を教えてくれる先代は、ラクリマを乗っ取ろうとしました。
故に知識はあれど、それを実行してどうなるかわからない。
その恐怖故に、ラクリマは今まで何もしなかったのでしょう。
『………ラクリマは、好きニやっテ良かっタの』
「さすがに人間を襲うとかは容認できませんけれど、強いものが生き残る。それは自然界のルールですからね」
「好きに世界を飛んで巡ってみても良かったんじゃないですかねぇ」
『……ラクリマを、殺しタいんジャなかっタの』
ラクリマはこちらを見つめます。
とても真っ直ぐで、綺麗な目です。
「……殺したい訳ではないです。それに同情でもありませんね、ラクリマに失礼ですから。……ただ、少し話をしてみたかっただけです。何故、成体にならなかったのか」
『…………』
「会話に応じてくれるかわかりませんでしたけどね」
わたしは苦笑します。
モンスターと話せるとは思いませんでしたから。
『………成体ニなれバ、思い出せルかな』
「何か、思い出したい記憶があるのですか?」
『……思イ出』
『森デ、人の子供ト過ごしタ思イ出』
思い出したいけど、夢にも見てたけど、思い出せない。
ラクリマはそう呟きました。
「……」
わたしはちらりとミカゲさんとレンさんを見ます。
ミカゲさんは笑顔を浮かべ、レンさんは腕を組んでため息をつきました。
「好きにしろよ。お前に任せる」
「……好き勝手ばかりですみません」
「ミツキ氏の選択を尊重しますぞー。ミツキ氏のイベントですからね」
わたしがラクリマに言いたいこと、二人には言わなくてもわかったようですね。
わたしは再びラクリマと向き合います。
「……その思い出は、きっとラクリマにとって大切なものです。成体になれるのであれば、なってみても良いのでは?」
『エっ』
「何かあればわたし達もいますし」
わたしは拳を握って頷きます。
………もしラクリマがステータス爆上がりで強くなって、ま、負けてしまったらリベンジです。
「どうでしょう?」
『……やっテ、みタい』
「はい!」
『思イ出せルか、わカらなイけド』
「挑戦あるのみですよ」
わたしはラクリマへ笑いかけます。
そしてラクリマから離れます。
何かあったときの為に、戦闘態勢は崩しません。
星座達は何も言わず、ラクリマを見つめます。
ラクリマはどうにか壁へよじ登ります。
そして目の前のラクリマが光に包まれ、蛹になりました。
「なっ」
「あら、やっぱり」
ラクリマが蛹の姿になった時、ソラは笑みを浮かべた。
ヴァイスは思わず立ち上がり、塀へ手を付いた。
「そうだねぇ、ミツキは選択肢で対話を選ぶね」
「そんな非情にもなれないよなぁ。子供だし」
「リューも優しいだろう」
「……そんな事ねぇよ」
リューも塀に両腕を乗せて、頬杖をつく。
ソラもサクヤも、観客席の塀に近寄った。
「……さて、あの子は成体になれるのかしら」
ソラは心配そうに呟いた。
ヴァイスは、手に力を込めて、その様子を見つめていた。
《羽化まで10分》
蛹になったラクリマのアイコンの横に、そう表示されました。
「なんと、10分で羽化できるんですか」
「早っ」
「……成体に、なれるでしょうか。ラクリマ…」
少し、心配です。
何故なら、さっきまでラクリマへ向けて遠慮なく攻撃しまくっていたからです。
ラクリマはすごくダメージを受けていました。
………わたし達が犯人です。
ふと周りを見回すと、星座達は難しい顔をしてラクリマを見つめます。
……ソル様は愉快そうにこの状況を見ています。
「……ソル様は、本体では無いんですよね?」
『うむ。分体だ』
「……応えていただいてありがとうございます!」
『良い。眷属……デイジーへの土産話もできた』
「!デイジーさん、お元気ですか?」
『其方へいつでも果実を渡せるように、楽しそうに果実を加工しているな』
デイジーさん!
運営の皆様!何卒デイジーさんとの繋がりを!
絶対に手紙を書いて物々交換したいです!
………ハッ戦闘態勢を崩しませんと言ったそばから脱線しました。
わたしは頬を叩きます。
「うお、急に頬叩いてどうしたんです?」
「いえ、戦闘中なのに世間話のようなものをしてしまったので……」
「ミツキ氏は真面目ですな……今はイレギュラーな時間ですし、ちょっと気を抜いても良いのでは?」
「……ラクリマが頑張ってますから」
そうしてラクリマを見つめていると、蛹に亀裂が入りました。
羽化、できるんでしょうか!
固唾を呑んでその様子を見守っていると、ずるりと蛹から成体と思われるラクリマが出てきました。
しかしその直後、力を失くしたかのように地面にべしゃりと落ちました。
壁で蛹になれるのかどうかはファンタジーと言うことで( ˘ω˘)
これからもこの作品をよろしくお願いします!




