VS 《ラクリマ》②
ご覧いただきありがとうございます!
昨日ステータス載せた時に書き溜めてたストーリーのネタバレめっちゃしたので慌てて消しました。
書き溜めしてたので載せた気になってしまいました。
見てしまった方は申し訳ございません………
「……ヴァイスさん、幻獣について聞いてもいいかしら〜?」
眼下で繰り広げられる戦いを見つめながら、ソラはヴァイスへと問いかけた。
リューは真剣に、サクヤは少し心配そうに戦闘を見つめていた。
腕を組みながら戦闘を見ていたヴァイスは、片手を顎に当てながら口を開いた。
「……ハーセプティアには、知性が無く無差別に住人や家畜などを襲う生物を、モンスターと分類します。そしてその中でも稀に知性を発現するモンスターがいますが、それらは名を与えられ、ネームドモンスターに分類されます」
「……その名は誰に与えられるのかしら?」
「神から。……そう言われていますが、定かではありません」
ヴァイスはラクリマへと視線を向け、眉間に皺を寄せる。
ラクリマは、糸と風を用いて少年少女へと着々とダメージを与えていた。
「知性あるものには、名が与えられる。古くから、そう伝わっています。そしてそのモンスターの中で神に力を分け与えられ、高い知性を有するモンスターを聖獣、長い年月を経て知性を発現し大きな力を有するモンスターを、幻獣と分類しています」
「聖獣も幻獣も、そんなに数は多くないのかしら?住人達に、好意的?」
「…一部の聖獣はハーセプティアの住人に好意的です。国の守護獣として契約し、守っています。その他の聖獣は、然程好意的ではありませんが、森や泉、遺跡などの土地を守っています。こちらから手を出さなければ、あちらから手を出すことはありません」
「なるほど、下手なことをしないように気を付けなければいけないわねぇ」
「渡り人が簡単にちょっかい出さないように注意を促さないといけないね……」
「そうですね、なるべく刺激せず、共存したいと我らは考えております。冒険者ギルドでも、出現情報が寄せられたら周知するようにしている筈です」
(……その情報を無視するお馬鹿さんたちも、きっといるわよねぇ)
(いいプレイヤーばかりでは無いし、マナーの悪い渡り人によって関係が悪化してしまうかもしれないな……)
ソラとサクヤは、口には出さず心のなかでそう答えた。
この二人は夫婦で行動している為、よく街でプレイヤーに絡まれていた。
主にソラが、だが。
二人の子持ちとは思わないほど若々しく、知性もある。
そして吸血鬼として血色は悪いが怪しい魅力が付与されたソラは、男女問わず引き寄せていた。
それを笑顔でサクヤが蹴散らしていた訳だが。
「……話は戻りますが、ラクリマはこの辺りを支配していた幻獣・夢見蝶の幼体です」
「……まるで蠱毒のような話だったわねぇ」
「強力な幻覚の力と、悪夢を見せる能力を持つ幻獣でした」
ソラ達はラクリマへと視線を向けます。
「先程も話したように、先代の夢見蝶はここで幼体達を争わせました。……今思うと、最後に残った一体を最初から依代にでもするつもりだったのでしょう」
「幻獣にも、死や老いへの恐怖があるのねぇ」
「その中で最後まで生き残ったのが、ラクリマです。死にたくない、その一心できょうだいを食らったと語っていました。師匠はラクリマに時間を与える事にし、ここで過ごすことを許可しました。太陽光と草があれば、幻獣の幼体である彼女は生きられますから」
ヴァイスは無表情にラクリマを見つめる。
かつて、幼少期を共に過ごした頃の彼女は、もういない。
過去幼い時に、エトワールが森の調査をする時に共に森に来たヴァイス。
そこで出会った彼女は、こちらを襲うことなく会話してきたおかしなモンスターだった。
1年間程、ラクリマと様々な会話をした。
しかし時が経ち、大人になり再び森へ入った時に会った彼女は自分を忘れ、生きる気力を失くしていた。
今、そこにいるのは、死にたがりのモンスターのみ。
「いったーーーー!?ボクの足千切れてないです!?ついてます!?」
「千切れてないです!わたし達が受けるのはダメージだけです!」
「貫かれても受けるのは痛み!減るのはHP!それでも痛いもんは痛いんですわぁーー!」
『……騒がしイ子供ネ』
「痛いもんは痛いって言ったほうがいいんですよ!隠すと碌なこと無いですから!心配もさせますし!」
『…痛イ事は痛イって言ワないトダメなノ?』
「そうですね……痛そうなのに痛くないと言われるととても心配しますぅぅう!?」
「ミツキ氏ー!?」
妹弟子が木の根に足を引っ掛けて転んだのを見て、ヴァイスは口元に微かに笑みを浮かべた。
妹弟子なら、彼女の願いを叶えてくれるだろう。
「……でもあの幻獣の子は中々手強いわねぇ」
「耐久力高いね」
「幼体でも幻獣は幻獣って事か」
「成体になればミツキ達に勝ち目は無いでしょう。ですがラクリマは【蛹化】と【羽化】という一度限りのアーツを自己封印しています。……彼女の心を動かす事が無い限り、使う事は無いでしょう」
「……ふふ、ミツキ達なら、動かしてしまうかもしれないわね」
そう応えたソラは、子を想う母親の表情をしていた。
サクヤも同じように優しく微笑みながら戦いを見守る。
リューは真剣に戦闘を目で追っている。
その様子を窺いながら、ヴァイスも再び眼下で繰り広げられる戦闘へと意識を戻した。
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ユアストはダメージを受けても腕が欠損するとか、お腹に穴が空くとかはありません。
ただそれ相応のダメージとHPが減る仕組みになっています。
わたしは痛覚の設定は40%に設定しています。
でも痛いものは痛いです!
