VS 《ラクリマ》③
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轟音と衝撃が闘技場に響きました。
砂埃が巻き上がり、袖で顔を覆います。
『痛イ!!』
(フン、目が覚めたようだな)
『起こサれたノ、初めテ!』
とんでもないモーニングコールです。
ラクリマを中心に地面に大きくクレーターが出来ました。
「…か、かっこいい!レグルスかっこいいです!」
(ふむ、そうだろうそうだろう)
「レグルスかっこよかったぞー」
ラクリマを地面に押さえつけながらフフンと鼻を鳴らすレグルス。
レグルスならではの技でした!かっこいいです!
オリオンさんも離れた場所から笑顔で叫びます。
『ムゥ!少シ怒っタ!!』
ラクリマを中心に、ラクリマの周囲から立派な木の枝が地面から伸びました。
ラクリマはそれを鞭のように闘技場を縦横無尽に振り回します。
「わっ」
急いでしゃがんで頭を下げます。
頭の上を枝が通り抜けました。
上下左右に枝を操るラクリマ。
中々近寄れません。魔法も狙いづらいですね。
「【流星】ッ」
『ム!』
空から流れる流星を見て、ラクリマは樹木で自分を覆います。
流星は樹木に直撃し枝を折りながらラクリマへ進みますが、その速さはいくらか減速したようにみえます。
ぐぬぬ、防御にも使えるのですね、樹木!
木々を合間をくぐり抜けてレンさんがラクリマへ接敵します。
ミカゲさんは、………気配を消してラクリマへと近付いてそうです。
見えませんが、マップにマーカーが表示されていますし。
あ、速すぎて見えませんが木々がすごい勢いで切られていきます。
ペルセウスさん、隠れ兜をかぶってます!
味方だと視認できるのか、召喚者だから視認できるのかわかりませんが、兜を身に着けたペルセウスさんが木々を切りつけながらラクリマへ攻撃する様子が見えます。
わたしも攻撃します。
あの邪魔な木々、燃やせるでしょうか。
「【身体強化(魔)】【ブースト】!ファイアーボム!」
再び自分を強化し、魔法を放ちます。
ふと気付くと強化切れてるんですよね……
フルMPポーションを呷り、目の前のラクリマへ目を向けます。
ラクリマの残りHPは5割。
先程回復されてしまったので、MPには余裕があるでしょう。
わたしもポーション類には余裕がありますが、疲れはありますからね。
ちらりと時刻を確認します。
…1時間はずっと戦っています。
少しずつ確実に削るとしましょう。
「【二重詠唱】サンドボム!」
『!ペッ砂ガ』
「【狂化】【アタックプラス】…シッ」
レンさんはぽそりと呟くと、瞳孔を開いて口元に笑みを浮かべながら嬉々としてラクリマへと殴りかかります。
重そうな打撃音が闘技場に響きます。
オリオンさんはレンさんの事を面白そうに見つめます。
レグルスはいつのまにか、いつもの漆黒の大鎌を咥えながらラクリマを切りつけます。
「うわバーサーカーじゃん……」
「ミカゲさん」
「地面に色々仕掛けてたらいつの間にかレン氏がバーサーカーになってたから避難しました」
「あ、今度爆発系アイテム買わせて頂きたく」
「お、毎度ありですわ!」
「ハハッ」
『イッ、イタッ…風ヨ!』
笑いながらラクリマへ殴る蹴るを繰り返していたレンさんの足元から竜巻が発生しました。
!直撃です!
「……もっと強い風寄越せやァ!」
『ナっ』
「【逆境】【破壊ノ一撃】!」
元々HPが半分まで減っていたレンさんのHPが竜巻によって削られ、残り2割程度になりました。
そしてレンさんが最初に【逆境】と呟いた後全身が赤黒いオーラに包まれ、アーツ名?と共に思い切り右腕を引いてラクリマへを殴りつけました。
大きな衝撃音と共にラクリマの身体が闘技場の壁へと吹き飛びました。
『かハッ』
ラクリマは壁にぶつかると、ドサリと地面へ落ちました。
わたしとミカゲさんは口を開けてその様子を見つめていました。
な、何というパワー!
思わずレンさんを見ると、身体が消えかかっていました。
「れ、レンさん!?」
「…ン、アーツ使うと死ぬンだわこれ」
「そ、そうなんですか!?」
「なんだその奥義みたいなヤツ!」
そ、蘇生薬!
あれ、もしかしてわたし蘇生薬とか持ってません!
ポーションしか、買ってません!
そんなこんなしてる内にレンさんの身体が完全に消えてしまいました。
「れ、レンさん!」
「おう」
「え」
「え」
「……朝プラム食ったンだよ」
振り向いたらレンさんがいました。
完全に回復されています。
…………プラム!!!
「!ボクも食べましたね!じゃあ捨て身の戦法出来るんですわ!」
「わたしも、できます!!」
「いやお前らは普通に戦えよ」
はぁ……ちょっと驚きました。
そういえばプラムの効果は完全回復でした。
わたしもプラム食べてから死に戻って無いので恐らくプラムの効果があります。
と言ってもレンさんのような命と引き換えに放つアーツなんてありませんけどね!
心臓に悪いです!
『……メッチャ痛イ』
衝撃から復活したラクリマがぽそりと呟きました。
ラクリマのHPは残り4割です。
『…風ヨ!木ヨ!』
ラクリマが声を上げると、闘技場に暴風が吹き荒れ、フィールドは木々が埋め尽くしました。
そして至るところで爆発が起きました。
「!」
「うええボクの爆弾が!!」
わたし達はその場から離れ、散開します。
ッ木々が邪魔ですね!
かくなる上は!わたしもお喚びしましょう!太陽を!
‐ラクリマ視点‐
『唸レ!』
わたしは魔力を使ってフィールドに暴風を呼び起こす
あれ、わたしは何でここまで必死にやってるんだっけ
ここでずっとひとりで過ごしてきた
きょうだいを食らったわたしはどこにも行けず、あんな成体にもなりたくなかったから、成体になることをやめて過ごしてきた、のに
なんでこんなに痛い思いをしてるのに、こんなに負けたくないんだろう
わからない
痛いのは嫌だ
きょうだいのところにいきたい
それはかわらないけれど
「おいでませ!【19:太陽】」
あの魔女と同じ魔法を使う少女が、両手を前に出して叫んだ
木々がわたしを暴風と彼らから隠してくれている
だからここで少し回復するつもりだった
『……なンか、ジリジリ、すル?』
空気が、ジメジメしてる
木も、少しずつしおれてる
なんで、なんで
知らない、こんなの、知らない
木で覆ったのに、なんで日差しが…
『……そんな日差しの元に居たら暑いだろ。木陰にいなよ』
ッいま、何か……
『コレが、暑イ?』
『人は日差しに長時間当たると体調を崩すんだ。だから僕は影から出ない』
『?ラクリマ、すこシ回復スる』
『……それは君だけだよ』
そうやって笑ったのは誰だったのか
わからない
あれ、おもいだせない
まえは、たくさん夢で会ったの
…でもなんでかな
だってもう、顔も思い出せないの
まえはあんなに、夢にも出てくるほど会えたのに
眠れば、会えたのに
今は、会えない
夢も、みれない
なんでだろう
わたしは木々で身体を覆う。
木陰でわたしに話しかけたのは、だれ?
‐ミツキ視点‐
「おいでませ!【19:太陽】」
両手を前に、【神秘】を発動します。
【19:太陽】を使うのは初めてです。
【19:太陽】のカードは、手の上で浮かんで消えました。
そして空で輝く太陽の光が、一際強くなったような気がしました。
『……選べ、星詠みの娘よ』
「!ソル様!」
背後から聞こえた声に振り返ると、太陽島でお会いしたソル様が、空中に浮かんでいました。
そしてわたしの前にウィンドウが出現します。
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【19:太陽】
フィールド効果 《太陽の闘技場》
敵味方の防御低下、水系アーツ威力低下、 徐々にHP低下・MP消費増加
太陽に関連するものの効果が上がる
〖特殊魔法〗
【紅炎】【太陽面爆発】
※それぞれ1回のみ使用可能
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「ファッ」
『好きに選ぶといい』
ソル様は優しく微笑みます。
わたしは目の前のウィンドウを見つめます。
こ、このフィールド効果っていうのはキュクロプスと戦ったときの熱々フィールドですね……!
「うお!ソル様!ご機嫌麗しく!?」
『大鎌の娘か』
「ひえ認知されてるう!……ソル様へ指示するミツキ氏ヤバヤバでは……」
『指示などさせぬが』
「へ?」
『太陽はあくまで選ばせるだけだ。星詠みの娘に選択肢を与え、選んだものを発動する。ただそれだけのことよ』
わたしもソル様に指示するとか恐れ多いことはできません。
あれ、でもそうなると……
「お願いだと対等な存在になってしまいます……選ばせて頂く立場で選ぶだけなのも申し訳無く……」
『良い。其方の選択を歓迎する』
「はわ……で、ではあの、《太陽の闘技場》を、お願い致します!」
『良いだろう』
ソル様が片手を天に掲げると、日差しが一層強くなりジリジリしてきました。
よし、耐熱薬の効果を試す時……!
アイテムボックスから耐熱薬を取り出して呷ります。
………ちょっとだけ、ジリジリがおさまった、ような?
………良しとしましょう!
「……ソル様、この木々を焼き払うのに、魔法の力をお借りしたいのです」
『……ふむ、今の其方だとMPが足らない故、選べるのは紅炎のみだな』
「そ、そうでしたか。……よろしくお願い致します!」
『ではイメージしろ。イメージが浮かんだら、唱えるといい』
ソル様はわたしの右肩に手を置きます。
わたしは目を瞑って、太陽を思い浮かべます。
漆黒の宇宙空間に在る太陽、その外層のコロナの中で、深紅にゆらめく紅炎。
およそ一万度の高温で、とても美しい紅い炎。
わたしは自然と杖を構え、目を開けて唱えます。
「【紅炎】!」
次の瞬間、フィールドが紅く染まりました。
【19:太陽】の情報はここが初出です。よろしいですね???
これからもこの作品をよろしくお願いします!