「うぐっ」
突如足元に現れる竜巻や鞭のような木の根、避けそこねた木の矢の痛みは中々感じたことのない痛みです!
竜巻に煽られてわたしは吹き飛びました。
いったいですね……!
起き上がってハイポーションでHPを回復します。
レンさんやミカゲさんは武器を使って器用に弾いています。
………わたしも近接武器、やはり考えましょう。
「オラオラオラァ!」
「チッ」
『ッこノ!』
オリオンさんとレンさんはそれぞれ異なる方向から己の武器でラクリマを打ち付けます。
ラクリマは少し仰け反ると、【魔力糸】をレンさんとオリオンさんの方向へ吐き出しました。
二人はそれぞれ別の方向へ飛んだり、バク転して距離を取りました。
「【パラライズエッジ】【パラライズリーパー】!」
ミカゲさんは黄色いオーラを纏わせた大鎌を後ろ手で低く構えて、ラクリマへ駆け寄ると目元へ向かって勢い良く大鎌を振り抜きました。
『危ナいネ!』
「そい!」
後ろに飛んで距離を取りながら氷結薬を放り投げました。
ミカゲさんあのアイテムどれだけ持ってるんでしょう。
……後で買わせてもらいたい所です。
「ウォーターボム!サンドボム!」
ラクリマの顔を視認して魔法を放ちます。
魔法はイメージ!ここで爆発しろ!とイメージするとその場所で爆発するのです。
あの特徴的な虹色の眼……何かありそうなんですが……
後こんなにも魔法を使っていて、ラクリマのMPはどれくらいあるんでしょう。
『んグ、MP、足りナい』
「!」
『チョっと寝ヨ』
「え!?」
そう呟くとラクリマは微動だにせず目を閉じました。
え、本気で寝るんですか!?
えと、【鑑定】した時に確か【休眠】というものがありました。
……HPは、回復しません。
しかしラクリマの身に流れる魔力が徐々に増えている気がします。
……MPが足りないから眠る、と言うことは!
「眠ったらMP回復するんですか!?」
「うへえ本当に回復してるじゃないですかヤダー!」
ミカゲさんも【魔力察知】を持っているのかまた別なものなのか、魔力が回復しているのが見えたようです。
まあ回復というか、ラクリマの身体が魔力で満ちていくと言うか。
どうにかして止めたい所ですが!
「とめ、止めたいですが!ウォーターボム!」
「【クレセント・ムーン】!」
「【ギガ・インパクト】ッ」
3人で魔法やアーツを放ちます。
レンさんの一撃でラクリマは転がりますが、まだ目を瞑っています。
んぐ、HPをトータル4割まではどうにか削れましたが、このまま回復されてはまた戦いづらく……!
(……少し、子供達に離れるように伝えよ)
「…レグルス……?」
(我が技、我が力、今ここに示そう。アルフェッカのおかげで使用出来る故)
「!」
レグルスの身体が、淡く発光しました。
アルフェッカのアリアドネの宝冠で、一度だけ魔力消費無しでアーツが使用可能となっていました。
完全解放、されていなくても!
つまり、レグルスの必殺技……!
「レンさん!ミカゲさん!レグルスが1発ぶちかましますので少し離れるようにと!」
「!」
「わお!」
レンさんとミカゲさんは面白そうなものを見つけたような表情を浮かべてラクリマから距離を取りました。
ラクリマの魔力は、半分以上回復してそうです。
(奮えよ、獅子の心臓!)
レグルスは声を上げると光に包まれ、それはやがてレグルスの頭上へと移動しました。
(アルギエバ、アダフェラ、ラサラス)
レグルスが恒星の名前を唱えていくと、光は強く輝きます。
(ラス・エラセド・アウストラリス、アルテルフ)
光はやがて、レグルスがいつも咥える漆黒の大鎌とは異なる黒と金の大鎌の形となりました。
そして浮かび上がった大鎌を咥えると、勢い良く駆け出します。
スピードを上げたレグルスはラクリマの胴体の真上に飛ぶと、
(【獅子王の大鎌】!)
ラクリマを見下ろし、大鎌を振るいながらラクリマへと突撃しました。
恒星名唱えるとかっこよく見えますよね( ˘ω˘)
でもアーツ名はシンプルです。作者にかっこいいアーツ名は思いつきませんでした……
これからもこの作品をよろしくお願いします!




